ロシアのウクライナへの侵略戦争から丸2周年

今年の2月にロシアが一方的にウクライナに侵略をし始めてから丸2周年が経過した。このロシアによるウクライナへの侵略戦争は2022年2月24日に始まった。

当初は2週間ほどで首都のキーウが占領され、あっという間にウクライナが白旗を挙げることになるだろうと、攻め入った方のプーチンはもちろん、国際社会も認めざるを得なかった。

だが、それがそうはならず、ウクライナ側はゼレンスキー大統領のもと、ロシアの猛攻を持ちこたえ、現時点で2年1カ月以上に渡って、ロシアと対峙し、奪われた東部の4州を奪還しようと戦い続けていることは絶賛に値する。

そのウクライナが、ここに来て、いよいよ正真正銘の危機に陥ろうとしている。そのことが心配でならない。

このままウクライナが後退し、ロシアが勝利を収めるようなことだけは何としても阻止したい、と心の底から願っている。

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ウクライナのピンチが続き、予断を許さない

ウクライナが現在、大きなピンチに陥っている。

いわゆる「反転攻勢」に失敗したという論調で語られることが多いのだが、これについては僕はちょっと違う見解を持っている。

「反転攻勢」に過度の期待は禁物

僕は昨年秋以降の様々な報道を見聞きして、ウクライナによる「反転攻勢」は失敗したしたという論調が多いことに、大変な違和感を感じており、その違和感はやがて疑問と怒りに変わり、今日に至っている。

僕は心の底からウクライナを応援し、とにかく一刻も早くロシヤが侵略を止めて、ウクライナの地から撤退することを切望しているが、ウクライナが昨年の夏前からスタートさせた「反転攻勢」なるものが、一挙に成功し、これで侵略したロシアの方が尻尾を巻いて逃げ出すなんてことはありっこないと思っていた。

ロシアという大国の軍事力を侮ってはいけない。それをいくら欧米の戦車や武器弾薬を増強しようとも一挙に決着がつくなんてことが、あるわけがない。

ロシアの侵攻をこれ以上拡大させることなく、多少なりともロシア軍を後退させることができれば御の字だと考えていた。

それだけでも大変なことだ。元々この侵略は2週間足らずで決着がつくとみなされていたものだ。それほど軍事大国であるロシアとウクライナでは、兵力を含めて軍事力に雲泥の差がある。

それをロシア軍を撤回できなかったからと言って、「反転攻勢」に失敗し、だからもうウクライナはお終いで、ロシアの勝利が近いと断ずることは、あまりにも短絡過ぎて、歴史を知らな過ぎると言わざるを得ない

戦争の決着は容易にはつかない。

第二次世界大戦の前に日本が中国に軍事侵略をした際も、ベトナム戦争においても、一旦、侵略側が占領に成功したように見えても、レジスタンスなどによって、じわじわと反撃を繰り返すことで、最終的に侵略された側が勝利することは、歴史上、枚挙に暇がない

ナポレオンのロシア戦争、ヒトラーの独ソ戦など、ロシアの方が侵略された立場で、首都モスクワまで占領されながら、最後はフランス軍、ドイツ軍に勝利したことをロシアそのものが逆の体験で知っているではないか。

だから、僕はこの後、ウクライナがどれだけ後退し、ロシアの支配が拡大強化されたとしても、それでロシアの勝利とはならずに、いずれはウクライナが必ず勝利することは歴史の必定だと確信している。上述のとおりその逆体験としてロシアが侵略者に2度にも渡って勝利してきたではないか。

だから、「反転攻勢」が思ったとおりの軍事的成果を収められなかったと言って、悲観することは全くないし、それ故にウクライナが敗北し、ロシアが勝利する、そういうこととも無縁であるということを強調しておきたい。

とはいうものの、しかし・・・・。

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ウクライナがここにきてピンチの連続で正念場

最終的には必ずウクライナが勝利し、ロシアは撤退を余儀なくされるというのが歴史の必定とはいうものの、ここにきてウクライナが様々な点からピンチに瀕しており、大変な正念場を迎えていることは事実。

ここは冷静かつ客観的に見定めたい。

1.戦争が長期化することによって、軍事支援する側に支援疲れが出始めていること。

① 特に、圧倒的な予算を割いてウクライナに武器の提供を続けてきたアメリカのウクライナ支援打ち切りの流れが大変なことになっている。

ウクライナへの軍事支援の予算が共和党の反対で暗礁に乗り上げている。

② 一番心配な点は、そのウクライナ支援に真っ向から反対の意思をあからさまに表明し始めた共和党の中でも、最も否定的なトランプが、今年秋の大統領選で共和党の候補に早くも決定し、「もしトラ」どころか「ほぼトラ」になりつつあること。
ここでトランプが再び大統領となれば、この時点でウクライナの息の根は止まることになりかねないことは想像に難くない。何としても、アメリカの国民は良識的な判断をしてほしいと熱望する。

③ ヨーロッパの各国もウクライナ支援に消極的になっている点も心配だ。フランスのマクロンは地上軍の派遣の検討も口にするような強硬さを示しているが、多くの国の意識が後退している。侵略戦争勃発以来、何かにつけ非常にけんしんてき献身的に支援を続けてきたポーランドとの関係も不安要素である。

2.ウクライナの国内情勢も不安材料が急に出てきた。戦争の勃発以来ずっとウクライナ軍を支えてきた総司令官のザルジニー氏を解任したニュース(2024年2月8日には、衝撃が走った。

これが功と出るのか凶と出るのか。ゼレンスキー大統領が大統領選をも見据えた自らの保身で動いたわけではないことを、祈りたい。

プーチンがロシア大統領選挙で圧勝

そして、

プーチンが大統領選で圧勝

侵略という悪事を働いている方のロシアはといえば、大統領選で87%の得票率による圧勝という結果に終わった。今回のウクライナへの侵攻と侵略をロシア国民が全面的に支持した格好だ。

こんな結果はやる前から分かっていて、茶番以外の何物でもなく、今更驚くにも値しないんだが、やっぱり気分は良くない。

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スターリンをも凌駕する30年間の統治

これによって、プーチンは今度の大統領の任期を無事に全うすれば首相時代を含めて、最長で30年間の長期に渡ってロシアの最高権力者として君臨し、あのソ連時代のスターリンの29年の独裁期間を凌駕することになる。

ロシアはどうしてこんなことになってしまったのか。全てはエリツィンの責任であるが、それを良しをするロシア国民の精神構造があるので、いくら他国の人間が悔しがっても始まらない。

これから先、プーチンがこの揺るぎない権力を手中にしてどうするのか?それだけがただただ心配である。

どんなレガシーを残すというのか

防衛研究所のあの兵頭慎治さんによれば、長い権力を保持する者は、この後、自らの権力の証としての「レガシー」を残したいと考えるようになるだろうと語っていたことが忘れられない。

「レガシー」はもちろん伝説である。

プーチンは一体どんなレガシーを残そうとしているのか。スターリンを賛美して止まないプーチンがスターリンを上回るほどのレガシーを歴史に刻もうとしたときに、一体彼は何を進めようとするのか。

ウクライナを完全にロシアのものとし、それに続いては今もロシアを支援しているベラルーシもロシアに取り込もうとすることは容易に想像できる。

元々の発想として、プーチンはベラルーシとウクライナをロシアの一部とみなしていて、「ベラルーシ」という国はない、「ウクライナ」という国はない。あるのはロシアだけだとするスラブ民族からなる大ロシア主義というかパン(凡)ロシア主義が根底にあり、そのことがプーチンの行動原理となっているのである。

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ウクライナのことを知るには最高の1冊

色々な紆余曲折があり、何といってもウクライナに住む子供を含む一般の無辜の市民のと尊い命が犠牲になることが耐え難いが、何とかこの2年間以上、ロシアの猛攻を凌いできた。

本当にすごいことだとリスペクトに値する。

そんな2周年の踏ん張りの意義を改めて再認識するためにも、本書「中学生から知りたいウクライナのこと」を是非とも読んでいただきたいと声を大にしてお願いしたい。

この本は、2年前のロシアが突然ウクライナ領内に進攻を開始した直後に急遽、出版された本である。侵攻が始まったのは2022年2月24日である。

本書の発刊日は同年の6月10日。侵攻開始から3カ月ちょっとである。

この緊急出版された本の内容が、実に素晴らしいもので、あらためて2年経った今、読んでほしいのである。

「中学生からウクライナのこと」の基本情報

(株)ミシマ社発行。上述のとおりロシアがウクライナに侵攻を始めた後に緊急出版された。2022年6月10日 初版第1刷発行。僕の手元にある本は、同6月17日発行の第2刷である。

四六版ソフトカバー。全206ページ。ロシアによるウクライナへの侵攻を受けて、新聞や雑誌へ寄稿された記事やオンラインイベントなどを取りまとめたものだ。

紹介した本の表紙の写真
これが本の表紙。
紹介した本の裏表紙。
こちらが裏表紙。

全体の構造(目次)

本書の全体像を知ってもらうためには、「目次」を引用するのが一番分かりやすいと思われる。

以下のとおりである。

はじめに 藤原辰史
Ⅰ ウクライナの人びとに連帯する声明
Ⅱ ウクライナ侵攻について 藤原辰史
Ⅲ 講義 歴史学者と学ぶウクライナのこと 小山哲・藤原辰史
Ⅳ 対談 歴史学者と学ぶウクライナのこと 小山哲・藤原辰史
Ⅴ 中学生から知りたいウクライナのこと 小山哲・藤原辰史
おわりに 小山哲

紹介した本を立てて撮影した写真
それなりに厚く見えるが、ぺージ数は200頁ちょっと薄い本だ。

 

それぞれの章(Ⅰ~Ⅴ)の中には、詳細なタイトルが付けられており、Ⅴ章の最後には「ウクライナの力士をもっと知るための読書案内」があり、これが非常に有用だ。

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著者の「小山哲」と「藤原辰史」のこと

この本は小山哲と藤原辰史という専門分野も年齢も異なる二人の歴史学者による共著である。

この2人の著者のことを知っていただくためには、いつものとおり、本書の裏扉に掲載されているプロフィールをそのまま転用させていただくのが一番適切だと思う。

小山哲(さとし)のプロフィール

1961年生まれ。京都大学大学院文学研究科教授。
専門は西洋史、特にポーランド史。著書に『ワルシャワ連盟協約(一五七三年)』、共編著に『大学で学ぶ西洋史〔近現代〕』、『人文学への接近法ー西洋史を学ぶ』など。

藤原辰史(たつし)のプロフィール

1976年生まれ。京都大学人文科学研究所准教授。
専門は現代史、特に食と農の歴史。著書に『緑食論』、『トラクターの世界史』、『カプラの冬』、『ナチスのキッチン』(河合隼雄学芸賞)、『給食の歴史』(辻静雄食文化賞)、『分解の哲学』(サントリー学芸賞)など。

帯に書かれた本書の推薦コメントの紹介

本書は色々な意味で、注目すべき貴重な1冊なのであるが、そのポイント(売り)は本書に巻かれた帯に掲げられたコメントを読んでもらうと明確になると思う。

① 軍事評論家や国際政治学者の解説ではなく、こういう話しが聞きたかったのです(    参加者)

② なにしろわかりやすい。それはこの本が教科書的ではないこと、そして、おそらくは二人の著者がウクライナの専門家でないことが大きい。」(仲野徹)

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有用な情報が満載された貴重な1冊

確かにそのとおりなのだと思う。なまじロシアやウクライナの専門家、特に軍事の専門家だと見えてこない、もっとその地に住んでいる住民の切実な思いがすっ飛んでしまう傾向があるようにも思える。

小山さんは歴史家で、ずばりウクライナやロシアのご専門ではなく、ウクライナの隣に位置する、歴史上、何かと縁が深かったポーランドの専門家。

若手の藤原さんは、現代史の専門家とは言っても、食と農の歴史が専門という少し特有の視点をお持ちの気鋭の歴史家。

この年齢も専門分野も微妙にずれている二人がそれぞれの専門の視点から、ウクライナ問題を見つめたユニークな1冊だ。

もちろん、僕らはウクライナとロシアのことを知ろうと思ったら、今も過酷な侵略が連日続いているウクライナ情勢を知ろうと思ったら、色々な情報源と書籍に当たればいい。1冊とか2冊しか選べないわけではない。

情報ツールは無尽蔵にある。僕も心がけて、色々な専門家の色々な本を読んできた。何でも読める。どんな情報にも自由にアプローチすることができる。だから、ウクライナ情勢について、色々な本を読んでほしいというのが僕の思い。

だが、そんな中にあっても、最低でもこれだけは読んでおいてほしいという筆頭が本書となる。

ここにはこの侵略戦争を考えるに当たっての必要最低限の情報が満載されている。ウクライナの歴史が非常に分かりすく平易な表現で説明されていることが何と言っても大きい。

僕が多数あるウクライナとロシアによる侵略に関連した本の中でも、本書を第一に推す理由は、何と言っても以下の点にある。

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この2人は切実さが違う。当事者そのもの

本書を書いた2人の歴史学者の思いが痛いほどヒシヒシと伝わってくる。

他に出ている解説書とは切実さがまるで異なる。ウクライナのこと第三者の立場で解説するのではなく、お二人とも今回の悲惨な侵略戦争を当事者目線で感じている

誤解を恐れずに言うと、お二人とも当事者そのものものになり切って、心底、自分の問題として取り扱っている。少なくとも読む側の僕たちには、評論家や専門家として解説しているのではなく、どうにかしてこの理不尽な悲惨な戦争にストップをかけたいという強い思いを感じる。

ウクライナへのロシアによる侵略をどうにかしてストップさせたいと言う切なる思い、それが伝わってくる。正に本書は、行動する1冊なのである。

切実な思いがヒシヒシと伝わってくる

学者が書いた本で、これほど何とかしなきゃという切実な思いが伝わってくる本は稀だ。

その思いがこちらにも伝わってくる。誠実な良書と呼ぶしかない。

「中学生から知りたい」というタイトルの趣旨について、「はじめに」の中で藤原辰史が書いている。

「私たちの学んだ知識をカジュアルダウンしてわかりやすく伝える、とは少し異なった方向にあります。むしろ私たち大人の認識を鍛え直す、という意味も込められていると言ってよいでしょう。中学生に戻って、(中略)どんな歴史があったのか、そして、これからどうなるのか、という根本的な問いを大人に突きつけるという困難な挑戦でもあるのです。
 逆にいえば、義務教育でいろんなことを学んだ経験を持っている方ならば、今起こっていることについて、政治家や学者やジャーナリストよりも深く考えることは可能だ、ということを読者に示したい。(後略)」

これはいかにも重い言葉だ。僕も一人の大人として、責任の重さをヒシヒシと感じてしまう。

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冒頭に紹介される連帯声明に感動させられる

それを象徴するのが、本書の冒頭に掲載されている連帯声明文だ。

正式には「ロシアによるウクライナ侵略を非難し、ウクライナの人びとに連帯する声明」という。

これがロシアによる侵略が始まった直後、何と侵攻が始まった2日後に発表されていることに驚嘆させられる。

日付を確認してほしい。二〇二二年二月二十六日とある。声明を出したのは、「自由と平和のための京大有志の会」。小山哲も藤原辰史もこの会のメンバーなのである。

藤原辰史が書いている「はじめに」が非常に分かりやすい。本書の狙いや趣旨、特に前述のとおり「中学生から知りたい」というユニークなタイトルについての説明もある。

冒頭の声明文を写真で張り付けておく。

ここを読むだけではなく、本書を購入していただいて、是非とも全体を読んでいただきたいと切にお願いするものである。

冒頭に掲載された連帯声明の本文①
これが連帯声明の本文。3ページだけだが、いかにも重く、切実で感銘させられる。
冒頭に掲載された連帯声明の本文②
この日付けに注目。更に、この声明が10の言語に翻訳されているという。声明を出した時点で、10ヵ国語で発表したという事実に感動させられる。

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一人でも多くの方に、直ぐ読んでもらいたい

ロシアがウクライナに侵略を開始してから、2年1カ月以上が経過した。この間、ウクライナは良く持ちこたえてきたが、ここにきてありとあらゆる面で状況が厳しくなっている。

このままいくと、ウクライナは本当に白旗を上げざるを得なくなるかもしれない。そうなったとき、ウクライナはどうなってしまうのか?世界はどう変わってしまうのか?

スウェーデンのNATO加盟が認められるなど少しはプラス材料もあるが、ウクライナの状況はいかにも悪い。危機的な状況が続いている。

先ほど飛び込んできたニュースでも、ダニロフ国家安全保障国防会議書記が解任されたという。ザルジニー軍総司令官の交代に続いて、ここにきての度重なる要職の交代に嫌な予感が否めない

ロシアによる侵攻直後に書かれたこの本のニーズは高まるばかり。

あれから2年以上、当初の予想に反してウクライナが頑張り抜いていることはリスペクトに値するが、頑張れば頑張るほど、ウクライナの一般市民の死者が拡大していくというあまりにもやり切れない構図と現実に直面するが、そればかりかいよいよウクライナも危機的な状況に陥りつつある。

このままこのロシアの蛮行が許されることがあってはならない。風化させることは決して許されない。

本書を一人でも多くの方に読んでいただき、侵攻直後のあの危機感とウクライナへの支援の必要性を改めて認識してほしいものだ。

 

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