目 次
再び出口治明の本に夢中になっている
あるきっかけがあって、この年末に再び出口治明の本を夢中になって読んでいる。知らない間に新刊が何冊も出ていて真っ青となった。
新たに何冊も買い込んで、片っ端から読んでいこうと決意したものの、中々時間が取れなくて四苦八苦しているが、今回取り上げた文庫の1冊は非常に読みやすく、実際に直ぐに読み終えることができた。
内容的にも本当に素晴らしく、ページを捲る度になるほどと激しく同感させられることばかりで、声を大にして強くお勧めしたい。
2年前に単行本として出版されていた本が、この度、文庫本となって再出版され、僕の目に留まった。
「いま君に伝えたい知的生産の考え方」という文庫本である。
これが凄かった。
出口治明さんのこと
ここであらためて著者の出口治明(でぐちはるあき)さんのことを確認しておきたい。
本書の扉に掲げられているプロフィールをそのまま掲載させていただくのが一番適切だろう。
1948年三重県生まれ。立命館アジア太平洋大学(APU)学長。
京都大学法学部卒業後、日本生命保険相互会社入社。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て2006年に退社。同年、ネットライフ企画株式会社を設立、代表取締役社長に就任。2008年に免許を得てライフネット生命保険株式会社に社名を変更。2012年、上場。社長、会長を10年務めたのち、2018年より現職。訪問した都市は世界中で1200以上、読んだ本は1万冊を超える。
(後は主要著書の紹介)
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出口治明「いま君に伝えたい知的生産の考え方」の基本情報
僕が購入したものは、2023年10月15日第1刷発行の言ってみれば発刊されたばかりの文庫本だったが、この本は元々は日本実業出版社から2019年2月に刊行された「知的生産術」という単行本を改題し、再編集して文庫化したものだった。
僕は、うかつにもこの2019年に刊行された「知的生産術」のことを知らなかったのだが、今回の文庫化されたタイミングで知ることができたことはラッキーだったと思っている。
4ページの「文庫化によせて」も嬉しいし、単行本の刊行から4年半後の文庫本、格安の文庫本はありがたい。
とにかくこの大和書房から出ている「だいわ文庫」は読みやすく、ほんの数日で読めてしまった。
ページ数は全体で279ページ。それなりのページ数があるが、この文庫本はパッと見でも行間が広くて、1ページ当たりの行数がかなり少ないと思われる。数えてみると15行。しかも文章間に1行空けなどが多用されており、空きスペースもやたらと多くて、1ページが直ぐに読めてしまう。
したがって279ページとは言ってもそれ程の分量はなく、直ぐに読めてしまう。
テーマはズバリ「知的生産術」
テーマは非常に分かりやすい。本書のタイトルになっている、正に「いま君に伝えたい知的生産の考え方」だ。
現在は立命館アジア太平洋大学(APU)の学長となっている出口治明が語る知的生産性を上げる鉄則と具体的な方法を非常に分かりやすく解き明かしている。
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本書の構成
先ず、はじめに
本体は5つの章から構成されている。
第1章 日本の低迷を救う3つの方法
第2章 自分の頭で考え抜く
第3章 インプット力とアウトプット力をつける
第4章 マネジメントをどう考えるか
第5章 コミュニケーションは難しくない
おわりに
文庫化によせて
それぞれの章は5つから10個ほどの小タイトルに分類されている。
目次を写真に撮ったので、実際に見てもらおう。
知的生産とは何なのか
本書のテーマは「知的生産」だ。
出口治明が本書の中で強調する「知的生産」とは何を言っているのか。
そのことは本書の「はじめに」の12ページ程に凝縮されている。
「イノベーション」は「サボりたい」という気持ちから生まれるとして、いかにサボって時間を作り出すために工夫するか。
いかに効率よく仕事をして成果を出すか。その方法を自分の頭で考え出すことが、「知的生産を高める」ことだと出口は言う。
少し出口治明の本書の「はしがき」の文章を引用してみる。文中の太字等は全て出口治明自身によるもの。
「生産性を上げる」とは、「時間当たりの産出量を増やす」ことです。言い換えると、「人が成長すること」と同義だと思います。
(中略)
生産性を上げるとは、
・「同じ仕事をより短い時間でこなすこと」
・「同じ時間でたくさんの量をこなすこと」
・「同じ時間で仕事の質を高めること」
であり、それはすなわち、人が「成長すること」を意味しています。
そして、知的とは、自分が成長するためには社会常識や他人の意見を鵜呑みにせず、原点にさかのぼって「自分の頭で考えること」です。
・「知的」=「自分の頭で考える」
したがって、知的生産とは、
・「自分の頭で考えて、成長すること」
だと僕は定義しています。
(中略)
・「何も改革を行わず、みんなが貧しくなるのか」(黙って出費を受け入れるのか)
・「知的生産を高めて、経済成長するのか」(出費分を補う工夫をするか)
の2択を迫られているのが、今の日本です。
貧しくなりたくなければ、GDP(国内総生産/一定期間に国内で生産された財貨・サービスの価値観の合計)を上げて新たに増加する支出分を取り戻すしか方法はありません。
GDPとは、「人口×生産性」のことです。GDPを上げるには、人口を増やすか、あるいは生産性を上げる必要があります。人口はそう簡単には増やせませんから、一人ひとりが自分の頭で考えて知的生産性を高めるしか選択の余地は残されていません。
では、どうすれば知的生産性を高めることができるのでしょうか?
どうすれば、「自分の頭で考えて、成長すること」ができるのでしょうか?
その答えのひとつが、本書の「知的生産の考え方」です。
長時間労働から解放され、短時間で成果を出すためのヒントとして、そして何より、楽しく仕事をするためのヒントとして本書を読んでいただければ幸いです。
本書からは学ぶことばかり
この冒頭の「はしがき」を読んで、僕は全くそのとおりだたいたく同感させられた。
そして本書を読み進めると、このはしがきで書いてあったように、どうすれば知的生産性を高めることができるのか? どうすれば、「自分の頭で考えて、成長すること」ができるのか?
この2つの究極の課題について、非常に分かりやすく、かつ具体的に解説されており、目から鱗の連続だった。いちいち納得できて、強く同感できることばかりであり、まさしく我が意を得たりと、一気に読み終えることができた。
本当に本書からは学ぶことばかりであった。
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「知的生産術」を取り入れるしか生き残れない
出口は本書の中で、今の日本は「骨折り損のくたびれ儲け」の状態にあり、この状態から脱出するためには、社会の構造を根本から改革する必要があると訴える。
「短い労働時間で生産性を上げ、相対的に高い成長を目指すことが求められている」として、従来の日本の「工場モデル」から脱却しなければ、働いても貧しくなるだけだと言う。
かつての日本の高度成長の時代は、工場モデルの働き方が合理的だったが、現在は、日本のGDPの4分の3以上は、サービス産業を主力とする第3次産業が占めているとして、サービス産業の生産性を上げることが、国全体の生産性を上げることに貢献するという。
そして、サービス産業モデルの評価軸は、「労働時間」ではなく、「労働生産性」だと訴える。
すなわち、サービス産業を中心とする社会においては、労働時間ではなく、「成果」と、それをもたらす「アイデア」こそが、生命線になると主張する。
高度成長期のかつての日本にあった「工場モデル」では、「何の疑問も持たずに、与えられた仕事を黙々とこなす人材」「従順で、素直で、協調性の高い人材」が重宝されたが、「サービス産業モデル」で求められるのは「自分の頭で考え、新しいアイデアを生み出せる人材」だという。
こうしてこれからの日本では「サービス産業モデル」で求められる知的生産性を高めることが必要になるとし、ズバリ長時間労働を続けると、生産性が落ちると断言する。
自分の頭で考え抜く
知的生産性を高めるためには、「社会常識を疑い、すべての物事を根底から考え抜く」ことの必要性を説く。「自分の頭で考えること」だけが、ビジネス上の進化をもたらすとし、「他人と同じことや、昨日までの自分と同じことを考えていたら、知的生産性は横ばいのまま」だという。
「メシ・風呂・寝る」から「人・本・旅」に
「長時間労働は、物理的な製品づくりを行う場合の労働手法であり、サービス産業の時代は、脳をフル回転させて、斬新な発想やアイデアを生み出す必要がある。朝8時から夜の10時までの長時間働いていては、脳が疲れてしまうだけで、アイデアやサービスといった無形のものを生み出すには、様々な経験を積んで、発想力や柔軟性を養うことが大切。そのためには、生活の基本を「メシ・風呂・寝る」から、「人・本・旅」に切り替える必要があるという。
たくさんの「人」と出会い、たくさんの「本」を読み、たくさん「旅」をして(現場に出て)経験を重ねることだ。
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出口の言う「旅」は「現場を知ること」
出口は、「旅」は「現場」と言い換えていいと言う。ここに最も注目すべきだ。
真実は現場の中にしか存在しないので、若手はもちろん、経営者も役員室や社長室にこもるのではなく、現場に出るべきです。役員室や社長室に足しげく報告に来る人間は、ほとんどがゴマスリと思ったほうがいいでしょう。新しくパン屋さんができたら、行って、買って、食べて、はじめておいしさがわかります。自分の目で物事を見て、自ら体験する。机上で考えるだけではなく、いろいろな現場に出向き、体験を重ねることが大切です。
僕は病院の経営を巡って、「ラウンド」という医療現場に顔を出してスタッフに声をかけることを日課としている。基本的に毎日行くことを心がけている。
医療の現場は、午前中が勝負という特性があるので、僕のラウンドは午前中に実施している。ところが病院というところは何かと慌ただしい職場で、その午前中に会議や各種の打合せが入ることが多く、ラウンドに行けないことが少なくない。そういう日には、何か大切なことができなかったような居心地の悪さを感じてしまう。
僕は元々現場第一主義者なので、どこの病院で働いているときにもラウンドを重要視してきたが、今回、出口さんの本を読んで、あらためて自分が日々実行していることはそういうことだったのかと、天啓を受けたような気がした。
出口が言う「人・本・旅」の「旅」が、現場の重要視を指しているということは目から鱗であった。
直ぐにでも実践したい「無減代」
もう一つ紹介しておきたいのは、「無減代」の発想だ。
出口治明は本書で「知的生産性を上げる5つの視点」を展開している。その視点の最初が、『無限大ではなく、「無減代」を考える』というものだ。「無減代」、一体何のことだろうか?
「無」は、仕事をなくすこと。「減」は、仕事を減らすこと。「代」は、使い回したり、代用すること。「その仕事はなくせないか」「なくせないなら、減らせないか」「他の資料に代えられないか」などと考えて仕事をすると、知的生産性を高めることができるとして、
この
・無=なくす(無視する)
・減=減らす
・代=代用する
として、無・減・代の3つについて、それぞれ具体的に詳しく説明してくれている。
それらもいちいちもっともことばかりで、特に役所、公務員の職場では驚く程あてはまるものばかりである。
本当に目から鱗の連続となるので、どうか実際に本書を手に取って、その極意というか奥義を学んでほしいと切望してやまない。
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こんなに役に立つ本も珍しい
ことほど左様に、本書に書かれている内容には、僕にとってはいちいち納得のいくこと、正に僕自身が日々の仕事、業務を通じて強調したいことばかりだ、とビックリするほど共感することができた。
しかも、出口治明はそれらのことを非常に論理的に、出口治明自身が本書の中でも強調している、「数字、ファクト、ロジック」を用いて説得してくるので、本当に納得できる。ここでも出口治明の言葉を借りれば、「腹落ち」するのである。
こんなに役に立つ本も珍しい!と言ってみたくなる程の貴重な1冊である。
APU学長を引き受けた経緯など貴重な体験談も豊富
本書の中にはColumnと称して出口治明が立命館アジア・太平洋大学(APU)の学長を引き受けた経緯が灰色の色刷りとなって掲載されている。これが大変な読み物でもある。
実におもしろく興味深い、貴重な体験談である。
出口治明が自分の人生を振り返って、
サラリーマンから還暦ベンチャー、そして古希学長。
「しんどい」「大変」と思ったことは一度もなく、毎日がドキドキワクワクの連続です、と断言する出口さんを本当に嬉しく思うと同時に羨ましく思う。
出口さんは脳出血で倒れた
一番最後の「文庫化によせて」の中に、出口さんが本書刊行2年後の2021年1月9日の朝に脳卒中の発作を起こして倒れた経緯が書かれている。
僕は他の著作やネットを通じて出口さんが脳出血で倒れたことは知っていたが、本書を読んで当時の細かな経緯とその後の状況を、本人自身の文章によって詳しく知ることができた。
その意味でも本書は非常に貴重なものなのだが、その脳卒中(脳出血)に倒れて、不幸中の幸いで一命を取り止めたはいうものの右半身にマヒが残る中で、どういう選択をしたのかという出口さんの選択、最終目標にこれまた感銘を受けた。
懸命なリハビリでAPU学長に復帰
出口さんは「言葉を取り戻すために、歩くことを諦める」という決断をして、懸命なリハビリを続け、1年後にAPUの東京キャンパスに出勤できるようになり、3月下旬(2022年3月)には電動車椅子で別府のAPUキャンパスへ出勤。4月1日の入学式では祝辞を述べることができたという。
その苦闘を知って、益々出口さんに共感を覚えることになった。
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全てのサラリーマンの必読書!
不屈の精神力と実行力を備えた出口治明さんの、仕事に臨むに当たっての最も基本的にして重要なことを非常に分かりやすくまとめた本書は、本当に貴重なものである。
日々の仕事と業務推進で疲弊している全てのサラリーマン諸氏に本書を読んでほしいと切望している。
本書のタイトルは「いま君に伝えたい・・」とされていて、いかにも若者や若いサラリーマンなどを念頭に置いているかのような印象を持たれがちだが、オリジナルの単行本は「知的生産術」であり、この本は決して若者に限定して訴えているわけではない。
これぞありとあらゆる全てのサラリーマンの働き方改革を進めるに当たっての必読書。
騙されたと思って本書を読んでほしい。これを読めば必ずあなたの人生は大きく変わるはずである。
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いま君に伝えたい知的生産の考え方 (だいわ文庫) [ 出口 治明 ]