【第1章】からの続き

某自治体病院ではなされていなくて、民間から事務長職として赴任した僕が新たに導入した取り組みの第2弾である。

病院の「基本理念と基本方針」

某自治体病院のもう一つの大きな課題と病巣は、病院として目標や数値目標を持っておらず、どんなスタッフも数値目標の達成などということは一切考えていなかったことだ。

某自治体病院にも、いわゆる「病院の基本理念と基本方針」は定められていた。

本当に困ったものなのだが、病院機能評価制度というものがあって、全国のほとんど全ての病院がその評価を受ける取り組みを展開している。その評価項目の中に、「病院の基本理念と基本方針」の策定が求められているため、全国津々浦々の病院で、病院独自の基本理念と基本方針が定められている。

そのこと自体を否定するつもりはないが、そもそもどの病院にあっても病院機能評価をクリアするために無理やり考え出したものであり、理念と基本方針は定めたものの、多くの病院ではその理念と基本方針にあまり魂が籠っておらず、病院機能評価が終わってしまえば、それでおしまい。普段はほとんど意識していない病院が多い。

無理やり作らされた基本理念と基本方針は、多くの病院で形骸化しているといって間違いないだろう。

ちなみに、僕がフリーランスになった後の最初の病院では、月曜日の朝の全職員が一堂に会する朝礼で、事務部長が基本理念と基本方針を読み上げて、職員全員が復唱されるということが行われていた。急性期の総合病院での話しである、念のため。

某自治体病院でも完全に形骸化

多くの病院で「基本理念と基本方針」は形骸化していたが、僕が関わった某自治体病院でもその例外ではなかったどころか、職員にはほとんど根付いていなかった

基本理念と基本方針を実際に活かそうとしたら、それが実際に院内で機能し、活かされているのかどうか、単なるお題目に終わってしまっていないか、検証されなければならない。

基本理念と基本方針の達成度である。それを測るには評価をしなければならず、そのためには「病院の基本理念と基本方針」を達成するためのもっと具体的な数値目標が不可欠になる。

その仕組み、システムまで構築して初めて基本理念と基本方針が活かされることになる。

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BSCに基づく目標管理の導入

病院の基本理念と基本方針を実際に活かすための具体的な数値目標などは一切掲げられていなかった。これではダメだ。そもそも病院に目標というものが全く存在していなかった。目標がなければ評価もできない

某自治体病院には、民間的な発想による目標を設定し、その達成に向けて全職員が一丸となって力を尽くすという職場風土(文化)が欠落していると痛感させられた。

そこで、僕は院内に目標管理制度を導入し、その大前提としてBSC(バランススコアカード)を用いることにした。

BSC(バランススコアカード)の詳細な内容については、別の機会に譲ることにするが、僕はこのBSCという発想が病院という職場に非常にマッチしていると高く評価し、多くの病院で導入してきた

某自治体病院でも僕自身が講師となって、BSCの研修を複数回実施して導入に向けて奮闘した。

 

BSCはこれを徹底しようとすると「KPI」の達成度を細かく検証する必要があるなど、設定したKPIの数値に振り回されることにもなりかねない。

だが、BSCの哲学、ポリシーである組織、事業所の経営面、顧客の満足度、業務プロセス、人材育成と職員満足度など多方面からの視点のバランスを取りながら事業運営を進めていこうとする考え方には全面的に賛同を覚える。

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BSCは病院に非常に適している

そして重要な点は、それが病院という組織と職場に驚くほどフィットする考え方だということだ。

この発想を職員に理解してもらって、それぞれの視点で目標数値(KPI)を設定し、その数値を達成するために日々の業務とどう取り組んでいくのか、それを強く意識してもらうことにした。

病院ではすんなり受け入れられた

BSCは意外な程、院内に素直に受け入れられ、約3年でほぼ定着するに至った。

掲げられた数値目標を実現するにはまだ力が足りず、課題も多い。

だが、従来まで全く目標を掲げる文化が皆無だった病院に、基本理念と基本方針を実際に達成するためにBSCに基づいて目標数値を掲げ、その実現に向けて、全ての部署がベクトルを揃え、全職員一丸になって日々の業務をこなしていくという基本的な考え方は浸透した。

これは長い某自治体病院の歴史において画期的なことだったと考えている。

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BSC(目標管理)の導入で新規取り組みが続々

BSCに基づく目標管理を導入したことで、それに関連する様々な具体的な取り組みが、セットのように整えられた。

院長・管理者との現場とのヒアリング

某自治体病院では、病院長や事業管理者など組織のトップが部署長や現場の責任者から定期的にじっくりと話しを聞くことがほとんどなかった。

経営幹部と現場では、組織としての一体感が決定的に欠落していた。

僕が導入した目標管理の重要な点は、先ず病院としての目標があり、その病院の目標を達成するために各部署はどういう目標を立て、それを達成するためにどうするのか。

上から下へどんどんブレークダウンしていく。

 

 

それが問われるので、病院のトップと現場の部署長とのコミュニケーションは不可欠だ。年間を通じてヒアリングの場を設け、意見交換を推進させた。

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各部署で目標、個人にまで展開

病院の目標に基づいて、それを達成するために各部署はどう取り組むのか。それを各部署に考えさせ、部署の目標を設定する。

各部署は設定した部署の目標を達成するためのアクションプランという手段を考えなければならない。そして部署を構成する個々のスタッフにまで展開させていく。

年度末に個人と部署の目標の達成度を評価することになるのだが、個人の評価に関してはまだこれからの課題として残っている。

院内全部署とのヒアリングの実施

看護局では日本看護協会の指導もあって、病院とは関係なく、BSCとも関係のない目標管理そのものは取組んでいた。看護協会の指導なので、全国どこの病院でもやっている。

病院の目標と連動しない部署目標は残念ながら、あまり意味がない。しかもBSCではなかったため不十分ではあったが、目標管理の考え方は浸透していたため、BSCを理解してもらった後は、抵抗なくBSCは受け入れられた。

僕は看護の全部署と何度もヒアリングを繰り返し、BSCと目標設定の考え方、具体的なKPIの内容、妥当性などを全師長が作成したBSCシートを見させてもらって、アドバイスしながら意見交換し、共に築いていった。

これは看護局に限った話しではなく、医師を対象にしたことはもちろん、各コメディカルにも繰り返し指導させてもらった。

院内の半数を占める看護局の影響力が群を抜いていることは当然で、看護とのヒアリングは特に時間をかけて丁寧に行った。

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看護局のBSCの発表大会

看護局では年度末に看護だけ集まって、目標の達成度の発表を例年やっていたのだが、BSC導入後はそのBSCの目標設定と達成度の発表となった。BSCの考え方を理解してくれた部署が多く、ホンの数年でほぼ定着したことはありがたかった。

看護局の発表大会を元に病院全体でもBSCの発表大会を計画していたが、在職中には果たせなかったことが非常に心残りとなっている。

多くの課題が残されているが

BSCに基づく目標管理を導入し、次年度の事業計画に盛り込む仕組みは構築できたが、KPIの達成度の評価が形骸化している。

目標は立てられても、それを実現させられない状況。立てた目標をいかに達成させるのか?そのためのアクションプランをどうするのか?もっと具体的かつ真摯に目標と取り組む必要性を理解させることができていない。KPIに魂を込めることの意味と必要性を伝えきれていないのが心残りだ。

そうは言っても、BSCに基づく目標管理と目標の達成に向けて病院職員が一丸になって尽力すること、言い換えると全職員の目指すべきベクトルを合わせることの必要性と重要性は、繰り返し訴え続け、意識改革を促してきた。

後は職員の踏ん張り次第だ。

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教訓と改善策【基本理念・基本方針とBSC】

基本理念と基本方針の実現と目標管理、BSCとの連動

1.目標管理は今日の病院の経営上、不可欠なものである。その目標を設定するに当たっては、BSCは非常に有用で、思考の整理にもなるので、是非導入してもらえればいいと思う。

2,どこの病院でも掲げられている「基本理念と基本方針」を再検証し、その原点に立ち返ることが重要だ。「基本理念と基本方針」の達成のために目標管理に取り組むんだと方向づければ、現実との乖離も回避できるだろう。

 

【第3章】に続く

 

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