目 次
病院の経営改善を真剣に考えて見る
私は医療業界に40年以上身を置いて、全国に60病院以上あった旧社会保険病院の本部での勤務に加えて、全国様々な病院の現場に勤務し、そのうち25年以上に渡って6つの病院の事務長(事務部長・事務局長、以下「事務長職」と呼ぶ)を務めてきた。
様々な病院での事務長職の経験から
規模の大小、地方型・都会型、組織と経営形態など様々な異なるタイプの病院を色々と経験してきたが、いずれにも共通する課題と問題点が多くあった。
とにかく今日の日本の医療界にあっては、病院の経営難が半端ではなく、一部民間病院の超優良な病院を除いて、どこのどんな病院であっても経営難に直面しているのが実態だ。
それには明確な理由があって、国(厚生労働省)が国策で病院が儲からないようにしているわけだから、もうどうしようもない。
医療を筆頭に社会保障費が増大する中で、厚生労働省は国民医療費を抑えるため、特に7対1看護単位を取っている急性期病院を潰しにかかっているわけだから、個々の病院が経営難に陥っても当然といえば当然なのである。
国は診療報酬と地域医療構想の両面から、真綿のように全国の急性期病院の首を絞めてきている。
国民の健康と安心を守る病院をここまで追いつめてどうするつもりなんだと、厚生労働省と国に抗議をしたい思いは山々だが、今、それを言ってもどうしようもないので、病院は病院として自衛策を講じなければならない。
で、どうするかである。
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院内努力で経営改善は成し得る
本当に厳しい状況ではあるが、まだまだ改善の見込みはある。それぞれの病院が、病院内の総意と工夫とによって、病院の経営を改善する余地はあり得る、ということを私は強調したい。
色々な方策はまだ残されているので、私の長年に渡る様々な病院での経営を踏まえて、経営改善に向けての全体像、ロードマップを示してみたい。今回はあくまでも概要である。
基本は極めて単純明快
病院の経営難というのは、ズバリ病院の収支状況が赤字に陥っている、黒字でなければならないところ、毎月の収支が赤字で、決算でも赤字状況が続いていることを指している。
ではこの赤字体質を黒字に転換するためには、どうしたら良いのかといえば、実は驚くほど単純で、簡単な話しである。
黒字赤字というのは、売り上げ(収益)と支出(出)の丈比べなので、支出額よりも売上額を増やせば黒字、または売上額以下の支出で抑えられていれば黒字となる。たったそれだけのことである。
したがって、経営改善を達成するには2つの方向性しか存在しない。
1.売り上げを拡大する方向
2.支出を抑える方向
このどちらかである。
売り上げをドンドン拡大して、支出以上の売り上げを達成すれば黒字となるし、支出をドンドン切り詰めて、売り上げ以下の支出に抑え込めば、やっぱり黒字となる。
本当に単純明快。2つしかない。
だが、この2つのことを実現することが、いかに大変なことか!!
もちろん、この2つを同時にやることが理想的である。売り上げの拡大と支出の抑制の両方を目指すわけである。
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先ずどちらを優先すべきなのか
売り上げの拡大と支出の抑制、この2つのどちらに力を注ぐべきなのだろうか?
これは私の中では信念がある。確信を持っている。
病院は先ず、その病院の売り上げの拡大に尽力すべきだ。どこのどんな病院であっても第一義的には収益の拡大に全力で取り組まなければならない。
収益の拡大への努力をせずに、手っ取り早く支出の削減に舵を切ると、どうしても病院が後ろ向きになって、活気がなくなってしまう。それは私の長年の経験からいってもそのとおりで、支出の抑制、削減に向けて動き出すと、病院にとって決していいことにならないと肝に銘じるべきだ。
病院の本来の目的である売り上げの確保と拡大にエネルギーを費やさず、職員の給料を下げることに闇雲になったり、経費を削減することは不健全であり、病院全体が限りなく暗くなってきて(精神的にも物理的にも)、ギクシャクしてくる。
ハッキリ言うと、組織の崩壊目前の雰囲気が漂ってくる。
だから、経営改善のためには、先ずは病院の本来目的に立ち返り、売り上げの拡大、医業収益を少しでも多くすることに知恵と労力を使わなければならない。
医業収益を増やすための方策
医事課の医業収益に関する基礎データを全て正確に把握した上で、冷静に分析し、どこに売り上げが伸びない原因、要因があるかを徹底的に洗い出す必要がある。
その際の最大のポイントは、もちろん「ベッド稼働率」と「入院患者数」にあることはもちろんだ。
当院の入院患者、今、何人?病院のベッド、ガラガラじゃないよね?
この認識が出発点となる。しかもそれを一部の幹部職員だけではなく、院内の全職員が情報共有し、全員で危機感を感じることが、絶対に必要になってくる。
医業収益を拡大するには様々な方策があるが、先ずは、全職員がベッドが埋まっていないということに危機感を持つことから始まる、これだけは間違いない。
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ベッド稼働率と入院患者数
もし、病院のベッドがガラガラで、稼働率が80%を切っているなら、危機感を持たないとならない。
目標は90%、最低でも85%をキープしていないと黒字の確保はおぼつかないだろう。何が何でも85%の入院患者を確保することに尽力すべきである。

入院患者を増やすための対策
入院患者のチャネル分析が不可欠。自分が勤務している病院の入院患者はどこから入ってくるのかを正確に把握し、弱点を強化し、伸びている部分は更に強化を図る。
入院患者のチャネルは、ほぼ3つしかない。
1.紹介
2.救急
3.外来(直接入院=自己入院)
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1.紹介患者について
病病連携・病診連携の強化。地域連携課の役割を検証させる。
営業活動、PR活動がどうなっているのか?近隣の病院や診療所にくまなく足を運び、入院患者の紹介を働きかけ、依頼する。その際にドクターを同席させて、先方の幹部医師と顔合わせをすることが不可欠となる。これは実際にやってみると驚くほど効果が出る。
その大前提として、その病院がいい病院、患者と家族にとって「いい病院」であることは当然だ。「いい病院」というものが何を指すのかは、別稿にて。
ごく簡単に一言で言えば、紹介しもらって、あるいは営業活動としてPRしても恥ずかしくない病院ということに尽きる、と私は考えている。
ただ事務所の中で、他の医療機関からの紹介を待っていても患者は集まらない。東京都内の多くの大病院などが大々的に開催している「地域連帰の会」の類は不可欠だろう。ちょっとエスカレートし過ぎているきらいはあるが。
【医業収益拡大②】に続く
