目 次
稲盛和夫の本を読み漁る
稲盛和夫さんの経営哲学に接して以来、すっかり稲盛和夫さんに夢中になっている。まとめて15冊の著作を購入したエピソードは前に触れたとおりだが、それらの本を今、必死になって読み漁り、稲森経営学、稲盛イズムを遅ればせながら吸収中だ。
膨大に買い込んだ稲盛さんの著作の中に、いくつかのカテゴリーが存在することも分かってきた。
稲盛さんの経営哲学を真正面からストレートに説明している本と、稲盛経営哲学を前提に、そのエッセンスを分かりやすく説明し、若い読者や経営者の質問に答えるような形式のものとの、大きく2つに分類できそうだ。後者のものは「稲盛塾」のテキスト的な意味合いが強く、様々なテーマで何冊もシリーズのように出ている。
僕が最初に読むべきものが前者であることは言うまでもない。
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稲盛経営哲学に真正面から切り込む著作
前者も更に大きく2つに分けられそうだ。
稲盛経営哲学の中核部分にストレートに切り込んで、実務的かつ実践的な各論を具体的に展開する本と、経営実務というよりも人の生き方や人生論を説いたエッセイ色の強いものと。この後者には大ベストセラーとなった「生き方」などが含まれる。
僕が現在求めているものは、実際の経営の現場に即活かすことのできるいわば即戦力に役立つものだ。手元に取り揃えた15冊にも及ぶ本の中からその必要性に合致するものをチョイスして精力的に読み込んでいる真っ最中。
今回取り上がる「経営12カ条」は、正にそんな僕のニーズに最も合致する1冊と呼んでいい本だった。
ズバリ過ぎるタイトルだが、偽りはない。稲盛和夫が経営に必要と考える12の心構えをストレートにまとめた本である。
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本書が書かれたのは・・・
驚嘆すべき事実が発覚した。
本書の奥付けには、2022年9月6日 1版1刷とある。
これは注目すべきポイントだ。意外や意外、非常に新しいごく最近出版された本ということになる。2022年と言えば稲盛さんが亡くなった年である!
稲盛さん逝去の直後に発行された本
稲盛和夫さんが亡くなったのは、2022年8月24日のことである。享年90歳。大往生だ。
この「経営12カ条」の発行日は何と2022年9月6日となっている。つまり稲盛さんの逝去の約2週間後である。これは一体どういうことだろうか?
実は、この事実に、本書をじっくり読んでいる最中には全く気が付かず、今回、ブログにまとめる段階になって初めて判明し、少々焦り、狼狽している。
死の直前にまとめ上げたのであろうか?90歳の誕生日を目前にして本当にそんなことが可能だったのだろうか?
そうではなくて、もっと若い頃に書き上げていて、逝去のタイミングで慌てて出版した、そうではないだろうか?色々な憶測が頭の中を駆け巡る。
そこで著者の稲盛さんのコメントが本書の中にないだろうかと確認したところ、見事にヒットした。もちろん僕もしっかり読んだ「まえがき」だ。
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本書は稲盛和夫の遺言書だった!
非常に明解な「まえがき」が冒頭に4ページ書かれているが、その最後に、「2022年8月 稲盛和夫」と書かれている。
えっ!?2022年8月というのは、稲盛さんが逝去された月である。亡くなられたには8月24日。前書きの日付けが亡くなられた月となっている。
そして本書が発行されたのが翌月の9月6日なのである。
こんなことは初めて経験した。今の今まで、全く認識しないで読んでいた。少し恥ずかしく、忸怩たる思いである。
それにしても亡くなられた月にまえがきをしたため、その月の下旬に逝去。もちろん、このまえがきは、本書を書き終えた一番最後に書いたのか、少なくともこの日付けは最後の最後に書き加えたものと考えるしかないだろう。
いずれにしても、本書は稲盛和夫さんの最後の最後、逝去の直前にまとまられた本ということになりそうだ。
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稲盛和夫「経営12カ条」の基本情報
本書にはサブタイトルがある。「経営者として貫くべきこと」というのがそれだ。
つまりこの本は、2つのタイトルを逆から読んで、「経営者として貫くべき12カ条」として、経営者に必要な重要な12の心掛けと取り組むべき課題をまとめたものである。
株式会社日経BP。日本経済新聞出版。


244ページ。稲盛さんが経営者として貫くべきだと考えている経営上の12カ条を、一つずつ非常に分かりやすくまとめている。
本書を開巻するといきなり真っ白な厚地の紙で折りこみがある。広げてみるとそこに経営12カ条として、1条ずつタイトルとサブタイトルの一覧表が示されるという心憎い造本となっている。
そのあとに例の「まえがき」が出てくるという展開だ。
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本書の構成について
「経営12カ条」について、それそれの12の条ごとに、以下のような構成をとっている。
◎「経営12カ条」講話
◎要点(講話のポイントを箇条書きにまとまたもの)
◎補講(講話の内容をよく深く理解できるように、関連する稲森和夫の発言をQ&A方式で掲載したもの)
この説明は本書の目次の最後に掲載されているものだが、これを読むと、どうやら本書は稲盛和夫が自身で全てをまとめたものではなく、編集者なり周囲のブレインが過去の稲盛和夫が発信してきた本や講演などからまとめたもののように思えてくる。
果たして真相はどうなのだろうか?
そのあたりの事実と経緯が明確にならないが、これが稲盛和夫の意思に基づいて作成されたものであることは明らかだ。真相がハッキリしなくても決して本書の価値を損なうものではない。
それはそれとして、この構成が実に的確で、読む方としては非常に読みやすく、理解しやすかった。
先ずはその条に書かれた内容を読んで理解し、そのポイントを1ページに集約し、更にその内容について、どうしてこのことが必要なのか多角的に補強説明され、全体として非常に立体的に理解できるようになる。
中々素晴らしい構成だと感心させられる。
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「12カ条」の内容
本書はこの稲盛経営学の粋と言うべき12カ条の内容そのものが命となるので、ここでその内容を列挙する。
個々の内容に深入りすることは止めておく。実際に本書を読んで、一人ひとりが感じ、学び、身に付けるべきだ。
経営12カ条
第1条 事業の目的、意義を明確にする
公明正大で大義名分のある高い目的を立てる
第2条 具体的な目標を立てる
立てた目標は常に社員と共有する
第3条 強烈な願望を心に抱く
潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持つこと
第4条 誰にも負けない努力をする
地味な仕事を一歩一歩堅実に、弛まぬ努力を続ける
第5条 売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える
入るを量って、出ずるを制する。
利益を追うのではない。利益は後からついてくる
第6条 値決めは経営
値決めはトップの仕事。お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点である
第7条 経営は強い意志で決まる
経営には岩をもうがつ強い意志が必要
第8条 燃える闘魂
経営にはいかなる格闘技にもまさる激しい闘争心が必要
第9条 勇気をもって事に当たる
卑怯な振る舞いがあってはならない
第10条 常に創造的な仕事をする
今日よりは明日、明日よりは明後日と、常に改良改善を絶え間なく続ける。
創意工夫を重ねる
第11条 思いやりの心で誠実に
商いには相手がある。相手を含めて、ハッピーであること。
皆が喜ぶこと
第12条 常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で
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それぞれの条が、更に細かく展開される
上述のように、12条のそれぞれは3部構成となっている。「講話」と「要点」と「Q&A」である。
その全体構成を理解してもらうために、一例として第2条を取り上げてみる。
こんな構成になっている。12ページにも及ぶ目次には全ての詳細が掲載されている。
第2条 具体的な目標を立てる
立てた目標は常に社員と共有する
混迷を極めるなかに結露を開き、集団を導く
従業員を鼓舞する壮大なビジョンを説き続ける
倦まず弛まず従業員に説き続ける
夢あふれる具体的な目標で従業員の力を結集する
中長期計画はいらないー1年毎の愚直な努力を積み重ねる
経費だけが計画どおりに増えていくー長期計画の怖さ
要点
補講 Q1 目標づくりに欠かせない能力とは?
Q2 どのようにして目標を共有するのか?
Q3 目標達成において、なぜ「経営哲学」が必要なのか?
「要点」はこんなに分かり易い
各条の「要点」は非常に分かりやすくて貴重なものだ。
例えば第2条の「要点」はこんな具合。4つのポイントが掲げられている。
□ ビジョンを掲げ、それを具体的な「目標」として指し示しているか
□ 未来への展望を描き、その実現に至る具体的な「方策」を示しているか
□ 目標を、従業員ひとりひとりの目標、月次や日次の目標にまで落とし込めているか
□ 中長期計画ではなく「1年ごとの計画」を立て、確実に遂行しているか
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文章の分かりやすさが最大の魅力かも
稲盛さんの文章はどれを読んでも非常に分かりやすいことが最大の魅力である。書いてある内容は会社や事業をどうやったらうまくやっていけるのかという経営の心構えと実践を説いたものであり、決して容易な話しではないのだが、とにかく分かりやすい平易な日本語で、読んでいて、何の抵抗もなくスッと心の中に入ってくる。
特に本書では「講話」と書いてあるように稲盛さんが講演や稲盛塾等で実際に話したものを文章にしているのであろう。
内容そのものは厳しいが、非常に優しい語り口で、読みやすく、分かりやすい。
理想的な日本語ではないかと感心させられる。
読んでいて、素直にしみじみそのとおりだな、これが実現できれば本当に会社や事業は必ずうまくいく、そう得心してしまうやさしい言葉ながらも実に説得力のある文章だ。
後は、実際に実践してみないことにはどうしようもないわけだが、実は、本書は「話し方」、「文章の書き方」の模範例としても大いに活用できそうだ。
これほど読みやすく、理解しやすい本というものは、そうはない。実に貴重なものだ。
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大経営者が最後にまとめた集大成
本書は稲盛和夫が長い経営者人生において培ってきた経営哲学とノウハウの要諦を全てまとめ上げた集大成である。稲盛和夫の全ての経営哲学が経営12カ条に、そしてこの1冊に凝縮されている。
死んだ直後に出版された本書。これは文字通り稲盛和夫の遺言書に他ならない。


稲盛経営学の神髄をまとめた垂涎の一冊
ここには稲盛経営哲学の全てがあると言っても過言ではない。その経営哲学の最も中核となる神髄をまとめ上げた垂涎の1冊。
本書の帯には「真髄」と書かれているが、僕は敢えて「神髄」と呼びたい。
良くぞ人生の最後の最後、90歳を目前にこんなにうまくまとまった素晴らしい本を遺してくれたものだ。関係者にも最大の賛辞を惜しまない。
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繰り返し読むに値する貴重な名著
稲盛さんに心から感謝したくなる。
そして京セラ、KDDI、日本航空再建など、あれだけ稀有な経営実績を残した人が、そこで身に付けてきた経営哲学の要諦を後進の経営者、事業や組織の改革に取り組もうとする若い人たちの育成に努め、90歳という天寿を全うする最後の最後にこんな素晴らしい本を残せた稲盛和夫の人生に、眩いばかりのものを感じてしまう。
こんな名著を遺言書として残された我々は幸いである。
一人でも多くの人に本書を読んでいただきたい。
読んだ我々は、ここに書かれた稲盛さんの教えを確かに実践しながら会社と事業、組織改革に取り組んでいく。それが稲盛さんへの恩返しでもある。
机の上に常に置いて、繰り返し読むに値する貴重な本。
稲盛和夫に近づきたい。そう思わせるかけがえのない1冊だ。
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