一体これは何なんだ!?めちゃくちゃな映画!

実に奇妙な変な映画を観た。全くもって理解不能。極めて不愉快。しかも実に痛い映画

僕はたとえどんな映画であっても、多少なりとも見所というか何らかの観る価値を見い出すタイプの人間で、「こんな映画は観る価値がない」とか、「全く時間の無駄使い」だったなどと全面否定することは、極力避けている。

そんな僕だが、この「TITANE/チタン」を観て、その大方針が少し揺らぎ始めている。

それくらい、この映画に価値や見所を見い出すことは、僕にはかなり難しかった。

紹介した映画「TITANE/チタン」のジャケット写真
これがブルーレイのジャケット写真。

僕の不満は大きく2つ

とにかく訳が分からない奇妙極まりない映画だということ。

それはまだいいとしても、一番問題だと思うのは、物語が完全に破綻していることが耐え難い

この映画は本当に変わっていて、前半の展開と、後半の展開がまるで脈絡を欠いていて、同じ一本の映画の一つのストーリーとは到底思えないのである。

前半の解決はどう決着をつけるんだ!?と思ってずっと観続けていても、最後の最後まで前半の最大のテーマは現れずに、全く違う物語としてそのまま終わってしまう。

それはないだろうと。これはいくらなんでもフェアじゃない。

完全に置いてきぼりをくらってしまうのだ。

やめてほしい。構成感がゼロ完全に破綻している。

むしろ思い切って、2本の映画にしてくれれば、それはそれで良かったのかもしれないと思う。

本当にどういうことなのだろうか?

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何とカンヌ映画祭のパルムドールに輝いた

この訳の分からない奇妙な映画「TITANE/チタン」は、何と驚くなかれ!

あのカンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを獲得しているのである。2021年のこと。

唖然茫然。ハッキリ言って、嫌になる。

あり得ないことだ。いくらなんでもこの映画がカンヌのパルムドールはない

映画界全体の資質とスキルに深く影響し、将来に禍根を残すので、こういうことは本当に困る。

誤解しないでほしい。僕はこの映画を最初から貶しているが、映画に対して僕は非常に寛容で、どんなおかしな映画でも、その映画そのものの存在意義を否定するようなことは、決してしない。

僕自身が価値を見出せないない映画でも、どんなおかしな映画でも、内容的にゼロでも、極めて反社会的なものであっても、その映画そのものを頭ごなしに否定するつもりは毛頭ない。

その映画の存在意義は認める。

だが、そのことと著名な映画祭などで立派な賞を受賞することとは別問題だ。

おかしな映画、訳の分からない映画が作られてもいいけれど、それが栄光ある賞を獲得するようなことは避けてほしい。

そう言いたいのである。

ブルーレイの裏ジャケット写真
こちらが裏ジャケット写真。解説、コメントは実に分かりやすい。

 

そういう意味では、今回の「TITANE/チタン」のカンヌでのパルムドール獲得は、カンヌの威厳と価値を貶めたのではないかというのが僕の意見だ。

カンヌ国際映画祭は毎年、その都度、審査委員長を招いて、その委員長に相当な権限を委ねるので、たまにこういうことが起きてしまう。

この年の審査委員長は、アメリカの著名な映画監督スパイク・リーだったが、スパイク・リーは黒人の映画監督として頭角を現し、実績もある優れた監督だが、相当な変人にして、あまりにも偏見、いわば逆偏見の持ち主で、僕はあまり好きな監督ではない。

彼ならこの「チタン」にパルムドールを与えても、むべなるかなと思ってしまう。

炎上覚悟でこれだけは言っておきたい。

この「チタン」は、カンヌのパルムドールに相応しい作品とはどうしても思えない。誤った選択だったのではないだろうか。

重ねて言うが、訳の分からないおかしな映画が存在することには、何の不満もない。きっと大好きな人もいるだろう。いつの日か、もしかしたらカルトムービーになるかもしれない。

現に好きな人も相当いるようだ。好きどころか、熱愛している映画ファンがいるかもしれない。

だが、僕はこの映画がパルムドールに輝いてはダメだと思う。

映画のチラシの解説
チラシの解説。この作品の特徴と売りを全面に出している。少し煽り過ぎだと思うが。

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映画の基本情報:「TITANE/チタン」

フランス・ベルギー合作映画 108分(1時間48分)

【公開】
2021年7月13日(カンヌ国際映画祭)
2021年7月14日  フランス
2022年4月  1日  日本

監督・脚本:ジュリア・デュカルノー

出演:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル、ギャランス・マリリエ、ライス・サラーマ 他

撮影:ルーベン・インべンス

第74回(2021年)カンヌ国際映画祭:パルムドール

キネマ旬報ベストテン(2022年・第96回):第16位

 ブルーレイのディスク本体
ブルーレイのディスク本体。映画の中のワンシーンが印刷されている。

どんなストーリーなのか

少女時代に父親が運転する車に乗りながら、父親と口論していた主人公のアレクシアは、直後に激しい交通事故にあって頭を打撲。治療として頭蓋骨の中にチタンを埋め込まれる。

いきなり大人に成長しているアレクシア。チタンを埋め込まれて以来、異常な程に車に関心が向かう一方で、関わる人間を突然殺害する殺人鬼になっていた。何のためらいもなく、残虐な方法で次々と殺人を重ねる。

車と性的に交わってオーガズムに達するなど理解不能なシーンが続出。

捜査の手が身近に迫り、自ら顔を潰すなどして必死に逃げる中、行方不明になった息子を探している消防署長のヴァンサンと巡り合い、そのままその息子になりすましてしまう。こうして二人の奇妙な共同生活が始まるが、その時にアレクシアは妊娠していた。

息子として貫き通すことができるのか?一方のヴァンサンも大きな心の闇を抱えていた。アレクシアはどうなるのだろうか?無事に出産できるのか?この二人の行方は?

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脚本と監督は若くて美しいフランス人女性

このめちゃくちゃ変わった映画を観て一番驚かされるのは、この映画を作ったのはまだ39歳の若い女性だということ。写真を見ると大変な美人である。

ジュリア・デュカルノーというフランス人。本作が長編映画の第2作目だという。

1作目は「RAW~少女のめざめ」という一部ではかなり話題になった作品だったが、これはカニバリズム(人肉食)をテーマにした、何ともグロテスクな映画だった。

第2作目の「TITANE/チタン」は、「RAW~少女のめざめ」を遥かに凌駕する更に過激で、バイオレンスに満ちた、目を背けるシーンが連続する衝撃作。

グロさが半端ない。

こういうものを女性が作るというのは、ジェンダー平等の時代とはいうものの、正直驚いてしまう。

本当にかなりショッキングな超刺激的な映像のオンパレードとなっている。

デュカルノーの名誉のために、事実だけはお伝えしておくと、このジュリア・デュカルノーは「ピアノレッスン」のジェーン・カンピオンに続くカンヌ国際映画祭のパルムドールを獲得した史上2人目の女流映画監督ということになる。

39歳の若さにして、2作目の映画でいきなりパルムドールに輝くということは、大変な快挙であることは間違いない。

グロ過ぎる過激な描写の連続に辟易

その描写はあまりにも過激で、グロい。

映画の前半はアレクシアが何のためらいもなく、平気で周囲の人間を殺しまくる話し。その殺戮の方法があまりにもエグいというかグロいというか、ほとんど正視に耐えない残酷なも

しかも、突然、何の前触れもなく殺戮行為に入るので、観る方も用心が必要だ。

そもそも、この映画を観るに当たっては本当に覚悟が必要。メンタルが弱い人には決してお勧めできない

下手をすると重篤なトラウマを受け、一生の心の傷を負うことになるかもしれないので、くれぐれも注意してほしい。

残酷、過激、グロくてショッキング!そして意味不明とくるので、やっぱりこんな映画がカンヌでパルムドールは困るのである。

僕はバイオレンスに満ち溢れた映画も大好きで、今まで様々なものを観てきたが、意味のない過剰なバイオレンスには辟易させられ

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物語が完全に破綻している

冒頭でも書いたが、この映画は構成的に完全に破綻していて、僕はどうしてもついていけない。

前半の異常な殺人鬼はあれだけ人を殺し、しかも捕まることを避けるために必死で逃げるのに、後半はそんなことは全くお構いなしに、別のドロドロの愛憎劇が展開されるといった具合だ。

こんなことが許されてしまうのも、新しい映画ということなのだろうか?

僕が古臭い価値観しか認められない石頭なのかもしれないが、実はそんなことは決してなく、僕は相当に破天荒な映画にも愛着を感じてきた根っからのシネフィルである。

ズバリ、キャッチコピー。
非常に端的なキャッチコピー。正にこのとおり。僕は困惑した側だ。

 

だが、物語が破綻してしまっているものは、困ってしまう。

もしかしたら、この映画は真の映画ファンを見極めるための「踏み絵」のような存在かもしれない。

だとしたら、僕は不合格になってしまうが、それを恐れてこの映画に迎合したり、忖度する気は毛頭ない。これだけはハッキリと言っておく。

アレクシアの妊娠は一体何?相手は誰?

アレクシアの妊娠が判明するのだが、その父親が誰なのか映画を観ていてもさっぱり分からず、性生活が乱れていて元々父親なんて特定できないんだろうと気楽に観ていたが、どうもおかしい。

膣からオイルが流れ出るなど、本当に理解不能な描写が続き、やがて、この妊娠は車との性行為によって妊娠したものだと分かってくる。

車との性的交わりで妊娠!?そもそも意味が分からない。意思を持った車ということのようだ。

そんなバカなことってあるのか!?いくらなんでもついていけなくなる。

一体、デュカルノー何を描こうとしているのか?

作者の狙いとテーマがどうしても理解できない。

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チタンの埋め込みで人間性が崩壊

もちろん、アレクシアが少女時代の交通事故で頭蓋骨にチタンを埋め込まれたことで、精神に変容をきたし、人間性が喪失してしまったと考えるのは一番簡単で、多分そうなのだろうが、それにしてもあまりにも説明不足。

だとすればアレクシアが殺人鬼に豹変することは、アレクシアは正に被害者ということになるのだろうが、映画を観ている限り、このアレクシアには同情する余地がない。

本当にこの「ヒロイン」にはこれっぽっちも共感できないのである。

観ていてただただ気分が悪く、辟易とさせられるだけだ。

気楽に観ると大火傷を負う危険過ぎる映画

今回、僕はこの映画を必要以上に貶してしまっているのかもしれない。

父親との諍いが原因で交通事故に遭い、頭を打って頭蓋骨にチタンを埋め込まれた。

チタンが頭に埋め込まれたことで、車を性の対象と見るようになってしまう。変身だ。

それに伴って、普通の人間としての良心や道徳観が喪失されてしまう。

その結果の無慈悲な殺戮。

こんな話し、僕の身近にあったよな?とフト思い至る。

そうだ。何と僕が愛して止まない手塚治虫じゃないか。

例の黒手塚、手塚ノワールの世界である。

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「黒手塚」そのものじゃないかと思い至る

黒手塚の中でも、あることが原因で人間性が失われ、平気で人を殺戮しまくる話しはいくつもあった。

特に顕著なのは「MW(ムウ)」と「ガラスの城の記録」だ。

どちらも僕が夢中になっている作品である。冷静になって考えると、実に良く似ている。

変身というのも、手塚治虫の究極のテーマであった。

それなのに黒手塚は良くて、チタンはダメだって、一体どういうわけなんだ?

と自問自答してみる。

すると「チタン」に対する思いが少し変わってきた。

この映画に対抗があるのは、そのグロくて残酷なストーリーそのものではなく、物語としての構成感の欠如と破綻にあるのかもしれない。

前半は許せるが、後半と、そもそもこの2つが結び付かないことへの苛立ちか。

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映画の是非を、実際に観て確認してほしい

僕はこの映画をこんなに貶してしまったのだが、黒手塚と全く同じ内容じゃないかとハタと気が付いて、少しぐらついてきた。

問題作であることは認める。こんな映画が存在することもいいだろう。

良心が完全に崩壊したあまりにも残酷な主人公の存在もいいだろう。

だが、やっぱりカンヌのパルムドールはあり得ないと思ってしまうが、どうか実際にその目で観て、確かめて、この映画の是非を考えて、いや感じてほしい。

但し、しつこいようだが、これほど刺激的でグロく、痛い映画も稀である。

くれぐれも覚悟して観ていただきたい、これ以上は考えられない衝撃作である。 

滅多にない強烈な刺激を求めている人にとっては、感涙ものかもしれない。

いずれにしても観る人を選ぶ映画であることは、間違いないだろう。

 


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