<前編>⑯からの続き
目 次
④調整力
説得力と交渉力、ネゴシエーションと重なる部分もあるが、病院という組織と職場では、説得力、交渉力以上に重要で不可欠なスキルとなるのは、この調整力かもしれない。
シリーズ⑮番の記事と一部と重複するが、
事務長職の最も時間とエネルギーを費やす業務は病院内の各種問題の調整役と問題解決だ。日々これに追われていると言っても過言ではない。
病院という職場は一般の事業所とはかなり異なる特殊な組織であり、極めてガバナンスが弱い。「病院としてこう決めたことだからこうしてほしい」、「こうやってほしい」といくら言っても、医療職、特に医師には通じないことが多いし、動いてもくれない。
そこを実際に動かすには関係者に対しての強力かつ丁寧な調整が不可欠で、これが事務局長の最大の業務となる。
非常に大きな問題からごく小さな問題まで、その全てに事務局長が直々関わって問題解決に向けて動く必要がある。そのためにも毎日のラウンドを繰り返し、医療現場に足を運び、多職種とのコミュニケーションと情報収集に努めているわけだ。
その双方の調整に必要になる基礎能力が説得力と交渉力ということになってくる。
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⑤実行力・行動力
病院の事務長職は、何にも増して行動の人であることが求められる。行動して実行する人、事務長職自身がそうでないと、病院の職員、特に医師を筆頭とする医療職は付いてきてくれない。
色々と考えて、大切なことを決断し、病院長始めたくさんの職員を説得しても、行動が伴わないと相手にされない。
とにかく事務長職は、部屋になんか閉じ籠っていないで、常に病院中を歩き回り、病院内に何かあれば真っ先に駆け付けて、必要な行動を起こさなければならない。
新しいことを提案し、それが実現できるようにあっちこっちを駆けずり回って、実行と実現に漕ぎ付けさせないとならないのである。
呼びかけるだけでなく事務長職自ら率先垂範することも必要になってくる。
正式な手続きを踏んで病院として決定したことでも、実際には中々動いてくれないのが病院という職場の厄介なところだ。
部屋の中に籠っていて、「レッセフェール」、「なすに任せよ」では、全く職員は動かない。職員が実際に動いてくれなければ、事務長職の目論見は決して実ることはない、と肝に銘じるべきだ。
加えて、文章力が必要
事務長職に文章力が必要となることは言うまでもない。自ら考え出した新たな改革案や企画案を説得するに当たっては、病院長に対してはもちろん、病院の幹部、そもそも自分の周りに居てくれる事務職に対しても、先ずは文章にまとめて、それを使って説得したり、交渉したりすることは当然のことだ。
自らの改革案、企画案、問題解決の手法を、誰にも分かるように文章にまとめる能力はどうしてもほしい。自らの考えを簡潔かつ分かり易くまとめることも極めて重要なスキルと考え、日頃からの修練を怠らないこと。
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見て考えて決断、書いて話して説得、行動する
要するに、病院の事務長職の理想的な姿はこうなると僕は考えている。
病院の生き残りが現実の問題として急浮上している現代の病院事務長職に求められる理想的な姿である。
病院をもっと良くするために、経営改善を実現させ、職員の意識改革を含め、あらゆる改革を進めるに当たり、
病院の現場を十分に観察した上で、良く考えて決断し、自らの考えを文章にまとめ、それに基づいて職員に説得と交渉を繰り返し、自ら先頭に立って実行する行動の人であること。
こんなことになろうか。
何だかスーパーマンのようで、中々この全てを全うできる人はそうはいないと思うが、やる気のある事務長職はここを目指して、日々研鑽を積んでほしい。
僕は約40年間この医療業界に身を置いて、様々な事務長職を数え切れないほど見てきたが、中には与えられた事務長室に籠り切ったままで、病院内の現場には全く姿を現さず、会義等でも何も発言しない事務長職も何人か見てきた。
そんな事務長職はいる意味がない。思い当たるなら早急に改めてほしいし、これから事務長職を目指す若い事務職員にあっては、どうかこれらのスキルと能力を確実に身に付けていってほしいと強く願わずにいられない。
なお、念のために申し上げておくと、かく言う僕がこれら全てのスキルと能力を身に付けているというわけでは決してないことは、言うまでもないことだ。
元より非力にして微力。だが、これを目指して長い間、ずっと自分なりに努力を続けてきたことだけは事実とだけ言っておきたい。
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最後にものをいうのは粘り強さか
絶対に成し遂げるという不退転の決意と粘り強さが最後にものを言う。この粘り強さこそ、事務長職の最大の武器かもしれない。
自分が考えに考え抜いた改革のへの取り組みと決意、様々な壁と障害に見舞われても、決して諦めることなく、最後まで粘って、粘って、実現させる。
この「粘り強さ」を持ち合わせているかどうかが、結果を出せるかどうか、目標を達成できるかどうか、もっといい病院にできるかどうか、その全てが決まってくる。
この粘り強さというのは、事務長職に求められる様々なスキルと能力の根底にあるものだ。「逆境の強さ」と言ってもいいかもしれない。
粘り強く考え抜いて、粘り強く説得して、粘り強く実行する。最も重要な能力はこの決してへこたれない粘り強さと言えるかもしれない。きっとそうに違いない。
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現場の職員を叱咤激励し、動かすこと
説得力、交渉力と重なるが、それらの実りを確実なものとするためにも、一番重要で、日頃から意識しておいてほしいことは、病院内の職員、スタッフと日頃から親しくなっておくことだ。
別に全員と友達になる必要はない。大きな病院となると職員やスタッフで総勢1,000人を超えることも珍しくない。1,500~2,000人も職員がいる病院での事務長職の経験もあるが、とにかく意識して職員、スタッフを叱咤激励して、その中に入っていくこと。これが必要になってくる。。
そのために不可欠なのが現場を知ること
そのために僕が毎日欠かさず実践していたのが、例のラウンドなのである。
ラウンドの目的と重要性についてはこのシリーズの⑫の記事で詳細に書いているので、詳しくはそちらを読んでいただきたいが、医療の現場に日々足を運んで、挨拶し、謝意を述べて慰労しながら、現場をしっかり自身の目で観察することだ。
そうすることによって、自分が働く病院の病院のいいところも悪いところも見えて来る。強みと弱みが分かってくる。現場にはありとあらゆる情報が転がっている。
そして職員と親しくなるのもこのラウンドを通じてしかあり得ない。職員を動かそうとしたら、これが大きな財産となってくる。
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嫌われることを怖れずに
一方で、事務長職は病院職員に嫌われることを怖れてはならない。経営を改善させるためにはボーナスを下げたり、手当を削ったり、場合によっては給与を下げたりする必要があるかもしれない。
極端な場合には、リストラに踏み込むことだってあるかもしれない。病院そのものを存続させ、地域医療と職員の雇用を守るためには、そんな荒療治だってないとは言い切れない。
それを怖れていては、事務長職は失格だ。
したがって、事務長職というものは病院の職員の中で最も嫌われ、拒絶されかねない存在だ。それでもその改革の必要性を職員に誠実に説得していくしかない。
理解は得られなかった場合でも、現場の職員を大切にしていた、決して職員をないがしろにはしていなかった、そうは思われたい。
時には職員の嫌がること、拒絶することにも断固実行していく必要もある。職員から嫌われることも覚悟するしかない。
患者と職員をトコトン守る
僕はBSC(バランススコアカード)には拘っている。
そのBSCに求められる「患者の視点」から導き出される「患者満足度」と、「成長と学習の視点」(僕は「人材と変革の視点」と改称)から導き出される「職員満足度」。このいずれも非常に大切にしている。
ハッキリと言ってしまえば、僕が事務長職として病院で働く目的と夢は、患者を幸福にし、働く職員も幸福にすることだ。これに尽きる。これ以外には何もない。
したがって、僕は病院事務長職として、どこの病院でも患者と職員を守るために尽力してきたつもりだ。
どうか日本全国、全ての病院事務長職は、患者と職員を守るために持てる力の全てを発揮してほしい。患者と職員の満足度を向上させ、幸福になることを何としても実現してほしいと、強く望まずにいられない。
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最後は病院を守ることに集約される
そのための最低限の絶対条件は、その病院が地域に存続していくことだ。
病院が潰れてしまったら、経営破綻してしまったら、患者の幸福も職員の幸福もない。全てが水泡に帰してしまう。
どうしても病院が存続していく必要がある。経営を安定させることも当然必要になってくる。そのために「病院事務長職は何ができるのか?」「何をしなければならないのか?」
その答え探しが正に病院の事務長職の仕事だ。
それを僕は、いつもこう言っている。「病気に罹った病院を救う処方箋を書く」。

これが病院事務長職の究極的な最終目的となる。僕はそう信じているが、どうだろうか?
自治体病院に限らず、全国の病院で現に事務長職を務めている方、更に事務長職を目指して日々奮闘している若い事務職の考えを、是非とも聞かせてほしいものだ。
もちろん、事務長職に限らず、病院で勤務している各種医療職のご意見も聞かせてほしい。
このブログの記事を通じて様々な意見交換ができればこれ以上嬉しいことはない。