目 次
大クープランの魅力を堪能する
今回は大クープランだ。大クープランの作品はこの熱々たけちゃんブログの中で、以前に一度取り上げている。
「ルソン・ド・テネーブル」という宗教曲だった。魂を抜かれてしまうような信じられない程の美しさと静謐さに満ちた名曲だ。
今回は器楽アンサンブルの作品をとり上げる。「趣味の和ー新しいコンセール集」という作品だ。
大クープランことフランソワ・クープランは、何と言ってもクラヴサン(チェンバロ)のための組曲を量産した作曲家で、代表作としてはこのクラヴサンのための組曲をとり上げなければならないところだが、今回紹介させていただくコンセール集も、いかにもフランソワ・クープランならではの雅な響きを誇る名曲で、フランソワ・クープランの魅力を存分に堪能できる。
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フランソワ・クープランのこと
前にクラヴサン曲で取り上げた伯父のルイ・クープランを筆頭に一族に音楽家を多数輩出したフランスのクープラン家の中でも最も偉大な大作曲家だったフランソワが大クープランと呼ばれるのは、あのヨハン・セバスティアン・バッハが大バッハと呼ばれるのと非常に良く似た関係だ。

大クープランと大バッハはほぼ同時代の作曲家だが、クープランの方が約20歳年長となる。二人ともほとんど同じ60台半ばという年齢で亡くなっていることは注目されていい。
フランソワ・クープラン(大クープラン) 1668年~1733年(64歳没)
ヨハン・セバスティアン・バッハ(大バッハ) 1685年~1750年(65歳没)
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フランスバロック音楽(古典音楽)について
フランソワ・クープランが活躍した時代は、フランスのバロック音楽(古典音楽)の歴史の中では、中期に位置している。
ブルボン王朝が栄えたベルサイユ宮殿で発展したフランス古典音楽は、もちろんバロック音楽に含まれ、「ベルサイユ楽派」と呼ばれことも多い。
正にベルサイユ宮殿を中心に栄えた音楽だったからに他ならない。
全体は大きく3期に別れ
初期・・・リュリ、シャルパンティエ
中期・・・フランソワ・クープラン
後期・・・ラモー
が代表的な大作曲家となる。
この4人がフランスバロック音楽(古典音楽)の4大巨匠と言っていいが、中でもクープランとラモーがこの時代の音楽の代表者となる。
フランソワ・クープランはフランスが最大の栄華を誇ったルイ14世に仕え、ラモーは、ルイ14世の曽孫に当たるルイ15世の時代の作曲家だった。

なお、念のため言っておくと、このベルサイユ楽派はブルボン王朝の国王たちが音楽を保護したこともあって、非常に栄え、著名な作曲家が数十人単位でいる。
人類の歴史上、これだけ多くの優れた作曲家や演奏家が一時代に輩出したのは、このベルサイユ楽派をおいて他にはない。フランスのバロック音楽は正に百花繚乱だった。
ちなみにこれだけ栄え、素晴らしい音楽が量産されていたにも拘わらず、しばらく後に勃発したフランス大革命で木端微塵に崩壊してしまうことは、認識しておいてほしい。
フランス革命が歴史上、必要不可欠なものであったことはもちろんだが、あの古典音楽がすっかり消え去ってしまったことは、非常に残念なことだった。
200年後のドビュッシーとラヴェルが範にした音楽
その後、ベルリオーズなど何人かの優れた作曲家はいたが、フランス音楽が再び世界に冠たる輝きを取り戻すのは、200年後のドビュッシーとラヴェルの出現まで待たなければならなかった。
そういう意味では、クープランとラモーの音楽は、ドビュッシーとラヴェルに直結しており、20世紀の天才2人が200年前のクープランとラモーの音楽を範としたことは、決して偶然ではない。
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太陽王ルイ14世と音楽のこと
ルイ14世は太陽王と呼ばれ、ブルボン王朝の最盛期を築き上げた著名な国王である。「陳は国家なり」の言葉で良く知られている。
最も注目してほしいのは、ルイ14世の治世(国王在任期間)がほぼ70年に及んでいたことだ。何と4歳で即位し、74歳で亡くなるまでずっと国王。次の国王ルイ15世は、太陽王の曽孫、つまりひ孫だった。4代後が次の国王となった。
1661年、23歳から親政を開始し、実質50年以上、国王として君臨し続けた。その生涯は近隣諸国との戦争に明け暮れる日々だった。

ところがこの戦争ばかりしていた絶対君主が、素晴らしい趣味の持ち主で、様々な芸術を保護し、自身でダンスを踊り、音楽を何よりも愛したのである。
しかもその音楽も文学も極めてフランスの薫り高い、非常に洗礼された趣味の良いものだった。
本当に不思議なものである。政治、外交上は戦争に明け暮れていたにも拘わらず、戦争をしていないときは趣味の良い洗練された芸術性の高い音楽や文学に夢中になっていたわけである。
このバランスをどう保っていたのか。戦争に明け暮れる殺伐とした日々だったから、せめて政治や戦争から離れているときは、平穏で心が安らぐ趣味の良い芸術に身を投じ、安らぎを得たかったのであろうか。
本当にこれは不思議な話し。ルイ14世という人物には興味が尽きない。
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最晩年のルイ14世のために作曲された
クープランが作曲した新しいコンセールは、最晩年のルイ14世のために作曲されたもので、これを聴いてもらえば、ルイ14世の好んだ音楽が良く分かる。
大きな音、衝撃的だったり、刺激的だったりする音は一切出てこない。柔らかくて、優しさに満ち溢れた、どこまでもしみじみとした音楽である。
心の琴線に優しく響いてくる安らぎに満ちた音楽だった。
このクープランの音楽がルイ14世が好んだ音楽だったとすれば、戦争大好き人間だったルイ14世は、そんな生涯とは全く真逆な、極めて洗練された芸術性の持ち主だったに違いない。
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「新しいコンセール集」の概要
クープランの創作の中心がクラヴサン曲であったことはもちろんだが、室内合奏曲、つまり複数名による器楽のアンサンブル、合奏曲も多数作曲した。
そして合奏曲はルイ14世の最晩年、つまりお爺ちゃんになった偉大な国王のために作曲されたというわけだ。
1724年に出版された「趣味の和ー新しいコンセール集」は全体が10曲から成り立っており、既に作曲されていた「王宮のコンセール」の続編として作曲された。
「王宮のコンセール」は4曲から成り立っており、新しいコンセールは5番から始まっているところから、その続編であることは明らかだ。
あくまでも王宮、つまりルイ14世がいたベルサイユ宮殿で演奏されることを前提に作曲されたものである。


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収録曲の内容
演奏されているコンセール集の曲の詳細を、以下に上げておく。

【CD1】
1 コンセール 第6番 変ロ長調
プレリュード
4拍子の軽快なアルマンド
サラバンド
悪魔のエール
シチリアーノ
2 コンセール 第8番 ト長調(劇場風の様式で)
序曲
グランド・リトゥルネル
エール
優美なエール
軽快なエール
ルール
エール
サラバンド
軽快なエール
優美なエール
バッカスの巫女たちのエール
3 コンセール 第7番 ト短調
プレリュード
アルマンド
荘重なサラバンド
小フーガ
ガヴォット
シチリアーノ
4 コンセール 第12番 イ長調(2つのヴィオール、あるいは他の同種の楽器で)
プレリュード
冗談
遅く、そして悲壮に
エール
5 コンセール 第5番 へ長調
プレリュード
アルマンド
サラバンド
ガヴォット
鐘の音風のミュゼット
【CD2】
1 コンセール 第9番 ホ長調(愛の肖像)
魅惑
陽気
美の三女神
私は知らない
機敏さ
高貴な自尊心:サラバンド
優しさ:愛情をこめて
エト・セトラ、あるいはメヌエット
2 コンセール 第10番 イ短調
プレリュード
優美で田舎風なエール
ヴィオール、あるいは他の同種の楽器による嘆き
ドロンバ
プレリュード
アルマンド
第二アルマンド
クーラントI
クーラントII
3 コンセール 第11番 ハ短調
サラバンド
ジーグ
ロンド
4 コンセール 第13番 ト長調(2つの楽器のために)
プレリュード
エール
サラバンド
シャコンヌ
5 コンセール 第14番 ニ短調
プレリュード
アルマンド
サラバンド
小フーガ
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楽器編成について
クープランの合奏曲は、この新しいコンセールも含めて、様々な楽器によって演奏されることを念頭において作曲されている。具体的な楽器編成については指示がなく、演奏者たちの任意に任されていることが特徴だ。
前作の「王宮のコンセール」では「クラヴサンで演奏してもよいし、ヴァイオリン、フルート、オーボエ、ヴィオール、ファゴットで演奏してもよい」となっており、新しいコンセールも全く同じ発想で作曲されている。
バロック音楽の演奏がこれだけ盛んになった今日、クープランのコンセールにも様々なCDが出ているが、楽器編成は演奏者や指揮者が自由に選択しており、様々なタイプの演奏を聴くことができる。
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どこまでも優しい安らぎに満ちた音楽
快活な曲も数曲あるが、どこまでも優雅で、静かに心の琴線に響いてくる優しい音楽が中心だ。控えめながらも、魂の一番深いところに優しく語りかけ、しんみりと浸透してくる。
フランスのエスプリというか、これぞフランスならでは味わいだ。
どこまでも静かで、派手な部分がまるでないため、非常に地味なものに感じられるが、それでいながらその音楽は聴く程に味わいを増し、この味わいを知ってしまうと離れがたくなってしまう。
気品の高い非常に趣味のいい音楽で、こういう曲をあの太陽王ルイ14世が好んだというのも、感慨深いものがある。
あのラモーとは対照的な音楽
2大巨匠に数えられるラモーとは非常に対照的な音楽だ。
ラモーは持てる天才を駆使して、聴く者をかつて聴いたことのないような興奮の渦に引きずり込む創意と工夫に満ちた音楽を作曲した。
ラモーの音楽は天才が彫琢の限りを尽くした驚嘆すべきもので、それでいながらその中に静謐さと優美な美しさを忘れない。
クープランはラモーとは似ても似つかない。だが、どちらも極めてフランス的な趣味の良さと美しさに輝いている。
フランスのバロック音楽には、こんなに肌合いの違う天才がクープランやラモーの他にも大勢いた。驚くべきことだ。
こんな趣味の良いフランス的な美しさと優しさ、深遠さに満ちた音楽を、太陽王ルイ14世が育て上げたことは間違いなく、あの50年以上も絶対権力の地位にあり続け、近隣諸国への侵略戦争を繰り返していたルイ14世のもう一つの顔に興味が尽きない。
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ルセの演奏が絶品だ
このCDは、今日、すっかり古楽鍵盤演奏の第一人者となったルセが、自ら創設したレ・タラン・リリクと共に、実に典雅な演奏を聴かせてくれる。
上述のとおり、この曲集には楽器編成の指定はなく、あくまで指揮者と演奏者に任されている。
ルセとレ・タラン・リリクは曲によって、使用楽器を自由に編成し、工夫を凝らしており、聴いていると次々と様々な楽器が用いられ、万華鏡を覗いているような楽しさに満ちている。
非常に素晴らしい演奏で、2002年度のレコード・アカデミー賞を受賞したことも頷ける名盤だ。

実は、ルセとレ・タラン・リリクによる演奏といえば、先日紹介したあのラモーの心躍る「序曲集」の演奏者である。
フランスバロック音楽の2大巨匠の全く雰囲気の異なる名作を、同じ演奏者で聴き比べるというのも、またとない貴重な音楽体験となるだろう。
☟ 興味を持たれた方は、どうかこちらからご購入ください。
このルセの名盤も、ラモーの序曲集と同様に、日本語の解説書付きの国内盤が廉価で発売されていて、嬉しい限りである。
但し、いつもの楽天ブックスからは購入できず、以下の各店舗を紹介させていただく。いずれも全く同一のCDであるが、以下の5つの店舗では、いずれも送料無料となるので、是非ともこちらのいずれかからご注文願いたい。
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CD / クリストフ・ルセ / F.クープラン:新しいコンセール集 (SHM-CD) (解説付) / UCCS-50291
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④2,420円(税抜)。送料無料。国内盤(日本語解説付き)。靴下通販ZOKKE店。
CD / クリストフ・ルセ / F.クープラン:新しいコンセール集 (SHM-CD) (解説付) / UCCS-50291
⑤2,420円(税抜)。送料無料。国内盤(日本語解説付き)。エプロン会楽天市場店。
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