ファントム・スレッド 

映画の基本情報

アメリカ映画 130分

 監督:ポール・トーマス・アンダーソン

 出演:ダニエル・デイ=ルイス、ヴィッキー・クリープス、レスリー・マンヴィル 他

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購入したパンフレットの表紙。いかにもゴージャスだ。

ギンレイホールで観た「ファントム・スレッド」を紹介する。とにかく色々な意味で見どころが満載の映画なのである。これは観逃したらもったいない。


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ポール・トーマス・アンダーソン監督は

ポール・トーマス・アンダーソン監督は現代アメリカを代表する実力派の名監督。
1970年の生まれで、これだけの傑作を続出しているのにまだ49歳の若さだ。何と驚くべきことだが、「ダンケルク」、「ダークナイト」、「インターステラー」のあのクリストファー・ノーランと同じ年の生まれである。

「ブギーナイツ」と「マグノリア」で頭角を現し、群像劇の名手と称えられたが、何と言ってもアンダーソン監督を有名にした作品は、今回のファントム・スレッドと同様にダニエル・デイ=ルイスと組んだ2007年の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』なのだ。これは映画史に残る超ド級の名作として名高い。
それだけに同じコンビで組んだ「ファントム・スレッド」に否が応でも期待が高まってしまうというもの。

他にはカンヌ国際映画祭で監督賞に輝いた「パンチドランク・ラブ」や、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞と国際批評家連盟賞に輝いた「ザ・マスター」が名高く、上述の「マグノリア」(主役はあのトム・クルーズ)はベルリン国際映画祭で金熊賞に輝いているので、このポール・トーマス・アンダーソン監督は、世界の3大映画祭の全てで主要タイトルを獲得している稀有な監督ということになる。


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ダニエル・デイ=ルイスは

ダニエル・デイ=ルイスは、アカデミー主演男優賞を一人で3回も受賞している唯一の男優(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で2回目の受賞)。世界最高の名優の一人だ。

ちなみにダニエル・デイ=ルイスが獲得して3回のアカデミー賞主演男優賞は次のとおりだ。

①マイレフト・フット 監督:ジム・シェリダン  1989年

②ゼア・ウィル・ビー・ブラッド  監督:ポール・トーマス・アンダーソン  2007年

③リンカーン 監督:スティーブン・スピルバーグ  2013年

さて、このファントム・スレッドであるが、ポール・トーマス・アンダーソン監督との2度目のタッグであり、しかも今回は何とこれで俳優業を引退すると公言しているだけに、期待に胸が高まる。

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パンフレットの中のダニエル・デイ=ルイスのプロフィール。写真の彼の姿にうっとり。

名声に包まれた世界最高の仕立て屋という役柄だけに、これ以上、この名優の最後にふさわしい映画はないだろう。

実際に素晴らしい出来栄えだ。

ダニエル・デイ=ルイスが精魂を込めて慎重に進める採寸や仕立ての描写には思わずため息がこぼれ、うっとりしてしまう。そのセクシーさとダンディ振りには惚れ惚れさせられる。本当に絵になる俳優。

この格調の高さと存在感はもう別格としか言いようがない。

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パンフレットの見開きに使われたこのシーンが素晴らしい。この美しさと緊張感。

ストーリーは

ダニエル・デイ・ルイスが扮する最高の腕を持った仕立て屋があるウエイトレスを見染め、彼女のためにせっせとドレスを作り続け、やがて2人は結婚するのだが、天才特有の独善性とわがままさが原因で、すぐにギクシャクし始める。そこで彼女が取った衝撃の行動は?

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この気品と格調の高さに酔わされる。

背筋が凍りそうな不気味なミステリーに変わってくる・・・。

優雅極まりない映画がジワジワと様相を変え、背筋が凍りそうな不気味なミステリーに変わってくる。この変化が最大の見どころだ。よもやと思っていたことが的中するあたり、本当に怖い。しかもその恐怖は単純なものではなく、かなり屈折しているだけに、観ている者は呼吸をするのも憚られるくらいに緊張を強いられる。そして最後は、解き尽くせぬ愛の不可解さに言葉を失ってしまう

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ハッキリ言って、最後は怖く、不気味。ゆがんだ愛の行方は・・・。

映画全体のトーンというか格調の高さはいささかも減じることがないのは、さすがの一言。実に見応えのある重厚な映像にしてドラマなのであった。


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ダニエル・デイ=ルイスには、どうか引き続き映画に出てほしい

ダニエル・デイ=ルイスは正に適役。これが最後の映画出演とは残念過ぎる。まだまだ若いし、むしろ少し老境に入った渋い役柄を観てみたいと思うのは僕だけではあるまい。そでだけの演技力と存在感を誇る名優を失うことは映画界の大きな損失だ。

引退などということは言わず、映画ファンを喜ばしてほしい。切にそう願わずにいられない。

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