コッターの世界的大ベストセラー「企業変革力」

著名な経営学者ジョン・P・コッターの世界的な大ベストセラー「企業変革力」を読んだ。これは中々感動的な素晴らしい本だった。

私のブログの熱心な読者なら、ジョン・P・コッターと聞いて、「ああ、あの!」となるかもしれない。

以前、この熱々たけちゃんブログで取り上げた「カモメになったペンギン」の作者である。

あの「カモメになったペンギン」は、わずか100ページ足らずの短い童話のような話しだったが、作者のコッター自身は寓話と言っている。

「寓話」とはそもそも何だろうか?小学館のデジタル大辞泉によれば、「擬人化した動物などを主人公に、教訓や風刺を織りこんだ物語。イソップの寓話など」とされている。

「カモメになったペンギン」は、正に擬人化された主人公であり、典型的な寓話と言えそうだ。

教訓や風刺を織り込んだ物語とあり、あのペンギンの物語に教訓を盛り込んでいるということになるわけだが、その教訓というのが、ズバリ今回紹介する「企業変革力」の内容のことなのである。

つまり、作者のジョン・コッターは著名な経営学者であり、その最も代表的な著作が「企業変革力」である。この「企業変革力」の内容の教訓を分かりやすく理解してもらうために、あえてペンギンやカモメなどの動物を登場させて、それらを擬人化し、作者が訴えたい「企業変革力」の内容を理解してもらおうとした、そういう関係にあるというわけだ。

 「カモメになったペンギン」は非常に分かりやすいいい本だったが、全ては「企業変革力」を理解してもらうためのものだったわけであり、僕としてはコッターの経営理論など訴えたい考えや主張、理論を、この機会にしっかりと学びたいと思い、このオリジナルの「企業変革力」を読んでみたという次第。

紹介した本「企業変革力」の表紙の写真
これが表紙の写真。帯のキャッチコピーがやっぱり説得力を持つ。

非常に分かりやすい良書

本書「企業変革力」は、本格的な経営学のテキストであり、寓話の「カモメになったペンギン」とは全く趣を異にする、言ってみれば学問書、ジャンルとしてはビジネス書に属するお堅い本である。相当に取っつき難いと思われても当然の本なのである。

本書に付けられた帯の広告キャッチコピーには、「アマゾンUSAビジネス書部門でベストセラーを続けるリーダーシップ論の決定的名著」とある。なるほど、リーダーシップ論のベストセラーとなっている決定的名著なのか、ということになる。

元々、本書は1997年6月に日経BPマーケティング社から刊行されていた「21世紀の経営リーダーシップ」を、今の「企業変革力」に改題したものだという。その際に一部改訳も行われたようだが、「21世紀の経営リーダーシップ」を約5年後の2002年4月に「企業変革力」と改めて再発行。

私が読んだ手元の本は2020年1月に発行されたものだが、何と第21刷。確かに毎年増刷され続けており、相当に売れている本だということはこのデータだけでも良く窺い知れる。

ビジネス書のベストセラーと言うのはこの業界に何冊か存在しているようだが、やはり読みやすくてしかも実際に役に立つ有用な本でないと、そう売れるものではない。

その点、コッターの本書「企業変革力」は、非常に読みやすく、分かりやすく、しかも実際の役に立つ極めて有用な本であったと先ずは言っておきたい。

とにかく専門書としての難解性や読みにくさとは全く無縁で、最後まで楽しみながら、感心しながら読み終えることができた。

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ジョン・p・コッターとはこういう人

ジョン・コッターは非常に著名なリーダーシップ論の大権威であるが、ここで経歴を紹介しておきたい。本書の最後に掲載されている著者紹介から引用しておく。

ジョン・P・コッターは、ハーバード・ビジネス・スクールの冠松下幸之助講座リーダーシップ教授であり、マサチューセッツ州ケンブリッジに設立されたコッター・アソシエイツの創始者、会長である。MITとハーバード大学を卒業後、1972年以降、ハーバード・ビジネス・スクールで教鞭を取る。1980年には、33歳の若さで終身教職権を獲得し、正教授の職に就く。これはハーバードの歴史のなかでも、最年少の教授就任の栄誉と認められる。(後略)

著者のジョン・コッターの顔写真。別の書籍からの表紙写真から引用。
著者のジョン・コッターの顔写真。別の書籍の表紙からの引用である。

このような大変な経歴と実績を誇る人物なのである。

本書の全体構成は

全体は3部構成となっている。第一部は「変革に伴う課題とその解決」、第二部は「八段階の変革プロセス」、第三部は「変革の持つ意味」である。その中の中心が第二部の「八段階の変革プロセス」にあることは当然だろう。「カモメになったペンギン」でも展開されたこの8段階の変革プロセスの在り方を詳細に説いていく。

本の目次の写真
目次を写真で撮るとこんな感じである。

第二部「八段階の変革プロセス」は63ページからスタートして261ページまで続き、約200ページを費やしている。本書全体のページ数は訳者のあとがきなども含めて全309ページなので、本書全体の3分の2は第二部の「八段階の変革プロセス」について書かれている

第一部の最初の章、本書のスタートは「企業変革はなぜ失敗するのか」から始まる。それは「八つの過ち」としてかなり具体的に分かりやすく解き明かされるのだが、その誤ちは8個あり、それがそのまま「八段階の変革プロセス」に直結するという構成になっている。

つまり、企業の変革が失敗する過ちとしては8つの原因が考えられるので、逆に企業の変革を推進しようとする場合には、その8つの原因を潰していく、8段階の変革プロセスを一つひとつ実現していくしかないという仕組みとなっているのである。

その意味でも、この本は全体を通じて、企業を変革するに当たって必要となる8段階のプロセスを徹頭徹尾、理解させるための本ということができる。

紹介した本を立てた写真
本を立てるとこんな感じである。それなりの厚みがある。

その8段階のプロセスをの推進を少しでも理解しやすくするために、全体を通じて図や表が豊富に出てきて、理解を助け、深めてくれるのがありがたい。実に親切な作りとなっている。

とにかく企業の変革を実現させるために何が必要なのか、どう進めていくべきなのかということに、筆者コッターのほとんど執念のようなものを感じさせる1冊と言っていいだろう。

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マネジメントとリーダーシップの違い

本書で繰り広げられる企業を変革するに当たっての「8段階の変革プロセス」を事細かに展開する大前提としてコッターが強調するのは、マネジメントとリーダーシップの違いである。

コッターの考えでは、以下のように定義づけられる。

マネジメント・・・人材と技術を管理する複雑なシステムをつつがなく進行させるための様々なプロセスと定義。
   プランニング、予算策定、組織設計、人材配置、コントロール(統制)、問題解決の活動が含まれる。 

    ⇒ 確実性と秩序を築きあげる。 

リーダーシップ・・・まず組織を誕生させる、あるいはその組織を激しく変化している環境に適応させていく様々なプロセスと定義。
   リーダーシップの発揮によって、まず組織の将来はどうあるべきかを明らかにし、そのビジョンに向けて人材を整列させ、更に待ちかまえる障害をものともせず、必要な変革を実現する方向に人材を鼓舞するというプロセス。

    ⇒ 大規模な変革を進める。

コッターはリーダーシップの重要性を強調し、企業を変革する8段階の変革プロセスでも、リーダーシップの発揮が不可欠だという。

但し、注意をしなければならない点は、コッターはそのリーダーシップを1人や2人のカリスマ性を持った人物に担わせる、あるいはそのカリスマ的なリーダーシップを持った人物の登場を待つということを言っているのでは、決してないということだ。

リーダーの数を増やしていき、多くのスタッフがリーダーシップを備えることの重要性を説くのである。

変革のための8つのプロセス

コッターが説く8段階の変革プロセスは以下のとおりである。

1.危機意識を生みだせ(危機意識を高める)
2.変革を進めるための連帯(変革推進のための連帯チームを築く)
3.ビジョンと戦略を作る(ビジョンと戦略を生みだす)
4.ビジョンを周知徹底する(変革のためのビジョンを周知徹底する)
5.従業員の自発を促す(行動に向けて多数の参加者をエンパワーする)
6.短期的な成果の重要性(短期的成果を実現する)
7.成果を活かしてさらに変革を進める(成果を活かして、さらなる変革を推進する)
8.新しい方法と企業文化(新しい方法を企業文化に定着させる)

以上の8つのプロセスを具体的な事例を紹介しながら、一つひとつ、詳細に解き明かしていくのである。

本当に読み応え十分だ。非常に参考になり、正に目から鱗の連続となる。

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本書の最大の魅力と利点は

改革、変革を進めたときに、必ず予想される反対の動き、すなわち上手くいかない展開を、実にリアルに的確に示唆してくれる点だ。

それを認めてしまって対策を立てないと、元の振り出しに戻ってしまう。反動勢力にまた元に戻されてしまうという点だ。

その時に、改革、変革を推進しようとする側は、どういう心づもりで、どう立ち向かうのか?

その対策が実に分かりやすく、あるべき姿を示してくれているのが最高だ。まるで未来が予測できるかのような的確の未来予想と推測。ほとんど予言者のような感さえある。

その対策を怠れば必ずやこうなるので、それに対してこういう対策を立てなければならない、と熱く語るのである。

どのような心づもりで立ち向かうのかという一番大切な点を、しっかりとアドバイスしてくれる。

その点が実に貴重。かけがえのない本書の最大の魅力と利点と言えそうだ。

真剣に変革に取り組まないと、生き残れないという切実感が最高

この本を単なる経営のための1テキストとして読むなかれ。もっと真剣に耳を傾け、真剣になって取り組まないと本当に企業として、組織として生き残れなくなるということを肝に命じる必要がある。それくらいに危機は迫っていて、容赦はないのだ。

真剣にこの問題と向き合い、取り組もうとうする時に、このコッターの本は、唯一無二のかけがえのない本、あなたとあなたの企業、組織を救う魔法のような貴重な本となるはずだ。

全ての企業と組織で働く人に、この本をじっくりと読んでいただくことを切に願うばかりである。

じっくりと繰り返し熟読するに値するすごい本

 

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