医業収益拡大【前編】からの続き
目 次
2.救急患者について
救急患者の取り扱い。実はこれが鍵を握っている。多くの病院が二次救急を受け持っていると思うが、その実態を冷静に分析することを怠らないようにしてほしい。
要は「救急の受け入れ、断っていませんか?」ということだ。
基本的には「救急は全て受ける」。これを大原則にしなければならない。100%受けることを病院の鉄則とし、哲学とする気構えと覚悟がないと病院は生き残れないと認識すべきだ。
救急隊からの依頼、患者からの直接の依頼、それを簡単に断っていないか?救急車や患者から病院に声がかかることは宝の山、神の愛の手くらいに思わないとならない。
多くの病院で自院の入院患者のチャネルを分析すると、思っている以上に、救急から受け入れた患者とそれによる医業収益が多いことが分かるはずだ。
毎朝、受け入れ状況を確認し、受け入れ拒否した医師に納得のいく説明を求めるくらいのことを繰り返していかないと、断りの悪弊は減ってこない。
根本的にはどれだけ受け入れて一生懸命働いても、働かない医師と給料が変わらないという面があって医師のモチベーションが上がらないことがあるかもしれない。
受け入れた医師には堂々と報酬を与えればいい。インセンティブなどモチベーションを高める工夫はどうしても必要になってくる。
3.救急患者受け入れの難しさ
もう一つ、救急患者を受けにくくしている要因として、入院を決めた医師が最後まで面倒をみなければならないとことになっている可能性がある。
救急を受ける当直の医師は専ら受けることに専念し、受け入れた入院患者は専門科が快くバトンタッチして入院患者を受ける。このことが不可欠で、救急患者を受け入れるということはその担当医師だけではなく、病院全体の受け入れ体制に関わる重大事である。
そういう意味では手当や報酬に関しても、最終的に受け入れた診療科、主治医に対しても考慮しないと、医師間でギクシャクしておかしなことになってしまうので、注意が必要だ。双方にインセンティブを与える必要が出てくる。
したがって、救急を全て受けるという前提として病院長の強力なリーダーシップが不可欠となってくる。
要はどこまで腹を括れるのか、真剣に病院の存続を考えているのかという問題に帰結する。
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4.外来からの直入の強化
割合的にはそれほど多くはないと思うが、最後はこれに頼らなければならないことも多い。外来患者からドンドン入院患者を増やす。入院してもいいという患者に入院を勧めるように外来の医師の働きかけることも必要だ。
もっとも大病院の場合、紹介状を持って受診することがほとんどだと思われるので、紹介患者の強化とダブってくるが、ここでいう外来から直接入院は、紹介状を持たずに直接当院の外来にかかった患者を指している。
平均在院日数の短縮(長期入院の回避)
問題はここからだ。
ベッド稼働率を高め、入院患者数を増やしても、それだけではダメである。ベッドが埋まればいいという単純な問題ではないことが困難を更に助長する。
入院患者の長期入院を避け、平均在院日数を短縮することが次の大きな課題となってくる。
現在の急性期病院の頭痛の種は、ここにある。
ベッド稼働率の向上(入院患者数の増加)と平均在院日数短縮との両立こそが病院の目指すべき方向性であり、売り上げ向上の最大の鍵を握ってくる。
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平均在院日数短縮の方策
平均在院日数短縮をどう図るのか。ただ単純に入院患者が多くいるだけではダメで、回転率を高める必要がある。入院患者が待機しており、退院させても次の入院患者が待っているようでなければ経営の安定はおぼつかない。
1.クリニカルパスの徹底
クリニカル(クリティカル)パスは、病院にとって色々な意味で極めて重要である。
その目的は「医療の質の向上」にあることは言うまでもない。ここでは「医療の質」と「経営改善」とを連動させる必要性を訴えたい。
そもそもDPCのⅡの範囲内で退院できるように、クリニカルパスが作られているのかどうかを検証する必要がある。
DPCをちゃんと理解している医師は、驚くほど少ない。元々医師は医学、つまり患者を治療することを勉強してきているわけで、DPCや診療報酬のことを学んできたわけではない。
その意味で、ここで重要な役割を発揮するのが事務職の診療情報管理士である。パスの作成には診療情報管理士が深く関わり、DPCの期間を十分に意識してパスを作成することは当然だ。
2.Ⅱの範囲内で退院させる必要性
DPCのⅡの範囲内で退院させる覚悟を持っているのか。もちろん医師にそれが必要なことはもちろんだが、私は病棟のナースがこのことをちゃんと理解しているのかどうか、それを問題としたい。
ナースの認識が鍵を握ってくる。そこで私が強調していることが「看護師の覚醒が病院を救う」ということだ。
病棟の一人ひとりの看護師の意識改革が必要となってくる。
ここでも病病連携の強化が不可欠となってくる。退院させようとしても、患者が次に行くところがなければ退院させることはできない。後方支援の強化である。
転院する先の病院の確保が何よりも重要となる。
DPCの期間を十分に理解した上で、転院を図るなど、病院として明確な数値目標の設定が不可欠となる。
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数値目標(KPI)の設定が不可欠
病院として目標設定し、その目標値を病院内に周知徹底させて、病院を挙げてその目標達成を目指すことが最も重要となってくる。
BSCの導入
BSC(バランススコアカード)を導入し、その中でKPIとして数値目標を設定するのが最適だと確信している。
病院の重点目標、自治体病院であれば第三次経営計画(4カ年計画)などを設定し、その掲げた目標の達成に向けて病院を挙げて、全職員が一丸となって取り組んでいく必要がある。
目標達成の進捗管理の実施。PDCAサイクルによる検証が欠かせない。
①病院としての目指すべき数値目標を先ず掲げ、②それを病院内に周知徹底し、③その達成度を逐一検証していく。この作業がどうしても必要となってくる。
この地道な不断の努力がないと、病院の経営改善を図ることは難しい。
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DPCの特性を活かした算定の強化
その他、医事課の診療報酬請求のスキルアップはもちろん不可欠である。
それに当たっては、多くの急性期病院で採用しているDPCに対して、その内容を請求する側の事務方は当然のこととして、実際に医療を提供する側の、医師を筆頭に薬剤師、各種コメディカル、特に看護師がしっかりと理解していることが必須となってくる。

適切なコーディングの実施
医師と診療情報管理士との間で適切なコーディングを行うことが必須である。やみくもにDPCでの算定を高くするアップコーディングは禁止されており、許されるものではないが、許容範囲内で算定を高くする努力をすることは不可欠である。
DPCを導入している以上、出来高算定よりも高く算定しなければならないことは当然で、この出来高算定との差である「DPC増収率」は常に意識しなければならない。
DPC分析ソフト「EVE」などを有効活用して、DPC増収率を改善することを医療職と診療情報管理士とで確実に進めていきたい。
「EVE」から得られる情報は、活用次第で膨大な貴重なデータの山である。ほとんど見たことがないなんていうお粗末な病院はないと思うが、改めて「EVE」データを多方面からじっくりと検証すると、その中から病院としてどこで勝負すべきなのか、病院が進むべき方向性という「戦略」を示してもくれる貴重なツールともなる。
医業収益拡大【後編】に続く
