自治体病院の致命的な病巣とは?

自治体病院はハッキリ言ってダメ。構造的にダメ。自治体立という組織そのものが、元々困難な経営を強いられている病院では、最もダメージが大きく影響し、経営を立ち行かなくさせている。

そして、自治体病院の一番深刻な点は、その致命的なダメさ加減を、自治体病院で実際に働いている職員は全く気が付いていない。無自覚のままで済んでしまうことにある。

幹部職員ほど周囲が見えなくなる傾向

視野狭窄どころか、自分たちがどういう組織の中で、どういう状況で病院を経営しているのか、それが全く気が付かない。「無菌室で培養された世間知らず」が自治体病院の職員だ。

しかもたちが悪いのは、職制が上がって中間管理職や更に上の幹部職員になればなるほど、周囲が見えなくなってくる。

病院の最高責任者である病院事業管理者が病院の現場をまるで理解していない全くもってどうしようも人が居座っていることが少なくない。病院事業管理者は民間病院でいえば理事長に当たるのが一般的だが、僕自身も体験してきたことだが、このトップの理事長に人材が得られず、経営が混迷を極めるということは多くの民間病院でも見受けられることだ。

つまり、自治体病院であっても民間病院であっても、トップの事業管理者あるいは理事長に優秀な人材がおらず、そのことが原因で多くの病院が経営悪化に陥り、苦しんでいるというのが実態だ。

自治体病院によっては、事業管理者が現場の病院のトップである病院長と役割の分担ができず、更に経営を混迷に導くことが多い。

この話しはまた後日にさせてもらおう。

幹部になればなるほど視野狭窄に陥りがちだという問題提起だった。

お山の大将の部長ドクターは自分の診療科のことしか眼中にない救い難い医者が多く、看護局長(看護部長)も、自分が今働いている病院のことしか知らず、大局的に物事を考えられない人が多いと痛感させられている。極端な視野狭窄と自部署の損得と利害しか考えられないプライドだけが異常に高いガチガチに凝り固まった人が歴代就任しているのも一般的な傾向だ。

さて、今回のテーマに絞り込みたい

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民間から事務長職を登用した点は画期的

今回のテーマは民間から事務長職を登用したことだ。

この点は、僕は非常に評価しているし、画期的な英断だったと賛辞を惜しまない

全国に約1,000程ある自治体病院では、病院の事務長職はその経営母体である都道府県、あるいは市町村の事務方のお偉いさんが病院に出向して事務長職に就くのがほとんどだ。ほぼ全ての自治体病院の事務長職がそうなっていると断言してもいいだろう。

そんな中、僕がお世話になった病院では自らの力不足を潔く認めて、「餅は餅屋」とばかりに民間から病院経営に精通した人材を公募で募集し、事務長業務を任せた英断は、どれだけ賞賛してもし切れない大英断だったと思っている。

全国の他の自治体病院でも是非ともそんな取り組みを行っていただきたいと切に願うものである。

【賞賛すべき点】

某自治体病院での賞賛されるべき取組み

自治体病院の事務長職を民間から招聘したこと

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任せた以上、重大な判断にも加わらせるべき

民間から事務長職を招聘した点は評価できるが、実際には大きな問題があった。

なにぶんにも全国で例をみない試みだけに、やむを得ない点はあったと理解はする。だが、やはりここで総括しておく必要がある。

僕の関わった某自治体病院では、民間から招聘した事務長には病院経営の中身だけに限定させて業務を行わせ、病院にとって非常に重大な課題と問題点、将来構想などについて関わることは排除された。

民間から招聘した事務長職とは別に「〇〇局長」という重要ポストがあり、こちらはもちろん自治体から出向してきた幹部事務職だった。

いわば○○局長と事務長職との2人の幹部事務職が院内に同席し、病院の将来構想や自治体の病院の取り扱いなど重大テーマについては専ら○○局長が対応し、事務長職は会議に出ることさえなかったのである。

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気を遣ってくれたととんだ勘違い

僕は当初、事務長職の負担を軽減するために気を遣ってくれていると信じ切っていたが、どうやら真相は異なっていた

民間から来た行政や自治体のことに皆無の事務長には、市の方針等に関する重要事項には関わらせないという排除であることがやがて判明した。

ハッキリ言ってしまえば、○○局長は民間から招聘した事務長職に面倒くさい病院現場の経営や運営面は丸投げし、責任を回避し、楽をした。それが真相だった。

体よく利用された便利屋だったということだ。

誤解があってはいけないのでハッキリ言っておくが、僕は自分が便利屋として利用されたことにはついては全く構わないと思っている。それでも民間から来た僕を採用してくれたことには感謝している。

だが、僕が一番残念でならなかったことは、事務長には関係ないとして排除された事項、その決定内容が僕が任されていた病院の現場の経営、運営に直結し、それによって僕の計画と役割が発揮できなくなってしまったことにある。

それが僕個人の評価、実績に関わることだけで済むのなら、「与えられた駒の中で勝負しろ、それがお前の使命だ」として仕方ない、それを受けて立って、その中で勝負するのが僕の仕事である。

病院というところはそうはいかない。とにかく利用者としての患者がいることと、多くの病院スタッフがいた。彼ら、彼女らの幸福と満足度を追求することが事務長職の仕事そのものだ。

それが全く無に帰してしまうような重大決定を、事務長職を排除して行うのは間違っている。

そのせいで、病院は致命的な経営的過ちを犯してしまった。

それは次回。

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【教訓と改善策】

教訓:改めるべき点

民間から事務長職を登用した以上、重大な決定には参加させなければならない。中途半端な権限付与では結果を出すことはできず、患者と職員を不幸にする。

 

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