【第4章】からの続きです。

某自治体病院ではなされていなくて、民間から事務長職として赴任した私が新たに導入した取り組みの紹介と解説の第5弾です。

病院内のラウンドは最重要ミッション

私が事務長職を務めた病院では、どこの病院であっても、私自ら病院内の現場のいたるところに顔を出して挨拶と声かけをずっと行ってきました。

「ラウンド」と呼んでいましたが、私はこの病院内の現場ラウンドが非常に重要だと確信しており、午前中、例の病院長との毎朝の意見交換終了後、およそ9時半頃から1時間半程の時間をかけて病院内をくまなく歩きまわっていました。

日によっては2時間を軽く超えることも珍しくありませんでした。

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ラウンドでは何をしていたの?

「おはようございます!」「お疲れ様です!」と現場で働く職員一人ひとりに声をかけ、できるだけ多くの職員と言葉を交わすように心がけていました。部署長がいれば、必ず「どうですか?何か困ったことはない?」と立ち話をするようにしていました。

そこで現場をしっかりと見て、できるだけ病院内の様々な情報を集めるようにしていたのです。外来や会計の込み具合なども注目ポイントでした。現場を知らずして組織の改革はできっこないのです。

もう一つの目的はズバリ「ゴミ拾い」です。ベンチ(長椅子)や椅子の設置状況、様々な掲示物の見栄えや汚れ、そしてゴミ拾いを心がけました。

1年目は僕が一人で回っていたのですが、2年目以降は拡大させて、私の直下にある部署のスタッフと2人で回るようにし、その後は更に拡大させて病院内の全ての事務職がラウンドに出ることとし、3人体制で回るようにもしました。

特に庁からの出向者(事務職)にはどうしても医療の最前線の姿を見せたかったのです。彼らは終日事務室に籠っていることが圧倒的に多かったからです。

私はこの病院内のラウンドを非常に大切にし、重大な業務(ミッション)だと位置づけていました。

狙いと目的はどこにあったのか?

病院の幹部たるもの、幹部の個室や事務所の奥に籠っていては駄目で、現場が第一と思うなら、実際にスタッフ(医療職)が働く場に、こちらから出向いて行って、現場スタッフに声をかけ、慰労し、謝辞を伝え、現場を見聞きして病院内の課題などの情報を入手しなければなりません。 

「医療職への慰労と情報収集」・・・これに尽きると考えていました。

トップは必要性を理解しなかったが

「○○さんは、何故そんなことをしているんだ?」とトップの病院事業管理者から聞かれることが何度もありましたが、ラウンドの重要性が理解できないことが残念でした。施設の一番奥まった立派の部屋の中で閉じ籠っている経営者には、もっと現場を見てもらいたかったのですが。

その質問に対してはちゃんと趣旨と目的を説明し、年に2回程はその管理者、病院長、看護局長を交えて一緒にラウンドするようにしていました。

ですが、たまに思いつきで回っても意味はなく、毎日顔を出すことに意味があるというのが私の信念でした。

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現場に足を運ばない看護局は一体

某自治体病院に関わって、最初の頃は知らなかったことがありました。後で驚かされました。

というのは、某自治体病院の看護のトップである看護局長が、実は病院内のラウンドに出ていないことを知ったのです。ラウンド先の現場で出くわすことがなかったので、この病院はさすがに広いなあ(笑)、と思っていたのですが、実際には看護局長は現場に足を運んでいなかったのです。自分が任命した直属の部下である看護師長がいる現場に出向いていませんでした。

どこの病院でもそんなことはありません。看護局長が現場にいる部下の師長の元を訪ねないことは、私の中では考えられないことでした。

今までに8つの病院の現場を経験してきましたが、看護局長または看護部長と呼ばれる看護のトップが、一日中、自分の部屋に閉じ籠り現場に出かけないのは、見たことも聞いたこともありません。

自分の個室に閉じ籠り、用があるときは師長やスタッフを部屋に呼びつけていました。

これでは部下からの信頼を得られるわけがありません。現場ナースと看護局との意識の乖離が甚だしいと痛感させられました。

その乖離をなくそうと思ったら、看護局長が師長のいる現場にラウンドをして、現場の状況を直接観察し、現場での生の意見に耳を傾けるしかないのです。

教訓と改善策【ラウンドしない看護の長】

看護のトップは現場に足を運ぶ必要がある

1.看護のトップは師長がいる現場に足を運ぶこと。

2.看護局長(看護部長)が病棟、外来、手術室など部下のナースが働いている現場に毎朝、足を運んで声をかけるのは、どこのどんな病院でも行われているあまりにも当たり前の不可欠な業務。

3.看護師は病院内の全スタッフの半分以上を占める最大の集団だ。その現場の声を聞かずに部屋に籠っていては駄目だ。

そんな病院は滅多にないと思うが、もしそんな病院があるなら早急に改めなければならない。それでも現場に足を運ぼうとしない看護のトップは、早急に辞めてもらうしかない。

私がラウンドを繰り返す真の狙い

事務長職としての私の最大のポリシーは、事務方あるいは病院の幹部と、実際に医療の最前線で働いている医療職との融合と対話、この両者が乖離してしまうことを避けたいということです。

経営サイド、事務方と現場の医療職が一体となって、この病院経営という難題を盛り越えること、それを成し遂げるのが事務長職の責務だと強く信じています。

毎朝、現場の医療職が慌ただしく働いている現場に足を運んで、労をねぎらうことで多少なりとも現場の医療職との距離が縮まるとの信念に基づいて、来る日も来る日もラウンドを繰り返してきました。

BSCを導入してヒアリングを何度も実施したことや、中期経営計画や毎年の予算作成にあたって、現場の医療職を巻き込んで一緒に作り上げるということを強く求め、抜本的な対応の見直しを求めた真の狙いは全てはそこにあります。

教訓と改善策【ラウンドの重要性】

事務長職は院内のラウンドに精力を傾けるべし

1.個室や事務室に閉じ籠っている事務長職は最低だ。現場の医療職との乖離を避けるためにも事務長職はできるだけ現場に足を運んで、多職種の職員と交流し、現場を知ることに努めなければならない。

2.現場にはありとあらゆる情報と施設のデメリットが潜んでいる。それを自らの目で直接発見することだ。

3.事務長職による現場のラウンドは、何も自治体病院にだけ求められるものではなく、全ての病院にとって非常に重要な業務だが、自治体病院の事務長職は医療のことは何も知らない出向者がほとんどなので、特に心がけて現場に足を運ぶ必要がある。

「役所から来ているお偉いさん、部屋に籠っている我々には何の関係もない人」なんていう現場スタッフの評価になりかねない。

4.回避しようとしたら直ぐにできる。現場に足を運ぶことだ。

 

【第6章】に続きます。

 

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