医業費用の中身は

次は「出の抑制」として、「医業費用」の縮小策を考える。

医業費用は基本的に大きく以下のように分類される。

医業費用の内訳

1.給与費
2.材料費
 ①薬品費
 ②診療材料費
3.経費
 ①光熱水費
 ②委託料 等

これらは「出の抑制」として縮小していかなければならないが、医業収益の拡大を優先させるべきだとということは既に述べたとおりである。

だが、病院の経営を少しでも改善しようとしたら、こちらにも取り組まなければならないことは言うまでもない。

医業収益の拡大には期待できそうもないので、手っ取り早く費用を削減しようとすることは、愚策中の愚策となるので、十分に注意してほしい。

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圧倒的に大きな給与費(人件費)

費用の中で最も大きな割合を占めるものは、言うまでもなく給与費、いわゆる「人件費」である。

病院における重要な指標として「給与費率(人件費率)」がある。医業収益の中における給与費の占める割合であるが、これを知るだけで、その病院の経営実態がほぼ見えてしまう恐ろしい数値である。

民間病院であれば、これが50%以下になることを当然求められ、50%を超えたら大きな騒ぎとなってしまうかもしれない。一般的には54%あたりが目標になっていると思われる。

給与費率(人件費率)の注意点

ここで注意しなければならないのは、給与費率(人件費率)だけに注目していても何も始まらないことである。

給与費(人件費)は毎月ほぼ変わることはない。これは職員への給与そのものなので、職員が辞めない限り基本的に支給額は変わらない。もちろん超過勤務手当(残業代)など変動要素もあるが、基本的には「固定費」となる。

だが、「率」は変わってくる。給与費率(人件費率)は医業収益に占める割合なので、医業収益が拡大すれば、人件費率は下がってくる。職員の生首は切れないので、給与費を変えることはできないが、売り上げを伸ばせば、おのずから人件費率は下がってくるわけだ。

したがって、多くの病院はこれを目指す。私が病院経営改善には入りの拡大を優先すべきだというのはもちろんこのせいである。

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賞与(ボーナス)カットはやむを得ない

給与費(人件費)の削減には極力手を付けないことにしたいが、病院の経営状況によっては背に腹は代えられないこともありうる。その場合に多くの病院で実施されているのが、賞与(ボーナス)・勤勉手当のカットである。

これは何も病院に限った話しではない。どんな企業でも当たり前のこととして実施されているものだ。

元々賞与(ボーナス)・勤勉手当は、企業、事業所の業績に連動して支給されるものである。ボーナスの支給前半年の業績をみて、業績が伸びていれば、ボーナスを大幅に伸ばすこともあり得るし、逆に業績が不振となればそれに応じて、ボーナスの支給月数を下げなければならない。

今時、そんなことは常識である。多くの病院でもそのように支給されているはずだ。

病院という職場は医師を筆頭に人材が何よりも重要な組織であるため、例えばいくら大赤字だからといって、ボーナスと大幅にカットすることはできない。そんなことをすれば優秀な医者がドンドン退職してしまう。看護師だってそうだ。

実際に東京女子医大病院で、大幅なボーナスカットを断行して、医師や看護師が大量に退職して社会問題となったことはまだ記憶に新しい。

したがって、どこまでやるのかということはともかく、病院でも実績連動させて赤字が大きいのであればボーナスのカットもやむなし、これは仕方ない。そうしないと今度は病院が潰れてしまう。

病院が潰れてしまえば、職員も職を失い、地域医療も崩壊する。

その理屈が通じない自治体病院の愚

ところが困ったことに、多くの自治体病院にあっては、病院がどれだけの大赤字となっていようと、一切関係なく、当然のこととして満額のボーナスをゲットしている。

職員には何の後ろめたさもない。ボーナスが業績連動するという発想が微塵もないからだ。どんなに大きな赤字であろうと全く関係なく、当然のこととして満額ゲットとなる。

だからほとんどの自治体病院が大赤字を抱えている事実と、表裏一体となっているわけだ。

もういい加減、自治体病院も世の中一般の常識で物事を考え、親方日の丸の発想から抜け出さないと、全国の自治体病院はある日、一斉に姿を消してしまうかもしれない。

もっと危機感を持つべきだ。

定期昇給の中止や一律カットなど

ボーナスは実績連動で、支給される毎に変動することはやむを得ないとして、いよいよ経営難に陥ってきた病院が人件費を抑えるために行われる手段が、定期昇給の取り扱いである。

これは最後の手段としたいところだが、病院を存続させるためにはやむを得ない場合もあり得るだろう。

年に1回の定期昇給をある年度には中止する、あるいは予定されている定期昇給を一律カットする方法である。5割カットで半額にする、2割、3割カットすることも考えられる。

これは効果が大きい。給与の本体部分の縮減なので、ボーナスの額にも影響があることはもちろん、残業代も変わってくるわけで、相当な効果が期待できるが、職員のモチベーションが非常に下がるし、不平不満が渦巻いて決していいことにはならないので、最後の非常手段として用いるものだろう。

国家公務員の給与に準じている給与制度を採用している病院では、人事院のプラス勧告を取り入れないという方策は良く行われていることかもしれない。

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人勧準拠からの脱却と独自の給与制度確立

そこで出てくる発想は、そもそも国家公務員の給与に準ずる給与制度から完全に脱却し、新たに独自の給与制度を構築することである。

これは十分に検討に値する。内容の中核となることは2点ある。

①年功序列で勤務年数に応じて毎年給与が上がっていくことの抜本的見直し
②働かなくても、働いた人と全く同じ給与となることの回避、つまり働いた人が評価され報われる給与体系

定期昇給そのものが最初からないような給与体系にしてしまう発想と、働いた人と働かない人を区別して働く職員のモチベーションを上げると同時に、働かない人には給与が下がっても仕方がないとする考え方である。

この給与制度には適切な評価制度が不可欠になるので、これはこれでまた難しい問題が孕んでいることには注意を要する。

 

医業費用の縮小【後編】に続く

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