東京都合唱祭は、頗る良心的な素晴らしい企画‼️

東京都合唱祭という催しがもう70年以上続いている。これは本当に信じられないくらい良心的かつ素晴らしい企画なのである。

僕が創設し、指揮者を務めている合唱団東京フリューゲルでは、今月11日日曜日に出場したばかり。ちょうど一週間前である。17年連続出場とプログラムにも掲載されている。僕たちが初めて東京都合唱祭に出場したのは、2002年のこと。それ以来、毎年欠かさず出場を続け、今年で17年連続になるということなのだが、正確に数えると話しが合わないことは直ぐに分かる。

 

これはあの2011年の東日本大震災が大きく関わっている。

3.11の東日本大震災は、あの年の合唱祭を吹き飛ばしてしまった。ということで、2011年は開催されなかったので、17年連続出場というのは実は正確ではなくて、17回連続出場というのが正しい。あの時、あの大震災がなければ間違いなく合唱祭は開催されていたはずなので、今年は18年目に当たる17回目の出場ということになるわけだ。

この間、一度も欠場したことがないことは確かにすごいことではあるが、パンフレットを見ると、今回、一番出場回数が多い団体は何と連続52年出場。それが3団体もある。30回以上連続出場なんて決して珍しくないことに驚かされる。

20年連続出場合唱団はゴロゴロある。

 

その一方で初出場団体も相当に多く、これはかなりのイベントであることが分かってもらえると思う。

 

ここで直近の合唱祭の基本的なデータを確認しておきたい。

毎年6月と7月の土日祝日を使って5日間をかけて開催していたのだが、毎年少しずつ参加合唱団が増え続け、今年は遂に8月にも及んだ。

3年前から全体で6日間に拡大され、出場する合唱団の数は何と300団体にも及ぶ。

この6日間、全300団体をおよそ10数団体毎にグループに分けるのだか、今年の場合はそのグループ数がAから始まってZまで。26グループに及ぶ。

そして一団体あたりの演奏時間は基本的に7分半と決められている。今年から8月の猛暑真っ盛りも日程に加わり、その猛暑特典?として8月出場合唱団は待ち時間が8分までと30秒拡大された。指揮者にとってこの30秒はありがたい。

 

さて、終わったばかりの今年の参加合唱団の数は330団体。東京都内で活動している合唱団が、この暑い真夏の真っ只中に330団体も集まって歌声を響かせる祭典なのである。

参加合唱団については、一切の制限がない。混声合唱男声合唱。女声合唱。児童合唱と何でもOK。ましてや技術的にうまいの下手なの、そんなことは一切問われない。

毎年、全日本合唱コンクールの全国大会で金賞を受賞するような日本を代表するトップレベルの合唱団から、かなり技術的に課題を抱えた合唱団まで正にレベル的には玉石混交。人数も年齢も全く問われない。今回僕たちのSグループには平均年齢76歳の男声合唱団があった。

人数については色々と考えさせられることがある。最近の傾向としては、全体的に合唱団の構成メンバーがドンドン減っているのである。

昔は大学の合唱団でも100名以上なんていう合唱団はゴロゴロあったが、最近ではドンドンメンバーが少なくなってきて、大学合唱団でも人数の減少は顕著、一般合唱団では10人から15人くらいの合唱団が山のようにある。

ちなみに今年の人数を、プログラム表示で調べると、一番大きな合唱団は総勢92名、一番小さいのは6人。

それにしても、今回の出場は330団体。

一団体あたり、平均15名としても4,950人。平均20名とすると、6,600人。おおよそ5,000人から6,000人の合唱団員がここに集結しているのである。ものすごい規模のイベントなのである。

今年は第74回目なので、ほぼ終戦の年から綿々と続いてきたことになる。

このことを一般市民がどれだけご存知なのだろうか?

もっと多くの一般市民にこの活動を知っていただきたいというのが、僕の切なる願いであるが、そのことはまた別の機会に書かせていただくことにしたい。

 

この東京都合唱祭は、その規模もさることながら、その企画内容というか運営方針が素晴らしいのである。

今回はそのことにテーマを絞って書かせていただく。

 

素晴らしい運営方針はたくさんあるのだが、かねてより敬服し、頭が下がるのは、その開放性というか門戸開放の基本方針。この祭典、少しも排他的、閉鎖的ではないのである。

合唱祭の主催は東京都合唱連盟と朝日新聞社なのだが、この東京都合唱連盟というのが中々立派なのだ。

都内で活動している合唱団は、多くの団体が東京都合唱連盟に加盟しているのだか、もちろん連盟に加盟していない合唱団も数多く存在している。かくいう僕の合唱団、東京フリューゲルも東京都合唱連盟には未加入のままである。連盟に所属しなくても日々の合唱活動には何の支障もないので、加入していない、ただそれだけの単純な理由なのだが、連盟から加入を働きかけられたり、勧められたりすることは全くない。

それでいて、その合唱連盟が主催している合唱祭に、冒頭で申し上げたとおり、僕らは17回連続出場しており、一度も欠場することなく毎年出場継続中なのである。その懐の深さ、広さに敬服せざるを得ない。

 

合唱祭の出場に関しては、東京都合唱連盟に所属している合唱団と僕らのように所蔵していない合唱団とで、何の区別も差別もない。

恒例で5年連続出場を果たす都度、演奏終了後にステージ上で、連盟の幹部から表彰されて、賞状と記念品をプレゼントされる。僕らも過去にら3回も表彰されている格好だ。連盟加盟の有無は全く問題にされない。その包容力と寛大さに驚かされるばかり。

とにかく合唱をやっている団体を分け隔てなく、一堂に集めて、お互いに聴き合って盛り上げよう、そしてこの東京に、更に日本全体に合唱人口を一人でも増やしていこう、その一心で運営しているとか思えないのである。

 

これだけ毎年継続出場し続けると良く分かるのだが、これだけの祭典を運営するのは実に大変なことで、様々な裏方さんがみんなボランティアで頑張り、この大イベントを支えている。弁当は用意してくれているのは指揮者としてステージの袖にいると分かるが、多分ギャランティが出ているとは思えない。詳細は不明だが。

 

指揮者として本番演奏前に袖で待機していると、毎年毎年、昔、同じ合唱団に所属していて大変にお世話になった町田市民合唱団の石館弘國さんが副実行委員長として、舞台裏を仕切っていらっしゃる。毎年、毎年、お目にかかってその都度、温かい声をかけてくださる。

僕らは毎年、規則性なく勝手に希望日を選択しているわけだから、毎年必ず石館さんと舞台袖で顔を合わせるということは、多分、石館さんは毎年の合唱祭開催中、毎年毎年、5日間とか6日間一日も欠かさず、身体を張って舞台裏を支えていらっしゃるわけだ、間違いない。

6日間という期間の長さだけでなく、それぞれの1日は、日によって異なるのだが、大体朝の10時半からスタート、終了するは夜の8時半までである。

それが真夏に6日間!

 

そんなことができるだろうか。失礼ながら、もう決してお若くはないのに、よくぞと毎年毎年、手を合わせて拝みたくなる誘惑に駆られてならない。中々できることではない。

石館さんの裏方での頭の下がるご活躍ぶりは僕が指揮者だからこそ分かることなのだが、それ以外にもこの合唱祭は、多くの連盟に加盟している合唱団員の前向きな善意の志しで運営が成り立っている。このことはもっと知られなければならない。

 

例えば、こんな例。

毎年、出場合唱団に案内係の若いスタッフがお一人付いてくれて、様々な案内をしてくれる。一団体に一人が付いてくれるのである。集合時間に集まった合唱団を、プラカードを掲げて、当日のこの後の流れを分かりやすく説明してくれるのである。リハーサル室への案内、それが終わった後は、更衣室に案内し、最後は客席にまで案内してくれる。演奏が終わり、そのブロックの全ての演奏が終わると、またプラカードを掲げて再登場。今度は逆ルートで再び案内してくれるという至れり尽くせりなのである。今年は若い男性であったが、高校生の女の子だったこともある。

今年で言えば出場合唱団は330団体あったのだから、のべ330人がこの役割を担っていることになる。

そして声を大にして言っておきたいのだが、毎年毎年、案内役のスタッフは、例外なくみんな気持ちのいい実に感じの良いもてなしぶりなのだ。ホスト役に徹してくれている。

それらのスタッフは、みんな合唱連盟に所属の合唱団からボランティアを募ってやってくれているのである。

 

僕たち東京フリューゲルは合唱連盟に加盟していないので、その役割が回ってくることはないのだが、冷静に考えてみると何だか随分と公平性に欠けるようにも思え、少し後ろめたい。

感心するのは、僕たちはこうして17年も連続して出場し、その恩恵を一方的に受けているわけだから、5回連続出場、せめて10回連続出場を果たして、表彰された後で、連盟に加盟してもらえないかと依頼を受けても当然なようにも思えるが、僕らは未だに連盟に未加入で、団として連盟への加入の是非が話題になったことすらない。

もしかしたら、僕らの合唱団のマネージャーのところには勧誘が続いているのかもしれないけれど。少なくても指揮者の僕にはそんな動きは伝わってこない。

 

今日は東京都合唱祭の素晴らしさを、PRすることが目的だ。

話しをまた合唱祭の仕組みに戻そう。

今年で言えば330団体がAからZまで26のグループに組み込まれる。この日程を決定するのもかなり面倒くさいプロセスを踏むことになる。それぞれの合唱団が希望日と希望時間を第6希望くらいまで記入して連盟に提出。各段の代表者やマネージャーが集まって調整するのである。

それぞれのグループは、今年の例で言うと、1グループあたり一番少ないグループで7団体、多いところでは17団体という具合に割り振られる。平均すると1グループあたり12〜13団体だろう。

僕ら東京フリューゲルはSブロックで11団体が同じグループだった。

 

東京都合唱祭の運営方針の最大の特徴は、このグループ内に割り振られた合唱団同士は拘束されること。つまりそれぞれのグループに割り振られた合唱団は、その同じグループに出演する合唱団の演奏は必ずお互いに聴き合うように組まれていること。

多分、全国どこの合唱祭でも同じような仕組みになっていると思うが、これは中々うまいことを考えたものである。

実は、一般のお客さんが少ないことが最大のマイナス点で、これについてはまた別に書かせていただく。

 

したがって、一般のお客さんは少ないとはいうものの、会場には同じグループになった他の合唱団のメンバーが客席に座っており、会場内でお互いの合唱団の演奏を聴き会う仕組みになっているのである。新宿文化センターの大ホールなので、広い会場にわずかではあるが、グループによっては200〜300人位が聴いているという仕組みだ。

 

素晴らしいのは、ただ聴き会うことを義務化させたことではなく、それぞれの合唱団に、同じグループ内の他の合唱団の演奏の感想を相互に書かせるシステムを採用したことだ。これは画期的だと思う。

1合唱団に5枚記入用紙が配られて、同一グループ内の他の合唱団の感想を記入して提出することになっている。

だから、ただ会場内にいてお互いに聴き会うということだけでなく、お互いに合唱団の名前入りで感想を書き会うので、あんまりいい加減に聴いているわけにもいかない。

 

お互いど素人が批評し会うわけだから、あんまり内容の適格性や客観的な批評になりうるかは別にして、これは本当にうまいことを考案したものだと感心してしまう。

17年前に、正確に言うと18年前になるが、僕らが初めて出場した時からこのシステムは存在していたので、かなり長い期間に渡って続いているのだが、かつて合唱界に、相当に賢い人がいたんだなあと敬意を表したい。

 

ハッキリ言って、かなり技術的に問題のある合唱団に対しても、何かしらのいいところを見つけ出して褒めることが一般的なので、これらの感想をまともに受け取るわけにはいかないが、毎年、多くの合唱団がかなり丁寧に心を込めて書いてくれるので、正直言って、本番演奏終了後の相当に楽しみになっているのは間違いのない事実。

 

僕ら東京フリューゲルでは演奏後にほぼ全員が打ち上げに参加して、毎年恒例、一番声の大きな僕が、全ての感想を一枚一枚、全て読み上げて、やんややんやの大喝采となって盛り上がる。ありがたいことだ。

 

それだけではないのだ。この合唱祭はあくまでも合唱祭であってコンクールでも何でもない。演奏の優劣を競う場ではないのだが、これまた東京都合唱連盟に声を大にして感謝したいのは、どのグループにも、日本合唱指揮者協会の会員の指揮者による講評を書いてもらえることだ。

非常に著名な有名な方から、あまり知らない方まで全員が粒ぞろいというわけでもなさそうだが(失礼!)、その道の専門家が演奏について個別に講評を書いてくれるシステムとなっているわけである。これは素晴らしい。

 

どのグループにもそれぞれ8名の講評者、一応先生と呼んでおこう、が配置されていて、全ての先生がもれなく全出場合唱団に対して個別の感想、批評を書いてくれるのである。

 

この先生方の講評はさすがに気になるし、褒めていただいた時にはやはり嬉しく、大いに励みになる。

その流れというかシステムも実にうまくできていて、自分たちの演奏が終わり、拘束義務のある同じグループの演奏が全て終わった後に、更衣室で着替え、これで全て終了。解散ということで、会場の出入り口に降りてくると、その場で事務局から各先生方の講評とグループ内の他の合唱団メンバーによる感想が直ぐに手渡される仕組みとなっている。

その場で直ぐに手渡されるというスピード感が素晴らしい。

だから、それを携えて打ち上げ会場に急ぎ、祝杯をあけながら、先生方の講評と他の合唱団のメンバーの感想を一枚一枚、丁寧に読み上げるなんていう恒例のイベントが可能となるのである。

 

更にそれだけではない。当日の演奏そのものが会場で正式に録音されていて、これが終了後にCDで手渡される仕組みだ。先程の講評や感想と一緒に着替えて降りてくると、セットで渡してくれる仕組み。本当にありがたい。これは活気的なシステムだと絶賛したい。

 

講評共々、合唱団にとって最高のプレゼントとなる。しかも、その日のうちにどころか、更衣を終えて降りてくると、ハイ、どうぞ、というのが本当に素晴らしく、機能的で驚嘆に値する。

 

東京都合唱祭というのは、こういう素晴らしい企画と運営で、多くの合唱団員の善意で、毎年毎年、6日間に及ぶ規模で開催されているのである。

東京都合唱連盟の全ての役員とスタッフに対して、1合唱団員、1合唱指揮者として心からの感謝の意を表したい。

 

僕としては東京都合唱祭のことをもっともっと世の中に知らしめたい。

この合唱界の実に素晴らしい結束力とパワー、愛に満ちたエネルギーを、何かに役立てることはできないだろうかと、いつも考えてしまうのである。