ギンレイで観た全映画を語る5

シリーズ第5回目。

 

さあ、それではギンレイホールで観た全映画の紹介をドンドン進めていきたいと思います。 

と言いながらも、やっぱりギンレイホールのエピソード=トリヴィアに触れないわけにはいきませんね。

 

【エピソード5】

前回、ギンレイホールの番外編としてパンフレットのことを取り上げたのですが、それについて早くも読者からいくつかコメントが寄せられています。今回はこれを紹介しつつ、更に突っ込んでみたいと思います。

 

その読者からのコメント。

先ずその一つは、もう驚き。ギンレイホール同様の映画館それもズバリ名画座のオーナーさんから。信州は塩尻からだ。

ギンレイホールからは学ぶことが大なのでということで、僕の記事を読んでくださっているようだ。

そのオーナーさんからは、

「ギンレイさんより◯◯のほうが、さらに丁寧かも。というか、プログラムに関してはどこも、このくらいきちんと扱っています^_^」とのこと。

こういう反応って、本当に嬉しくてたまらない。

僕もこのことはちゃんと書いてはいる。

>どこの映画館でも不思議なくらいパンフレッ>トは丁寧に扱ってくれるものだが、ギンレイ>ホールでは徹底している。

 

本当にそれはいつも感じていることだ。映画館ではパンフレットはとても丁寧に取り扱う。これはこの業界の掟というか共通のルールなのかも知れない。そのあたりのことも是非とも、映画館のスタッフ側から教えてもらいたいものだ。映画館のスタッフ気質だろうか、それとも本当にルールというかマニュアルでもあるのかな?

 

でも、僕が詳細に書いたあのギンレイホールの取り扱いよりも更に丁寧かも、というのはどんな取り扱いなのか!?どんな丁寧さなんだろうか?とっても興味がある。そんなサービスを是非とも受けてみたい。袋はどうしているんだろうか?

 

もう一つは、僕の古くからの友人からだが、「私はパンフレットは時々買ってみる派だ」と。

ほ〜っ、おもしろい。なるほど、そうですか。

僕は映画のパンフレットは買うか、買わないかどちらかで、気に入った映画だけ買うという人は、中にはいるだろうが、多数派とは思えないと断言してしまった。それに対して時々買う派からの名乗り上げというわけだ。

 

まあ冷静に考えてみればこの派が一番多いのが当然と言えば当然なのだが、どんなに気に入った映画でもパンフレットなどは決して買わないという人がいることは事実。

そして、実は、この見解は僕自身の願望の裏返しなのかもしれないと気がつくのである。

 

僕も、とにかく家の中がCDとブルーレイ、本と楽譜とで脚の踏み場がない状態になっている中で、せめて映画のパンフレットはこれ以上増やしたくない、せめてとにかく映画を観終わって、これは素晴らしい映画だったと思えるものだけ、それだけを購入しようと思っている。つまり僕自身が言うところの少数派になりたいと思っているわけだ。

ところがそこで困るのが、ギンレイホールで観る映画はそのほとんどが素晴らしいものばかりであること。だから結局、全て購入してしまう。せめて、あまり感心しなかった映画のパンフレットは買わないことにしようと決心するものの、前にムーンライトのところで書いたように、その映画に関する僕の感じ方が不十分なのではないか、自分が気がつかない何かがあるのではないか、自分の感性が鈍っていて大切な何かを見落としている。もしかしたらそのヒントがパンフレットの中に書いてあるかもしれない、そう思ってしまうのである。

こう見えて僕はかなり素直な、包容力のある人間なのである(笑)。探究心が強いと言うべきかな。

というわけで、気に入らなければパンフレットは買わないぞ!と決めていても、ギンレイホールではそもそも気に入らないものはそうそうないし、稀に気に入らないものがあっても、パンフレットから何か得ようと思うので、結局は全てのパンフレットを買ってしまうというサイクルの繰り返し。敢えて悪循環とは言いませんが、コレクター地獄です(笑)。

 

いずれにしても、ギンレイホールに通い詰めている限り、僕のパンフレットは今後もずっと増え続けることは必定ということになってしまう。嬉しいような困るような。

 

映画のパンフレットについては、色々な思いが、あるいは色々な思い出がそれぞれの映画ファンにはあることだと思う。

それらを聞かせていただけると嬉しい。

どうかご意見をお聞かせください。

 

さて、このあたりで個別紹介、スタートです。

 

15.2017.9.16〜9.29


◯ 未来よ こんにちは  フランス・ドイツ合作

 監督:ミア・ハンセン=ラブ

 主演:イザベル・ユペール

 

これは少し意表を突かれた映画だった。観終わった後、なあんだと少し落胆させられなくもなかったが、何だかその後でしみじみと静かな幸福感に包み込まれるような映画なのである。

僕はどうしても映画の中に激しいドラマや葛藤を求めてしまいがちだが、この映画はそういう世界とはトンと無縁。肩透かしを食らうほど葛藤や悲劇性はない。

どうしてそんなことを言うかと言うと、この映画は、葛藤や悲劇に近いもので相当に覆い尽くされているからだ。

それにもかかわらず、あくまでも、どこまでも淡々と描いていく。

そのあまり劇的に盛り上がらない描写に歯がゆさのようなものを感じながらも、もしかしたら敢えてそう描いた、こんな生き方をしてみたらどうですか?この人生は、立派な大人になった後でも、辛いことや悲しみに満ち溢れているけれど、あまり深刻に受け止めずに、ありのままに受け入れて、それでもしっかり未来に向かって行こうと考えてみたらどうですか?

優しくそう訴えているように思えてくるのだ。

 

その真髄が理解できると、この映画は人生につまずいた人にとってかけがえのない宝物の一本になる映画なのかもしれない。その意味では、一人でも多くの熟年女性に観てもらいたいものだ。

 

舞台は花の都パリ。主人公のナタリーは高校(リセ)で哲学を教える優秀な教師。夫も同業で2人の子供も無事に成長し、何不自由のない生活を送っている。そんな彼女に次々と辛い出来事が襲いかかってくる。

先ずは夫から離婚を申入れられ、続いて母親の死。仕事の上でも行き詰まり、自分を尊敬し、慕ってくれていた生徒も離れていってしまう。

そんな中年を迎えてからの悲しみと挫折に、傷つきながらも、彼女は決して挫けずにそれらを受け入れ、淡々と生きていく。かなりのショックを受け、憤りを感じつつも、この人生の辛い出来事を受け入れ、怯まない。そして未来を見つめていく。

こう書いてしまうと何だか妙につまらない、説教くさい映画のようになってしまうが、決してそうではない。単なる現状肯定の薄っぺらいドラマではなく、さすがにヒロインは哲学教師だけあって、不幸な出来事の一つひとつに真摯に向かい合い、苦しみ抜く。それでもなお、人生を諦めない。淡々と描かれるのだが、妙に心に残るのだ。

なんと言ってもヒロインを演じるイザベル・ユペールが絶品。この人はフランスの誇る大女優。決してとびきりの美人というわけではなく、さすがに60代半ばになって老いもかなり目立つことは否定できない。でも、ユペールは内面の美しさと輝き、人生経験の豊穣さを感じさせる。映画の中のナタリーと演じるユペールとの幸福なる合体を感じさせずにおかない。

現題のフランス語は、未来とか将来とかこれからとか、そんな意味だ。これだけ人生の辛酸を舐めた彼女がこれからどうやって生きていくのか、その彼女の今後についついエールを送りたくなってしまう。

監督は女性のミア・ハンセン=ラブ。現在、国際的に注目されているフランスの成長株。本作もベルリン国際映画祭で銀熊(監督)賞を受賞。このみずみずしい味わいと清々しさは、やっぱり女性でないと描けないと妙に納得してしまう。

 

◯ マイ ビューティフル ガーデン  イギリス映画

 監督:サイモン・アバウド

 主演:ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ他


僕はイギリスのテレビドラマの「ダウントンアヴィ」の熱心なファンだったので、あの三姉妹の中で一番魅力的だった末娘のシビルを演じたジェシカ・ブラウン・フィンドレイが主演と知って、観たくてたまらなかった。

でも、どうしても仕事の都合がつかず、断念。今でも悔やんでいる。

 

16.2017.9.30〜10.13


◯ 午後8時の訪問者  ベルギー・フランス合作

  監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ

  主演:アデル・エネル、オリヴィエ・ボノー

 

フランス語の映画が続く。

監督はベルギーのダルデンヌ兄弟。日本ではまだまだ熱心な映画ファンにしか知られていないかもしれないが、現在、世界で最も有名な映画監督だ。カンヌ国際映画祭パルムドールを2回、グランプリを1回、監督賞も受賞と、何と5作品連続で主要部門を受賞したという逸材。これはさすがに史上初のことらしい。それなのに日本ではあまり知られていない。かく言う僕もダルデンヌ兄弟の作品は、情報は良く掴んでいるのだが、実際にはほとんど観ておらず、シネフィルとしては恥ずかしい。

 

この午後8時の訪問者はある少女の死亡事件の真相を探ろうという意味では、サスペンス映画と言えるだろうが、娯楽色は全くなく、もうとにかく真面目で誠実な映画。社会派サスペンスと言えるだろう。

将来を嘱望された若き女医が勤務先のクリニックで時間外に診療を求められた少女の診察を拒否してしまうのだが、その少女は翌日変死体となって発見される。

さすがに責任を感じた女医はこの少女の死の真相を、まるで何かに憑かれたように探り始めるのだが。

これはさすがに世界の名匠の作品だ。一歩間違えば、単なる犯人探しで終わってしまうところだが、移民問題と経済的格差などの社会問題が浮かび上がってくる。

そして、更にそれだけではなく、一人の少女の死の真相を探ることが、医師としての生き方、どんな医師を目指すのかという自らの人生の目的を探求する彷徨となっていくあたり、さすがはダルデンヌと唸らざるを得ない。

 

◯ おとなの事情  イタリア映画

 監督:パオロ・ジェノヴェーゼ

 主演:ジュゼッペ・パッティストン他

 

これも仕事が忙しくて、観ることができなかった映画。

 

 

17.2017.10.14〜10.27

 

ハクソー・リッジ  アメリカ・オーストラリア合作映画

  監督:メル・ギブソン

  主演:アンドリュー・ガーフィールド

 

メル・ギブソンによる戦争巨編。メル・ギブソンはあらためて書くまでもなく、アメリカを代表する大スターだが、監督としても超一流でブレイブ・ハートなどの傑作が目白押しだ。

そのギブソンがパッション以来、12年ぶりに再起をかけて撮ったのがこのハクソー・リッジ

太平洋戦争末期、あの沖縄戦の最終局面の大激戦を描いた作品で、これは日本人ならどうしても観なければならない傑作だ。

ハクソー・リッジは沖縄の前田高地のこと。この地で沖縄戦最大の激戦が繰り広げられたのだ。

もちろんアメリカ側の視点で捉えられているが、とにかくその戦闘シーンば度肝を抜くほど凄まじく、痛々しく、こんな激しい肉弾戦が沖縄で実際に行われたんだと実感してもらう必要がある。

 

主人公のアンドリュー・ガーフィールドはあのスコセッシの「沈黙」で一躍有名になった名優。ギンレイホールではよく彼の出演作がかかる。

ここでは、武器を一切身に付けずに戦場に赴き、衛生兵としてあまたの同胞、いや同胞だけではなく敵側の日本兵をも助けた実在の人物を演じる。

 

これは実に観応えのある映画だった。とにかくその凄まじいばかりの戦闘シーンに度肝を抜かれ、言葉を失ってしまう。リアルな戦闘シーンの描写としては、何といってもその後の戦闘シーンを塗り替えてしまったと言われるスピルバーグの「プライベート・ライアン」が有名だが、そのプライベート・ライアンに勝るとも劣らない凄まじさだ。

 

あの激しい戦闘の中にあって一切武器を持たず、一人も殺さず、傷つけず、傷病兵を敵味方問わず救い続けたいうのはにわかに信じられない気がするが、実話というから驚嘆させられる。

ただ、惜しむらくは、軍事法廷で訴えられても武器の携帯を拒否するというのなら、更に踏み込んで、戦争そのものに反対できなかったのかと素朴な疑問がジワジワと込み上げてくるのを抑えることができなかった。

 

もう一つは、話しの本題から外れてしまうが、奥さん役の女優の綺麗なこと。僕は一目見て、この女優にすっかり心を奪われてしまった。テリーサ・パーマー。オーストラリアの新進女優だと言う。何とも美しい!

 

 

パトリオット・デイ  アメリカ映画

  監督:ピーター・バーグ

  主演:マーク・ウォールバーグケヴィン・ベーコン

 

これはあのボストンマラソンでの爆弾テロ事件の顛末を描いた映画。テロ発生に至るまでの経緯と、その後の犯人特定と逮捕に至るまでの地元警官たちの必死の取り組みを描く。

 

かなりハラハラドキドキもさせられて、一気に観てしまうが、ここには被害者としてのアメリカが描かれるだけで、テロリスト側の視点は全く欠落している。

なぜ、こんな卑劣なテロを引き起こさなければならなかったのか?彼らの大義名分は?たとえわずかでもいいから踏み込んでほしかった。アメリカ万歳と言わんばかり。警察官たちの英雄的な命をも顧みない活躍ぶりがあまりにも全面に出すぎて、少し違和感があったことは否めない。

 

18.2017.10.28〜11.10

 

ラ・ラ・ランド  アメリカ映画

 監督:デイミアン・チャゼル

 主演:ライアン・ゴズリングエマ・ストーン 

 

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さあ、ラ・ラ・ランドの登場だ。これはもうアカデミー賞を主要6部門で受賞し、日本でも大ヒットした映画だから、今更、僕が紹介するまでもないだろう。

そもそもギンレイホールで上映しなくてもいいんじゃないのと言う声も出そうだが、僕は大歓迎。何と言ってもこの映画のことは大好きなのだ。

映画界に入るため女優業とシナリオ修行に打ち込む若い女と、ジャズにトコトン入れ込む若手ピアニストの男を描いたミュージカル。僕にとってはそのシチュエーションだけでもう胸が一杯になってしまう。

 

その上、出来上がった映画が、とにかくどこをとってもチャーミングな心浮き立つ作品になっているので、全く非の打ち所がない。

 

これはやっぱり監督のデイミアン・チャゼルのなせる技かなと感嘆してしまう。

チャゼルはこのラ・ラ・ランドの前の「セッション」というビッグバンドのドラマーを描いた映画がものすごかった。僕はこのセッションを観て、圧倒されてしまった。「これはすごい映画。音楽を描いて、こんなドラマと音楽の本質を描き出すなんて、これは半端ない才能の持ち主だ」と、心底、驚かされたのだ。それに続いてのラ・ラ・ランド。チャゼルの才能は傑出している!新たな天才の出現と舌を巻くしかない。

そして、こんな若い才能が出現したことを狂喜している。まだ32歳の若さだ。先が末恐ろしい。

 

エマ・ストーンの魅力はその愛くるしいばかりの可愛らしさと確かな演技力で傑出しているし、それ以上に特筆すべきはライアン・ゴズリングという途方もない才能の出現。ゴズリングはこの映画のためにピアノなんか全く弾けなかったのに、猛練習を繰り返し、ピアノ演奏を習得。実際にあのピアノはゴズリング自身が演奏しているという。ちょっと信じられないのだが、確かな話しのようだ。もうそれだけで脱帽。

 

愛し合う二人は最後に結ばれるのか?映画の最後の最後に、ゴズリングが見せた一瞬の優しい頷きに涙が込み上げる。

ああ、何ていい映画だろうと喜ばずにいられない。錚々たる名作が連なるミュージカル映画の中で、また超弩級の名作が新たに加わったことを声を大にして喜びたい。 

 

チャゼルはこの後、アポロ11号で人類史上初めて月面を歩いたニール・アーモストロングを描いた「ファースト・マン」で初めて宇宙に挑戦。まだ観ていないが楽しみでならない。ギンレイホールで上映してくれるのではないかと密かに期待しているのだが。久保田さん、ダメですか?

 

◯ カフェ・ソサエティ  アメリカ映画

 監督:ウッディ・アレン

 主演:ジェシー・アイゼンバーグ

 

ウッディ・アレンの最新作、かなり評判が良かったので楽しみにしていたが、どうしても観ることができなかった。残念でならない。

この頃は仕事が単に忙しいだけでなく、色々と課題を抱えていたせいで、中々ギンレイホールに通い詰めることができなかった。何とか駆けつけても一本だけ観るのが精一杯で、観ることができなかった映画がなかり目立っている。

 

実質5本しか紹介できなかったのに、7,000字近いってどういうことだ!?

 

続きは次回。どうぞお楽しみに。