こんな本が存在していることに驚嘆!

先日、久しぶりに御茶ノ水駅前の丸善で新刊本を中心にぶらぶらと物色していたところ、この本が3、4冊平積みにされていた。

これは一体どういう本なんだ?と手にして中を確認すると、著名な経営学者の経営戦略論をマンガで非常に分かりやすく解説してあった。A4サイズの大型の本で、しかも相当に分厚い本。ところが、中はマンガなのである。

僕も良く知っている有名なドラッカーや、バランススコアカード(BSC)の生みの親であるキャプランやノートンも載っていてニンマリ。すっかり親近感を持った。

真っ白な紙質も気に入って、即座に購入。ほとんど衝動買いである。

この大判の厚い本(マンガ)にわざわざブックカバーまで付けてもらって、早速読み始めた。

紹介した本の表紙の写真
表紙の写真。この表紙の色合いとデザイン。僕は結構気に入っている。
紹介した本の裏表紙の写真
こちらが裏表紙。マンガとはいいながら、かなり格調が高いのだ。

 

これが滅法おもしろい。マンガだからと侮ってはならない。誤解があってはならないが、これは子供向きに書かれたものではなく、もちろん大人のための本で、経営学やマネジメントに詳しい人が読んでも充分に耐え得る内容となっている

むしろ思考と頭の中を整理するためにも、経営学や経営戦略に詳しい人に読んでもらった方が相応しい本であることが判明した。

これは非常に良く考え抜かれた頗る真面目な本で、こんな本が存在することに大いに驚嘆してしまったのである。

分厚いが、マンガが中心なのでスラスラ読める

内容はいたって真面目な経営学と経営戦略の歴史そのもの。そう言うといかにも堅苦しいおもしろみのない本だと思われるかもしれないが、そこはマンガである。難しい話も驚くほどスラスラと読めてしまう

あらかじめハッキリとさせておくと、マンガとは言っても本全体が全てマンガで書かれているわけではない。メインはマンガであるが、マンガではない普通の文章で書かれた部分もかなり多い。

つまりマンガ部分と文章による解説部分のハイブリットで作られている。この点がポイントとなる。

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「マンガ 経営戦略全史〔 新装合本版〕」の基本情報

2023年1月18日 1版1刷。
発行:日経BP日本経済新聞出版 
発売:日経BPマーケティング

ということで、まだ今年の年明けに出版されたばかりの本なのである。僕が御茶ノ水の丸善で平積みの本書をたまたま手に取ったのは、偶然ながらも出版され店頭に並んだ直後だったようだ。

すごいタイミング!

但し、注意してほしいのは、タイトルからもお分かりいただけるように、その本はシリーズ累計30万部のベストセラーを一冊に合本したものである。

マンガ 経営戦略全史「確立篇」と「革新篇」の2冊の合本。

元々はマンガではなく、2013年4月に発刊された「経営戦略全史」を元に、「確立篇」「革新篇」の2分冊でマンガ化されたものだ。それが今回、合本されたというわけである。

著書は三谷宏治。シナリオは星井博文。画つまりマンガは飛高翔となっている。

紹介した本の表紙のカバーを外して、本体とカバー扉の解説部分が読めるように撮影した写真
本の表紙のカバーを外して、本体とカバー扉の解説部分が読めるように撮影した。かなり格調が高い作り、装丁となっている。

ページ数と全体の構成等

総ページ数は、484ページ。その後に著者略歴など数ページあり。かなり厚い本である。分厚いと言ってもいい。

紹介した本を立てて撮影した写真
本書を立てるとこんな感じになる。しっかり分厚い。

 

全体は9章からなり、それに「はじめに」「年表」「まとめ」「主要人物」「おわりに」などが加わる構成。理解を促し、この本にもっと興味を持っていただくために、各章の内容など目次を示しておきたい。

はじめに
年表
第1章 近代マネジメントの3つの源流
第2章 近代マネジメントの創世
第3章 ポジショニング派の大発展
第4章 ケイパビリティ派の群雄割拠
第5章 ポジショニングとケイパビリティの統合と整合
第6章 21世紀の経営環境と戦略諸論
第7章 最後の答え「アダプティブ戦略」
終 章 2013〜23年の世界と経営戦略論
補 筆 大逆転のための「 B3Cフレームワーク」
まとめ 経営戦略という名の登山
主要人物(登場順)
おわりに

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具体的にはどんな展開?

こんな目次となっているが、それぞれの章の内容は、著名な経営学者と彼らが唱えた経営戦略の紹介である。その経営学者は50名。

つまりこの本は全史となっているように著名な経営学者が主張した経営戦略とその軌跡と盛衰を描いた歴史書であり、併せて主要な経営戦略のエッセンスも解説されている。

経営学者と彼らが主張した経営戦略の、ちょうど100年の変遷を紹介した本ということになる。

各章には「巨人たちの午後」というコラムのようなものがある。50人の経営学の巨人たちの中でも、特に大きな存在であった2人あるいは3人による架空の対話である。

記事の中で触れた「巨人たちの午後」の一例。本書からの写真
「巨人たちの午後」の一例。こんな感じの想定対話となっているが、これが非常に楽しく、かつ参考になる。

 

これがめちゃくちゃおもしろくて、参考になる。読み応え十分だ。

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著者の三谷宏治について

この人のことは僕は全く知らなかった。ここは例によって、本書の中に掲載されている略歴をそのまま引用させていただく。

実は、本書には2種類の略歴が載っている。こんなことは珍しい。もちろん内容に違いがあるはずもない。カバーの裏扉にあるものは簡略化され、事実の列挙だけ。本書の最終ページにある著者略歴の方は文章化されていて、かなり長いのだが、分かりやすい。

というわけで、少し長くなるが、こちらを引用させていただく。

◎ 1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業後、19年半、ボストン コンサルティング グループ、アクセンチュアで経営戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア戦略グループ統括。途中、INSEAD(仏フォンテーヌブロー校)でMBA修了。

◎ 仕事と並行して28歳頃から社会人教育に携わり始め、32歳からグロービスで「経営戦略」などの講師を務める。06年から教育の世界に転じ、地元小学校でのPTA会長を経て、08年からKIT(金沢工業大学)虎ノ門大学院大学院教授を務める。同時に、「決める力」「生きる力」をテーマにした授業や講演で全国を飛び回り、年間1万人以上の子ども・保護者・教員・社会人に接している。現在、KIT虎ノ門大学院大学院教授のほかに、早稲田大学ビジネススクール、女子栄養大学で客員教授、放課後NPOアフタースクール、NPO法人3keysで理事、永平寺ふるさと大使を務める。

◎ 著書については、裏扉から引用。

『経営戦略全史』はビジネス書賞2冠。『ビジネスモデル全史』『新しい経営学』の他に、『オリエント 東西の戦略史と現代経営論』『戦略読書〔増補版〕』『戦略子育て』『お手伝い至上主義!』なども。

かなり長い略歴だ(笑)。 

経営戦略のプロフェッショナルだということが良く分かる。本書の中にも頻出するボストンコンサルティンググループで長期に渡って勤務しており、この世界の第一人者と言ってもいいだろう。

非常に優秀にしてユニークな方のようだ。

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企業と組織を如何に発展させるのか、それが経営戦略

繰り返しになるが、この本は経営戦略を考え、研究した著名な学者や企業家50人取り上げ、それぞれの経営戦略の概要と軌跡を紹介したものである。

経営学あるいは経営戦略と言っても、今一つハッキリしないかもしれない。

企業や組織が如何にあるべきか、それが成長していくためにはどうしていかなければならないのか?

簡単に言えば、どうやったら会社が儲かって発展していくのか。ということに尽きてしまうが、それは必ずしも営利を目的とした会社だけに限らず、どんな組織にも当てはまるもの。

病院経営も全く変わらない

僕の職場である病院の経営にも、もちろん当てはまる。
僕の仕事は病院の経営を安定させ、改革を推し進め、利用者である患者と職員に如何に満してもらうか、そのために病院をどう舵取りし、変革させていかなければならないか、それを考え、実行することにある。

まさに経営戦略そのものが僕の仕事と言っても、何ら問題ない。全くそのとおり。

つまり、僕のような病院の事務長職(事務長・事務部長・事務局長など呼称は様々)にあっても、経営戦略は、病院の生き残りをかけた最も重大な業務となる。

民間企業と何ら変わることはない。

それに少しでも役立てようと、コッターや森岡剛の本を読みまくっているわけだ。

その点からすると、このマンガ経営戦略全史は、僕の仕事に直結する参考書とも言える貴重な本なのである。ヒントが無尽蔵にありそうだ。

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経営戦略はどんな組織にとっても最大の課題

経営戦略はかなりおもしろい。金儲けのための手段だと思うと興醒めだが、自らが作り上げたサービスを、如何に多くの方に知ってもらって、利用してもらうか

それに尽きるので、これは奥が深く、ありとあらゆるサービス業と製造業にとって、極めて重要な課題なのである。およそあらゆる組織にとっての課題とも断言できる。

どうやって自社のサービスと製品を売り込むのか?その手段と方法を徹底的に考えるわけだ。

繰り返すが、病院も全く一緒。どうやって自分の病院の良さをPRし、患者、特に入院患者を集めるのか?

入院患者を集めることができれば、病院の経営は安定し、病院の生き残りが果たされ、患者の命も救われることになる。

その経営戦略を巡っては、様々な考え方がある。

経営戦略の2つの大きな潮流

経営戦略には歴史的に2つの大きな潮流があり、この2つの対立と統合が長く続いている。三谷は本書の中で「百年戦争」だという。

「ポジショニング派」「ケイパビリティ派」である。その本質だけ簡潔に説明しておく。

ポジショニング派は「外部環境が大事。儲かる市場で儲かる立場を占めれば勝てる」と断じる。

一方で、ケイパビリティ派は「内部環境が大事。自社の強みがあるところで戦えば勝てる」と論じ、組織、ヒト、プロセスの重要性を説く。

この2つの考え方の対立の根は深く、ポジショニング派は「定量的分析」を旨とし、「定量的分析や定型的計画プロセスで経営戦略は理解でき、解決できる」と主張。

ケイパビリティ派は「人間的議論」を展開し、「企業活動は人間的側面が重く、定量的分析には馴染まず、定性的議論が必要」と考える。「優れたリーダーシップに点数はつけられない」「組織の柔軟性を数字にはできない」などと主張。

それぞれの主張は至極ごもっとも。それでは両者を合わせればいいのでは、という主張が出てくるのは当然だ。

更に今日では、今までのポジショニングもケイパビリティも、あっという間に陳腐化する時代を迎え、新たな発想で考える「アダプティブ主義」が登場してくる。

それがどんな考え方なのか。それはどうか実際に本書を手に取って、読んでいただきたい。
マンガで分かりやすく解説してくれる。

これらの戦略の盛衰・興亡は何ともおもしろい。

読んでいてワクワクドキドキさせられるし、では、うちの病院ではそれらを踏まえて、実際にどのような戦略を立てるべきなのか!?と今の自分の職場、組織に思いを巡らせれば、どこまでも興味は尽きなくなる

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マンガ化は大成功

マンガとは言っても、前述のとおり約500ページにも及ぶ本書の全体がマンガになっているわけではない。

紹介されている50人の経営学者の主張と功績がマンガを用いて分かりやすく説明されているだけである。

そのマンガ部分は、経営学者一人について6ページ程。長いものは8ページから10ページに及ぶ人がいるが、短い人だと4ページの人も。

紹介した本のマンガ部分①
マンガ部分の一例 ① マイケル・ポーター。
マンガ部分の一例②
マンガ部分の一例 ② マイケル・ポーター再登場。
マンガ部分の一例③
マンガ部分の一例 ③ バランススコアカードを考案したキャプランとノートン

 

本書の特徴と売りは、マンガで主張と功績、更に問題点や課題などを紹介した後、ちゃんとした本格的な文章で、そっくりその内容をまとめてくれている点だ。

読者は先ず冒頭のマンガでその経営学者の経営戦略の内容と主張、実際の影響などの功績を知り、その後で、三谷宏治が書く本格的な文章によっておさらいするという構成になっている。

ある経営学者の経営戦略と主張を、先ずはマンガで知り、それを文章でも再確認するという二重構造になっており、2段階で学べるわけだ。

マンガではない文章による解説の一例①
マンガではない本格的な文章による解説の一例 ①
マンガではない文章による解説の一例②
マンガではない本格的な文章による解説の一例 ②

 

この構成が実に素晴らしい。非常に分かりやすく、マンガ化は大成功したと思う。

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マンガだが、決して手抜きはない

冒頭でも触れたが、本書はマンガとは言っても、専門家が読んでも納得できるレベルで、決して手抜きはない。驚くほど参考になった。

所詮マンガじゃないかと軽く受け止めて、見下してしまう人がいるのではないかと危惧するが、決してそうではない。

実際に読んでみると「目から鱗」の連続で、今まで何となくモヤモヤとしていたものが、かなりスッキリと整理できるようになった。これは想定外で、本当に嬉しくなる。

マンガだからといって、決して侮るべからず。
それでもマンガだからといって見下している向きには、どうか騙された思って本書を実際に読んでいただき、ここに書かれていることを完全に理解できていることが確認できたなら、本書を破棄し、ゴミとした上で次のステップアップに進んでいかれたらいいだろう。

経営戦略の稀有の教科書

普通のサラリーマン、マネジメントを担当し、自分の所属する組織を改革する必要に迫られている人にとっては、大いなる福音となるはずだ。

楽しみながら読めて、しかもめちゃめちゃ役に立つ経営戦略の稀有の教科書

一人でも多くの方に読んでいただきたい貴重な一冊。声を大にしてお勧めしたい。

 

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2,090円(税込)。送料無料。


マンガ 経営戦略全史〔新装合本版〕 [ 三谷宏治 ]

☟ 電子書籍もありますが、新装合本版はまだ電子化されておらず、「確立篇」と「革新篇」の2分冊となっているので、注意してください。

一般的には電子書籍の方が格安なのですが、今回は新装合本版が出ておらず、2分冊となるため、割高となっています。紙の新装合本版をお勧めします。

「確立篇」「革新篇」それぞれ1,320円(税込)。


マンガ 経営戦略全史 確立篇【電子書籍】[ 三谷宏治 ]


マンガ 経営戦略全史 革新篇【電子書籍】[ 三谷宏治 ]

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