「RRR」の前にも凄い映画を作っていたラージャマウリ

インドのラージャマウリ脚本・監督の超弩級の傑作「RRR」に打ちのめされた僕は、本当に「RRR」に魅了され、打ちのめされ、心から感動し、このラージャマウリという脚本も書く傑出した映画監督にすっかりハマってしまった。

ちょっとこれだけの人は、世界中を見回しても居ないんじゃないかと夢中になっている。「RRR」についても2つの熱過ぎる記事を配信させてもらった。

その記事の中でも何度も書かせてもらったが、ラージャマウリが「RRR」で世界中を席巻し、この映画の熱烈なファンが激増する中で、ラージャマウリが「RRR」で突如、世界の映画シーンに彗星のごとく出現したわけではなく、その前にも「RRR」に勝るとも劣らない傑作が何本も撮られていたことが良く知られるようになった。

傑作、名作が何本もあるのだが、何といっても大注目してほしい作品が「バーフバリ」というわけだ。

「バーフバリ」のことはかなり知られている。真っ当な映画ファンは先ずは「バーフバリ」でこの未曽有のインドの天才監督の存在を知り、歓喜し、その次に作られた「RRR」で更にその魅力に身も心も奪われてしまったというのが正解なのだろう。

前回の2回目の「RRR」の記事でも書かせてもらった「バーフバリ」の日本での長ロングランを受けて来日してくれたラージャマウリの記者会見の中で、早くも「RRR」の製作予告を行ったというエピソードは、正にそういう流れを裏打ちするものだったわけだ。

そう。天才ラージャマウリが「RRR」の前に作った映画が「バーフバリ」なのである。しかもこの「バーフバリ」は2部作の大作であり、「RRR」を凌ぐ規模の超大作なのである。

ちなみと監督と脚本が2部作共にラージャマウリというだけではなく、音楽も撮影も「バーフバリ」2部作と「RRR」は全て同じスタッフで作られている。正にラージャマウリ一家が総出で作り上げた作品群なのである。

今流に言うと「バーフバリ」2部作と「RRR」は、「チーム・ラージャマウリ」が総出で作り上げた作品ということになる。

紹介した映画のチラシ
これが映画のチラシ。「完全版」の部分にオリジナル・テルグ語版となっている点がポイントである。

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これまたすごい映画で圧倒される

「バーフバリ」は2部作であり、最初に作られたのは「バーフバリ 伝説誕生」。引き続いて「バーフバリ 王の凱旋」が作られた。

この2部作は完全にストーリーが繋がっていて、両方とも観て物語が完結する、言ってみれば、前編・後編といった密接不可分の作品となっている。

そうは言っても「完全版」だと2部作通じて5時間半にも及ぶ大作である。密接不可分に繋がっているとは言っても、それぞれが3時間近い大作であり、それぞれの作品は単独で観ても、もちろん完全に満足できるものとなっているので、今回は先ずは前編(1作目)の「バーフバリ 伝説誕生」を紹介させてもらう。

この「バーフバリ 伝説誕生」は、実際に凄い映画だった。僕は圧倒され、益々ラージャマウリに夢中になってしまった。その有無を言わせぬ圧倒的なスケール感と驚異の映像躍動する生身の人間たちが織り成す大歴史ロマンに時の過ぎるのも忘れてしまう。

「RRR」は20世紀初頭の現代劇だったが、「バーフバリ」はまだインドが群雄割拠状態にあって、統一されていない13世紀頃の歴史もの。

その決定的な違いはあっても、映画のスケール感やアクションの派手さ加減、仰々しくもったいぶった演出と度肝を抜かされる大スペクタクルは共通。びっくりするほど雄渾な歴史劇である。

あのウィリアム・ワイラー監督の「ベン・ハー」や、近年で言えばリドリー・スコット監督の「グラディエーター」を軽く飛び越えてしまった大スペクタクルである。

正にラージャマウリ節の炸裂である。画面にのめりこむように夢中になって観入ってしまった。

紹介した映画のブルーレイのジャケット写真
ブルーレイのジャケット写真。実はこのジャケ写はあまり好きではない。これではバーフバリが民に寄り添う名君であることが伝わってこない。
紹介した映画の裏ジャケット写真
裏ジャケット写真。映画の名シーンが多く掲載されているのは嬉しい。

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映画の基本情報:「バーフバリ 伝説誕生」完全版

インド映画 158分(2時間38分)【テルグ語完全版】
      138分(2時間18分)【海外配給版】

公開 
2015年7月10日 インド
2017年4月  8日 日本

監督・脚本・:S・S・ラージャマウリ

出演:プラバース、ラーナー・ダッグバーティ、アヌシュカ・シェッティ、タマンナー、ラムヤ・クリシュナ、ナーサル、サティヤラージ 他

音楽:M・M・キーラヴァーニ 

撮影:K・K・センティル・クマール

【受賞】 
第63回ナショナル・フィルム・アワード 長編映画賞 視覚効果賞

キネマ旬報ベストテン:第164位 こりゃあないだろう!笑うしかない。

ブルーレイのディスク本体
ブルーレイのディスク本体。

どんなストーリーなのか

13世紀頃の古代インドのマヒシュマティ王国の3代に及ぶ王権の興亡を描く歴史劇だ。

高貴な女性が生まれたばかりの赤ん坊を抱きかかえながら、巨大な滝の前で追っ手と戦いながら逃げている。川を渡って逃げようとするところ、足をすくわれて流されてしまう。助からないことを悟った貴婦人はヒンドゥー教のシヴァ神にこの赤子だけは生かしてほしいと水の中から赤子を高々と持ち上げてそのまま流されていく。

滝の麓に住んでいる村人たちが水の中から掲げられている赤子を発見し、無事に救出され、村長の娘に自分の子供として育てられる。

時が流れ、シヴドゥと名付けられた赤子は立派な青年に成長し、巨大な滝の上にどんな世界が広がっているのか気になって仕方がない。母親始め周囲の反対を気にもせず、滝を登り切ることに情熱を注ぐ。あるとき幻想として見た美女に誘われるようにして幾多の困難を乗り越えて、遂に滝を登り切ることに成功。

そこで早速、地上の抗争に巻き込まれていく。

マヒシュマティ王国の国王バラーラデーヴァは大変な戦闘能力を備えた雄者だったが、人々に重税を課し、反対派を弾圧するなど圧政を敷く暴君で、デーヴァセーナという婦人を鎖に繋いで幽閉し続けていた。デーヴァセーナはやがて息子が現れ、自分を救出し、邪悪な国王を打ち払ってくれると信じていた。

滝を登り切った青年シヴドゥは偶然にもデーヴァセーナを救出しようとするクンタラ王国の若い女戦闘と恋に落ちて、デーヴァセーナを共に救出することになり、シヴドゥは抜群の戦闘能力を駆使して、デーヴァセーナの救出に成功するのだが、思わぬ事態が待ち受けていた・・・。

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奇想天外の物語がとにかくおもしろく、惹き込まれる

とにかくストーリーがめちゃくちゃおもしろく引き込まれる。これはあくまでフィクションであり、歴史上の事実を映画化したものではないことには注意が必要だ。

舞台となっている古代インドのマヒシュマティ王国も、その存在は歴史上の事実だが、そこにバーフバリなる英雄の国王がいたわけではない。

脚本のラージャマウリの完全なる創作である。

それが実に良くできているのだ。思わず引き込まれ、夢中になってしまう。バーフバリの人物像とバーフバリを取り巻く周囲の人々の生き様も、実に生き生きと描かれている。

映画の中の1シーンから。
映画の中の1シーン。

手塚治虫の「火の鳥 黎明編」と全く同じ展開に驚愕

後半の手に汗握る異民族との大合戦シーンが最大の見どころであるのはもちろんだが、僕は冒頭の目が眩むような大滝を登るシーンが好きだ。

気に入っただけではなく、実は大いに驚かされたのだ。

好漢シバドゥが巨大な滝を繰り返し登り、その上に広がる別世界を求めるシーンだ。映像的にも圧巻の映像美だが、これはもちろんCGで作られたもので、実際に撮影されたものではない。

僕が仰天させられたというのは、そのストーリー展開である。

これは僕が愛して止まないあの手塚治虫の「火の鳥」シリーズの記念すべき第1作目の「黎明編」とそのシチュエーションが全く同じなのである。これは脚本を書いたラージャマウリが「火の鳥 黎明編」を読んでいるとしか思えない程そっくりなシチュエーション。

もちろん真偽の程は分からないが、越えられるはずのない岩壁(「火の鳥」)や、大滝(「バーフバリ」)をかつて誰もなしえなかった情熱とエネルギー、不屈の精神力と体力をもって乗り越え、そこから仲間の誰も知りえなかった別天地での未曽有の大活躍という設定は、この一大ロマンにいかにも相応しい。

このシーンを観るだけで、その類まれな映像美もさることながら、これから始まる大活劇に思わず興奮を抑え切れなくなる。

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「バーフバリ」の人物像が何とも魅力的

「バーフバリ」という人物の造形が素晴らしい。

先ずは「バーフバリ」という名前の響きが何とも魅力的だ。この名前が持つ響きの良さに惹き付けられてしまう。正しい発音は「バーフバリ~↑」と少し引き延ばしてシャープ気味に尻上がりで呼ぶようだ。

「弱きを助け強きをくじく」理想的なリーダー。民はもちろん動物の命でさえ大切にする心優しい人物にして、戦わせれば戦闘能力も群を抜いているという正しくスーパーマン。

あまりにもありふれているのだが、誰が見たってこのバーフバリには心を奪われてしまうだろう。

主要な登場人物の写真
主な登場人物の姿。中央にバーフバリ。その右横は幽閉中のデーヴァセーナ、右端はバーフバリのライバルのバラーラデーヴァ。左端がシヴァガミ、その横がシヴドゥの恋人のアヴァンティカ。

敵役の存在感も半端じゃないのがいい

その正義の人、理想的なリーダーであるバーフバリを苦しめる敵役のバラーラデーヴァがまたいいのである。こういう勧善懲悪ドラマでは、敵役の悪の魅力が足りないと何とも話しが盛り上がらないことになる。

その点、このバラーラデーヴァの憎々しさは抜群であり、バーフバリの好敵手として大きな存在感を誇っている。おかげで素晴らしいドラマが生まれることになった。

バラーラデーヴァの写真
バラーラデーヴァの憎々しい表情。

主演のプラバースの存在感が圧巻

その魅力的なバーフバリを演じたプラバースは実にいい味を出していて、僕は非常に好感を持った。「RRR」のラーマを演じたラーム・チャランといい、インド映画(「トリウッド映画」)には実に魅力的な男優が揃っている。

プラバース演じるバーフバリ
プラバース演じるバーフバリ。精悍な表情が魅力的だ。
プラバース演じるバーフバリ
プラバース演じるバーフバリ。中々のイケメンだ。

 

敵役のバラーラデーヴァを演じたラーナー・ダッグバーティも、実に見栄えのする男優。トリウッド映画には素晴らしい俳優陣が揃っている。

改めて言うまでもないことだが、女優陣も目を見張るような美女揃いである。インド人は何て美しいんだろうと感嘆してしまう。

シヴドゥの恋人アヴァンティカ。妖艶で美しい。
シヴドゥの恋人アヴァンティカ。妖艶で美しい。
シヴドゥの恋人アヴァンティカを演じたタマンナーの写真
シヴドゥの恋人アヴァンティカを演じたタマンナー。この美しさにメロメロになってしまう。

 

プラバースの一人二役が混乱するが、素晴らしい

ネタバレになるので、詳しくは触れられないが、プラバースはこの映画の中で、一人二役を演じており、ちょっと注意をしないと、混乱を来すことになる。僕も最初に観たときには少し戸惑ってしまった経緯がある。

実は、この映画の中で、バーフバリは二人いるのである。どちらのバーフバリもプラバースが一人二役で演じているのである。最初だけ注意して観ないと混乱を来すが、演じているプラバースは素晴らしく、本当に惚れ惚れする。

プラバース演じるシヴドゥ。映画の中の1シーンから。
プラバース演じるシヴドゥ。映画の中の1シーンから。
弓を放つバーフバリ。映画の中の1シーンから。
弓を放つバーフバリ。映画の中の1シーンから。

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圧巻のアクションシーンの数々に打ちのめされる

この映画のことを語って強調しなければならないことは、当然のことながらその圧倒的な凄まじいアクションシーンの数々である。言葉を失ってしまうスケール感と有り得ないまでの信じ難いような映像の連続に完全にノックアウト、打ちのめされてしまう。

本当に感心させられるのは、そのとんでもない「工夫」と「創意」なのである。

ちょっと思いつかないアクションシーンや戦闘シーン。敵との戦闘についても、そんな戦い方があるのか、そんな発想で敵を追い込むのかなど、そのアクションシーンの数々は、単に物量が多いとか迫力があって過激だというような力と量で有無を言わせぬ描き方ではなく、工夫と創意に満ち溢れている

観ている観客が、目の前で繰り広げられる戦闘が、次の瞬間にどのような展開となり、どのような映像が現れてくるのか全く想像ができない。

予期することが全く不可能な未だかつて誰も観たことのない驚異的な映像が、次から次へと飛び出してくる。これはほとんど「快感」だ。

常に斬新な驚嘆すべき映像が繰り広げられ、それが我々の興奮を呼び起こすのである。

映画の中の1シーン
映画の中の1シーンから。バーフバリとバラーラデーヴァ。
映画の中の1シーン
映画の中の1シーンから。
映画の中の1シーンから
映画の中の1シーンから。こういう様式美が随所に出て来る。

 

あまりにもCGの力に頼り過ぎているなど、この驚異の映像を批判することはいくらでもできるだろう。

だが、この創意と工夫は並大抵のものではない。観るものを釘付けにする有無を言わせぬ驚異的な映像のオンパレードに、ワクワクドキドキが止まらなくなってしまう。

壮大にして激烈。空前のスケール感と類まれな様式美と斬新さ

この驚異的な映像を一言でいうと、こうなるだろう。

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続編「バーフバリ 王の凱旋」を観ないわけにはいかない

「バーフバリ」の2部作は完全に連動していて、後編の「王の凱旋」を観て、全体としての「バーフバリ」の大ロマンが完結する構成となっている。

「伝説誕生」の最後の最後に、信じられない衝撃的な事実を告げられて終わってしまうだけに、どうしても続編の「バーフバリ 王の凱旋」を観ないわけにはいかなくなる。

「伝説誕生」以上にスケールアップする後編の「王の凱旋」を、間髪入れずにこのままの勢いで観ていただきたい。

そしてブログ記事も、次の「王の凱旋」に進んでいただければありがたい。

 

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