興奮と感動が収まらない凄い本を読んだ

稲盛和夫の経営学を学ぶ中で、もの凄い本に巡り合った興奮と感動が収まらない。稲盛和夫が成し遂げた日本航空(JAL)の再建をまとめたノンフィクションである。

稲盛和夫の側近中の側近にして、稲盛がJAL再建に際して、京セラから連れていった二人のうちの一人、稲盛の秘書だった大田嘉仁がまとめ上げた「JALの奇跡」である。

紹介した本の表紙の写真
本の表紙。帯には他ならぬ稲盛和夫その人が推薦文を寄せている。このメッセージが実に的確で素晴らしい。この約80字に全てが言い尽くされている。

実に感動的な素晴らしい本だった。

読んでいて震え上がる程の感動を味わうこと数え切れず、涙が込み上げて止まらなくなることもしばしばだった。

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稲盛和夫によるJAL再生の真相が生々しく

ここにはあの驚異のJAL再生の真相、その一部始終が生々しく書かれている。本のタイトルになっているJALの奇跡の再建を、稲盛和夫の側近として、実際の改革に携わった当事者としての目線から包み隠さず、一点の曇りもなく活写されている。

そもそも、経営破綻したJALのの再建という困難を極める事業が、わずか数年で実現できたという事実そのものが感動的であるばかりか、そこに到る再建のプロセスが、これまたあり得ない程の感動に満ち溢れていた。

再建の中心にいた人は、もちろんあの稲盛和夫だった。政府(時の総理は民主党の鳩山由紀夫)から会長就任の要請を受け、当初は強く固辞してしたものの、最終的には無給という条件で引き受けた。その時点で稲盛は78歳目前だった。

しかも稲盛和夫は京セラとKDDIを創業し、日本のトップ企業に育てた稀代の名経営者とはいっても、航空業界には縁も所縁もなかった素人であり、破綻規模も尋常ではなく、このまま再建が立ち行かなければ、日本という国の存亡にも繋がりかねない重大事だった。

それを78歳航空業界の知識ゼロ無報酬という条件の中でやってのけた、正に奇跡の再建だった。

稲盛和夫が如何にしてこの未曾有の経営破綻を引き起こした日本航空を再生させるのか、本当にこれは涙と心からの感動なしで読めない素晴らしい本だった。

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JALの経営破綻と再生の実態

先ずは当時の日本社会を震撼させたJALの経営破綻の驚くべき実態と、その後の軌跡の再生を数値に基づいて確認しておきたい。

経営破綻はどんな規模で起きて、そのどん底からどれくらいの期間で再生を果たしたのか、その基本的なデータを把握することが最優先だ。

JALの経営破綻の実態

2010年1月19日、経営不振と債務超過を理由として日本航空(JAL)は、東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請し経営破綻した。西松遙社長以下取締役は即日辞任。

負債総額2兆3,221億円。事業会社として戦後最大の負債を抱えての倒産だった。

JALの再生の実態

1年目(2010年度) 1,884億円(過去最高額)の営業利益
2年目(2011年度) 2,049億円の営業利益
3年目(2012年度) 1,952億円の営業利益

2012年9月19日、再上場。経営破綻から2年8カ月後。

再建にあたり3,500億円を出資した企業再生支援機構は、3,000億円を超えるキャピタルゲインを獲得した。

再上場の鐘を叩く稲盛会長。
再上場の鐘を叩く稲盛会長。ネットより拝借。
再上場の鐘を叩く稲盛会長。ネットより拝借。
再上場の鐘を叩く稲盛会長。ネットより拝借。

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本書の価値に半信半疑だった愚かさ

僕は当初、この本は再建を成し遂げた稲盛和夫自身が書いた本ではなかったため、その価値に半信半疑だった。第三者が書いた本にどれだけの信憑性があるか少し眉唾に思っていた。

稲盛和夫が自身で書いた本を一気に15冊も買い込んだこともあって、経済的にも余裕がなく、やむなく古本で購入した。800円程だったはずだ。

古本であったが、かなりの美本であり、しかも初版本だった。その点ではラッキーだったが、今となっては自分のお粗末な誤解に忸怩たる思いがある。

著者の大田さんは紛れもないJAL再建の当事者だったことと、この本は稲盛和夫自身が書いたものではなかったが、その内容の充実と素晴らしさは傑出しており、自分の浅はかさが恥ずかしい限り。

偏見と先入観がいかにダメなのか身をもって思い知らされることになった。

紛うことなき名著だった。

本書は名著と呼ぶしかない貴重な本である。これだけの困難を極める大プロジェクトはその中核にいた張本人が直々に書いたものよりも、その張本人の身近で冷静に支え、観察していた人の方が、真相と価値をしっかりと理解できるということはままあることだ。

本書がその最たる例になったと断言できる。

それだけではない、著者の大田さんは身近にいて稲盛さんの大改革の一挙手一投足を冷静に観察していたというだけではなく、稲盛さんから指示を受けて、誰よりも汗をかき、身体を張って大改革に身を投じた張本人でもあったのだ。

これ以上、JALの再建を語るにふさわしい人物はいない。

JAL再建に関する本は何冊も出ているが、本書以上に改革の本質に肉薄した本はないと確信する。

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大田嘉仁「JALの奇跡」の基本情報

本書の正式タイトルは長い。「JALの奇跡 稲盛和夫の善き思いがもたらしたもの」という。

致知出版社発行のハードカバー。平成30年9月20日第1刷発行。上述のとおり古本を購入したため、詳細は不明だが、本書はかなりのベストセラーとなっており、もちろん現在も現役で生きている

立てて横から撮影したもの。
この帯が最高だ。稲盛さんの表情も柔和で優しく、推薦文共々、嬉しくなってしまう。大田さんもさぞ感慨深いことだろう。

 

全262ページ。それなりの厚さがある本だが、とにかくJALの奇跡の再建ストーリーが驚嘆に継ぐ驚嘆であることに加え、最初から最後まで感動的なエピソードに満ち溢れていて、引き込まれてしまう。

一度読み始めると、あまりのおもしろさに夢中になって、一気呵成に読み切ってしまう。僕も2~3日で読了した。

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本書の全体構成

まえがき、プロローグ、エピローグを除いて、全体は10章から成り立っている。改革の進捗度合いと各章は時系列で一致しており、非常に分かりやすいので、10章のタイトルを全て列挙しておく。

まえがき
プロローグ
  JAL破綻と稲盛さんへの会長就任要請
  三つの大義と善意

第一章 縁に導かれて
第二章 稲盛経営哲学 成功方程式とは何か
第三章 なぜJALは経営破綻したのか
第四章 意識改革
第五章 リーダーから変える
第六章 全社員の意識を高め、一体感を醸成する
第七章 フィロソフィと正しい数字で全員参加経営を実現する
第八章 JALで生まれた社員の変化
第九章 愛情と真剣さー稲盛さんのリーダーシップ
第十章 甦った心

エピローグ
  盛和塾 塾生の善意
  善意が善意を呼ぶ
  JAL再建の価値
あとがき

 参考資料 JAL業績推移

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著者の大田嘉仁さんのこと

このJAL再生のノンフィクションは、稲盛和夫自身が書いた本ではないことが肝要だ。著者の大田嘉仁さんは稲盛和夫の腹心中の腹心。京セラでずっと稲盛の秘書を務めてきた人物である。

稲盛和夫は政府からの要請を受けて、当初は固辞しながらも最終的には無給という条件で会長職を引き受けるに当たって、京セラの信頼できる部下を2人だけ連れていった。そのうちの一人が大田嘉仁さんだった。

稲盛の秘書を長年に渡って務め、JAL再建に当たって稲盛から指名を受けて一緒に乗り込んでいった大田嘉仁がまとめ上げた本なのである。

プロフィールを例によって、本書の扉から転載させてもらう。

大田嘉仁のプロフィール

大田嘉仁(おおたよしひと)。
昭和29年鹿児島県生まれ。53年立命館大学卒業後、京セラ入社。平成2年米国ジョージ・ワシントン大学ビジネススクール修了(MBA取得)。秘書室長、取締役執行役員常務などを経て、22年12月日本航空(JAL)会長補佐・専務執行役員に就任(25年3月退任)。27年12月京セラコミュニケーションシステム代表取締役会長に就任、29年4月顧問(30年3月退任)。現在は、稲盛財団監事、立命館大学評議員、日本産業推進機構特別顧問、鴻池運輸社外取締役ほか、新日本科学、MTG等、数社の顧問を務める。
平成3年より京セラ創業者・稲盛和夫氏の秘書を務め、経営破綻に陥った日本航空再建時は、意識改革の他、再上場や調達他、多岐にわたり稲盛氏のサポート役を務め「稲盛和夫から最も信頼される男」「稲盛和夫の側近中の側近」とマスコミにも取り上げられた。

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稲盛和夫の改革を他者の目を通じて見る

この本は腹心の部下が、稲盛さん最後の大仕事を一緒になって推進したその一部始終をまとめたものである。

大田さんは稲盛さんからJALの職員の意識改悪という再建にあたって一番重要だった部分をそっくり任された

本書を通じて我々読者は、そんな大田さん自身の言語に尽くし難い奮闘ぶりと、更に大改革の最前線に立って職員を叱咤激励をしながら再建を成し遂げた稲盛和夫の取組みを、大田さんの目を通じて目撃していくことになる。

主役の稲盛さんが終始前面に出てくるわけではない。

だが、稲盛さんが直接登場しない場面であっても、その背後に凛として支えている巨大な稲盛さんの姿が、クローズアップされてくる。直接姿を見せなくても、常に稲盛さんの存在を感じさせ、その姿がじわじわと浮かび上がってくる。

それが凄い。本書をかけがえのない名著ならしめている最大の要因だと思う。

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巨大な実相を現す稀有な指導者像

そばに仕えていた腹心の目を通じて稲盛和夫が推し進めたJALの大改革を見ることで、この稀有な名経営者のとんでもない指導力と人間性がじわじわと浮かび上がってくる。

稲盛和夫本人が語るよりも、身近にいた側近の目を通して描かれることで、却ってこの信じられない善き人の実相が明らかにされていく。

まるで第一級のサスペンス映画を観ているかのようなスリルとサスペンスを味わうことにもなる。最後に再建が達成され、改革の全容が明らかになった時のアッと驚かされる稲盛和夫の人格者ぶりに圧倒されてしまう。

日本航空会長の稲盛和夫。ネットより借用。
日本航空会長の稲盛和夫。ネットより借用。

 

とんでもない巨人の全容が徐々に明らかにされていく。稲盛和夫という人は、名経営者というレベルを優に飛び越えている。

待ち受けていたのは巨額な負債を抱えて破綻し、心身共に深く傷いたエリート集団だった。官僚体質にどっぷりと浸かったプライドだけは異様に高かったJALの幹部たち。

そんな抵抗勢力を納得させ、周囲からは再建は不可能、二次破綻必至と揶揄されていた中で、確実に改革を進め、わずか3年足らずで組織を再建に導いていく稲盛の姿は、鬼気迫るような言葉を失う凄さだ。

正に歴史に残るような指導者と呼ぶしかない。

本書を読んで、稲盛さんの言動に心から感動させられ、涙が込み上げる。こんな人が実際にいたことそのものが奇跡ではないか、そう思わずにいられない。

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稲盛経営学の集大成としてのJAL再建

稲盛さんは若くして京セラを創業し、次に第二電電(KDDI)を創業し、大成功を収めた。その間に自身の経営哲学を深め、それらを膨大な著作に著し、後進を育てることにも情熱を注いできた。

稲盛イズムとも呼ぶべき、稲盛さんの経営哲学には様々な教えがある。

繰り返し主張していることは「フィロソフィ」。そして「成功方程式」「経営12カ条」「六つの精進」「アメーバ経営」などたくさんある。

それらいずれの経営哲学においても、根底に流れているのは、「人としてどうあるべきか」、「人間として何が正しいか」。これを突き詰めてきた。

全く疑いようのない純粋な善き思い、途方もないほどの大きな愛に裏打ちされていた。

そんな稲盛さんの経営哲学の真価を、最後の最後にこれ以上はないと思われるJALの再建に託した。自らの人生の最後の集大成としてこれ以上の大仕事はなかったと思われる。

それを見事にやってのけた。感服するしかない。

日本航空会長の稲盛和夫。
日本航空会長の稲盛和夫。ネットより借用。

こんなことが実際に起きたという奇跡

JAL再建はフィクションではない。こんな凄いことが実際に起きたのだ。しかもまだ最近の話しである。

稲盛によるJALの再上場は平成24年9月。2012年だ。今からまだ13年前の出来事である。

残念なことに稲盛さんは、それからちょうど10年後の2022年に亡くなられたが、稲盛さんの業績は不滅で、その経営哲学は現在も脈々と受け継がれている。

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細かいエピソードにも感動が一杯

本書で明らかにされる稲盛さんの細かいエピソードが感動のオンパレードだ。大きなことから小さなことまで、稲盛さんは全てを変革した。

感動のエピソードの数々は、実際に本書を手に取って読んでいただきたい。必ずや、深い感動に包まれることだろう。

僕は数え切れないほど感動させられたが、具体的にいくつか紹介しておく。敢えて細かいエピソード、もちろん氷山の一角だ。

〇 事務方が万事取り仕切る会議運営も、事前の根回しも全てやめさせる

〇 稲盛さんは、何よりも現場が大事だと考えており、時間を見つけては職場訪問を繰り返し、社員を直接励ましていった

〇 航空業界は究極のサービス業なので、マニュアルにこだわらず、心がこもったサービスに努めてほしい。「美しい心をもつ」「感謝の気持ちを忘れない」「お客様視点を貫く」

〇 コンサルタント会社の売り込みをすべて断る

〇 確かにクレーマーかもしれないが、騙されてもいいから、とにかくお客様を信用しよう

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実際に役に立って感動できる稀な本

我々はせめて、稲盛さんが残した感動の再建ストーリーを学び、それぞれの職場や組織に多少なりとも活かしていきたい。それしかない。

この本の中で紹介された稲盛さんの改革の全てが生きた教材となる。稲盛さんのようには中々生きられないが、それに近づくための努力は重ねることができる。

この本には本当に感動させられた。奇跡の再建を成し遂げたサクセスストーリーそのものが感動的であることはもちろんだが、あれだけの未曾有の経営破綻を引き起こしたどん底のJALがわずか3年でどうして奇跡の再建を成し遂げられたのか?

これを実際に真似することは大変なことだが、ここまでの改革ではなくても、ここに示された具体的な取組みの数々は、貴重なヒントに満ち溢れていて、どんな組織や事業所でも直ぐに役に立つものばかりだ。

そんな細かい技術的なノウハウもさることながら、それらの大改革を推し進めるに当たっての、心の問題、意識改革が最大のポイントとなる。

稲盛和夫が唱える経営哲学の最後の集大成として未曾有の大成功を収めたJAL再建

本書を手にしていただき、一つでも二つでも参考にしてもらえたら素晴らしいことだ。世のサラリーマンはもとより、全てに人に読んでいただきたい感動の1冊

稲盛さんに少しでも近づきたい。先ずは本書を読むところから始めてほしい。

 

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JALの奇跡 稲盛和夫の善き思いがもたらしたもの [ 大田嘉仁 ]

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