【第10章】からの続きです。
某自治体病院ではなされていなくて、民間から事務長職として赴任した僕が新たに導入した取り組みの紹介と解説の第11弾です。
今回はいよいよ「無減代」の登場です。
目 次
解決策としての「無減代」の推進
私は某自治体病院に、全く新たな取り組みとして「無減代」活動という取り組みを導入しました。
「無減代」はもちろん「無限大」のもじりですが、これは私が私淑しているあの出口治明さんが提唱していたものを、私が深く共感し、実際に某自治体病院に導入したものです。
この時の導入の経緯については以前、この熱々たけちゃんブログでも取り上げています。興味のある方は、是非こちらも読んでみてください。
仕事の効率性と生産性を高めるために、ただ時間をかけているだけでは駄目だという発想で、日々の業務から本当にしなければならない業務だけに絞り込んで、余計なことはやらないとする、言ってみれば働き方改革の提案です。
某自治体病院の効率性と生産性の低さを改め、向上させるための特効薬として用いることができないかとトライしてみたのです。
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「無減代」とは何か
出口治明さんが著書「いま君に伝えたい知的生産の考え方」の中で提唱している考え方です。
【無】・・・やらなくてもいいことはやらない 「無駄な業務をなくす」
【減】・・・完全になくせないのなら、できるだけ減らす 「無駄な業務を減少させる」
【代】・・・他のもっと効率性・生産性が高い業務に変更する 「他に振り替える」
これを某自治体病院に導入する決心をしました。
実際の導入に当たっては、色々な工夫が必要でした。特に病院という他とは全く異なる独自の組織では特別な知恵と工夫が必要となりました。
先ず私は、無減代の対象を2分させました。
①自部署だけで完結できること
②自部署に関係のある他部署の困ったこと
病院はチーム医療と言われるようにどうしても他部署の業務と密接に結びついていることが多いことに鑑み、「自部署に関係のある他部署の困ったこと」を互いに出し合って、病院を挙げて無駄な業務と労働時間の短縮を目指すことにしたのです。

「無減代」活動の具体的内容
私が始めた「無減代」活動の内容を少し具体的に示しておきます。
1.何をやってもらうのか
①意味が乏しい、非効率な事務作業からの解放を目指す。無駄な仕事は、今後はしない
②病院を挙げて、院内から無駄な業務(生産性が低く、効率性に欠けるもの)を一掃
③院内に浸透している役所的な業務、役所的な発想の駆逐、排除
ア ハンコ文化の追放
イ 同じような書類を重複して求めない
ウ なくても済むものは、全て廃止
エ 正当な理由や根拠のない過去の流用、前例踏襲は原則禁止
④本当にその業務、その書類は必要なのか?もっと簡略化できないか?ダブっていないか?
2.その目的と狙い
①医療職に医療に専念してもらう。事務作業に時間をかけることを改める
②時間外労働(超過勤務時間)と超過勤務手当の大幅な縮減
③医師だけではなく全職員の真の働き方改革の実現
3.BSC(事業計画・目標管理)との関係
「業務プロセスの視点」に直結し、「職員満足度」(人材と変革の視点)、更に「患者の視点」、ひいては「財務の視点」に及ぶものとしての位置づける
4.進めるに当たっての大方針(基本理念)
①些細な改善ではなく、抜本的な改革の断行。生産性と効率性が上がることは躊躇なく実行
⇒「患者サービスの向上」と「職員満足度」に結び付くことが大前提
②ターゲットは日々のルーティンワーク、定例業務
③ルーティン業務の全てが対象
※ 医療行為及び医療行為に関連する業務は対象外とした
前後2回のヒアリングと結果の完全公開
医師については若干送らせてスタートさせましたが、最終的にはドクターも巻き込んで、病院を挙げて取り組むことにしました。
「無減代」は病院として全く初めての取り組みだっただけに、その内容と狙いを良く理解してもらうため、私が病院内の全部署と丁寧な説明を含め、前後2回の丁寧なヒアリングを個別に実施しました。いずれもかなり時間をかけて部署長やスタッフと熱心に意見交換を繰り返しました。
先ずは各部署が自分たちで列挙した
①自部署だけで完結できること
②自部署に関係のある他部署の困ったこと
を提出させ、その取り組みが間違っていないか、それを進めることで大きな支障が起きないかどうかを、実際に活動をスタートさせる前に事務長職の私がジャッジさせてもらいました。
判断が難しいものについては、その都度、病院長と相談し、了解を得て指導させてもらったことは言うまでもありません。
そして3カ月間の試行を行いました。各部署で実際に進めてもらったわけです。
その活動の結果、どうなったのか?成果は出たのか?職場は変わったのか?改善できたのか?
各部署にはそれぞれの部署での取り組みについて、自己評価を行い、それに対して再び私が個別にヒアリングを実施して、一つひとつ丁寧に検証させてもらいました。
取り組み結果を病院内に完全公開
重要な点は、各部署の取り組みの成果を病院内に完全にオープンとし、職員なら誰でもどこの部署の結果であっても、自由に読めるように公開したことです。
うちの部署ではこれだけムダな業務等をなくし、減らし、あるいは他の簡単なものに振り替えたという具体的な内容、その結果、効率性と生産性がこれだけ上がったという成果を、病院内に完全にオープンとし、イントラで公開し、各部署の取り組みの結果が他部署の参考となり、ひいては病院全体の財産となるように心がけたのです。
この完全公開は非常に意味があったと思っています。
明らかに「無減代」の成果は出た
病院を挙げての無減代活動でした。
多くの部署でかなりの成果が出て、効率性と生産性は確実に向上したと自負しています。明らかに各部署での様々な業務が改善し、無減代活動に取り組んだ効果が明白に出たのでした。
但し、一部の部署では、パンドラの箱を開けてしまったような混乱が起き、関係所属長は眉を顰め、「こんなことになって一体どう責任を取ってくれるんだ」と言わんばかりに詰め寄られたこともありました。ですが、これぞ私の狙ったことでもあったのです。
臭いものに蓋をして、力ずくで押さえ込もうとしても、必ず欠陥と不満はほころびるものです。この機会に病院の現場にはびこる「膿」と「臭いもの」を白日の下に晒し、関係者が揃って、どう対応するべきなのか、とことん議論を尽くし、膿を全て出し切って病院の大改革を進める必要がありました。
それが正に「無減代」活動を病院に取り入れた私の真の狙いだったのです。
私の退職により1年だけで頓挫が痛恨
私の退職後、「無減代」活動がどうなったのか正確には聞いておりません。多分、そのまま立切れになったに違いないと思っています。
残念でなりません。実際の運用では問題も表出し、一部の部署では却って手間を要することになったかもしれませんが、それは必要悪、全く新しい試みを導入した際に必ず出現するものでした。
そこを多くの職員の叡智を結集して膿を出し切った暁には、この病院はもっと素敵な素晴らしい病院、多くの職員がやり甲斐を感じることができる職場に変貌を遂げたはずでした。
病院の起死回生の処方箋が失われた
無減代という発想は間違いなく正しいものです。それを推進することは某自治体病院にはどうしても必要なものでしたが、視野狭窄に陥っていた一部幹部職員の抵抗もあって根付かなかったとすれば、これ以上残念なことはありません。
無減代活動は病院の起死回生の有力な処方箋でした。
病院が生まれ変わる絶好のチャンスを失ってしまったように感じています。
教訓と改善策【無減代活動】
職員の意識改革を強く促す「無減代」活動は、職場の効率よっては性と生産性を向上させるために不可欠な発想である。
完全に定着させるには時間もかかり、展開によっては抵抗も出てくるだろうが、経営に苦しむ多くの自治体病院にとって、再生のための重要な処方箋に成り得るものだ。
事務長職の当然の業務は全て除外
色々と書いてきましたが、事務長職として当然にやらなければならないことは全て除外しています。
経営改善のための日々の工夫と取り組み、関係部署への声掛け。様々なスタッフとの意見交換、調整など事務長職には息を抜く時間は全くありません。
病院内で何か問題が起きた時に、それをいち早く把握し、病院長に報告し、その対策を考え、考えた案を実行に移すこと、これらは全て事務長職の当たり前の業務に他なりません。
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病院内各種問題の調整役と問題解決
ですが、これだけはここで言っておきたいことがあります。
事務長職の最も時間とエネルギーを費やす業務は病院内の各種問題の調整役と問題解決です。日々これに追われていると言っても過言ではありません。
病院という職場は一般の事業所とはかなり異なる特殊な組織であり、極めてガバナンスが弱いことが特徴です。「病院としてこう決めたことだからこうしてほしい」、「こうやってほしい」といくら言っても、医療職、特に医師には通じないことが多いですし、動いてもくれません。
そこを実際に動かすには関係者(医師を始めとする各部署の職員)に対しての強力かつ丁寧な調整が不可欠で、これが事務長職の最大の業務となるのです。
非常に大きな問題からごく小さな問題まで、その全てに事務長職が直々関わって問題解決に向けて動く必要があります。そのためにも私は毎日の病院内ラウンドを繰り返し、医療現場に足を運び、多職種とのコミュニケーションと情報収集に努めているわけです。
事務長職は何をやらなければならないか、どうやらなければならないか、その際に心がけることはなんなのか、事務長職の最も重要な業務は何か、それらは近日中に別にまとめたいと考えています。
私が新たに導入した取り組みは終了
「某自治体病院のここが不十分だった」という実態報告と、そんな中で「私が某病院に新たに導入した取り組み」の紹介と解説が11回に渡って続きました。
一応、これにて終了となります。
自治体病院の病巣の摘出と抜本改革の提案は、まだまだこれからです。深刻なものがまだたくさんあります。順次斬りまくっていきたいと考えています。
次回に続きます。 スポンサーリンク

