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日本の合唱曲に開眼させられる

高校時代、僕は本当に多感だった。新たなクラシックの名曲との出会いがあり、ベートーヴェンやチャイコフスキーに夢中になる一方で、高校入学時から始まった合唱との出会いが僕の人生を一変させてしまう。

我が母校の「音楽部」で合唱を本格的にスタートさせた。その入学当時に歌っていたのが高田三郎作曲、高野喜久雄作詞の「水のいのち」。合唱に関わる人でこの曲を知らない人はいない。誰でも一度は夢中になり、心を奪われてしまう大変な名曲である。

こうして僕は日本人の作曲家が作ったいわゆる「邦人組曲」と呼ばれている合唱ジャンルに夢中になって、この頃からクラシックのLPはベートーヴェンを中心とするヨーロッパのクラシック音楽と、日本人が作曲した日本語の合唱曲のLPレコードを買い漁るようになる。

年に1回、クリスマスのプレゼントとして買ってもらっていた時代から、自分で小遣いを貯めて、合唱のレコードを買うように変わっていった。

そうは言っても、年3~4枚だったのではなかろうか。かわいいものである。

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間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」の衝撃

高校の音楽室に置いてあった鑑賞用のクラシックのレコード。「音楽部」の部員はその中の合唱のレコードは自由に聴くことができて、僕はある日、大変なものを聴いてしまう。これによって僕の音楽観と合唱観は根底から覆ってしまった。

それが間宮芳生(みちお)の「合唱のためのコンポジション」だった。あの時の衝撃は今でも忘れられない。顧問の音楽の先生から勧められて聴いた時のショック。これは本当に大変な体験だった。

そのレコード。間宮芳生が作曲した「合唱のためのコンポジション」が6曲(第1番~第6番)も収められ、LP3枚組の立派な箱に入っていた

当時僕は高校1年生。16歳だった。腰を抜かさんばかりの衝撃を受けて、間宮芳生は僕の神となる。

そのLP3枚組の箱入りレコードの造形も魅力的で、特に添付されていた分厚い解説書が内容的にも非常に貴重な素晴らしいもので、僕のコレクター魂に火をつけられた。

本当に貴重なかけがえのないレコードで、僕はこの豪華なLPのBOXをどうしても手に入れたくなって東奔西走した。

ところが、こんな特殊なレコードが量産されているわけもなく、たちまち絶版となり、入荷できなくなってしまう。

というよりも僕が当時高校の音楽室で聴いたその3枚組のLPのBOXが、聴いた当時の段階で流通していたものかどうかも不明である。

どうしても入手できない。どこをどう探しても入手できない究極の幻の宝物として、僕の垂涎の的となって50年間が経過し、もうとっくに諦めていた

ところが、最近になって、何気なしに入った職場近くの中古レコード店(ディスクユニオンお茶の水店)で、中古のレコードとして発見するという奇跡に遭遇することになった。

レコードを集めるようになって、最高の歓喜の瞬間、昇天してしまうかのような、言葉にすることができず、立っていることもできなくなるような感動は、前にも後にもあれが唯一無二のものだった。

まだ3年程前の、最近の出来事である。

遂に見つけた間宮芳生のコンポジションの3枚組のBOXレコードの写真。
これが3年前に遂に発見した(中古)間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」の箱入りLPのジャケット写真。職場の近くの中古レコード店で発見。鳥肌の立つ衝撃的な体験だった。一部を除いてCD化もされていない。
間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」の中身の写真。LPレコード3枚と分厚い解説書。
間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」の中身。3枚のLPレコードと分厚い解説書の写真。これは本当に宝物。ここに収録された6曲のうち2曲はCD化されたが、他は埋もれてしまった。解説書は復活していない。極めて貴重な内容が満載だ。
解説書の中の一部を示している。
この幻のLPレコードの最大の財産はこの分厚い解説書。これが埋もれてしまうのは耐えがたいことだ。

 

ミッシェル・コルボが指揮したモンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」の3枚組のLPBOXを発見した時以上の衝撃だった。

三善晃のあまりにも美しい合唱曲

こうして僕は、日本人の作曲家が作曲した日本語の合唱曲に大いに夢中になったのだが、間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」という日本人ならではの究極の合唱曲に接してしまった以上、あれ以上の衝撃はあり得なかった。

だが、間宮芳生に勝るとも劣らないもう一人の天才、三善晃に、ほぼ同じタイミングで巡り合ったのだ。

三善晃!

三善晃の合唱曲の桁外れの美しさは異次元だった。僕はLPレコードによって、三善晃の信じ難い恐ろしいまでの美しい合唱曲の存在を知ることになった。特に心を奪われてしまったのは女声合唱とピアのための「三つの抒情」と無伴奏混声合唱組曲の「嫁ぐ娘に」の2曲。

日本人が作曲した合唱曲にこんなに美しい曲があるんだ、と当時の僕はドンドン合唱の世界に目を向け始めていた。

間宮芳生と三善晃という日本の合唱界の二人の天才の全く曲風は異なるとはいうものの、他の作曲家とは次元の違う究極の合唱、いや音楽の高みを思い知らされて、僕はいよいよ合唱にのめりこんでいくことになった。

だが、もちろんヨーロッパの大作曲家のクラシック音楽を忘れたわけでは、決してない。

小学生時代から始まったクラシック音楽の開眼とLPレコードの収集を巡っては、こんな具合に実に様々なドラマがあったが、このようにして、僕は幼い小学校時代から確実にクラシック音楽の世界に足を踏み入れていった。

様々な遍歴を経ながらも、そのレパートリーの中心には常にベートーヴェンがいたように思う。

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その後もベートーヴェンより魅力的な作曲家に次々と出会う

最初に「運命」と出会ってから、かれこれ60年近い年月が過ぎている。

その後、僕はベートーヴェンよりもはるかに魅力的な作曲家と、続々と出会うことになる。

そしてベートーヴェンはもちろん、交響曲からもいつの間にか完全に離れてしまう。相変わらずクラシック音楽には夢中だったのだが、僕の関心は全く別の世界に向いていく。

大学に入学後、ある偶然でバッハと巡り合う

これが僕のクラシック音楽遍歴の中では、最大の事件だったと思う。

たまたま大学の合唱団の仲間の下宿先で聴いた「ブランデンブルク協奏曲」の第5番。これを聴いて以来、僕はバッハとバロック音楽にはまって今日に至っている。その時の経緯については、このブログの中でも書かせてもらった

以来、僕はバッハとテレマン、更にもっと前のモンテヴェルディにすっかり夢中になってしまう。

同時代のフランスのバロック音楽にもずっと心を奪われ続けている。マルカントワーヌ・シャルパンティエ、クープラン、カンプラ、ラモーなどである。

やっぱりベートーヴェンが僕の原点

こうして高校時代から大学時代にかけて、ベートーヴェンからすっかり離れてしまった僕だったが、今回、このブログを通じてベートーヴェンのことを数多く紹介することになった。そこで改めてベートーヴェンをじっくりと聴いてみると、やっぱり素晴らしい

僕の音楽の原点はやっぱりベートーヴェンにあったことを、ありありと痛感させられた。

あの小学生当時のベートーヴェンとの出会いがなければ、今の僕はなかった。全てはあのワルターのLPレコードが出発点だ。

それが60年も経過して、CDの数は最近では数えたことがないが、多分5万枚は超えている。

子供のときから狂ったように聴いていたベートーヴェンの交響曲について、今こそ語るときだと考えている。機は熟したというべきか。

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ワルター指揮のコロンビア響の演奏が最高

僕が初めて本格的にクラシック音楽を聴くようになった最初のレコードがワルター指揮のコロンビア交響楽団の演奏だったということは前述のとおり。「運命」「ジュピター」「未完成」「新世界」の4曲、LP2枚。

この4曲を来る日も来る日も狂ったように聴き続けていた。これで僕はクラシック音楽の世界に入り、ベートーヴェンと出会った。

今回、改めてワルター指揮のコロンビア響のCDをじっくりと聴いてみた。もちろんこのワルターの演奏は今でも現役バリバリである。

そこでビックリした。本当に素晴らしい演奏

子供時代に繰り返し聴き続けて、既に僕の血となり肉となっているので、当然と言えば当然なのだろうが、本当にその演奏は素晴らしく、心から満喫させられた。

他のどの演奏を聴いてもしっくりこない。圧倒的にワルターが素晴らしいのである。

ワルターのベートーヴェンの交響曲のCDのジャケット写真。
ブルーノ・ワルター指揮のベートーヴェンの交響曲全集のジャケット写真。これは韓国産のワルターのステレオ録音のエディションである。

 

あれから僕の耳は肥え、ある曲を様々な異なる指揮者や演奏者で聴き比べることは日常茶飯事の当たり前のことなので、いくら子供時代に刷り込まれているとは言っても、その演奏の欠点や、他の指揮者の演奏の凌駕している点なども、冷静に聴き比べるだけの耳は持ち合わせているつもりだ。そうでなければ、こんなクラシック音楽の紹介や評論などできるわけがない。

他の曲でも、昔に聴きなれた演奏と新しい演奏とを聴き比べることは決して珍しいことではないが、以前親しんでいた演奏の欠点が冷静に良く分かり、新しい演奏に心を奪われることも決して珍しくはない。

むしろ良くあることだ。

だが、ワルターの指揮するものは違った。ほとんど不満を見出せない、聴き出せないのである。

これはまごうことなき超一級の名演中の名演だと改めて認識した次第。

録音当時ちょうど80歳前後だった超高齢だったワルター。一度は引退した老巨匠のステレオ録音は、音も全く遜色なく、その柔らかくも魂のこもった深い響きに、心を鷲掴みにされてしまう。この包み込むかのような温もりのあるまろやかな響きは老ワルターだけが醸し出すことができた奇跡と言うしかない。良くぞこんなに素晴らしいものを残してくれたものだ。間違いなく後世への福音である。

このワルターを聴いた後で、カラヤンやバーンスタイン、ラトルなど、とても聴けたものではない。温もりと音楽の大きさがまるで違うのである。

本当に素晴らしい演奏。後世への最大の文化遺産ブルーノ・ワルターをもっともっと聴いてほしい。心からそう思わずにいられない。

次回からはいよいよベートーヴェンの交響曲について紹介していく。請う、ご期待!

 

☟ 興味を持たれた方は、どうかこちらからご購入ください。

1.間宮芳生の「合唱のためのコンポジション」(5曲収録)

1,570円(税込)。送料200円。このCDは何故か、送料無料の店舗が見つけられません。ここが一番送料が安く、送料込みで
1,770円(税込)。こちらをチョイスください。

この1枚のCDに5曲が収録されているが、例の遂に入手できた3枚組のLPに納められていた6曲とは、別物がほとんど。曲も違えば演奏も違う。

ちなみに、間宮芳生の合唱のためにコンポジションは、現在では17曲も作られている。あの貴重な3枚組のLPのBOXに納められた6曲は、同時としては、コンポジションの全集だったのである。


【国内盤CD】合唱のためのコンポジション〜間宮芳生作品集 田中信昭,岩城宏之 / 東京混声合唱団 他

 

2.三善晃「三つの抒情」他

1,498円(税込)。送料無料。


日本合唱曲全集::三つの抒情 三善晃 作品集 3 [ 三善晃 ]

 

3.ベートーヴェンの交響曲のCD 

① ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団 
  ベートーヴェン交響曲全集(ヴァイオリン協奏曲&リハーサル風景を含む)7枚組
3,441円(税込)。送料無料。 

これが絶対のお薦めです。迷わずこちらをご購入してください。


【送料無料】 Beethoven ベートーヴェン / 交響曲全集、ヴァイオリン協奏曲、リハーサル ワルター&コロンビア交響楽団(7CD) 輸入盤 【CD】

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② ブルーノ・ワルター指揮 ベートーヴェン 交響曲第4番・第5番「運命」
2,117円(税込)。送料無料。


ベートーヴェン:交響曲第4番・第5番「運命」 [ ブルーノ・ワルター ]

 

③ 第6番「田園」との組み合わせの方が、安くて高性能のCDとなっている。こちらがお薦め。
1,760円(税込)。送料無料。


CD/ベートーヴェン:交響曲第5番「運命」&第6番「田園」 (極HiFiCD)/ブルーノ・ワルター/SICC-40002

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