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あの衝撃の傑作が待望のコミカライズ!
2022年の本屋大賞に輝き、各方面から大絶賛された衝撃のベストセラー「同志少女よ、敵を撃て」が待望のコミカライズ。
昨年第1巻が出ており(2024年12月)、来月(2025年9月)には第2巻が刊行される予定となっている。これが中々いい出来栄えなので、紹介させてもらう。


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逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」の衝撃
新人作家の逢坂冬馬が書いた「同志少女よ、敵を撃て」は、本当に凄い作品だった。
独ソ戦における女性スナイパーたちの衝撃の生き様を描き切った渾身の傑作で、よくぞ実際の戦争も知らない若い日本の新人作家が、独ソ戦の悲惨な戦争実態に肉薄し、その地獄絵を描き尽くせたものだと感心させられた。


480ページの読み切り長編小説。かなり長いものながら、僕も一気に読み切って大変な衝撃と感動を受けて、直ぐにブログに取り上げた。
あれからちょうど3年。遂にコミカライズが実現した。
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「戦争は女の顔をしていない」との関係
「同志少女よ、敵を撃て」を語るときには、どうしてもノーベル文学賞受賞作家アレクシエーヴィチのこれまた衝撃の処女作「戦争は女の顔をしていない」との類似性に触れないわけにはいかない。
アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」は実際に独ソ戦に参加した女性兵士たちのインタビューをまとめたノンフィクション。実際の戦争参加者の肉声を集めたものだけにその衝撃の深さは筆舌に尽くし難いものがあった。こちらもブログに取り上げている。

一方で、逢坂冬馬の「同志少女よ、敵を撃て」の方は、逢坂冬馬が書いた小説、あくまでもフィクションである。だが、どちらも独ソ戦における女性兵士の悪夢のような戦争体験を描いたもので、舞台もテーマも一緒だ。
独ソ戦、女性兵士という特殊なシチュエーションを描いた作品がほぼ同時期に大変な話題となったわけだ。
ここは両方を読んでもらって、あの独ソ戦という人類史上最悪の戦争の実態を追体験していただき、相互に補完し合ってイメージを膨らませていただければと思う。
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「戦争は女の顔を・・」も既にコミカライズ
アレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」も既にコミカライズされていることはご案内のとおり。僕もこのコミックをブログで紹介済みだ。

こちらは小梅けいとによるコミカライズである。現在5巻まで刊行されている。
今回は、「同志少女よ、敵を撃て」のコミカライズ。この独ソ戦の女性兵士を描いた非常に良く似た2つの作品が、いずれもコミカライズされたので、ちょっと紛らわしい。混乱しないでほしい。
今回の紹介は、逢坂冬馬の「同志少女よ、敵を撃て」のコミカライズである。
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漫画「同志少女よ、敵を撃て1⃣」の基本情報
早川書房 2024年12月15日初版発行 漫画:鎌谷悠希 原作:逢坂冬馬 監修:速水螺旋人
この1⃣は第1話から第4話まである。現在、まだ1巻しか出ていないが、「ハヤコミ」誌に月一ペースで連載が続き、コミックの第2巻(2⃣)は9月中旬に発刊予定。
188ページ。さすがにコミックだけあって、この1巻だけなら直ぐに読める。かなり丁寧にゆっくり読んでも、1時間もあれば十分だろう。
逢坂冬馬の原作は、プロローグから始まって全6章、最後のエピローグまで含めて全479ページに及ぶ長編小説だ。今回のコミック1⃣は、原作の第2章の半分位まで、480ページもある原作の85ページまで描かれているだけだ。全体のまだ6分の1にも至っていない。
とすると、このコミックは最低でも全6巻、場合によっては全7巻になる可能性が高い。漸く来月(2025年9月)に第2巻。完成するまでまだ相当時間がかかりそうだ。
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鎌谷悠希によるコミカライズ
コミカライズは鎌谷(かまたに)悠希によってなされている。
漫画家の鎌谷悠希のことは、僕は何も知らない。「隠の王」「少年ノート」「しまなみ誰そ彼」などの漫画で知られている中堅人気漫画家のようだ。
鎌谷悠希の漫画について
読んでみて悪くはないと思った。但し、手塚治虫を熟読し、つげ義春やさいとう・たかをを愛読している大のマンガ好きとしては、絶賛はできない。
登場人物がほとんど女性、しかも少女ばかりということもあって、絵が少し少女漫画チックな点に、若干抵抗がある。もっとシリアスでリアルな絵が良かったと個人的には思う。



罪のない村人やヒロインの家族がナチスに虐殺される残酷シーン、超一級の狙撃手に育成するための地獄のような訓練ばかりが描かれるのだから、そんなハードな場面をもっとリアルに生々しく描かれたら、それはそれで読むに堪えないことになってしまうかもしれない。


好みもあって、難しい判断だ。鎌谷悠希の絵と描写は中庸を貫いていて、これはこれで正しい描き方のようにも思える。
皆さんはどう感じるだろうか。実際に手に取って読んでほしい。
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原作に忠実にコミカライズ
このコミカライズは原作にかなり忠実に描かれている。
できるだけ原作どおりという姿勢が貫かれ、これがいい。シーンの展開も、会話もかなり原作に忠実で、ありがたいコミック化だった。
とは言っても、細かい描写などは逢坂冬馬の原作には及ばない。原作の愛読者はその点は覚悟して読んでほしい。
コミックで読むメリットは大きい
絵については、賛否が分かれるかもしれないが、これだけはハッキリ言える。
小説を読んで、自分の頭の中にイメージを浮かべても、どうしても想像が困難なシーンがある。逢坂冬馬の筆力、描写力は相当なものだと舌を巻いたが、個々の訓練や戦闘は分かるようで良く分からないシーンが結構頻繁に出てくる。
そんな時には、このコミックが大いに役に立つ。逢坂冬馬の原作に忠実に描かれているだけに、その効果は抜群だ。
分かりにくいシーンを絵で描いてくれるのはありがたい。その絵のとおりで間違いないかという問題もありそうだが、漫画の絵を見て、漸く逢坂冬馬の描こうとしたシチュエーションが理解できたというシーンが少なくない。
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スコープの訓練シーンが漸く理解可能に
特にありがたかったのが、主人公のセラフィマ始め、集められた少女たちが最初に受ける訓練シーン。
彼女たちは全員が狙撃兵として育てられるので、最も大切な武器は銃となることはもちろんだが、その銃に付いているスコープこそが最大の武器となる。

スコープの使い方、ミルという単位を元に方向や距離、大きさを把握できるように徹底的にたたき込まれ、訓練が始まってから最初の1カ月間は、何と銃そのものを持つことも許されず、ひたすらスコープだけの訓練となる。
逢坂冬馬の原作を読んだ際、最も理解できなかったのがこの訓練シーン。何をやっているのかさっぱり分からなかった。
僕の娘も同じことを言っていたので、多くの読者がそう感じたはずだ。


我々普通の日本人のように銃など一度も持ったことのない人間には、スコープの説明は全く理解不能だった。
逆に銃に付いているスコープは、それを覗き込めば直ぐに狙いの対象にターゲットが絞られ、対象が分かりやすく見えるものだと思っていた。「ゴルゴ13」の読み過ぎだろうか。
時代によるのかもしれないが、銃のスコープは奥が深く、簡単には理解できない相当厄介なもので、スコープを使いこなせなければ狙撃兵にはなれない、そんな決定的なものだった。
小説を読んでもまるで理解できなかった。それがこのコミックでかなり分かった。

実は、このコミックを読んでもまだ疑問が残るのだが、かなりイメージが鮮明になった。
それにしてもスコープの原理と技術、まだ若い逢坂冬馬が何故あそこまで詳細を把握しているのか、改めて驚嘆させられる。
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コミックに寄せられた逢坂冬馬の言葉
コミックの裏扉に、小さな字で逢坂冬馬の言葉が掲載されているので、転載させていただく。貴重なコメントだ。
「鮮烈な光が漆黒の影絵をつくり、影絵の闇の中にこそ、それを見た子どもたちが色も鮮やかな物語を想起するように、戦争の地獄を描くことによって、地獄の無い世界への希求を表出させたい」
原作刊行時に私が語った意図は、今も変わりません。いかなる時代においても、民族、人種、国民に対してその全体を憎悪することは許されず、またそれらを懲罰や報復の対象と捉えることもあってはならないのです。
今だからこそ、ロシア人兵士、セラフィマの体験する戦争を通じて、読者の皆様の元へ私の描こうとした「敵」の姿が届くことを願っています。
鎌谷悠希さんという素晴らしい漫画家を迎えコミカライズを世に問うことができることを嬉しく思います。
逢坂冬馬
是非とも読んでほしい
コミカライズが最終的に完成するのはまだ随分先になりそうだが、ゆっくり待ちながら、先ずはこの衝撃と感動に満ち溢れた稀有な物語のスタート部分をコミックで味わってほしい。
既に逢坂冬馬の原作を読んだ方はもちろん、まだ読まれていない方も、気軽に手に取っていただければいい。
まだ原作を読んでいない人が、このコミックを読むことで興味を持たれたなら、コミック刊行と同時に文庫化された逢坂冬馬の原作を読んでもらえればそれが最高だ。
ウクライナに改めて思いを寄せて
この機会に原作もコミックも両方読んで、人類史上最悪だったと言われるあの過酷な独ソ戦の実態と、この頃から既に険悪な関係になっていたロシアとウクライナ、実は独ソ戦で一番被害を受けたのは他ならぬあのウクライナと知っていただき、今日、ロシアによる侵略戦争から3年半を迎えた悲劇のウクライナに思いを馳せてほしいと切に望むものである。
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同志少女よ、敵を撃て 1 (ハヤコミ(ハヤカワ・コミックス)) [ 鎌谷 悠希 ]
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