橋下徹の第3弾が登場

橋下徹の第3弾が、遂に登場した。「実行力」「交渉力」に続く第3弾である。この2冊に大いに感銘を受けた僕は、いずれ第3弾が、近々出るに違いない、そして過去の2冊からの流れで、当然「○○力」というタイトルになることは明白だが、それは絶対に「決断力」になるに違いないと想像していた。

正に想像していたとおり。ぴったしカンカンだったのだ!

だが、読んでみると、実際には僕が想像し期待していたものとは、少し異なる内容だった。多少の失望感を味わっている。

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過去の2冊に比べると・・・

橋下徹の本はやっぱりおもしろくて、僕は購入後、直ぐに読み始めてホンの数時間で読み終えてしまった。今回の「決断力」は少し薄くなって、全体で201ページ。集中して読めば4~5時間、かなり丁寧に読んでも7~8時間もあれば読み終えることができるだろう。

往復の通勤電車の車内を中心に読んだが、本当に直ぐに読み終えることができる。

で、その感想だが、もちろんこれは非常におもしろくて、かつ非常に役に立つ部分も多い。これは素直に認めよう。

だが、過去のあの2冊「実行力」と「交渉力」に比べると、どうしても見劣りする。あの2冊程の圧倒的な感銘力や、打ちのめされるような感じには、程遠かったと言わざるを得ない。これは残念だった。

中々精悍な顔つきで悪くない。2021年7月13日に発刊されたばかりの最新の1冊だ。
この裏表紙のポイントは、帯に書かれた本書の各賞のタイトルと内容だ。これを読めば本書に何が書かれているか、その概略が良く分かるだろう。

期待していた決断力のテーマではなかった

僕が橋下徹の第3弾のタイトルとして「決断力」を想像していていたのには、僕なりにちゃんとわけがあったのだ。

橋下徹が若くして大阪府知事と大阪市長に選挙で選ばれ、数5万人の大阪府役所職員(約1万人)と大阪市役所職員(約4万人)という敵を相手に大改革を断行し、その当時の未曽有の体験と大改革の内幕を包み隠すことなく語り尽くした「実行力」と「交渉力」。

この2冊は、正にタイトルどおりに自らの信念に基づいて掲げた政策を、多くの反対意見を向こうに回していかにして実行したのかという話し(「実行力」)と、その実行を推し進めるためには、周りをいかに説得し、交渉してきたのかという話し(「交渉力」)であった。

敵対勢力に対して、自らの信念と政策を推し進めるに当たって、いかに交渉し、いかに実行してきたのかを語り尽くしたのが、この前の2作だったのである。その次に「○○力」を書くとしたら、もう一度、スタート時点に立ち返って、そもそも橋下徹が周囲の多くの職員を敵に回して、自らの信念と政策を交渉して、実行していくその信念と政策そのもの、つまり大阪府知事として、あるいは大阪市長として、強力に推し進めようとしたその信念と政策そのものをいかにして決断したのか。数万人の職員を全て敵に回してまで交渉し、実行しようとした信念と政策をどう決断したのか、その辺りが包み隠さずに書かれているものと信じていた。

言ってみれば橋下徹の思考の中核部分、周りが何と言おうとも、この政策を推進しなければならないと決断するそのあたりのポイントというか、橋下徹的な発想の源が明かされるものと信じていた。そしてそれを何よりも楽しみにしていたのである。

この「決断力」は、そうではなかった。もっと個別のケースの決断力について書かれた本だ。これはこれでおもしろいのだが、僕が楽しみにしていた期待の「決断力」については、ほぼ皆無だった。本当に残念だ。

僕が期待し、楽しみにしている橋下徹の原点、橋下徹的発想の源については、次の第4弾「発想力」?に期待することにしよう。

200ページの薄い新書だ。直ぐに読める。

大阪府知事・大阪市長の体験談はメインではない

この第3弾の「決断力」は、もう一点、前2作の「実行力」と「交渉力」とは大きく異なっている点がある。

決定的に異なっているのは、この本は橋下徹の大阪府知事、あるいは大阪市長としての経験を語ったものはどちらかというとメインではなくて、本書ではもっと最新の出来事が主要なテーマになっているのである。

もちろん大阪府知事、大阪市長としての体験も語られるのだが、それはどちらかと言うと例外的である。これをどう評価するかによって本書の評価は全く異なるものとなるだろう。

本書で語られるのは、最近の話題ばかりだと言っても過言ではない。

安倍政権時代の「森友学園」問題。「桜を見る会」問題。日大のアメフト部問題。そして菅政権になってからの学術会議問題。そして最も中心的なテーマは、何と言っても現下の新型コロナウイルス感染問題である。

つまり、橋下徹が政治家を引退してからの日本中を揺るがしている大問題に対して、その対処方法を橋下流に斬るとどうなるかという内容の本となっている。

だからといって、もちろんこの本は、最近の日本中を揺るがした、時事問題に対する橋下徹の解説や主張を書いた本ではない。そんな本なら、元々僕とは思想的にも政治信条的にも大きく異なっている橋下徹の本なんかを、僕が購入する筈がない。

ここでは、あくまでも「決断力」について考察される。難しい問題の解決として、どう決断するべきなのか、それを大阪府知事、大阪市長としての数々の修羅場での経験と弁護士としての経験を総動員して、どう決断するのが正しいのか、それを説いていく。

そして橋下徹は絶対的真実主義ではなく、「手続的正義」を貫けと主張する。

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「手続的正義」という考え方の強調

橋下徹が強調する「手続的正義」というのはどのようなものであろうか。

本書の「はじめに」から引用すると、こうなる。

橋下徹は、今の日本に圧倒的に足りないのは「決断力」で、多くのリーダーが決断しなければならないのは、「正解がまったくわからない」問題だという。

それでも、橋下徹が大阪府知事と大阪市長時代に、絶対に不可能だと思われていたことを実行できた理由は、どんなに正解がわからない問題であっても、「組織やチームが納得できる決断」をしてきたからだという。もちろん常に正解を選べたわけではない。決断が間違っていたこともあっただろう。

しかし、どんなときでも、組織や部下が納得する「決断のプロセス」を踏んでいたから、物事は滞ることなく前に進んだと。

これこそ、いかなる状況でも組織を動かす「決断力」の本質。正解なんてないからそこ、正解に至る「プロセス」を「フェア」に辿ること。この「手続的正義」の思考が、先の見えない混迷の時代において物事を進めるために、必要不可欠な考え方だというのだ。

そして、「はじめに」をこう結んでいる。

本書では、僕が弁護士時代、大阪府知事・大阪市長時代に身につけた「意思決定の技法」について述べたいと思います。「賛成51対・反対49」といったギリギリの状況下での決断を求められる時に知っておくべき思考法を、あますところなく本書にまとめました云々。

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「手続的正義」がなぜ必要となるのか

橋下徹が強調するのは、「組織やチームが納得するプロセスを踏むこと」の重要性だ。リーダーは「こちらの案にする」と決めたとき、選ばなかったほうの案を主張した人たちにも、自分の決断に納得してもらう必要がある。組織やチームのメンバーの納得感が薄ければ、その後も物事は先に進まない。だからこそ、「組織やチームが納得するプロセス」を踏むことが必要となる。

決断をするには、「何が正解かわからない」を出発点にしながら、メンバーが納得できる「プロセス」を踏むことが必要不可となる。では、そのメンバーが納得できる決断のプロセスとはどういうものかというと、その答えは、「手続的正義」という考え方。結果に至る過程・プロセスに正当性があるなら、正しい結果とみなすという考え方だという。論点は「適切な手続きに則って判断された結果かどうか」にあるという。

あらかじめ手続きを決めておくことによって、お互いに納得できる結論を引き出す。社会における決定や判断は、完璧な正解が存在しない世界でなされるもの。だからこそ、「その決定や判断によって影響を受ける面々が正解だとみなせるルールやプロセス、仕組みをどう組み立てるかが重要」になる。

そして、そのルールやプロセス、仕組みを具体的にどう組み立てていくのか、それが本書の中で具体的に解き明かされていく。

これはさすがに説得力がある。その具体的な構築方法と適用したケースについては、大阪府知事と大阪市長時代の貴重にして豊富な経験がものを言う、そんな展開である。中々説得力がある。

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最高に役立つのは、「危機管理マネジメント」

本書の最大にして最高の読み物は、第4章の『トラブルの時こそ「意思決定の技法」を使う』に書かれた危機管理マネジメントではないだろうか。

決断に至る過程において、また決断した後に実行する過程において、物事がシナリオ通りに進まず、様々なトラブルが発生することがある。その際の危機管理の手続きや危機における決断について橋下徹の持論が展開されるのだが、これが実に説得力があって、参考になった。全てに納得できるものばかりで、非常に役に立つと確信させられた。

ここでの最大の目標は「信頼の回復」重要な点は、違法・不正がなかったという主張にこだわり続けないことだと主張する。

絶対的な違法・不正がなくても、周囲から疑われるような事情があればそれを正していく。ここでも「手続的正義」の思考の大切さを説く。周囲からの信頼を回復しなければ、何を言っても、何をしても、それが正しいとみなしてくれなくなるという。

ここであの森友学園問題や日大のアメフト部の事件が具体的に検証されていく。読み応え十分で、正に圧巻。非常に感銘を受けた。

そして不祥事の際の危機管理とその対応のプロセス・手続きとして7つの原則を明示する。これがいちいち納得できるものばかりで、僕もこれはしっかりとメモに取り、写メもして、肝に銘じた。

この7項目は、本当に素晴らしい内容だ。どんなことが書かれているかは、実際に本書を手に取って確認していただきたい。7項目はその順番通りに実践されなければならない。額に飾っていつでも目に入るところに掲げておきたいと痛感させられる代物だ。

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期待していた内容とは異なるが、必読の一冊

本書の内容は上述のとおり、僕が期待していたものとは大きく異なっていた。特に終盤で展開されるあの菅総理が進めた日本学術会議の任命拒否問題に関する論調には、にわかに賛同しかねるものがある。「橋下さん、それは違うでしょ!」と言いたくなる部分も多々あるのだが、元々僕は橋下徹とは世界観も思想も政治信条も異にしているので、やむを得ないと言うしかない。

繰り返しになるが、本書では新型コロナウイルスの対応など、橋下徹が政治家を引退した後の直近の話題が多く盛り込まれているので、橋下徹の大阪府知事と大阪市長の体験談を超えて、今の弁護士あるいはコメンテーターとしての意見が多い。僕はそれにはあまり興味がない。

とは言っても、この橋下徹の第3弾はやっぱり読み応えがあり、非常に参考になる点が多かった。やっぱり今、読んでいただきたい必読の一冊と呼ぶしかない。

僕のように橋下徹の大阪府知事と大阪市長時代の体験に拘らなければ、新型コロナウイルスに対する安倍・菅両政権の対応の在り方の問題点など、興味津々のテーマも網羅されており、一読の価値は大いにありそうだ。是非手に取っていただきたい。

 

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