第8回目

シリーズも第8回目まで来ました。前回の最後に書いたように、あまりにも長過ぎる!との指摘を受けて、一回あたりの記事をできるだけ短めにする努力をすることにしました(笑)。

ということで、一回あたりの取り上げる映画の本数を少なめにするという苦肉の策を取らざるを得ないことに。目標は一回当たり6本ですが、4本になる可能性も高いですね。

どうか引き続きお付き合いください。

さて、個別映画の紹介に入る前に恒例のエピソードを手短かに。
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【ギンレイ・エピソード6】

ギンレイ・エピソード2(ギンレイで観た全映画を語る3)で紹介したあのマナーCMに関して、僕の問い合わせに久保田支配人からご返事をいただきました。

「マナーCMですが、当館のオリジナルではございません。

当館も加盟している「コミュニティシネマセンター」という、主にミニシアターや単館の映画館、劇場等で構成される団体があり、そこで全館共通マナー広告として制作されたものです。

一応タイトルは『ばくーと映画館のお友だち』で、アニメーター・和田淳さんのアニメーションです」との明確なご回答をいただいた次第です。

なるほどなあと。自分であのマナーCMについて触れてから、いつも以上に丁寧に観るようにしていたのですが、確かに最後に出演者やスタッフの名前が表示されることが分かり、そのどこにもギンレイホールの表示がないことから、これはオリジナルではないなと感じていたのですが、これでスッキリしました。

久保田さん、ありがとうございました。また色々とギンレイホールのこと、教えてください。

それでは、映画紹介のはじまり、はじまり。

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25.2018.2.10〜2.23

 ベイビー・ドライバー  アメリカ映画

監督:エドガー・ライト

主演:アンセル・エルゴート、リリー・ジョーンズ、ケヴィン・スペイシー他

これはかなり激しいアクション映画。カーアクションだ。こんなものもギンレイホールでは上映するのだが、実にスタイリッシュでエキセントリック。最高の映画的興奮を味わえると確約する。

なんと言っても音楽との融合がすごい。これは快感だ。実は、この音楽は映画に流れる音楽としてガンガン使っているということではなく、映画の重要な要素そのものとして音楽が用いられているのだ。

こういうことだ。これは組織の逃がし屋としてのドライバーを描いた映画。その天才的な運転技術を買われて、銀行強盗を働いた後で、実行犯を車で逃す役割だ。

彼は銀行強盗には何の興味もなく、ひたすら車をぶっ飛ばして実行犯を解放することだけに専念。彼はかつて重大な交通事故に遭って以来、激しい耳鳴りが止まらず、その耳鳴りを消すために、ガンガンと激しく音楽を打ち鳴らし、そうすることで運転技術も天才性を発揮するという困った奴なのである。

映画を観ている僕らは本当にその激しい音楽と彼の爽快なまでのとんでもない運転技術に快感を味わうことになる。

これはかなり話題になった大ヒット作品のようで、直ぐにパンフレットが完売となり、残念でならない。手に入らないパンフレットほど、ほしくてたまらなくなるものなのだ。

とにかく観る者を夢中にさせる爽快なまでのカーアクションが続出する。そして最後は単なるアクション映画では終わらないあたり、唸らざるを得ない

監督のエドガー・ライトはイギリスの注目の若手のようだ。次回作を大いに期待したい。
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 パターソン  アメリカ映画

監督:ジム・ジャームッシュ

主演:アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラアニ、永瀬正敏他

ジム・ジャームッシュの新作映画である。ジャームッシュと言えば、一世を風靡した非常に評価の高い監督だ。ストパラこと「ストレンジャー・ザン・パラダイス」と「ダウン・バイ・ロー」で80年代の世界の映画シーンを牽引した正しく鬼才中の鬼才

ところが、僕はこのジャームッシュがダメだったのだ。ストパラは何回観ても少しも感動できず、どこがいいのかサッパリ分からない。実はジャームッシュはアメリカの映画監督でありながら、実にヨーロッパ的な作風を持った監督なのである。だとすれば、僕とは相性がいいはずなのだが、どうしてもダメだった。

世界中であれだけ大絶賛される映画の魅力を自分だけが理解できないというのは、結構辛いものだ。だが、どうしてもいいと思えないので、これはこれで仕方ない。相性が悪いのだろう。いつの日か、変わる日が来るかもしれない。それを楽しみに待ちたいが、この新作の「パターソン」で、僕の長年にわたるジャームッシュへの評価が変わるかどうか、本当に楽しみだった。

そもそも、僕とジャームッシュの出会いは悪く、ストパラもダウン・バイ・ローもいずれも映画館では観ていない。VHSのビデオテープでしか観ていないのだ。今回初めてジャームッシュ作品の映画館の大スクリーンでの鑑賞。これが気に入れば、過去のジャームッシュ作品を全て見直してみようと決意していた。

さて、どうなるか?ドキドキものだった。

アメリカのニュージャージー州パターソンで路線バスの運転手として働いている主人公。パターソンは有名な詩人を何人も輩出したことで知られる土地で、このバス運転手も詩を愛し、運転の片手間、こつこつと詩を書き続けている。

映画はこの路線バスの運転手にして詩人の日常を新婚間もない奥さんとの1週間を淡々と追いかけるもの。

主人公を演じるのはアダム・ドライバー。スター・ウォーズの新3部作ですっかり有名になった彼の立派な体格が、繊細な詩人で路線バスの運転手という役柄にはどうかと思えなくもないが、中々いい味を出していて好感を持てた。

悪くはない。いい映画ではある。でも、僕にとってはそれ以上でもそれ以下でもなかったと正直に言わざるを得ない。この年のキネマ旬報ベストテンのベスト2に入っているのだが、そこまでの高い評価は理解できない。

ちなみにベスト1は「わたしはダニエル・ブレイク」、ベスト3は、あの「マンチェスター・バイ・ザ・シー」である。この二つに割って入って来る程の傑作とはとても思えないというのが率直な感想。

ということで、ジャームッシュはまたしてもダメだったのだ。いい映画ではあるが、どうしてそんなに絶賛されるのかどうしても理解できない。これは相性というものだろうか

でも、これはあくまでも僕の個人的な感想。世評は極めて高い作品である。読者の皆さんはどうか直接ご覧になって、この独特のジャームッシュの世界を味わってほしい。そして、是非ともその魅力を僕に伝えてほしいものだ。切にお願いしたい。

26.2018.2.24〜3.9

 女神の見えざる手  フランス・アメリカ合作

監督:ジョン・マッデン

主演:ジェシカ・チャステイン、ジョン・リスゴー他

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これは中々観応えのある映画で、僕は大いに満喫した。

ジョン・マッデンはあの「恋に落ちたシェークスピア」で一躍有名になった名監督だ。ここでも歯切れの良い演出が光っており、この少しややっこしい話しを一気に観せる=魅せる。

アメリカ社会で大きな存在となっているロビイストを描いた作品。ロビイストは、ロビー活動、すなわち政府やマスコミ、更には世論をも左右するような私的な政治活動に携わる者のことだ。アメリカでは政府を影で動かす程の大きな存在となっており、この映画は正にそのロビイストの戦略と具体的な活動を追いかける政治サスペンスである。

主役は凄腕の女性ロビイスト。彼女の半端ないエネルギッシュな戦略とやり方がすごい。目的のためには手段を選ばないやり口が空恐ろしく、正しくものすごいやり手の女

ここでは、アメリカ社会の最大の病巣とも言うべき銃規制の是非を巡って激しい駆け引きが繰り広げられる。

観ていて唖然としてしまう程の凄まじい戦略合戦が展開するのだが、ここまで徹底してやれば爽快だ。僕は彼女に大いに魅力を感じてしまった。

演じるのはジェシカ・チャステイン。「ゼロ・ダーク・サーティ」や「インターステラー」などの話題作で高い演技力を評価されている才女。正にこの役にはピッタリで惚れ惚れさせられた。

これを観ると、アメリカ社会の歪みもここまで来ているのかと今のアメリカの実態に唖然としてしまうかもしれない。

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 あさがくるまえに  フランス・ベルギー合作

監督:カテル・キレヴェレ

主演:タハール・ラヒム、アンヌ・ドルヴァル他

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あまり知られていない作品だが、僕はものすごく惹きつけられた。

交通事故で脳死に陥った青年の家族が臓器移植を受け入れる姿を描いただけの作品なのだが、その繊細かつ丁寧な作りが徹底していて、これは感動を呼ぶ

臓器移植の最前線が描かれるので、医療関係者には是非とも観ていただきたいと思う。脳死の青年の肉体へのリスペクトというか愛情がありあり伝わってくる映像作りに脱帽。

とにかく全体的に映像の美しさが際立っている。映画が始まって早々、サーフィンが描かれるのだが、僕はこんなに美しい海と波、水中シーンを初めて観た。もう信じられない程の美しさなのだ。冒頭からもうノックダウン。

この映像美が最後まで途切れることなく続くのには、驚嘆するしかない。

監督・脚色はフランスの女流監督のカテル・キレヴェレ。大変な美人。この作品が3本目の長編映画とのことだが、大変な才能だと思う。実際、カテルは今、世界で最も注目されている若手映画監督の筆頭格の一人だという。さもありなん。この映画を観てもらえれば、その繊細にして斬新、息を飲む映像の美しさに彼女の才能を実感できる。

そして、ささやかだった青年の人生の記憶と命そのものをどこまでも大切に扱う姿勢に、感動を覚えずにいられない。今後もカテル・キレヴェレに要注目だ。

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今回も4本だけとなってしまった。

これで通算47本。まだ半分にも到達していない。ドンドン進めて行こう。

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