目 次
経営改善が進まない最大にして抜本的な要因
いよいよ某自治体病院の最大の問題点と課題について書くことにします。この問題は某自治体病院だけの問題ではなく、全国の多くの自治体病院においても全く同じ状況になっている可能性が高いと考えています。
これが自治体病院の最大の病巣だと確信しています。
ボーナスが業績連動していない
某自治体病院では、いわゆるボーナス、正確に言えば賞与(勤勉手当・期末手当)の支給月数が病院の損益実績と全く連動していないという問題です。
このことが収益の拡大、損益状況の改善(経営改善)に職員の気持ちを誘導できない抜本的かつ本質的な要因となっていると思われます。
自治体病院と民間病院(国立病院・日赤病院・JCHO・済生会・大学病院等を含む)との決定的な違いは、ここにあることは間違いありません。
多くの病院が業績連動でボーナス支給
一部の自治体病院を除いて、民間病院はもちろん、国立病院(独立行政法人)でも、日赤病院でも、JCHOでも、大学病院でも、全国のほとんどの病院は、賞与算定期間である直前の半年間の実績、損益状況に応じて、賞与の支給月数が決定されていることを認識してもらう必要があります。
そうなっていないのは、自治体病院だけなのです。
実績で黒字が出れば、それに応じた賞与が支給され、逆に、損益状況が赤字など実績が悪ければ、賞与の支給月数が減る、あまり高額な賞与の支給はできないことになるわけです。
これはどんな業界でもあまりにも当然、当たり前のことであり、業績連動しない賞与支給は、逆に極めて少数派、一部の自治体病院だけの普通は考えられないレアな仕組みと言うしかありません。
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以前の病院での賞与の支給月数の決定方法
私は①で書かせてもらったように全社連という全国60以上あった社会保険病院(現在JCHO)の本部で社会保険病院全体の指導監督を長年行ってきましたが、当時、全国の社会保険病院がまだ国家公務員に準拠して全国どの病院であっても給与が均一だった時代でも(その後、給与制度の大改革が行われて、全国の社会保険病院は病院毎に給与がバラバラになりました)、ボーナス(賞与)の支給月数は病院毎にバラバラ、それこそ病院の数だけ別々の支給月数がありました。
各社会保険病院ではボーナス支給の実績の基準となる半年前の経営実績(黒字赤字)に応じて、自分たちの病院で今期どれだけ賞与を支給すべきなのか、念入りに検証して、本部の全社連に報告し、了解を得るシステムになっていました。
経営的に問題のない病院はいいのですが、赤字病院は報告だけでは済まされず、病院長と事務長が上京し、本部の役員、幹部職員に説明し、許可を得る必要がありました。
赤字病院は大変だったのです。病院が独自に少し甘めに支給しようとしても、本部が首を縦に振りません。
経営が非常に安定している優良病院は年間の支給月数が8カ月近い病院もありましたし、大きな赤字が続いている病院は年間2カ月、夏冬それぞれ1カ月あるかどうかという病院までありました。
ちなみに本部全社連の職員は、全国約60病院の平均支給月数で支給されていました。
自分が社会保険病院の事務長職となって赴任した際は、とにかく年に2回のボーナスの支給月数を決定することが、事務長職の最大の仕事の一つであり、経理課職員と膝詰めで、0.0〇単位で、細かくシミュレーションを出し、徹底的に議論して決めていました。
支給月数を決定するまでの大変さ
これにどれだけのエネルギーと時間を費やしていたことか。もちろん病院の労働組合とも熾烈な交渉をしなければなりません。
業績連動させるわけですから、赤字が大きいと支給月数はどんどん小さくなります。本来賞与なしもあり得るのですが、あまり過激なことをやると例の東京女子医大病院のように医師を始め職員が退職してしまうことも真剣に配慮しなければなりません。
したがって、何とかギリギリ職員が踏みとどまってくれるだろうと思われる分岐点を探らなければならないのです。総務課、庶務課、人事課など事務職幹部が全員頭を並べて議論を尽くします。
もちろん看護部長の意見なども聞かなければならないことは当然で、最後は病院長の了解を得なければ病院としての最終判断はできません。
そうやって毎回の賞与の支給月数の決定を、胃が痛くなる思いで検討してきたのです。
そのことは、私がフリーランスになってからの3カ所の民間病院でも全く同様でした。
どんな病院にあっても、夏と冬のボーナスをどれだけ支給するのかということは、病院経営にとって最も重要な懸案事項だったのです。
ところがどうでしょうか?
私は初めて自治体病院に入職して、本当に驚きました。
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どんなに大きな赤字でも賞与満額ゲット
業績連動しないボーナス支給ということは、病院の決算状況がどんなに悪くて、巨額の赤字が出ていても、全く関係なくボーナスが満額で支給されるということです。
某自治体病院はそういう病院でした。これは大きな問題だと思いました。
私が勤務していた時代には幸いことに決算状況はそれほど悪くはなく、例のコロナの補助金もあって黒字にもなっていたのですが、その後は、③で書いたように、誤った経営判断が下されて、アッという間に経営悪化。階段から転げ落ちるようにとんでもない赤字を計上するようになりました。
そんな状況にあっても、賞与は例年と変わることなく、人事院勧告で引き上げ勧告がなされるなどして、むしろ賞与は黒字時代より多く支給されていたのです。
もちろん私は引き下げるべきではないかと主張しましたが、全く受け入れられませんでした。
普通に考えればあり得ないのですが、そもそも経営状況に連動する発想が全くありませんので、賞与を引き下げると言う選択肢どころか、検討対象にもなり得なかったのです。
業績連動させる発想が微塵もない
確かに大きな赤字になっているが、色々と検討し、今回は総合的に考えて、基準通り満額で支給しよう、そういう判断でもあればまだ救いようがあるのですが、そうではなく、そもそも業績連動させる発想が全く欠落していました。
つまりどんなに赤字でも、自分たちが夏と冬にもらう賞与は1円もカットされることなく、常に満額で支給される、それに疑いを入れる余地は皆無で、賞与が削られることは夢にもないと信じ切っていました。
賞与が病院の経営状況と連動されるという発想そのものが、微塵もなかったのです。
そこに深刻な問題を感じました。
全国どこの自治体病院でも多額の繰入金を各自治体からもらっているにも拘わらず、大きな赤字となっている原因は、多分ここにあることは間違いないでしょう。
赤字でも賞与が満額で支給されることで、病院が更に大きな赤字となっても、関係ない。我々の病院は自治体立の病院で、「親方日の丸」潰れるなんてことはあり得ない。そう信じ切っているようです。
夕張市民病院と夕張市のことは全く頭をかすめないのでしょうか?
ここを見直さない限り、自治体病院の経営は決して改善することはありません。喫緊の大問題として真剣に見直すことを願うばかりです。

その姿勢が目標管理にも悪影響
一部の自治体病院を除いて、賞与の支給月数が業績連動されるからこそ、みんなで頑張って目標を達成しよう、少しでも赤字を減らして、黒字を目差そうとするインセンティブが働いているわけです。
某自治体病院始め多くの自治体病院は、「制度として、仕組みとして、目標管理のインセンティブが全く働かない組織」と言うしかありません。
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自治体病院への本質的な問いかけ
これは組織の在り方に関わる自治体病院の本質的な問題であり、極めて深刻な問題だと考えています。
1.多くの自治体病院は深刻な赤字を抱えており、医師数などを含め、医業収益そのものも、医師一人当たりの医業収益も、かなり低い状態にあります。
2.ベッド稼働率も低く、平均在院日数も長い。入院診療単価も決して高くないでしょう。
3.経営改善を進めるためには、全ての数値をもっと厳しく求めていく必要があります。
すなわち、医業収益をもっと拡大させる、医師一人当たりの医業収益をもっと高くする、入院患者をもっと増やす、ベッド稼働率をもっと高める、平均在院日数をもっと短くする、入院・外来の診療単価をもっと高くする、これらに取り組まなければなりません。
4.その際、必要性をどう訴えたらいいのでしょうか?
「どうしてそんな努力が必要なのか?」と質問されたときに、どうやって答え、どうやってその必要性を理解させるのでしょうか?
業績連動させないとインセンティブが働かない
収益が多かろうと、赤字があろうと、黒字になろうと、入院患者が増えようと減ろうと、現状では給与は全く変わらないし、賞与の額も全く変わらないのです。
もらえる給与やボーナスは全く変わらないのに、今よりももっと忙しくなるだけの選択をどうやって選ばせたら良いのでしょうか!?
頑張って入院患者や収益を増やしたところで、ただ忙しくなるだけで、医療事故などの危険性が高まるだけ。それを「いや、そうじゃない!収益を拡大し、患者を増やすことは必要不可欠だ」とどうやって理解させたら良いのでしょうか?
私が今まで関わってきた病院では、頑張ってくれればそれだけ職員のみんなにも還元できるんだからというインセンティブに訴えるのが常でした。ここではどうしたらいいのでしょうか?
業績連動させないと、どうしてもインセンティブが働きません。自治体病院の全職員の抜本的な意識改革が不可欠です。
それとも、このままでは病院は近いうちに経営破綻し、潰れてしまう!と言うしかないとでも!?
独法化を実現させないと潰れてしまう
この問題を根本的に改めようとしたら、独立行政法人化(独法化)を実現させ、賞与の支給月数や給与体系に柔軟性を持たせるしか方法がないのです。
この問題については、また次回以降考えていきましょう。
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