新刊が続々と出てくる驚異!

2月に入って(2026年2月)、また出口治明さんの本を集中的に読んでいる。出口治明さんはこのブログでも何度も紹介したように、2021年1月、72歳のときに脳出血で倒れて、一命は取り留めたものの、右半身麻痺と失語症という重い後遺症が残った。

その後、懸命のリハビリを続けて、APU(立命館大学アジア太平洋大学)の学長に復帰した感動エピソードもブログ記事で紹介させてもらったとおりだ。

任期によりAPUの学長は退任したが、現在はAPUの名誉教授・学長特命補佐として大学に残り、病気で倒れる前とほとんど遜色のない活躍を続けている。

最近も新刊が引きを切らない。昨年末から今年にかけて既に3冊もの新刊が出版された。僕は大いに驚嘆させられ、身体が不自由である上に、年齢も77歳になられた出口さんに敬服するばかりで、新刊を中心に一気に読み込んでいる。

最初に紹介するのは、『「捨てる」思考法  結果を出す81の教え』というソフトカバーの1冊だ。この本は最近の新刊ではなく、3年半程前に出版されていたものだが、これも脳出血で倒れた後の本であることに注目してほしい。

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『「捨てる」思考法  結果を出す81の教え』

この本は、3年半前に出版された時から知っていたが、CDや本の尋常じゃないコレクターである僕はとにかく物を捨てることができない性分で、捨てる気もサラサラなかったので、「捨てる」思考法というタイトルに怖気ずいて、どうしても読む気になれなかった。

本を購入することもなかったのだが、僕の親しい友人が購入したものをプレゼントしてくれた。そんな次第で、人から譲り受けた本なのだが、やっぱり「捨てる」という僕が最も苦手とし、嫌いなことに言及する本を好んで読む気にはならず、「積ん読」状態になっていたのだが、今回、意を決して読んでみた。

紹介した本の表紙。この帯のコメントなどは非常に分かりやすい。
紹介した本の表紙。この帯のコメントなどは非常に分かりやすい。

すると、これが素晴らしい本だった。偏見と先入観で心から私淑している出口先生の本を遠ざけていた自身を恥じた。僕自身の未熟さが露呈され、非常に忸怩たる思い。

正に偏見と先入観を捨てなければならないと痛感させられた次第。

 

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「捨てる」思考法の基本情報

毎日新聞出版。2022年7月30日印刷。 2022年8月10日発行。 全270ページのソフトカバー。

5ページある「はじめに」には、『「得る」ために「捨てる」、ここに気づけば簡単だ』というタイトルが付けられており、本書の主題がここに言い尽くされているようだ。

その後に目次。全体は4つの章から成り、最後に4ページの「おわりに」がある。こちらのタイトルは、『無駄を「捨てる」ことは、未来への投資である』。

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各章のタイトルなど

本書には「結果を出す81の教え」というサブタイトルがあり、全体で81の教えが4つの章に分かれている形式となっている。

第1章 「捨てられない」は思い込み、捨てることが未来をつくる
   17/81

第2章 出口式・捨てる技術【基礎編】
    余計なものを手放す習慣を身に付ける
   23/81

第3章 出口式・捨てる技術【応用編】
    余計なものを手放して、本当に必要なものを見極める
   22/81

第4章 捨てるモチベーションは、退路を断つことから生まれる
   19/81

章と章の間には、出口さんならではの味わいのある「コラム」が置かれていて、それが4編ある。「旅行の楽しみ方」「出口食堂」など。

81の教えのそれぞれはかなり短めで、3ページを基本にしながらも2ページしかないものも多いが、4ページも何編かある。

それら全て合わせて、270ページになるわけだが、新たな章は必ず新しいページから始められるので、かなり空白が生じることになる。

こんな感じで、空白スペースがかなり多いので、ドンドン読める。
こんな感じで、空白スペースがかなり多いので、ドンドン読める。

このページは、1行だけで後は空白スペース。
このページは、1行だけで後は空白スペース。

 

そんなこともあって、270ページと言いながらも、実質的には200ページちょっとではなかろうか。

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大切なことを分かりやすく

内容的にも非常に分かりやすく、決して難しいことは書かれていない。気軽に直ぐに読めてしまう。

だが、それは内容が軽い、ということとは全く別のことだ。

気軽に簡単に読めるのは事実だが、内容は非常に重要な貴重なことが書かれている。

難しく書かれていないことは、出口さんの文章力に拠ることが大きいと僕は考えている。

「難しいことを、誰でも理解できるように分かりすい文章で表現する」と言ったのは、僕が最も私淑している故立花隆の至言だが、出口さんはこの立花隆の語ったことを、見事に実行している。

書かれている内容は難しいことでもあるのだが、それをどんな読者でも理解できるように、優しい言葉を選んで、敢えて簡単な表現で文章にする。だから分かりやすく、読みやすい。

そういうことなのだ。

具体例を頻繁に引用

それぞれの章は短い文章で綴られているが、出口さんはどの章の中でも、できるだけ具体的な事例を取り上げているのが特徴だ。できるだけ身近な具体的なエピソードなどを引用しながら簡単な言葉で、だれでも理解できるように優しく解き明かす。

これが出口さんならではの、「出口マジック」の神髄だ。

出口さんが様々な著作を通じて繰り返し必要性を訴え、本書の中でも触れている、「タテ・ヨコ・算数」、算数の内訳として「数字(データ・エビデンス)・ファクト(事実)・ロジック(論理、理屈)」を用いて立体的に深掘りする視点の実践が、ここにある。

しかもおもしろい。具体例を引用されることで、分かりやすいだけではなく、おもしろく興味深く読めるのである。

こうしてページをめくる手が止まらなくなり、81編をスラスラと読み終えてしまう。

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本とレコードを処分したエピソードに降参

僕が怖気づいていた「捨てる」ことについて、心配していた事例がズバリ出てきた!

本とレコードを捨てたエピソード。これを内心、何よりも怖れていたわけだ(笑)。

出口さんが日本生命のロンドン事務所への駐在が決まり、赴任する直前にありったけの本とレコードを処分したと言う。本は一切処分。小型トラック2台分、60万円の値がついたという。レコードは10万円だった。

「本を所有しなければいけないという考えを、捨て去ることにした」と書いてある。本に対する執着と愛着が人一倍強かった出口さんの捨てる決断だった。

これにはまいった。降参だ。やっぱり僕も捨てなきゃダメかと。

立花隆が生前には決して処分しようとしなかった例のネコビルの膨大な量の本を、死後、遺言によってきれいさっぱり全て処分された衝撃的なテレビ映像を見て、度肝を抜かされたのだが、それは死後のことだった。

生前に全てを処分することは僕には到底できない。だが、出口さんは「捨てろ」と言う。

出口さんが本を処分できた驚異的な理由

出口さんは、「速読するのは嫌いですから一字一句まで精読するので、最後まで読んだ本ならば内容はほぼすべて頭に入っています。自分の読書傾向をふまえると、すべての本を処分してもさほど困ることはないだろうと考えました。もし読み直したい本があれば、再度購入するか図書館で改めて借りればいい。
ということで、一切の本を処分することにしたのです」と書いている。

う~ん。これはどうしたって真似できない。恐ろし過ぎる。

僕には非常に感銘を受けた本がたくさんあるが、いくら深い感銘を受けた大切な本だと言っても、その内容のほぼ全てが頭に入っているなど、到底考えられない。少しずつ忘れていってしまうことはないのだろうか!?

ちょっと衝撃を受け、とても真似できないと頭を抱えている

但し、本書を精読すると、出口さんが本書の中で訴えたい「捨てる」の本家本丸は、本やレコードなどハードの物品ではなく、もっと重要なソフトのことを言っているのは明白だ。

だから、本やCDを処分しなくてもいい、と自分に都合のいいように解釈しているわけでは決してないのだが(笑)。

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トレードオフの重要性を説く

本書のテーマ「捨てる」の大前提になるのは、「トレードオフ」という発想だ。

81の教えの最初、1番に出てくるのはトレードオフの話しである。

「世の中で起こることのすべては、トレードオフの関係にあります。何かを得ようとすれば、何かを捨てなければなりません。人生もビジネスにおいても同じことです」として、

こう訴える。正に出口流トレードオフの極意である。

「新しいことにチャレンジするとき、これまでの生活環境を捨てることができるか。トレードオフとは、自分が本当にやりたいことを見極めることでもあります」

「捨てる」ということ。何を捨てるのか?

出口さんが「捨てる」ことを強く迫るのは、具体的にこんなことだ。重要なテーマをいくつか列挙してみる。

出口さんが本書で提案する「捨てる」具体例の数々

〇怒りを捨てれば、仕事がスムーズに進む。

〇空気を読む癖を捨てれば、職場に信頼関係が生まれる。

〇忖度を捨てれば、会議は円滑に進行する。

〇大事な決断では「熟慮」を捨てる。

〇人は往々にして対象を色眼鏡を見ているから、その色眼鏡を捨てて、「タテ・ヨコ・算数(数字・ファクト・ロジック)」で考える。

〇真偽のほどが怪しい定説が一人歩きする例は数多くあるから、それらを見極め切り捨てて、常にファクトチェックするスタンスを持つ。

〇アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を捨てて、大胆な社会変革を。

〇旧態依然とした社会システムを捨てて、グローバリゼーションへの道を拓く。

〇年功序列と長時間労働を捨てれば、イノベーションは加速する。

〇「働かないおじさん」を取り除けば、成果主義が実現する。

〇女性が性分業というアンコンシャス・バイアスに気づき、声を上げ、それを捨てるために行動を起こせば、ジェンダーギャップは解消する。

〇アンコンシャス・バイアスという因習を捨てるためには、行動あるのみ。

〇定年制を捨てれば、高齢者は今より若返る。

〇転勤制度を捨てれば、地域リーダーが育つ。

〇既存知を捨てて、個性を活かして、自分の頭で考えれば、新機軸が生まれる。 etc.

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かなり大胆な革命的な発想

出口さんが、本書を非常に優しい言葉で分かりやすく書いていると紹介したが、こうやって「捨てる」具体例を箇条書きにしてみると、かなり大胆なことを訴え、革命的な発想の転換を求めていることが浮かび上がってくる。

真剣に世の中を変え、もっと効率性と生産性を上げる社会を築きたいといういう出口さんの切実な思いがクローズアップされてくる。

革命的な発想の転換の促しどころか、静かな言葉で、革命を訴えているようにさえ思える。もちろん暴力的な革命ではなく、この偏見と因習に捕らわれて、新しい社会変革やイノベーションが進まない今の日本社会への警鐘を打ち鳴らしているようにも思えてくる。

実に優しい言葉と分かりやすい言葉で、かなり大胆な社会変革を促している。恐ろしい本でもある。

「無減代」をもっと拡大した思考法

出口さんが提唱し、僕が実際に病院の現場でも実践してみた「無減代」にも直結する話し。本書には「無減代」については一切記されていないが、「無減代」の「無」は「やらなくてもいいことはなくすということ」で、なくす=捨てる、に他ならないから、本書は「無減代」の考え方をもっと具体的に拡大させた1冊とも言えるだろう。

効率性と生産性を高めるために無駄を捨てて、「無・減・代」を推進することは、日本社会に横行している、長時間労働と「メシ・風呂・寝る」という悪習を捨て去って、「捨てる・個性・考える」へと変更を促す発想だ。

本書の内容と「無減代」はまさしく表裏一体だと感じた。

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コロナ禍の真っ最中に書かれた本だが

本書が執筆されたのちょうどコロナ禍の真っ最中だった。コロナ禍を前提にした話しもたくさん出てきて、あれからすっかりコロナ禍も沈静し、社会の様子は一変した、というよりも良しにつけ悪しきにつけ、コロナ禍以前に戻った

その意味では本書の一部が、今日の日本の状況に必ずしもマッチしない部分があるのは事実だが、あの未曾有のコロナ禍の体験を踏まえて、今後どう進むべきか、そう考えれば少しも違和感はない。

ここに書かれた内容は、コロナ禍終了の今日においてもそのまま当てはまるものばかりか、コロナ禍が終わった今だからこそ、改めてじっくりと検証してもらうべき貴重な提案に満ちている。

優しい言葉で書かれた大胆不敵な1冊

直ぐに読めてしまう本ではあるが、書かれてある内容は非常に重要かつ大胆な思考法だ。

日本社会が経済成長もストップし、何かと閉塞感が漂う今日の日本にあって、ここに書かれた「捨てる」思考法を実践することは大いに意義があると断言できる。

僕も本とCDの処分は検討案件とさせてもらうが、他の「捨てる」思考法については意識して取り入れていきたいと決意を新たにしている。

多くの方に本書の一読ならぬ精読をお薦めしたい。

 

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