丸1年が経過しようとするロシアによる侵略

ロシアによるウクライナへの侵略戦争が始まってちょうど丸1年が経過しようとしている2023年の2月中旬である。

ロシアがウクライナに侵攻したのは、昨年の2.24だった。

ホンの数日でキーウ(侵攻開始時にはズッとキエフという馴染みのある呼称だったが)が陥落し、ウクライナがロシアの支配下に置かれると思われていたこのウクライナへの侵略戦争も、大方の予想に反して、ウクライナの抵抗が功を奏して丸1年が経過しようとする今も、ロシアの勢いは挽回できずに、ウクライナの反攻が続いているようで、これは素晴らしいと喜ばずにはいられない。

だが、その間、無辜の市民が多数犠牲になっているわけで、こんな侵略戦争は即刻やめてほしい。

とにかく1日もが早くロシアというかプーチンが侵略を断念し、ウクライナに平和が戻ることを祈るばかりだ。

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毎日、ニュース報道を欠かさない中

僕は1年前のロシアによるウクライナへの侵略戦争が始まって以来、この1年間、テレビ報道によるウクライナ情勢を毎日欠かさずウォッチし続けている

僕がウォッチし続けている平日のウクライナ情勢のテレビ報道は5種類だ。

サラリーマンなので、帰宅後にニュースを追いかけることになる。

① 先ずはNHKの「ニュースウォッチ9
② 続いてテレビ朝日の「報道ステーション
③ 更にTBSの「ニュース23」となる。

これらは総合ニュース番組なので、最近では全くウクライナ情勢に触れないことも多く、腹立たしくてたまらない。そんなことを3カ月程前に書いた記憶があるが、むしろ最近は侵略開始から1年が経過ということで、各社はかなりの時間を割いている。

これら3つに加えて本来はNHKのBS番組なのだが、このウクライナ戦争を受けて、地上波でも放映されている以下の2つのニュース番組も必ずフォローしている。

国際報道2022→2023
キャッチ!世界のトップニュース・・・これは毎朝10:05からの放送だが、録画して毎日キャッチしている

こうして僕は、テレビで毎日欠かさず5本のニュース報道を見て、ウクライナ情勢を確認しているわけだ。

すっかりお馴染みの2人

その中に出てくるコメンテーターというか解説者ですっかりお茶の間に定着した2人がいる。誰にとってもお馴染みの2人。

防衛省防衛研究所の兵頭慎治さん東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠さんだ。

僕は非常に落ち着いた感じでどこまでも冷静かつ解説も非常に分かりやすい兵頭さんのコメントを聞くのが好きだが、娘は当初から小泉さんのファンであった。

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小泉悠のプロフィール

小泉さんの肩書は東大最先端科学技術センターに所属する軍事評論家、軍事アナリストであるが、プロフィールについては客観性を担保するために、本書に掲載されているものをそのまま引用させていただく。

これを読むまで、僕も小泉さんの細かい経歴は知らなかった。

そして、奥さんがエレーナという名前のロシア人であるということも、初めて知った。

1982年千葉県生まれ。早稲田大学社会科学部、同大学院政治学研究科修了。政治学修士。民間企業勤務、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員、公益財団法人未来工学研究所客員研究員を経て、現在は東京大学先端科学技術研究所センター(グローバルセキュリティ・宗教分野)専任講師。専門はロシアの軍備、安全保障。

著書紹介部分は省略。

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歴史的背景に関する本を読みまくってきたが

僕は今回のロシアによるウクライナへの侵略戦争を衝撃をもって受け止めており、深く心を痛め、このことが頭から離れることはない。

ここに至る経緯とこの侵略戦争の本質この戦争の歴史的背景を大きく俯瞰的に捉える必要性を感じ、毎日ニュース報道で最新情報を追いかける一方で、様々な文献を読み、敢えて今回の侵略そのものではなく、ロシアとウクライナの関係をかなり過去にまで遡って長い歴史的なスパンの中で、その本質を見極めるように努めてきた。

俯瞰的かつ歴史的に。

そうなると学ばなければならないのは、ロシアとウクライナが一つの国として存在していたソ連の歴史であり、ソ連を理解しようとすれば、レーニン、トロツキー、そしてスターリンとなる。スターリンを知ろうとすれば、スターリンとヒトラーが全面的にぶつかり合った独ソ線の理解が不可欠となり、その後、ソ連が瓦解し、ロシアとウクライナが別の国として独立すると、それを実現することになったゴルバチョフのことを理解する必要があるということで、戦争が勃発してちょうど丸1年。プーチンにターゲットを絞り込む前に、その背景と周辺の本をずっと読みまくってきたのである。

具体的にはこんな本を読んできた

スターリン絡みでは、亀山郁夫の本を集中的に何冊か読んだ。佐藤優の関連する本も新たに数冊読んだ。中には非常に怒りを覚える記述も少なくなかったのだが。

そして独ソ線の本。この中にはアレクシエーヴィチの「戦争は女の顔をしていない」があり、逢坂冬馬の「同志少女よ、敵を撃て」という日本人による優れた小説もあった。

そして何と言っても衝撃を受け、非常に勉強になったのは、ティモシー・スナイダーの「ブラッドランド」だった。

そしてゴルバチョフ自身による「変わりゆく世界の中で」

以上、読んだ本は全てこのブログで記事にしているので、興味のある方は、どうかお読みいただきたい。

そんな具合に、ロシアとウクライナを巡る過去の歴史をかなり遡って、俯瞰的に両国の錯綜した複雑な絡み合った関係に想いを巡らせて来たのだが、こうして許し難い侵攻から丸1年経過した中で、いよいよウクライナ戦争そのものに関する本を読むことにしたのである。

それは一つには、侵略開始から今までうまくまとまった適切な解説書が出ていなかったことにもよる。

逆に言えば、このタイミングになって、漸く読むにふさわしいウクライナ戦争に関する解説書が出たということを意味する。

それが今回の小泉悠さんの「ウクライナ戦争」というわけだ。

紹介した本の表紙の写真。
これが表紙。帯が単刀直入だ。

小泉悠「ウクライナ戦争」の基本情報

ちくま新書。この新書は昨年(2022年)の12月に出版されたばかりの新刊本である。

2022年12月10日 第1刷発行。

たちまち増刷されたようで、僕の手元にある読み終わったばかりの本は、2023年1月25日に発行された第5刷である。

年末年始を挟んだホンの1カ月強の間に5刷というのはすごい。

あとがきを含めて237ページ。決して厚い本ではないので、直ぐに読めてしまう。

あとがきの最後に2022年9月という日付けが載っている。

紹介した本の裏表紙の写真
こちらが裏表紙。小泉さんの写真とプロフィールがここに書かれている。帯のキャッチコピーは非常に分かりやすく、読みたいという気持ちにさせてくれる。

全体の構成は

全体は以下の5つの章から構成されている。

第1章 2021年春の軍事的危機 2021年1月~5月

第2章 開戦前夜 2021年9月~2022年2月21日

第3章「特別軍事作戦」 2022年2月24日~7月

第4章 転機を迎える第二次ロシア・ウクライナ戦争 2022年8月~

第5章 この戦争をどう理解するか

あの小泉さんによる書下ろしのウクライナ戦争の最前線

つまり、小泉悠の「ウクライナ戦争」は、昨年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの侵略戦争が始まる直前の、両国間で緊張が高まり、いつロシアの侵攻が始まってしまうんだろうかと、世界中が固唾を飲んで見守っていた侵略直前から、昨年の9月までの戦争の経過ををまとめて報告したものである。

侵略戦争が始まる前夜から実際に戦争が始まってからの7カ月間の詳細レポートに他ならない

紹介した本を立てて撮った写真
立てるとこんな感じ。そこそこの厚み。

 

そこに今後どういう展開をみせるのかどうか?世界中が憂慮しているプーチンによる核攻撃と第三次世界大戦の可能性などについて、小泉悠の見解が展開されるのと併せて、今回のロシアによるウクライナへの侵略戦争の性質について、総括するという展開だ。

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概要を掴むには最適だが

毎日のテレビによるニュース報道で、見ない日がないと言っても過言ではない、このロシアの侵略戦争に関しての抜群の信頼と人気を誇る専門家、第一人者によるレポートだけに、非常に分かりやすく戦争の経過と解説がなされているのはもちろん、小泉さんが軍事の専門家、それもロシアの軍事に関する専門家としての立場ならではの、「ロシア軍事オタク」と言ってもいい詳細な解説が読めるのが、最大の魅力である。

そんな専門知識をフル動員しての解説と、今後の見通しについては、非常に読み応えがある。

もっと背景とプーチンの内面の真相に迫ってほしい

その一方で、少し残念な点は、戦争そのものの経過と事実関係の解説が中心で、この戦争を仕掛けたプーチンの内面の分析と、世界中から顰蹙を買ったあまりにも一方的で理不尽な侵略戦争を展開するに至った歴史的背景とプーチンの片寄った政治的信念についての分析や解説については、少し不足している点である。

小泉さんはあくまでの軍事の専門家であって、歴史家・思想家ではないということであろうか?

以前このブログでも紹介している「ブラッドランド」の著者ティモシー・スナイダーによる「自由なき世界」を、現在読んでいる真っ最中であるが、あのスナイダーと比べるとその違いは歴然なのである。

スナイダーは、どうしてプーチンは全世界を敵に回して、こんな愚かな無謀な戦争を始めたのかという歴史的背景とプーチンの異様な信念に重大な影響を与えた思想家や宗教家を徹底的に分析していくのだが、小泉さんにはそれが不足している。

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前著「現代ロシアの軍事戦略」を併せて読みたい

本書の中で、小泉さんは昨年2.24から始まった今回のロシアによる侵略戦争を第二次ロシア・ウクライナ戦争と位置付け、あのクリミア半島を一方的に併合した2014年の両国間の武力衝突を第一次ロシア・ウクライナ戦争と名付けている。

そちらのマイダン革命による大統領の交代とクリミア半島併合とドンバス地域への武力侵攻が起きた2014年の一連の両国の大衝突を今回の戦争に先立つ、第一次ロシア・ウクライナ戦争と位置付け、小泉さんはそちらの方については、前著で詳しく紹介している。

前著「現代ロシアの軍事戦略」(同じちくま新書から2021年5月出版)の中では、ロシアとウクライナ両国の歴史的背景とプーチンの政治的信念と内面の分析がなされているようだ。

その意味で、この2冊は一緒に読んでもらう必要があり、今回の「ウクライナ戦争」1冊だけでは、大事な部分が省かれて、いきなり2.24からの戦争そのものに突入していまっているので、注意が必要である。

先ずは本書を読んでいただき、その後で「現代ロシアの軍事戦略」を読むことで、その戦争の鍵を握る前史に遡っていただけばと切にお願いしたい。

実際、僕も現在、「現代ロシアの軍事戦略」を読んでいる真っ最中で、これが今回のウクライナ戦争を前史、歴史的背景を知る上で不可欠だと痛感させられている。

今こそ読まなければならない一冊

小泉悠さんの最新の本を読んで、この世界を揺るがせ続けているロシアとウクライナについて、徹底的に理解していただきたいと願う。

これを、今読まずにいつ読むのか?

侵略戦争が始まってちょうど丸1年が経過した今こそ、改めてじっくりと読んでいただきたい名著である。

 

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