【第2章】からの続きです。
某自治体病院ではなされていなくて、民間から事務長職として赴任した私が新たに導入した取り組みの紹介と解説の第3弾です。
自治体病院の病巣がどんどん明らかになってきます。
目 次
病院の年度毎の重点目標も設定
順番が逆になってしまいますが、病院の年度毎の重点目標を設定しました。これは次年度の予算が自治体当局から承認をもらった後で、次年度の具体的な重点目標を設定する非常に重要なものです。
病院の基本理念と基本方針を念頭におきながら、次年度に病院として何を目標として何にどのように取り組むのか。それを決めるわけです。
先ず私がBSCを意識しながら叩き台を作り、病院長にみてもらって、病院長が修正した上で、病院の原案とします。
その後あらためて、事業管理者、全副院長、○○局長、看護局長という病院の幹部中の幹部が一堂に会して、毎年議論を尽くして作り出していきました。
文章の「てにをは」、目標の順番も含め、一字一句に至るまで徹底的に議論を尽くしてまとめ上げていきます。
具体的なKPIは予算の数値を中心に、病院として譲れないギリギリの数値目標を掲げました。
目標確定後は、中間管理者が集まる周知徹底の会議、師長会義でも詳しく報告し、その後各部署はその病院の重点目標に基づいて、各部署の目標を策定する流れとなります。
これが病院の目標としては、最も重要かつ魂の籠ったものとなりました。

BSCを踏まえて、病院幹部が熱心に具体的な病院の年度単位の重点目標を定めたことは、病院の全職員にとってもインパクトが大きく、意識改革を進めるにあたっての大きな貢献となったと考えています。
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教訓と改善策【年度毎の重点目標設定】
1.年度毎の病院の重点目標は必ず掲げなければならない。病院長と事務長職とで原案を作成し、全副院長を集めるなどして、病院幹部全員が関わって策定することが重要である。
2.設定の上は、病院内にくまなく周知し、徹底を図ることに心がけたい。目標管理を導入している病院にあっては、これに基づいて各部署、スタッフの目標を設定することになる。
総務省の「中期経営計画」との関係
自治体病院の指導監督官庁は総務省です。私は某自治体病院で事務長職を務めるまで知らなかったのですが、病院として厚生労働省の指導監督を受けるのは当然として、自治体病院は総務省の指導監督も受けるのです。
二重構造となっており、ここにも自治体病院の非効率性と分かりにくさが存在しているように思えます。
全国の多くの自治体病院が経営的に苦戦している現状に鑑み、総務省が全国の自治体病院に経営改善のための「中期経営計画」の策定と提出を求め、その評価を毎年行うように指導しているのです。
それを受けて、某自治体病院でも私の入職以前から「経営改善のための中期経営計画」を作っていたものの、その内容は非常に問題の多いものでした。
従来の中期経営計画の大きな問題点
細かいことを言いだすとキリがないのですが、大きく3つありました。
1.「病院の基本理念と基本方針」との連動がほとんどなかった。
2.急性期病院としての本来の役割を度外視し、周産期医療や3次救急など特殊な部分を前面に打ち出した本末転倒ないびつな計画となっていた。
3.現場、医師を始めとする医療職の意見がほとんど反映されておらず、本庁出向者である官僚が自分たちだけで作成したものだった。
最終的に病院長の了解を得たことは当然だが、作成過程において病院長、副院長を筆頭とする医療職、病院の現場の意見を聞かずに事務屋(官僚)が自分たちだけで作成したものだった。
私が厚い信頼関係を構築させてもらった病院長(私の招聘と同時に副院長から病院長に昇任)も、この中期経営計画の内容と策定過程にはひどく憤慨していたことを付記しておきます。
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官僚だけで作成した計画
内容もさることながら、最大の問題点は現場の医療職から意見を聞くことも議論もなしで、官僚である本庁からの出向者たちが事務的に作ったものだったことです。
正確にいうと、本庁から出向で病院に来ている官僚たちは、病院と医療のことは何も分からないので、官僚にうまく利用されていた一部プロパー職員が、実務を担っていました。
出向者たちはそのプロパー職員の意見を取り入れたことで、病院職員の意見を聞いたつもりになっていたかもしれませんが、一部限られた事務屋だけで作り上げたものだったのです。
これに携わった職員たちは、「そんなことはない、ちゃんと現場の責任者たちを巻き込んで、数字は全て現場から出してもらったものだ」と確実に言うはずです。
それは欺瞞、屁理屈ではないでしょうか。事務方(官僚)は欲しい項目と指標を先に決めておいて、時間をかけた相談もなく、該当する数字だけを現場に求めていたのです。
少したちが悪いと思われるのは、そんな形でしか現場を関わらせなかったにも拘わらず、数字を聞き出したことを取り上げて、現場から出してもらった数字だと言い張ることです。
これははっきりいうと牽強付会の最たるものかもしれません。
それでは病院は一丸になれません。病院の基本理念と基本方針の達成に向けて、現場とベクトルを合わせて「より良い病院」を作り上げていくことは困難となります。
「中期経営計画」で私は何をやったのか
私はこの中期経営計画の見直し(「第3次経営計画(4カ年計画)」)に情熱を傾けました。
1.中期経営計画は形骸化していた病院の基本理念と基本方針を実現させるためのものだと強調し、原点に立ち返らせました。
2.中期経営計画に求められる評価項目と指標を、全てBSCで整理し直しました。
3.その考え方を医師を始めとする医療職に丁寧に伝え、具体的な指標と評価項目は現場サイドから上げさせ、現場の医療職の声や意見を反映した具体的かつ実践的なものを構築しました。
窓口になる事務方には、くれぐれもこちらから押し付けることはせず、とにかく現場の思いを吸い上げてほしいと再三依頼しました。
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BSCで中期経営計画が一新された
新たに求められた「第3次経営計画(4カ年計画)」に先立って、病院ではBSCに基づく目標管理を導入しており、そのBSCを経営計画に落とし込むだけ、病院で新しく取り入れたBSCの目標管理と経営計画は表裏一体のものだという私の主張は、すんなりと受け入れられ、第3次経営計画は一新されました。

目標管理という発想も知識も経験もない中で、総務省から求められて評価項目と指標を策定することは相当無理があったと同情はしています。
BSCと目標管理が根底にあれば、何も慌てる必要はありませんし、すんなり作成できて、病院のオリジナルの目標と総務省から求められた外部にオープンとなる中期経営計画は、範囲の広い狭いはあっても、完全に一体のものとして、誰にもすんなり受け入れられます。


その両者が一体となって、初めて病院が定めた「基本理念と基本方針」の実現に貢献することができるわけです。
教訓と改善策【第3次経営計画】
1.総務省に提出し、外部にもオープンとなる第3次経営計画(4カ年計画)の根底にあるものは「病院の基本理念と基本方針」の実現と心得て、病院の総意を結集して策定する必要がある。
2.その際にBSCを土台にすれば、非常に理解しやすく、評価項目と指標の作成もスムーズにいくだろう。何よりも病院業務の全体が的確に反映できるはずである。
3.BSCに基づいて経営計画と毎年作成する病院の目標を連動させなければならない。
4.実際の策定に当たっては、現場の医療職の意見と思いを極力反映させ、この計画を病院の全職員が関わって策定したものにすることが不可欠だ。
【第4章】に続きます。

