目 次
事務長とは一体どういう人?
「病院再生への処方箋 自治体病院の病巣を斬る!」と称して、一気に15本を配信してきました。そのうちの11本は、大変な問題を抱えていた某自治体病院に「私が新たに導入した取り組み」についての紹介と解説でした。
私がその自治体病院で事務長職としての4年間、どんな取り組みに邁進してきたのかを縷々書き連ねてきたわけですが、それらはいずれも事務長職として病院内に導入してきた取り組み、仕組みだったわけです。
それらを通じて見えてくるもの、病院の事務長職という職制は病院内でどういう役割を果たし、何が求められているのか?
その辺りについて、細かい各論を離れて、今回はもっと抽象的に探ってみたいと考えています。病院の事務長職には何が求められ、どうあるべきなのか?
これは自治体病院に限った話しでは決してありません。どんな組織形態であっても、病院の事務長職に求められる役割は全く変わらないと考えています。
病院における「求められる事務長職の姿。あるべき姿」の考察です。
事務長?事務部長?それとも事務局長?
なお、念のため改めて触れておきますが、事務長?事務部長?事務局長?という呼称の問題です。
言うまでもなくこれらは全く一緒だということになります。普通は「事務長」と呼ばれていることが多いと思いますが、その病院の組織がどうなっているのか?それによって変わってきます。
事務員がいる部署をまとめて、「部」になっていれば「事務部長」であり、「局」になっていれば「事務局長」となります。非常に単純な問題です。
病床数も多く、規模の大きな病院にあっては、事務部長、事務局長と呼ばれることが多いと思われますが、小さな病院でも局長、部長はあり得ますので、一概に断定はできません。
これは組織図次第。そこで、それらのどれでも当てはまるように、私は「事務長職」という言葉をこの一連の記事では使ってきました。
ちなみに、私が今まで事務長職を務めてきた病院は6カ所(6病院)あります。その中で、「事務部長」は2病院、「事務局長」は2病院、「事務長」は2病院で、きれいに3等分となっています。
いずれにしても呼称によって果たすべき役割が変わることはありません。ここでは「事務長職」という総称を使わせてもらうことにします。
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事務長職の果たすべき役割
一口で言えば、病院長と並ぶ病院経営の責任者的な役割を担っていることになります。医者である病院長は医療の中身について全責任を負いますが、赤字黒字といった経営面の責任は主に事務長職が担うというのが日本の病院の一般的な姿となっています。
病院内のありとあらゆることが、最終的には経営的な数字となって表れることになりますので、事務長職が関わる業務キャパは想像を絶するくらい広く、かつ深いものとなります。
業務内容は直接の医療行為を除く全て
簡単に言ってしまえば、医療そのものの中身、医者やそれを補助する薬剤師や各種コメディカル、看護業務を担う看護師など専門的な医療職が担う医療に直結するもの以外の全てが、事務長職の業務対象となります。
医療や看護業務そのものを担うことはもちろんできないということは言うまでもないことですが、その医療や看護業務の中身についても、実は深く関わっているのです。医療の質を如何に向上させ、万が一の事故の際に責任的な立場で動かなければならないことも、全て事務長職の業務でなります。
本当に病院内のありとあらゆることに事務長職は関わります、それも深く関わります。
病院内で何か問題が起きた時に、それをいち早く把握し、病院長に報告し、その対策を考え、考えた案を実行に移すこと、これらは全て事務長職の当然の業務となります。
病院長の補佐役などという当たり前過ぎることは、敢えて書きません。
ひどく忙しく、気の休まることがほとんどありません。
そもそも優秀な医師の確保も事務長職の仕事の一環に他ならないのですから、病院内でこれほど重要かつ不可欠な役割を担っている職員はいないと、(密かに)自負しているところです。
「病気の病院そのものを救う」のが責務
それを捉えて、私は事務長職とそれを支える事務職は、病院そのものを救うのが仕事、「病気に罹った病院そのものを救う」のが事務長職の最も重要な仕事だと公言してきました。
病気を治して患者を救うのは医者ですが、事務職は病院そのものを救う処方箋を書く役割を担っているというのが私の信念なのです。
事務長職の個別の仕事を書き始めるとキリがありません。いずれどこかで体系的にまとめてみたいと考えていますが、今回は少し精神的な取り組み姿勢、あるいは心構え的なことに限定して、書いてみることにします。
精神訓話的なことになりかねないのですが、これがやっぱり重要だと信じています。
事務長職の実力が病院の命運を決める!?
事務長職が担う業務と役割は非常に広く、深いのですが、それをこなすためには様々なスキルと能力が必要となってきます。
かつてのように診療報酬が改定される度に大幅に上昇し、左団扇で済んだ時代ならいざ知らず、現在のように病院の経営が非常に厳しく困難を強いられる中にあって、正に事務長職の手腕が今ほど試されることはありません。
幸か不幸か事務長職の実力云々によって、その病院の命運が分かれかねない時代がやってきてしまったのです。
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必要とされる様々なスキルと能力
病院の事務長職に求められるスキルと能力を検証していくことにします。以下のような様々なスキルと能力が必要になってくると私は考えています。
①思考力(熟考力)・・・考える力
②決断力(判断力)・・・決める力、判断し決断をくだす力
③説得力・交渉力(ネゴシエーション)・・・相手を説得し、交渉する力
④調整力・・・利害が対立する相手の間に入って調整し、双方を納得させること
⑤実行力・行動力・・・決めたことを実行し、自ら行動を起こすこと
○文章力・・・自分の考え、決断内容を文章にできる力

①思考力(熟考力)
最も重要なのが、考える力だと確信しています。
例の病院内のラウンドなどによって病院内を隅から隅まで歩き回り、現場に頻繁に顔を出して、自分の目で良く観察すると共に所属長や若い職員たちと意見交換するなどして、この病院のどこに問題と課題とあって、どう変えていくことが必要なのか、どんな改革が求められているのか、良く考えるのです。
ポイントは、現在の病院の課題と問題点を見いだして、あるべき理想の病院にするためには、どこをどうしなければならないのか!?どこにメスを入れて、膿を出すのか?どうやって改革を進めていくのか?
それを見極め、対策(対応策)を考えることです。
それを徹底的に考える必要があります。考えて考えて考え抜くことが必要なのです。
②決断力(判断力)
次に必要になるのが、決断力です。病院を良くするために○○しなければならないとその対応策を考えたら、「そうだ!そうしよう、それを進めよう!」と決断しなければならないのです。
色々と考えて頭の中では色々な改革のプランができたとしても、頭でっかちで、そこから先に進めないということがままありますし、そういうタイプの人もいますが、病院の事務長職として強く求められるのは、その考え抜いたプランや取り組みを、実際にやろうと強く決断することなのです。
③説得力・交渉力(ネゴシエーション)
説得力と交渉力は事務長職にとって実際に最も必要とされるスキルと能力かもしれません。
これは病院内の様々な場面で常に必要となってきます。
先ずは、病院の改革の必要性を痛感し、ある取り組み、改革を進めようと決断した途端に、説得力と交渉力が必要になってくることに注目です。
事務長職の果たすべき役割は極めて大きいのですが、一人では何もできないということは自覚する必要があります。事務長職一人では全く何もできないというのが病院という職場なのです。
病院という組織には医師といういわば「特権階級」がいて、この医師を敵に回しては何もできません。いや医師だけではありません。薬剤師、各種コメディカル、そして看護職という大集団を抱えています。
病院職員のほぼ全てといっても過言ではないこれら医療職を説得し、意識改革を促し、自身の考える改革を理解させ、共感させなければ何も進みません。
先ずは病院長の説得から
そこでこの一連の記事で繰り返し書いてきたように、病院の最高責任者である病院長の理解と信頼が不可欠となり、個別の案件については病院長の了解とお墨付きが絶対に必要となってくるのです。
そこで事務長職の説得力と交渉力は、先ずは病院長に対して試されることになります。
事務長職が必要と考えた改革、病院内でこういう改革を進めようと決断した内容を、真っ先に病院長に必要性を訴えて、その了解とお墨付きを得る必要があるわけです。
したがいまして、事務長職の説得と交渉の最大のお相手は、他ならぬ病院長ということになります。
病院長の了解とお墨付きを得られない改革案、企画案は絶対に実行に移すことはできません。どうしても病院長の了解とバックアップが必要となります。
この病院長のお墨付きを武器にして、分かりやすく言うと水戸黄門の「印籠」として、病院内の様々な医療職と交渉を始めることになるわけです。
説得力と交渉力の違いと使い分け
説得力と交渉力は別物で、交渉するに当たって説得が不可欠となってきます。私の考えでは、異論があるかもしれませんが、先ずは説得を試みて、うまく説得できないなら交渉を進める、そんな流れになると思います。説得と交渉の微妙な使い分け、場合によっては融合が必要になってきます。
もっと病院の実態と具体的な場面を踏まえて言いますと、一般の職員に対しては、医師であろうとどんな医療職であろうと、改革などの必要性を説得し、納得することになります。
一方で、事務長職には労務対策というちょっと厄介な重大業務があり、労働組合との交渉ではまさしく交渉力の手腕が必要となってくるのです。
<後編>⑰に続きます。
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