これはどうしても観てほしい名作だ!

昨夜(2020.1.29)観た現在ギンレイホールで上映中の『風をつかまえた少年』に圧倒され、とてつもない感動を味わったので、早速紹介したい。

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イギリス・マラウイ共作の『風をつかまえた少年』。素晴らしかった。心の底から感激した。未だに感動が収まらない。

予告編を観て、どんな話しなのかは分かっていたが、まさかこんな超ド級の傑作だとは夢にも思っていなかった。本当に驚かされた。大きな誤算とはこのことだ。

舞台になったマラウイってどこに?

アフリカの最貧国の一つと言ったって、一体どこにあるのか、皆さんご存知だろうか?

マラウイ共和国はアフリカの南東部にある南北に非常に細長い国。タンザニアの南側、ザンビアの東隣りだ。

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イギリス連邦の加盟国だが、1964年に独立して以来、アフリカには珍しく外部との戦争や内戦を経験していないのだが、経済的には恵まれず、世界最貧国の一つとなっている。当時電気を使えるのは全人口の2%にすぎなかったという。

この映画は、その貧しいマラウイにあって厳しい社会環境と家庭環境にありながらも、知恵を使って家族と部族、そして国を救うことになった14歳の少年の実話である。2010年に日本でも出版された本人の書いた一冊のノンフィクション。それが世界を驚嘆させ、世界23カ国で翻訳される大ベストセラーに。その待望の映画化だという。

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こんなストーリーだ

2001年のマラウイ。あのアメリカで同時多発テロが起きた年だが、マラウイでは洪水と干魃が交互に発生し、ただでさえ貧しいところに大打撃を受ける。それでも首都の近くならまだしも、地方の部族には生きる術がない程の貧しい生活。

そんな中、主人公の14歳の少年は待望の学校に入学できたのだが、親は学費を工面できず、やむなく退学に追い込まれる。元々理科が好きで、廃棄されたゴミの中から役に立ちそうなものを拾ってくる生活。

本来は禁止された学校の図書館に潜り込めた彼は、そこである一冊の本と出会い、部族を救うためにある試みにチャレンジする。だが、頼みの父親にも殴られる始末で、絶望に追い込まれるが・・・。

この映画の素晴らしさは

アフリカの最貧困国で、賢い少年が本から風力発電を学び、それを実際に実現する話し。そんな単純なサクセスストーリーで、所詮、小粒な映画だと勝手に思い込んでいた。これはとんでもない先入観と偏見だった。深く反省!

これは紛れもなく歴史に残る、語り継がれるべき大変な名作と断言したい。

アフリカの最貧国の一つであるマラウイでの実話だと言うが、これは本当に胸につまり、心からの感動を呼ぶ素晴らしい話しだ。
とにかくそのスケールの大きさ、それはこの映画を作ろうとした全てのスタッフ、俳優達の志しの大きさとも言えるものだが、本当にそのスケールの大きさと、社会と人間を見つめる確かな揺るぎのない信念の大きさと強さが桁外れというか、とてつもないレベルに達していて、ただただ圧倒されてしまう。

ストーリーが感動的なだけでなく、その映画的な語り口がもう傑出している。
とにかく冒頭の最初のワンシーンからその映像の美しさと確信のある画面作りに身動きが取れなくなり、微動だにできないくらいにその映像に引き込まれた。瞬きするのさえ惜しい程だ。

度肝を抜かれるほどの映像の美しさ。そしてカメラワークが凄すぎる。映像だけで全てを語ろうとする、実に雄弁な画面作り。

非常に印象に残る流麗かつ力強いカメラワークなのだが、変にテクニックだけをひけらかすことがないあたり、これは大変な力量だとただただ感服してしまった。

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一度観たら目に焼き付いて離れなくなってしまう極めて感動的かつ美しい映像がこれでもかと出てくる。本当にこれは凄い映像美。

ネタバレになるので具体的に書けないことがどれだけ口惜しいか、分かってほしい。本当に歓声を上げたくなるようなシーンが随所にある。

この格調の高さと崇高なまでの映像の美しさと雄弁さは、以前どっかで味わったことがあった。何の映画だっただろうか?
この圧倒的な映像美と語り口の見事さを彷彿させるかつての名作映画は?

映画史上屈指の名匠D・リーンに似た味わいが

そうだ、そうだ。あれ。デヴィッド・リーン‼️あのリーンを観た時の感動に近い。
戦場にかける橋。アラビアのローレンス。ドクトル・ジバコ。ライアンの娘等々。

本当にこれはデヴィッド・リーンの映画史の頂点を築いた名作群に限りなく近い、類まれな名作だと信じて疑わない。

映画は113分と2時間を切るもので、決して長くはないのだが、その内容の充実と、ワンシーン、ワンシーンが実に多くのことを語り、伝えてくるせいか、僕の感覚としては、もう4時間も5時間もある大作を観ているような錯覚を覚えた。
正しくデヴィッド・リーンの4時間の大作を観た時のような深い感動と同様のものだ。

あまりのおもしろさと、共感。更にハラハラドキドキの展開に映画はあっという間に終わってしまうが、内容的な満足度は正に4時間、5時間の映画を観たような感覚なのだ。

食べるものが全くないという凄まじい貧困と自然の猛威に虐げられ、頼るべき政治権力からも虐げられた人々の怒りと底知れぬ絶望。その計り知れない怒りと絶望の中にあって、希望を捨てずに最後まで頑張り抜いた14歳の少年の粘り強さと執念に、流れる涙は止まらず、ハンカチをどれだけ拭ったことか。本当に心の底から感動させられた。

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この名作を作った監督は何と⁉️

これだけの感動的な脚本と見事な映像美を作り上げたのは、一体誰なんだ?と観ていて気になってならなかった。これは相当な力量の持ち主だぞ、大変な監督だ。一体誰だ?

驚ろいた。まさか。あの俳優だったのか!?

この映画の中で、最も感動的な演技を披露していたあの父親役の俳優!彼が、脚本を書き、監督をしたのだ。その事実を観終わってから知って、もう腰を抜かさんばかりに驚嘆した。

キウェテル・イジョフォー!
僕は彼の名前は頭に入っていなかったが、色々な作品で良く知っている顔だった。素晴らしい存在感と心に染みる深い表情が、この映画の中でも際立っている。

この俳優の初監督作品だという。ただただ驚愕し、開いた口が塞がらない。これが初監督作品⁉️そんなことってどうしてありえるんだろう?
これだけの語り口と映像の美しさと雄弁さを、どうしてど素人の監督が作ることができるのか、恐ろしくなってしまう。

世の中には凄い才能の持ち主がいるんだと痛感させられる。ひたすら脱帽するしかない。

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但し、パンフレットの情報によれば、イジョフォーはこの映画を完成させるのに10年を費やしたそうで、当初は父親役を演じるのは年齢的に無理だと別の俳優を考えていたらしい。ところが、10年の歳月を経て演じされるようになったのと、映画製作上も予算の確保のためにも自分が出演した方が助かったとのこと。かなり苦労もされたんだなと納得。そりゃあそうだ。頭が下がる。

僕が一番感動するのは

僕が一番嬉しく、感動させられたのは、学ぶことで世の中を変革できる、本の力で学び、それを基に世界を変えることができたという、そのことだ。

学問と読書、学ぶことのかけがえのなさを痛感させられて、この世界もまだまだ可能性はある、まんざら捨てたもんじゃない、そんな大いなる実例を示してもらえたことにいたく感動。

日本国内でも海外でも、やたらと絶望的なことばかりが溢れ返っている昨今にあって、こんな凄まじいばかりの貧困と劣悪な自然環境、社会環境の中で少年が奇跡を起こし得たことで、この人間社会にも一縷の望みを感じられた。このことが、映画そのものの深い感動と併せて、何よりも嬉しい。

これは数年に一本あるかどうか、もしかしたら数十年に一本の名作ではないかと思えてくる。

類まれな映像美とは言っても元々未曾有の貧困ぶりを描いているわけだから、そこに映し出されるものは、必ずしも美しくないものがあるどころか、とても美しさとは無縁の悲惨な姿も多い。特に食べ物の粗末さと言ったら、本当に目を背けたくなるくらい。でも、その持っている映像の力が観る者に強く迫るのである。

映画は大きく確か4つ程度のチャプターに分かれ、農作業にちなんだ作業行程のテロップが流れる。種まき、収穫、風などと。この四季折々の風景とそこに同化する村人達の生活ぶりが如実に伝わってきて、いつまでも観続けていたくなるのである。

脳裏にこびりつく崇高なシーン

本当に忘れ難いシーン、映像が目白押しなのだが、妙に印象的でいつまでも脳裏にこびりつく特殊な映像があるので、これは是非とも紹介しておきたい。

舞台はアフリカ最貧国のマラウイなのだが、主人公達はその中でも更に首都から遠く離れた地方で生活している部族である。
その部族に古くから伝わっている地域の習わしというか特殊な風物があって、非常に印象に残り、忘れることができない。
それはこの映画の中で数回出てくる葬儀のシーンに登場する。

葬儀の主催者、つまり遺族達とは別に、葬儀の最後の最後に、民族衣装と仮面を被り、特殊な出で立ちで、遠くから葬儀の場に集まってくる8〜10人程の集団がいるのだ。イメージはまるで違うのだが、日本で言えばあの秋田の「なまはげ」のような。アフリカならではのリズミカルな音楽を奏でながら近づいてくる。もちろん囃子言葉のような独特の声を出しながら。葬儀を執り行っている遺族達はその音楽と囃子言葉で彼らが葬儀の場にやって来てくれたことを知るのである。

これは地域独自の土着宗教の「神の使い」なのだと思うが、詳細は分からない。その集団の姿がかなり強烈なのだ。特にめちゃくちゃ長い、いや高いと言うべきか、日本でいう竹馬のようなものに乗ってゆったりとゆったりと独特なリズムとテンポで踊るように、舞うように葬儀の場に近づくひときわ背の高いキャラクターがすごい。良く見ると竹馬のようなもので支えているわけではなく、何か非常に長い脚のようなものを繋いでいるだけのようだ。ちょっとしか出てこないのだが、それが歩く様は何とも強烈な印象を残す。まるでアフリカの大地を悠々と闊歩するキリンのようだ。実に幻想的。
これが何とも神々しく、崇高さを醸し出す。

彼らの前に喪主が歩み出て、死者を悼み、遺族を癒す様に他の既存の宗教儀式にはない、素朴ながらも地域の大地に根付いた大いなる高みの存在を感じさせ、背筋を伸ばさずにいられなくなる。その崇高さは、一方で心が解放される爽快感のようなものまで感じさせ、心が洗い清められるかのようだ。

土着の宗教の尊さを身をもって感じられた貴重な体験となった。
本当に色々と心を打たれ、勉強になる映画なのである。アフリカの大地とそこに暮らす人々の生活ぶりを知ってもらうためにも、どうか一人でも多くの方に、この名作を観ていただきたい。

主人公の少年の快挙

ちなみにこの実話の主人公、ウィリアム・カムクワンバはその後、アメリカの名門大学に進み、何と驚くなかれ。2013年度のタイム誌の「世界を変える30人」に選出されるという快挙を成し遂げた。全く素晴らしい話し。本当に嬉しくなる。

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