目 次
最新刊が凄い力作だった
引き続き出口治明さんの本の紹介だ。
今回取り上げた本は、「日本史の極意」という新書本だ。これが何とまだ出版されたばかりの真新しい本。出版直後の最新刊である。
奥付けでは2026年2月15日 初版第1刷発行とある。まだ10日も経っていない出来立てほやほやの本だ。
僕の手元に実際に届いたのは2月9日だった。出口さんの新刊が出る情報を得て、予めネットで注文しておいた。
2月15日に発行なのに、早くも2月9日に読者の手元に届くというのもおもしろいが、書籍の発行はそんな実態だ。
いずれにしても、この最新刊は2月9日に僕の手元に配達された。その頃は出口さんの他の本を読んでいた真っ最中(先日紹介の2冊のことだ)だったので、直ぐに読み始めることはできなかったが、内容的には直ぐにでも読み始めたくなる非常に興味深いもので、ブログ書きの間を縫って、読み始めた。
これはかなり厚みもある力作で、そう簡単に読み切れるものではない。「捨てる」思考法や、「誰も行ったことのない・・・」の自己啓発本とは内容もまるで違って、ほとんど余白もなく、細かい文字がビッシリと詰まっている本格的な歴史の解説書だった。


読み切るには相当なエネルギーと時間もかかるが、そのあまりのおもしろさと興味深さに僕としては珍しいことに、本書1冊に絞り込んで、一気呵成に読み切った。
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中々簡単には読み切れない意欲作
実に素晴らしい本だった。出口さんへの畏敬の念が更に強まった。出口さん渾身の1冊、入魂の1冊と言ってもいい絶賛に値する意欲作だった。
かなり本格的な日本史に関する解説本で、そう簡単に読み切れる本ではない。脳出血で倒れ、右半身麻痺と言語障害という重い後遺症が残りリハビリを続けている方が、良くぞここまでの力作を書くことができたと仰天させられている。
新書本とは言っても約300ページもあって、日本史に関する独特な視点からの本格的な解説書で、入門書と言うレベルを遥かに突き抜けている。独特の視点はかなりユニークでありながら、レベルも非常に高い本格的な本で、これを書くには相当なエネルギーと労力、時間がかかったものと思われる。
「出口先生、凄いことをやってのけたな」というのが率直な感想だ。
相当なレベルの高さだったが、一気呵成に読了
これは読む方にとってもかなりレベルの高いハードな1冊だった。「捨てる」思考法、「誰も行ったことのない・・」の最近紹介した2冊とは全く異なって、そう簡単に読み切れる本ではない。
だが、僕は一気呵成に読み切った。3日間かかったのだが、実質的には昨日一日(2月23日)で、ほぼ一気に読み終えた。10時間近く集中して読み続けただろうか。それだけ長時間、集中して読むことが少しも苦痛にならないくらい、夢中になれた稀な本だったと言うわけだ。
元々歴史が大好きな僕には、しっかりと突き刺ささってくる、何とも興味深い本だった。
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出口治明「日本史の極意」の基本情報
SBクリエイティブ株式会社発行の「SB新書」の1冊。既述のとおり、2026年2月15日初版第1刷発行。まだ世に出て、10日程しか経っていない新刊本である。
ページ数は289ページ。その後に主要参考文献の一覧表が5ページあるので、ほぼ300ページ。かなり厚めの新書である。


全体の構成等
本書は7つの論点、出口さんが「はじめに」の中でいう7つの「縦のつながり」で、古代から現在までの日本の歴史を一気通貫で7回眺めるという非常にユニークな視点から書かれた意欲作で、本書全体はその7つの論点がそのまま章として構成されている。
その各章のタイトルを見てもらうだけで、どんな歴史の解説書なのか、おおよその見当が付くだろう。
はじめに 3ページ
第1章 【経済】で日本がわかる
貨幣経済の発展と金融政策
第2章 【戦争】で日本がわかる
戦争はどう始まりどう終わるのか
第3章 【リーダー】で日本がわかる
時代を動かした偉人に学ぶ優秀なリーダーの条件
第4章 【宗教】で日本がわかる
信仰・伝統から見えてくる日本人の宗教観
第5章 【組織】で日本がわかる
統治と運営のかたちが映す日本社会の変遷
第6章 【地政学】で日本がわかる
大陸国家から海洋国家への転換
第7章 【世界史】で日本がわかる
世界史から見えてくる日本の立ち位置と未来のヒント
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出口さんは本書をこう語る
「はしめに」の中で、出口さんはこう書いている。
『歴史を見るコツは、物事を「小さな目」ではなく「大きな目」で見ることだと思います。まずは細部に深入りせずに、時代から時代へと続く大きな流れ、つまり「縦のつながり」をつかむほうがわかりやすいのではないでしょうか。
(中略)
この本では歴史をいくつかの「縦のつながり」で読み解いてみたいと思います。具体的には、現代の日本と世界を理解する上で不可欠な、以下の7つの論点(イシュー)を設定しました』
として
【経済】【戦争】【リーダー】【宗教】【組織】【地政学】【世界史】の論点を設定し、それぞれのイシューをテーマに、古代から現代までを通貫させる。
つまり読者は、それぞれのテーマで、日本史全体を7回に渡って繰り返し通貫するわけだ。実にユニークな発想で、興味が尽きない。
ユニークな視点による渾身の力作
いいものを読ませていただき、非常に勉強になった、という一語に尽きる。
出口さんが書いた歴史の解説書は非常に多い。
「世界史の10人」「全世界史」など主に世界史が中心だったが、最近は「0(ゼロ)から学ぶ日本史」講義など日本史にも対象を広げている。出口さんは常々「世界史と切り離された日本史は存在しない」、「世界史の中の日本史」と言っているので、日本史も世界史の中の一パーツに過ぎないと捉え、日本史の著作も多くなってきた。
7つの縦の論点に感服
現在、出口さんが書いた歴史の解説書は日本史も含めてかなりの分量になっているのだが、最新刊の本書のように、論点毎に数千年に及ぶ(日本史では2,000年程度だが)歴史を古代から現代まで縦に分解して通貫し、あるテーマの歴史が終わると、次にまた別の論点で、古代から現代まで縦に歴史をたどらせる、そんな編集で書かれた本はない。
これは実にユニークで、素晴らしい発想だと感服した。
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「組織」「地政学」という視点に唸る
テーマ(論点=イシュー)毎に縦のつながりをたどるという発想になったとき、「経済」「戦争」「リーダー」「宗教」などといったテーマ、論点を浮上させるのは、ある意味で当然であって、それほど驚くに値しないが、「組織」や「地政学」、更に「世界史」といった論点には正直驚かされた。
これは凄い、さすがに目の付け所が違うな、と深く感銘を受けた。特に「組織」編は非常にユニークで、この斬新な切り口に目から鱗の連続となった。
明治維新で実現させた「国民国家」への道であるとか、出口さんが「事実上のクーデター」だったという「廃藩置県」。そこから戸籍を作って地租改正による国税を整備し、最後に徴兵制に至る国軍の創設までの明治新政府の組織作りの分析には興奮されっぱなしだった。
内閣ができる中で、例の「統帥権の独立」問題にも鋭く切り込んでいく。
平清盛や織田信長、阿部正弘、大久保利通、吉田茂など出口さんが優れたリーダーと認めている人物は様々なテーマ(論点)で何度も登場してくる。
古代、中世も興味深いが、大久保利通を中心とする明治政府が行った「革命」の内容が圧巻で、本書を読んで改めてその偉業に、認識も新たにさせられた。
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特に印象に残った記述を引用
7つの論点全体を通して、僕が特に印象に残った記述、つまり出口さんの歴史観をいくつか紹介しておきたい。
1.時代を超えて評価されるべき、優秀なリーダーの条件
「合理的で実現可能なグランドデザインを描き、それを実行する能力を持っているか」という一点に尽きます、という。
『「グランドデザイン」とは自らが置かれた時代と国際環境を分析し、国家や組織が将来にわたって存続し、発展していくための長期的かつ包括的な構想・設計図のことです。そしてその設計図は、論理的で、現実的でなければなりません。
すぐれたリーダーは、まず現状を正確に把握します。そして解決すべき課題(イシュー)を特定し、その課題を解決するための具体的な道筋を、複数の選択肢の中から選びます。さらに、その実行過程においては数字・ファクト・ロジックを重視した意思決定を下します。部下には明確なビジョンと行動指針を示し、組織のパフォーマンスを最大化します」
2.「国際関係に長けたグランドデザイナーがいるだけではだめで、その構想を地に足のついたかたちで引き継ぎ、一歩一歩進める実務家が続かなければ、せっかくつくった制度も、まともに運用されなくなってしまいます。しかし、しっかり運用するためには、その前提として優秀な実務家が活躍できる組織、人事(人材登用)の仕組みが必要です。ところがグランドデザイナーには急を要する事態に対処すべく一挙に物事を進めようと権力を集中させるタイプもいます(後略)」
3.『廃藩置県による政治的統一、地租改正による財政基盤の確立、徴兵制による軍事力の統一という三本柱による中央集権的な国民国家の創成によって、人々のアイデンティティも根本から変わっていくことになります。
いま新聞やテレビを見ていても、どこの組織からも「メンバーの意識改革が必要だ」といった話が聞こえてきますよね。でも、組織の成員が抱く「自分たちは何者なのか」という意識を変えるには、「理念を毎日唱和させる」みたいな小手先ではむずかしいのではないでしょうか。根本的には制度自体に手を付ける必要があると思います』 etc.
じっくりと噛みしめたい言葉ばかりである。
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最新の歴史研究の成果も反映
本書を読んでいて、非常に驚かされるのは、本書には日本史の最新の研究成果というか、最新の情報、データなどが盛り込まれ、しっかりと反映されていることだった。
僕も歴史にはかなり詳しい方だと多少は自負していたが、知らないことがかなり多く、恥ずかしくなってしまった。
例えばこんな具合だ。
〇「大和朝廷」を、現在の日本史学では「ヤマト王権」と呼ぶのが一般的なこと。ヌホド王なる人物が現在の天皇家にの実質的な始祖と考えられていること。
〇聖徳太子は「厩戸王(うまやどおう)」と呼ばれ(これはもちろん知っていた)」、有名な「冠位十二階」や「十七条の憲法」などその業績として知られているものの大半は、実際にはおそらく蘇我馬子が推進したものだったこと。
〇中大兄皇子の大化の改新が、現在は「乙巳(いっし)の変」と呼ばれていること。
〇「文永・弘安の役」の「元寇」を、現在では「モンゴル戦争」や「蒙古襲来」と呼んでいること。
これらはホンの一例であって、本書には日本史の最新の研究結果を踏まえて記述がされていることに驚かされると同時に、頭が下がるばかりであった。
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「世界は宗教で読み解ける」と双璧
以前このブログでも取り上げている「世界は宗教で読み解ける」という新書も、その内容の詳細さと着眼点にいたく感銘を受けたが、本書もそれに勝るとも劣らない素晴らしいもの。
奇しくもいずれもSBクリエイティブ株式会社が出版しているSB新書。この2冊は、かなり本格的な内容の本であり、出口さんの全著作を通じても、屈指の出来栄えを誇るものだ。
重い障害に一言も触れない潔さ
実はこの双璧とも呼ぶべき2冊、どちらも出口さんが脳卒中で倒れ、右半身麻痺と言語障害に陥って以降に書かれたものだ。
「世界は宗教で読み解ける」もそうだったのだが、本書にもどこにも病気のこと、自らの厳しい障害のことには一言も触れていない。
この真剣勝負というか、空恐ろしいまでの潔さに、読んでいるこちらも背筋を伸ばしたくなる。これは本当に大変なことだと思う。
心底頭が下がる。尊敬の念が強まるばかりだ。
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名著の名にふさわしい出口さんの渾身作!
これは凄い本だった。実に読み応えがあって、非常に勉強になった。重い障害を負いながら、この充実の1冊をしたためた出口さんに心から敬意を表したい。
内容はかなり詳細で、レベルが高い。二読、三読に値する名著の誕生だ。
歴史に興味のある方は、必読。是非ともじっくりと読んでほしい。目から鱗の連続となり、歴史を学ぶおもしろさを満喫できるだろう。
全く凄い本を書いてくれたものだ。絶賛に値する!
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