立花隆の追悼特集本は既に発行されていた!面目なし

昨日(8.27)配信したばかりの立花隆の「最後に語り伝えたいこと」の記事の冒頭で、僕は「立花隆の追悼特集本」がどうして死後4カ月も経過しているのに発行されないのだと縷々嘆き、これ以上待ち切れないと悲嘆の声を上げたのだが、何ともう既に発行されていたのである。

その追悼特集本のタイトルは正に僕が仮称として名付けていたとおりのズバリ「立花隆のすべて」であり、そのブログで書いたとおり文芸春秋から出版されていた。内容も僕が期待し、望んだとおりのものだった。

ほとんど詰ったくらいに未だに発行しない出版社に訴えかけたのに、何と既に発行されていたことが判明。誠に面目ない。恥ずかしい限りである。

半藤一利追悼の別冊太陽を買いに行って平積みに遭遇

僕の非常に親しい友人から、別冊太陽から半藤一利が出るとの情報をもらった。その友人はかねてより僕のブログの読者で、立花隆も半藤一利も愛読している長野県に在住の名士なのだが、その友人にも「半藤一利の立派な追悼本は2冊目が発行されるというのに、未だに立花隆が発行されないのはどうしてんなんだ」と疑問を投げかけたばかりだった。

僕は新聞を購読しなくなって久しく、その友人がいつも僕が興味を持ちそうな本の広告を写真で送ってくれる。

その報を受けて、土曜の本日(8.28)、発売された直後の半藤一利の別冊太陽を買いに駅前の大型書店に行った。店の入り口に非常に目立つ形で半藤一利の別冊太陽は平積みされていて、直ぐに目に飛び込んできた。その直後、一瞬わが目を疑う。信じられないものが見えたのだ。えっ!?そんな馬鹿な。信じられない!!と気が動転してしまう。

半藤一利の別冊太陽の隣りに立花隆の追悼特集本の「立花隆のすべて」が平積みされ、目立つように立ち置きもされていたのだ。僕が私淑してやまない今年に入って次々と亡くなってしまった二人の作家「半藤一利」と「立花隆」の追悼特集本が一番目立つように置かれていたのである。

それを見て、僕は思わず声を上げて走り寄った。発行されていたんだ!いつ発行されたのか?知らなかった!と驚嘆してしまった。

この表紙はものすごく気に入っている。最盛期の「向かうところ可ならざるはなし」といった表情が嬉しい。
「猫ビル」の中の立花隆の机。正に本に埋もれている。

しばらく書店に行けなかったことで

3月まで御茶ノ水で働いていたので、駅前の丸善には毎日欠かさず顔を出していた。本屋に足を運んで新刊本を確認したり、フロアを練り歩くのは本好きにはこれ以上の楽しみはない。それが4月から勤務先が変わったことで、すっかり環境が変わってしまう。近くに書店などない。それでも余裕があるときは慣れ親しんだ御茶ノ水に途中下車して丸善を覗いていたのだが、このところ忙しくなって、しばらく足が遠のいていた。そしてこんな失態を演じてしまったという次第。本当に面目ない。

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8月16日に発行されていた「立花隆のすべて」

僕が首を長くして待ち続けていた「立花隆のすべて」は、今月16日に発売されていたことが判明。2週間弱ほど前のことだ。なるほど合点がいった。確かに僕は2週間前には書店に立ち寄っており、その時にはまだ「立花隆のすべて」は発行されておらず、そこで見つけたのがあの「最後に語り伝えたいこと」だったのだ。

昨日のブログであれだけのことを書いたのに、恥ずかしいと言ったらない。ガセネタを流してしまったわけで、読者の皆さんにも謝罪したい。

それにしても、半藤一利の別冊太陽を買いに行って、その隣に立花隆の追悼本を見つけた時の衝撃と感動はちょっと言い表せない。しかも大型書店の店頭に半藤一利と立花隆のそれぞれの追悼本が隣同士で平積みされていたことに、二人の熱烈なファンとしては本当に胸が熱くなった。

この2冊が大型書店の店頭部分に並んで平積みされていたのだ。感激するのも当然だろう。

正に待ち焦がれていた「立花隆のすべて」

期待していたとおりの素晴らしい本であった。僕は正にこれを待ち望んでいたのである。昨日のブログに僕はこう書いた。

「僕が期待している立花隆の追悼本は、立花隆の活動と著作の全体像をもっとグローバルかつ俯瞰的にフォローし、それぞれの本と活動の全てを評価してくれるような本。それを読めば立花隆の全てが分かるような本である。詳細な年譜と、立花隆が書いたありとあらゆる著作と記事の全てが、その年譜の中に表示されているような編集の本。それに加えて、雑誌等で発表されながら単行本にはなっていないことで今は読めない記事が、たくさん掲載されていればもう最高だ。」

今日手にすることができた「立花隆のすべて」は、ほぼ僕が望んだとおりの本であった。

すなわち、この「立花隆のすべて」は次のような作りとなっている。

① 立花隆の活動と著作の全体像をグローバルかつ俯瞰的にフォローし、それぞれの本と活動を評価

② それを読めば立花隆の全てが分かるような本

③ 詳細な年譜と、立花隆が書いた著作と記事の全てが、その年譜の中に表示されているような編集の本

厳密には希望どおりではないが

僕の希望はほとんど満たしてくれているが、敢えて言えば、立花隆の全ての本を評価しているわけでもないし、年譜の中に著作と記事の全てが網羅的に表示されているわけでもない。もっと詳しく完璧なものを作ってくれれば言うことはなかった。

また、僕が望んだ「雑誌等で発表されながら、単行本にはなっていないことで今は読めない記事がたくさん掲載されていればもう最高」という部分に関して言えば、僕が読んだことのない貴重な記事が数本掲載はされているのだが、それほど多くはなく少し残念だった。

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全体の構成と内容について

本書のタイトルは正確には『「知の巨人」立花隆のすべて』となっている。208ページの雑誌で文春ムックの1冊である。

先ずはカラーのグラビアで、知の砦「猫ビル」探検記が掲載。その中には「立花流データ整理術」もある。更に鬼才の脳を覗くという興味深いものも。

次は、あの池上彰による徹底解説として『「田中角栄研究」の衝撃』というオリジナルの記事があり、何と「文芸春秋」に掲載されたあの「田中角栄研究ーその金脈と人脈」が全文掲載されている。これは今回の白眉とも呼ぶべき非常に貴重なものだ。

続いて、「知の巨人」からのメッセージ「好き嫌いこそすべての始まり」。これは立花隆のある意味で一番の人生観というか、最も基本的な生き様を語ったもので、熟読に値する素晴らしいもの。

次に、THE BEST OB 立花隆と称して、比較的最近の単行本化されていない貴重な記事が紹介される。 

次は「今こそ立花隆を読み返す」として11人の著名人による特別寄稿である。これはいずれも初めて読むものばかりで、立花隆の死後に新たに執筆されたものであることは間違いない。

後半は、立花隆への連続インタビュー「ぼくはこんな風に生きてきた」である。続いて立花隆のと親交のあった著名人が語った立花隆のありのままの姿。野坂昭如、筑紫哲也、梅原猛など錚々たる人物による立花隆との親交と思い出の紹介。

最後は、立花隆の年譜と全著作リストとなっている。

これだけ盛りだくさんだと、僕の望んだどおりの「立花隆の活動と著作の全体像をグローバルかつ俯瞰的にフォローした内容」となっていて、満足できるものだと言える。

目次の1ページ目。
目次の2ページ目。右側の空を背景としたにこやかな立花隆の写真が素晴らしい。サインもいいな。

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過去に出た2冊の「立花隆のすべて」との関係は

何度か触れてきた文芸春秋から過去に発行された「立花隆のすべて」。今回と同じタイトルの本が生前に2冊出版されているのだ。

1冊目が1996年11月。2冊目は1998年3月である。最初の「立花隆のすべて」が発行されてから、1年半足らずで2冊目が追いかけるように発行されたことが分かる。両者は本のサイズも厚さも全く異なっていて、見た目は似ても似つかないものだったが、内容的には2冊目は1冊目の内容をほぼ踏襲しながら、一部はカットされたものの、新たな記事をかなり豊富に追加したものだった。随分と厚くなったのはそのせいだ。その後、上下2冊の文庫本となったが、現在では入手不可能となっていた。

あれから23年以上が経過。その間、リニューアルされることはなかったのだが、本人が亡くなった今年、遂に3冊目が追悼特集として発行されたのである。

これが過去に発行された「立花隆のすべて」の2冊。左側が2冊目の分厚いものだ。後に文庫化された。

復活(リニューアル)なので内容的な重複は多いが

約25年前に出版された「立花隆のすべて」は、非常に内容の濃い素晴らしい本だった。これが絶版となっていたことは痛恨の極みだったが、こうして著者の死をきっかけにリニューアルし、復活してくれたことは本当に嬉しい。多くの読者が読めない状態となっていたが、その渇きが今、癒されるのだ。

今回の『「知の巨人」立花隆のすべて』は、約25年前の名著の復活である。したがって、前著のかなりの部分がそのまま掲載されていることには留意してほしい。全体の約3分の1程度は、実は全く一緒である。

上記の内容のうち、冒頭のグラビア部分と後半の「ぼくはこんな風に生きてきた」、野坂昭如、筑紫哲也、梅原猛など錚々たる人物による立花隆の評価はその当時のままだ。それはそうに決まっている。皆、亡くなってしまった方々だ。

これらの重複は少し残念ではあるが、元々のオリジナルの記事は非常に貴重な素晴らしいものばかりで、これを今日の読者にあらためて読んでもらうことは、立花隆を理解してもらうためには不可欠かつ絶対に外せないことである。

本書が素晴らしいのは、新しい記事に読み応え十分なものが非常に多い点だ。良くぞこんなかけがえのない貴重な記事を集めてくれたと感謝するしかない。

特に、THE BEST OB 立花隆と銘打たれた部分が実に素晴らしい。

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オウム真理教、iPS細胞、がんゲノムなどの貴重な記事

司馬遼太郎とのオウム真理教を巡っての対談『オウム真理教と日本の「悪」』がものすごい内容だ。これはあの地下鉄サリン事件のホンの数カ月後に行われた対談である。こんなすごいものが単行本化されていなかったことに驚かされるばかり。あの「最後に語り伝えこと」の大江健三郎との対談といい、今回は本当に貴重なものを読ませていただき、感激してしまった。

山中伸弥所長との「iPS細胞の未来を語る」にも驚嘆させられる。ノーベル賞を受賞する2年前に行われた対談だ。

自らも膀胱がんの手術を経験した立花隆による「僕のがんゲノム解説」も読み応え十分の貴重な記事である。

NHKディレクターに託された六三箱分の資料に胸が高鳴る

もう一本何とも貴重な記事は、立花隆と一緒にNHKのテレビの番組作りに携わったディレクターが語った談話である。この6ページの記事は僕にとっては本当に嬉しいものだった。

これは立花隆が亡くなった後の、NHKの「クローズアップ現代+」の立花隆の追悼番組の中でも話題にされていたが、本書の中でもその岡田朋敏ディレクターが妹の直子さんから託された資料とテープのことが書かれている。「僕が預かった資料はあまりにも膨大ですが、立花さんに対して恥ずかしくないようにきちんと向き合って、必ず形にしたいと思っています」という結びの言葉に、言いようもなく胸が高鳴ってしまう。これは本当に楽しみでならない。

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若い教え子が紹介する未発表草稿「形而上学」の内容は

もう一本、刮目すべき記事がある。

東大の教養学部での立花隆の「人間の現在」とそれを引き継ぐ形でスタートした「立花ゼミ」。そこで教えを受けたサイエンスジャーナリストの緑慎也が書いた「立花隆が書きたかった仕事」に血が騒いだ。亡くなってしまった立花隆が、これから書きたいと願っていたテーマは、例の立花隆自伝である「知の旅は終わらない」の最後にも書かれていて大いに注目したものだが、今回の詳細に綴られた6ページには血が騒ぎ、ワクワクドキドキが止まらなかった。

その中に「形而上学」という哲学の本が計画されていて、何とその未発表草稿「形而上学」が掲載されているのだ。その内容にも感激させられるが、「知の旅は終わらない」でも触れられていた立原道造のことについて、かなり具体的に紹介されていて、読んでいて思わず涙が込み上げた。これは何とか執筆してもらいたかった。断腸の思い。

一家に1冊。家宝としたいかけがえのない本

どうだろうか?この立花隆の全体像を俯瞰的に捉えた追悼特集本は。

本当に願ってもない素晴らしい1冊である。待ちに待った甲斐があった。

25年近く前の貴重な記事はそのまま活かし、あの伝説の「田中角栄研究~その金脈と人脈」の全文掲載。2色刷りで非常に読みやすく編集されているのも嬉しい。それに加えて、その後の非常に感動的な新しい記事を多方面から盛りだくさんに集めてきてくれた。素晴らしいの一言だ。

ある意味でオールカラーのビジュアル本なので、巻頭から最終ページまで立花隆の様々な時期の写真が、これでもかと満載されているのも嬉しい。

これはもう一家にもれなく一冊。家宝としていただきたいかけがえのない本である。

どうかじっくりと読んでいただきたい。

 

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