改めて職場の整形外科医から、手術は必要ないと言われる 

週明けの月曜日。K病院で処方してもらったリリカを始め3種類の薬を飲んでいるのに、痛みの方は相変わらずだ。もっとも全く立ち上がることもできず、ほとんど歩くことができないという最悪の状態からはいくらか改善はしていたが、本当にヨチヨチ歩きであった。最寄り駅までは何とか辿り着いて、そこから病院まではタクシーに乗った。

この日、僕は緊急入院も覚悟していて、何時入院しても困らないように下着類を3日分持って出勤したのであった。

早速、現在自分が勤務している大病院の整形外科を受診した。当院には脊椎脊髄センターがあり、そこのセンター長のM先生に受診することに。もちろん朝一番に副院長経由でK病院で撮ってもらったMRIを含め、紹介状は渡してあった。

非常に丁寧に診てもらった。その診断結果は少し驚くべき内容だった。

というのは、それほど重症ではない、確かに脊柱管の狭窄は認められ、脊柱管狭窄症には間違いないが、程度はそれほど重いものではないという。もっと酷い状態の人もたくさんいると。K病院で処方された薬は適切なものであり、しばらくこの薬を服用して様子をみようということになった。痛みが特に強くなる場合に備え、座薬のボルタレンも1週間分の14個を処方してもらった。

脊柱管狭窄症のMRIの写真
脊柱管狭窄症を示すMRIの写真。これは僕のものではなく、一般的な画像である、念のため。

 

手術の可能性を聞いてみると、手術が必要なレベルではないと意外にも素っ気ない。先生曰く、手術をどうするかはもちろんその狭窄の程度だけによるものではなく、本人が訴える痛みの程度や、ADLなどの日常生活動作などにどれだけの支障があるかがポイントだが、そこまで日常生活に支障が出ているわけではないでしょうと。

排尿障害などについても聞かれたが、痛みそのものが原因となって排尿そのものが困難ということはなかったのだ。

但し、その後にドンドン明らかになっていくのだが、実は一番痛みがキツク、耐え難いのは排尿が終わった直後なのであった。ほとんど立っていられなくなる程の激痛に襲われるのが常態化するのは、これから先のことだった。

極力手術を避けたかった僕は喜んだのだが

この最初の受診で、手術が必要なレベルではない、とM先生から言われたことは、その段階では僕としては非常に喜ばしいことだったのである。手術が怖いわけではもちろんなかったが、長年病院というところに勤務していると、手術によって医療事故が引き起こされる事例はどうしても意識せざるを得ない。

脊椎は身体の中の最も重要にしてデリケートな部分であり、僕としては脊椎の手術だけはどうしても受けたくなかった。

すなわち、医師の方から「かなり重症な脊柱管狭窄症なので、手術をした方がいい」と言われることを一番恐れていたのである。というのは、今回の痛みは過去に経験のない激痛であり、この状態から脱出するには手術しかないのではないかと、素人ながらも内心そう思い込んでいたからだ。

だから、先生から「それほど重くはなく、この少し狭窄している部分を除いては、全体的に非常に綺麗な背骨ですよ」と変な褒められ方までされて、悪い気はしなかったのだ。

それは一つには、このままもう暫くリリカを始めとする薬をちゃんと飲み続ければ、数日中にドンドン痛みが治まってきて、いずれそう遠からぬうちに全快するものと信じていたということがあった。

この日の僕は、むしろ意気揚々としていたのである。実際に数日前に比べるとかなり痛みも引いてきたので、安心して帰宅した。

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整体院に行ってから一挙に悪化してしまう

薬の服用を続けながら様子をみるということになると、それでは併せてできることは何でも色々とやってみようと思うのは人情だ。特に女房が非常に心配してくれて、ネットで調べたら、ちょうど有名な整体院が近くにあると教えてくれた。「ダメもとで一度行ってみたら。ちょうど今の時期、キャンペーンをやっていて格安で受けられるみたいだよ」とのことだった。

女房はその週末に○○県まで両親の面倒をみに出かけることになっていたのだが、その留守中に行ければいいかもということになって、電話で申し込んでみた。

「○○ BODY整体院 町田」という整体院だったが、ネット上のホームページを見ると、脊柱管狭窄症を専門というか売りにしていて、実に素晴らしい施設のように思えた。そのホームページは驚くほど良くできていて、これは何て大きな立派な施設なんだろう。こんな素晴らしい施設が市内になるなんてラッキーだと思わずにいられなかった。ちょうどキャンペーン中で1,980円で受けられるという。

うまく予約も取れた。

こうして10月9日の土曜日に行ってみた。

問題だらけの町田の某整体院の実態

そこで僕は心の底から幻滅を覚え、ほとんど詐欺に遭ったような気になったと正直に書かせてもらう。ホームページではいかにも大規模で、優秀なスタッフが大勢いる施設であるかのように宣伝されていたが、着いた先は古びたマンション(実はマンションと呼べるようなものではなく、アパートに毛が生えたような建物)の5階の1室であった。思わず目を疑った。マンションの一室に院長と名乗るスタッフがたった一人で全てをこなしていた。

そして終了後は、次回の予約を半ば強制的に取らされて、しかも1回あたり12,000円だと言う。ホームページには2回目以降は1回あたり5,000円と表示されていたのに、真っ赤な嘘。12,000円!しかもパンフレット一枚ない。資料が欲しいと言ったら、パウチされた1枚ものの料金表を写真に撮ってくれればいい、とおっしゃる。

まあ、それらの点はこの際、良しとしよう。

結果的には、この整体を受けてから、僕の坐骨神経痛は一挙に悪くなってしまった。その翌日の日曜日から折角少しは痛みが引いてきたのも束の間、元通りどころかほとんど最初の立てない、歩けないと変わらない状態に戻ってしまったのだ。

整体やマッサージを受けると一時的に痛みが強まることがあるということは、良く言われていることで、正に「もみ返し」と呼ばれているものだ。あの時に痛みが元に戻ってしまったのはいわゆる「もみ返し」で、あのままずっと通い続ければ、もしかしたら痛みも引いて、坐骨神経痛は見事に治まったのかもしれない。その結果は分からない。

だが、ホームページで紹介されていた姿とは似ても似つかない施設にして、料金も2倍以上を吹っ掛けるいい加減さに呆れ果てて、数日後に予約をキャンセルしたので、真偽の程は本当に分からない。

いずれにしても結果的には随分と余計な遠回りをしてしまったとしか、言いようがない。

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足(脚)に全く力が入らず、踏ん張れない

そんな自ら招いた失敗もあって、それからは中々取れない痛みにズッと苦しめ続けられることになった。

M先生の2回目の受診日は整体を受けた後の連休明けの5日の火曜だった。ここで先生には整体のことを正直に伝えるしかなかった。週末に整体を受けて、その後で痛みが強くなってしまったと。先生からはどうしてそんなところに行ったんだと叱られると覚悟していたが、先生はそのことについては一言も発しなかった。とにかく引き続き薬を服用するしかないということに収まった。

あの整体が失敗だったのか、原因となったのかは不明だが、あれ移行は1回目の受診の後の楽観的な思いが、ドンドン変化していくことになる。薬を毎日ちゃんと飲み続けていても一向に痛みは治まらないどころか、職場でも、日によっては車椅子を用意してもらって車椅子で仕事をするようにもなってしまった。

処方された薬の内容

処方されていた痛み止めはリリカ(実際にはリリカの後発医薬品であるプレガバリン75mg錠)と一緒に出されていた2種類の薬(セレコキシブ錠とリマプロストアルファデクス錠)をメインに飲んでいたのだが、これだけでは効果がないということで、もっと強い薬で一日に4回も飲む必要がある「トアラセット配合錠」も処方されていて、僕は毎日これらの4種類の薬を毎日飲み続けていたのである。それでも中々効果が現れなかったのである。

そのうちに新たな症状が出てきた。

今まで感じたことのない新たな症状が非常に気になってきたのである。

それは痛みではなく、足(脚)に力が入らないことだった。K病院でも、M先生からも質問を受けたことがあったが、足(脚)に力が入らないとか、痺れるようなことはないですかという奴だ。

これが非常に厄介だったのだ。痛みよりもこっちの方が深刻だったのだ。

足に力が入らないのである。痺れているというのとは違う。とにかく足に力が入らず、踏ん張ることができない。足の脱力感が酷く、足が重たくて仕方がないのであった。

具体的にどんな症状だったのか

具体的に言うと、両足共に足の指に力が入れられず、指を一切曲げることができないのである。両足の指を内側に曲げることができない。曲げることができないというよりも、曲げようと思っても力を入れることができず、全く曲げられない。つまり指を動かせないということだ。したがって立っていても足の指先で踏ん張る、つまり指先に力を入れられないので、常にフラフラしてしまうのである。

だから、階段どころか、ホンの数センチ、例えば2~3cmの段差でも足を上げて踏みつけることができない。杖か手摺のようなもので身体そのものを支えてあげないと、自力では足を上げることが全くできないという非常に辛い症状に悩まされることになってしまった。階段は一段として全く登ることができない。水平に動くことはできても高低差があるところでは、杖と手摺がないと全く身動きが取れないのである。

そんなこともあって、我が家では急遽、階段と風呂場に手摺りを設置してもらう工事を断行した。

我が家の階段の写真。手摺りを設置した。
我が家の階段。僕が脊柱管狭窄症に陥ってから手摺りの設置工事をした。

足の指先に力が入らないだけではなく、横になって寝ている時に上側にある足をホンの少しでも持ち上げることが全くできない。例えば右側を下にして横になっている状態で、左足を落ち上げることが全くできない。これは逆でも同じことで、左を下にして横になっているときには右足を全く上に持ち上げられないのである。

注意が必要なことは、痛みが襲ってくるのでそれを恐れて動かせないということではなく、痛みとは全く関係なく、とにかく足に力を入れられないのだった。

さすがにかれこれ3週間近く薬を飲み続けていると、やがて少しずつ痛みは楽になってきた。日によって異なるし、一日の中でもどうしても朝、起きた直後は痛むことが多かった。それでも少身体がほぐれて来ると、昼間はいくらか痛みが楽になってくる。排尿後に激痛に襲われるのも相変わらずだったが、少しずつ痛みはさすがに弱まってきた。

ところが深刻だったのは、この足の脱力感と全く踏ん張れないことであった。平らなところを歩くことはできるようになってきたが、足の指に力をいれられないので、どうしても踵を使って歩くようになる。院長から、かなり歩けるようになってきたれど、まだ踵で歩いているね、と鋭い指摘を受ける。そうだったのだ。慣れてきて、比較的スムーズに歩けるようになったと見えても、実は踵で歩いていて、指に力を入れられないので、実は歩く方は相当にフラフラしながら、苦労して足を引きずるようにして歩いていたのである。

整形外科疾患ではないかもしれないと言われた衝撃

この足のことをM先生の3回目の受診の際に訴えた。痛みはかなり楽になって来たのに、足に力が入らない。だから歩けないし、階段も登れないと。

そこで衝撃的な言葉が先生から出た。どうもおかしい。MRIの写真を見ると、今のその症状は一致しない。この狭窄からはそんな症状が出てくることは少しおかしいというのである。僕が訴える症状は、あのMRIからは考えられない。もしかしたら整形外科以外の疾患かもしれないと。先生はどうも真剣に言ったわけではなかったようだが、僕にとっては衝撃的で、わが耳を疑った。

仮にそうだとしたら、どんな診療科にかかったらいいんでしょうかと尋ねると、「神経内科かな」と。神経内科というのはあのパーキンソン病とか、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を取り扱う診療科である。思わずわが耳を疑った。まさか、この足の脱力感がパーキンソンやALSなのか。まさか、そんな馬鹿な。そうは思っても、整形外科、脊椎の専門医からそのようなことを仄めかされたのは衝撃だった。

だが、やはり先生は真剣に言ったわけではなかったようだ。当院には神経内科もあり、具体的にそちらの先生への紹介や受診勧告がなされたわけではなかった。

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3回の転倒を経験し、怪我も負った

この間、気を付けていたにも拘わらず、3回も転倒してしまった。

1回目は、最寄り駅の北松戸駅。まだ初めの頃だった。自分が杖を使ってヨチヨチ歩いているという認識が身体で掴んでおらず、乗らなければならない電車が入線してきたのを知って、思わず走り出して、それに全く足が付いて行かず、よろめいてしまい、そのまま転倒。後ろから来た近くの高校の女子高校生に「大丈夫ですか」と声をかけられ手を差し出してくれたことが忘れられない。

2回目は、職場の事務所の中で。狭い出入り口の辺りでよろめいたので、転び方によっては角に頭をぶつけたりして危険性が高かったが、「あっ!転ぶ!」というのが自分でも咄嗟に把握できて、うまく受け身の姿勢を取って難なきを得た。あの時も周りにいた職員に随分と心配をかけ、抱え起こしてくれたことが忘れられない。10月28日(木)のことだった。

3回目は、比較的最近のことで病院からの帰途。町田の自宅の近く。この時が一番危なかった。バスを降りて、近くの横断歩道を渡り終わったところで気が付いたら転倒していた。これは転んだ時の衝撃が強く、右肘と左足の膝にかなり激しい打撲を負った。その傷は今でも残っていて、未だにかなり痛む。12月2日(木)のことだった。

思い切って神経内科医に相談すると

この足に力が入らないという症状が、もしかしたら脊柱管狭窄症とは関係のない神経内科的な病気かもしれないということに、僕は本当に震撼とさせられた

M先生から正式に神経内科の受診を勧められたわけではなかったが、僕は院内で神経内科の部長であるN先生と比較的親しくさせていただいていることもあって、正式な受診ではなく、とにかくそんなことがあり得るのか、そのあたりを一般論として聞いてみることにした。

朝、N先生に「個人的なことで教えていただきたいことがあります。ご相談に乗っていただけないか」と声をかけたところ、午後、診察室に案内され、そのまま神経内科のちゃんとした診察を受けることになった。

神経内科という診療科を受診したのは生まれて初めてのことだった。驚いたことに、整形外科医よりも身体を色々と触ってくれるのである。脚を様々な角度に動かし、色々な動きを丁寧に確認してくれた。これが神経内科医と言うものなのかとビックリさせられた。

もちろん、K病院で撮影したMRIの画像も電子カルテでしっかりと見てくれた。

その上て、何とこれはやっぱり脊柱管狭窄症とは別の病状かもしれないと言われてしまったのだ。

そんなことってあるのか!?

俄かに信じられなかった。果たして、どんな病気だというのだろうか!?

(後編に続く)

 

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