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シャクヤクが姿を消す悲しい季節
早くも6月が終わろうとしている。もう7月が目前に迫ってきた。
本日(2025.6.26)、西日本では観測史上最も早い梅雨明けとなったというニュースが駆け巡っている。
こうなると、シャクヤクの季節は完全に終わりを迎えることになる。我が家の庭のシャクヤクはもうとっくに全て姿を消した。5月中に消えてしまっっていた。
悲しい季節の到来だ。
不思議なことに、街中の花屋さんにはまだシャクヤクの花が市販されているのを見かけるが、さすがに少なくなってきた。
それはそうだ。もう梅雨明けで、猛烈な熱射地獄が始まる季節の到来なのだから。そもそも今年は梅雨入りが遅く、しかも空梅雨だった。梅雨の真っ只中にあっても、もう灼熱の猛暑が連日続いていたのだから。
ごく身近で衝撃的な遭遇を果たす
そんな状況の中、驚きの体験をしてしまった。
何と我が家のすぐ近くにある行きつけのスーパーマーケットの一隅にある花屋さんで、あの「かぐや姫」と遭遇してしまったのだ。
6月20日の金曜日だった。
僕は5月以降、そのスーパーに行くと、必ず店内の片隅にある花屋を覗くようにしている。お目当てはもちろん、シャクヤクだ。
最寄り敵のデパートの入り口付近にあるお洒落な花屋、今はフラワーショップとか、フローリストと呼ぶんだろうが、そことは値段も大違い。品種の数や量も決して多くはないのだが、素晴らしく立派なシャクヤクが、破格の安値で売っていることもあって、必ず立ち寄るようにしていた。
開花した「かぐや姫」と出会ってしまう
そこであるものを見かけてしまった。金縛りにあったかのようにビックリ仰天し、しばらく歩けなくなるほど。店の奥に目を疑うような、巨大な花が満開に咲き誇っていた。
えッ!?あれは一体なんだ。この時期にまだシャクヤクが残っていることだけでも驚きだったが、その花の大きさといったら度肝を抜く。
中に入って恐る恐る花に近づく。これはどう見ても「かぐや姫」に違いないと直感した。「わあ、こんな小さな店にかぐや姫がいる」と心臓がバクバクだ!!
そう思って、良く見ると、ケースにしっかりと「かぐや姫」と書いてあった。こんなことも珍しいので余計に驚いてしまった。他の様々な品種には、シャクヤクとあるだけで、個別の品種名なんて全く書いてない。
「かぐや姫」だけ「かぐや姫」と。
これを目にした時の衝撃と感動を想像できるだろうか!?
思わず「わあ!」と声が出てしまった。
スーパーの店内で買い物をしていた女房を探して、見てもらうと、彼女も「わあ、大きいねえ」と感嘆の表情。
信じられない廉価に更に仰天
そこには4輪程あった。しっかりと開花している。満開状態。それだけにめちゃくちゃ大きい。
僕は若い店員さんを呼んで、「これはシャクヤクのかぐや姫ですね。僕はシャクヤクのマニアで、このかぐや姫という品種はあらゆるシャクヤクの中でも最も大きな花を誇る品種で、我が家でも育てているが、2年目の今年は、花は咲いたものの、まだ小さい云々」と話し込んでしまう。
何と1本380円だった!
あの巨大なシャクヤク「かぐや姫」の大輪がたったの380円!?
目を疑った。確かに380円と書いてある。税抜のようなので、実際には418円になるのだが、それにしても安過ぎるだろう!?
しっかりした店員さんだった
その若い店員さんに、「どうしてこんなに安いんですか?非常に珍しい貴重なシャクヤクなのに」と尋ねると、若いお姉さんとは言っては、さすがにプロだ。
立派な、非常に納得できる明解な答えが帰ってきた。
「もう満開に咲き過ぎてしまって、日持ちがしないので、売り物にならないんです」と。
「ここまで開いてしまうと、直ぐに花弁が散り始めます」と言って、4輪あったかぐや姫を見て、お薦めできるのはこの1輪だけですね」と4つの中にあっては、一番小振りな花を薦めてきた。他はもう開き過ぎて商品になりません」
驚いた。若い女性だったが、プロフェッショナルだった。ちゃんとポリシーというか、哲学を持っている。大いに感心した。
ということで、僕はその店員が薦めてくれた1輪を418円で購入して、嬉々として帰宅したのだった。
開花した立派なかぐや姫を見たのは初めて
僕は3年前に、JR御茶ノ水駅に隣接した小さな花屋で、偶然にかぐや姫の蕾、咲きかかっていた蕾を見つけ、腰を抜かさんばかりにビックリして、以来、かぐや姫に憑りつかれて、何とか自分の庭でも育ててみたいと2年間、ずっと大切に育てあげてきたことは多くの読者はご存知だろう。
その初めてのかぐや姫との衝撃的な出会いも、実は開花目前の巨大な蕾を見ただけで、実際に咲いている花は、ネット上の写真で見たことがあるだけで、実際には一度もなかったのだ。
それを、普通ならもう終わっている6月の下旬に我が家の直ぐ近くの行きつけのスーパーで見つけるとは、本当に信じ難い話しだった。
実際のかぐや姫の花を、我が家のごく近くで発見したばかりか、今、我が家のリビングの花瓶の中に挿してある。
文字通り最後の最後に、本物のかぐや姫の降臨を体験することになった。
何て幸福なんだろうと、しみじみと思った。
満開に咲き誇る巨大なかぐや姫
これが購入したかぐや姫の姿である。いかがだろうか?
本当に大きな花、巨大と言うしかない花だった。こんなに大きなシャクヤクは、未だかつて見たことがない。信じられない程の大きさである。
写真を何枚か撮ったので、確認してほしい。花の大きさを写真で実感してもらうのは、実は至難の技で、どうしても上手く伝わらないことにいら立ちを感じてしまう程だ。
今回はマジックや物差しを当てがったが、こんなものは写真のアングルでどうにでもなるので、まるで実相が伝わらない。
それでも、雰囲気だけでも伝わるだろうか。
思っていたよりもずっと美しくもある
今回、実際に開花したかぐや姫の大輪を目にして実感したのは、想像していたよりもずっと美しい花だったときうことだ。
かぐや姫の魅力は、とにかくその途方もない花の大きさに尽きると思っていた。ここまで巨大な花は、その大きさだけで何よりも貴重だと。そう思い込んでいた。
大きさだけを誇る花で、花そのものの美しさはあまりどうってことないんだろう。そう思っていた。大きさと美しさとは別物だと。
逆に言うと、あまり美しくない花でも、あそこまで巨大だと、そのことだけでも絶大な価値がある。そういう花だと勝手に思い込んでいた。
飛んでもない誤解だった。十分に美しい魅力的な花だった。
ピンクがかった白で、非常に品がある。実に美しい。どれだけ眺めていても見飽きることがない。
我が家のかぐや姫は、本当にかぐや姫?
こういうものを実際に見てしまうと、どうして我が家のかぐや姫は、大きさといい、色といい、到底同じ品種、同じ花だとは思えないのだが、どうしてなんだろうと不安になってくる。
これから年ごとに花の大きさが変わってくる、色も変わってくるなんていうことがあるんだろうか?にわかに信じられないのである。
やっぱり別のお姫様なのだろうか?不安と疑惑がいよいよよぎってくるのである。
一方でかすかな期待を抱いているのも確かなのだが。この答えもまた来年だ。
ホンの数日だけの美しい姿だった
その週末は、ちょうど長男一家が勢揃いで我が家に帰省してくれたので、みんなにこの驚嘆すべき巨大な花を見てもらって、タイミングとしては抜群だった。
ところが、日曜日の昼過ぎにに息子一家が帰ってしばらくすると、早くも外側の花弁が散り始め、「えッ!?」と思ったのも束の間、その後は、アッという間に萎れてきてしまった。
店の店員から「売り物にならないくらい日持ちしない」と言われていたので、覚悟はしていたが、本当に言っていたとおりの結果になってしまった。
それでも大いに満喫できた
購入したのが金曜日、日曜日の夕方には散り始めたのである。
ホンの2日間の目の保養だった。それでも、憧れのかぐや姫の実際の巨大にして美しい花を我が家のリビングで眺められただけでも幸せだったと言うしかない。
これで完全に今年のシャクヤクは見納めとなった。購入したシャクヤクとは言うものの、今年最後の生花を心から満喫した。その最後がかぐや姫だったというのも、運命のちょっとした悪戯としては上出来だった。
また来年を楽しみに待つことにしよう。