稲盛和夫の本を無性に読みたくなった

あるきっかけがあって、稲盛和夫さん(以下、敬称抜きで稲森和夫と表す)の本を無性に読みたくなった

稲森和夫は言うまでもなく、あの京セラの創業者にして会長の稲森和夫である。京セラを立ち上げ、KDDIを創業し、更に経営破綻したあの日本航空(JAL)の奇跡の再建を成し遂げた日本屈指の名経営者である。

JALの再生に大変な興味を持つ

JALの再建というとんでもない一大事業を僅か3年足らずで成し遂げた稲森和夫には以前から関心を持っていたが、それに伴う様々な関連本や、再建の張本人だった稲森和夫の著作の数々は、今まで1冊も読んだことがなかった。

今回、あるきっかけがあって、この大経営者、京セラやKDDIの創業はもとより、高齢になってからの全く経験のない異業種に乗り込んでの、史上空前の経営破綻を引き起こしたJALの奇跡の立て直しに、非常に興味を持った。

これから自分が携わるかもしれないかなり困難を伴うある組織・事業所の改革に向けて、何か参考になるものはないかと、色々と探し求めている中で辿り着いたのがJALの再建であり、稲森和夫だったのである。

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稲森和夫には膨大な著作がある

僕は一度興味を持つと、トコトン極めないと気が済まない凝り性だ。

稲森和夫のどんな本を読むのが一番相応しいのだろうかと調べてみると、それこそ膨大な量の著作がひしめていることが分かった。有名なベストセラーの名前はもちろん知っていたが、まさかこんなにたくさんの著作があるとは迂闊にも知らなかった。

ハードカバー、文庫、そして新書。凄い量だ。

今まで、あまり認識していなかったことが恥ずかしい。

ということで、気を取り直して、早速、稲森和夫の本をチェックし、膨大な著作の中から15冊も買い込んだ

ハードカバー4冊。文庫本9冊、新書本1冊、ちょっと特殊な本1冊。

今回一気に購入した稲盛和夫の本の全貌。全15冊!
今回一気に購入した稲盛和夫の本の全貌。全15冊!
全15冊を立てて撮影すると、こうなる。全てじっくりと読み込みたい。
全15冊を立てて撮影すると、こうなる。全てじっくりと読み込みたい。
上から俯瞰的に撮影するとこうなる。これでも稲盛和夫の本の全体から見ればホンの一部である。
上から俯瞰的に撮影するとこうなる。これでも稲盛和夫の本の全体から見ればホンの一部である。

 

今回は一挙に買い込んだ15冊の本から、真っ先に読了した新書の「新・敬天愛人 ゼロからの挑戦」を紹介する。

これが非常に良かった。最初に読むのにこの1冊が一番いいだろうと判断したのだが、その僕の判断に間違っていなかったようだ。

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改めて稲盛和夫のプロフィール

例によって、いつものように本書に掲載されているプロフィールを紹介しておく。著者のプロフィールは大体、本を開いた扉の部分に掲載されているものだが、この新書では最終ページの奥付けの上に載っている。

稲盛和夫は京セラ、KDDIの創業者として、更に晩年になって経営破綻したJALの再建を成し遂げた比類なき名経営者として知らない人のいない極めて有名な方だ。日本人なら稲盛和夫の名前を聞いたことのない人はいないだろうと思われるが、具体的なプロフィールとなると、意外と詳細は知られていないかもしれない。

というわけで、改めてその経歴を紹介させてもらう。

1932年、鹿児島生まれ。鹿児島大学工学部卒業。59年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。社長、会長を経て、97年より名誉会長を務める。また84年には第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。2001年より最高顧問。2010年日本航空会長就任。2012年より取締役名誉会長。一方、84年には稲森財団を設立すると同時に「京都賞」を創設。「盛和塾」の塾長として、経営者の育成に心血を注ぐ。

この後に著書の紹介がかなり続くが、それは省略させてもらう。

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稲盛和夫のコンパクトな自伝のような本

この新書は巻末の8頁の写真集を含めても221ページしかない薄い本だが、その内容はかなり濃厚で、稲盛和夫の人生と信条、経営哲学のエッセンスがギッシリと凝縮されている。

今回紹介する最初に読んだ稲盛和夫の本「ゼロからの挑戦」
今回紹介する最初に読んだ稲盛和夫の本「ゼロからの挑戦」。
今回紹介した新書の裏表紙。帯のコメントが分かりやすい。
今回紹介した新書の裏表紙。帯のコメントが分かりやすい。

 

いわば稲盛和夫の生涯と功績がコンパクトにまとめられた自伝のような1冊と言って良いだろう。

稲盛和夫の膨大な著作の中から先ず最初に読むべき本として、全体像が俯瞰的に把握できるコンパクトな自伝の価値は限りなく大きい。

僕の選択もズバリ的中した。稲盛和夫の生涯と功績、人生観の全体像を俯瞰的に把握しようとしたら、この新書が本当にベストだと思う。

他著にはない「だ」「である」調が特徴

大量に買い込んだ稲盛和夫の本を確認すると、稲盛和夫はほとんどの著作の中で、「です」「ます」調で書いている。ところがこの「ゼロからの挑戦」は、「だ」「である」調なのである。

僕の手元にある15冊の稲盛和夫の本の中では、唯一のもの。非常に珍しい。

この文体の違いに、稲盛和夫の非常に強い意思というか意気込みをを感じてしまうのだが、いかがだろうか。

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「新・敬天愛人 ゼロからの挑戦」の基本情報 

PHPビジネス新書。(株)PHP研究所発行。2011年11月1日 第1判第1刷発行。僕の手元にある本は、2022年9月27日発行の第11刷である。10年で11刷。ほぼ1年に1刷ずつ印刷が重ねられてきている。かなり継続的に読み継がれていることが分かる。

立てて横から撮影した。薄い新書ではあるが内容な濃厚だ。
立てて横から撮影した。薄い新書ではあるが内容な濃厚だ。

 

ページ数は213ページ。決して厚い本ではない。新書の200ページは標準的か。1ページ当たりの行間はかなり広めで、全体的に余白も多く、直ぐに読めてしまう。

実際に、僕は、その内容がめちゃくちゃ興味深く、おもしろかったこともあって、わずか一日、6~7時間で一気に読み終えた。速読で読んだということは決してなく、かなり丁寧に、稲森さんの言葉を噛みしめるように読んだのだが、それでも7時間足らずだった。

本当に直ぐに読める。それでいて非常に参考になって、役に立つ嬉しい1冊だった。

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原著「敬天愛人」が一新されて発刊

本書が発刊されたのは2012年だが、この本には原著があった。それが1997年に発刊された『敬天愛人』だ。

稲森和夫の経営哲学と経営手法を横糸に、京セラの歴史を縦糸として上梓したものだった。京セラ発展の軌跡をたどりつつ、稲森の思想や哲学、経営手法を俯瞰する書としてかなり読まれたという。

新装版の発刊要請を得て、旧来の本文について、内容やデータを全て見直すとともに、「その後の私の歩み」を加筆することにした。

『敬天愛人』発刊後の15年間に、KDDIの設立や日本航空の再建に携わったことで、本書の半分以上が新原稿となり、全く別の書籍になったと言っても過言ではない、と稲盛自身が「はじめに」で書いている。

そんな経緯からも、本書は稲盛和夫のほぼ全人生を俯瞰するコンパクトな自伝であることが理解してもらえると思う。

巻末のカラー写真集が貴重

213ページしかない本だが、本文が完全に終わった後に、8ページにも及ぶオールカラーの「写真で見る稲盛和夫の経営」が巻末の付録のように付いていて、これが非常に貴重なものだ。この写真を見るだけでも本書を購入する価値があると言ってしまいたくなる。

8ページのカラー写真集。1ページ目は今も稲盛和夫の執務室に掲げられているという西郷南洲(隆盛)の「敬天愛人」の臨書だけが取り上げられている。

1959年、京セラの創業の年に譲り受けたものだ。

2頁目からは、「1950年代」から10年毎に2000年代まで6ページに渡って丁寧なコメントと共に貴重な写真が紹介されている。

最終ページは「近年の活動」だ。一部の古い写真を除いて、基本的には全てカラー。これは本当に貴重なものだ。

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本書の全体構成

本書は全体が先ず3つに分かれ、それぞれが4~6つの章に分かれ、その下に更に細かいチャプターに分かれている。目次はかなり詳細に作られている。

目次の一部を撮影。
目次の一部を撮影。

 

一番下の細かいチャプターは省略させてもらうが、全体の構成を書き出してみる。この本を通じて稲盛和夫が言わんとすること、稲盛和夫が貫いてきた経営理念が、タイトルを見ただけでも伝わってくるようだ。

はじめに
第一部「フィロソフィー」をベースにする
  ー稲盛和夫の経営ー
 1 「フィロソフィー」が発展をもたらす
 2 「人の心」をベースにする経営
 3 原理原則を貫く経営
 4 お客様のニーズに応える経営
 5 未来へ挑戦する創造的経営
 6 アメーバ経営と時間当り採算制度

第二部「フィロソフィー」の根底にあるもの1
  ー稲盛和夫の思想ー
 1 人生の方程式
 2 心に思った通りの現象が現れる
 3 思いやる心
 4「情けは人のためならず」

第三部「フィロソフィー」の根底にあるもの2
  ー稲盛和夫の思想ー
 1 動機善なりや、私心なかりしか
 2 世のため人のために尽くす
 3 心を高める、経営を伸ばす
 4 フィロソフィで会社は甦るー日本航空再建に携わって

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「敬天愛人」とは何か?

これはかの西郷隆盛が唱えた言葉としてあまりにも有名だ。元々は明治の啓蒙思想家、中村正直の造語であったが、西郷隆盛の座右の銘であり、西郷隆盛の遺訓集である「南洲翁遺訓」の二十五条に記されている。

本書の例の写真集の1ページ目に、稲盛和夫の解説があるので、引用させてもらう。

「天は道理であり、道理を守ることが敬天の意味であり、人は皆自分の同胞であり、仁の心をもって衆を愛することが愛人の意味である。京セラの社是でもある」

巻末のオールカラーの写真集の1ページ目。敬天愛人の臨書。
巻末のオールカラーの写真集の1ページ目。敬天愛人の臨書。

 

稲盛和夫は西郷隆盛を尊敬しており、西郷の「南洲翁遺訓」にはリーダーのあるべき姿が語り尽くされているとして、稲森の人生感や、経営の拠り所としてとらえていた。

なお、稲盛和夫は西郷隆盛と同郷の薩摩(鹿児島県)の出身。何と西郷隆盛や大久保利通の生家とも近い生れだという。

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稲盛和夫が繰り返し強調すること

本書の中で稲盛和夫が繰り返し強調することがいくつかある。詳しくは実際に本書を手に取って、稲盛和夫自身の生の言葉をご自身で直接読んでいただきたいが、キーワードしていくつか紹介しておこう。

何と言っても最も重要なものは「フィロソフィー」である。もちろん哲学のことで、稲盛和夫が最も大切にしている経営哲学だ。

それを稲盛和夫自身が社員と一緒になって一つひとつ構築してきた。

「京セラフィロソフィー」のことは良く知られているが、「JALフィロソフィー」など関わる全ての会社でフィロソフィの構築に情熱を傾ける。そのフィロソフィの根底にあるものが本書に縷々書かれている。

それが稲盛が主張する人生・仕事の結果として示される「成功の方程式」だ。これは極めて興味深く、確かにこのとおりに進めれば、人生も会社も成功するに違いないという非常に分かりやすい考え方である。

新書のカバーの扉部分に稲盛和夫の最も大切な「成功の方程式」が掲載されている。
新書のカバーの扉部分に稲盛和夫が最も大切にしている「成功の方程式」が掲載されている。
これが新書のカバーの全体像。
これが新書のカバーの全体像。

 

そしてつくづく凄いなと圧倒されてれしまうのは、そのあまりにも私心がないこと。稲盛和夫という人は、他にはちょっと居ないような人格者であり、求道者と呼ぶべき人である。

本書の目次のタイトルにも出てくる「人の心」をベースにする経営というのが徹底している。

「動機の良し悪し」「私心のあるなし」「世のため、人のため」「心を高める」云々。

取りようによっては、精神訓話のようにもとられてしまうのだが、稲盛和夫という人は生涯を通じて現実にそのように貫き、その目的のために誰にも負けない努力をひたすら続けてきた人だった。

「この人のように生きてみたい」

僕のような凡人には到底真似ができないと、ただひたすら眩しく思えてしまう雲の上の存在なのだが、たとえわずかでも近づきたいそうありたいと思わせる圧倒的な人間的な魅力に満ち溢れている。

「この人のように生きてみたい」。そう思わずにはいられなくなってしまう。

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稲盛和夫の人生観、経営哲学が満載

薄い新書ながらも、実に中身の濃い貴重な一冊だ。

この最初に読んだ稲盛和夫の本が、稲盛和夫という大変な人格者にして稀代の名経営者の哲学、経営理念のエッセンスを知るに、これ以上の本があるとは思えないかけがえのない1冊だと確信している。

僕と同様に、稲盛和夫という稀代の経営者に関心を持ちながらも、実際に稲森の本を読んだことがない、あるいは稲森の経営手法を具体的には知らないという人は、是非とも本書を読んでいただければと強く推薦したい。「経営と人生のバイブル」になるに違いない

僕は、この1冊を読んですっかり稲盛和夫に魅了され彼の著作を片っ端から読んでみようと決意も新たにした

声を大にしてお勧めしたい。直ぐに読めてしまう点もありがたい。

 

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