久々にボーン・シリーズ全3作を一挙に観た

改めてマット・デイモン主演のあの「ジェイソン・ボーン」シリーズ全3本を集中的に観て、大いに満喫させてもらった。もちろん過去にもう何度も観ているのだが、今回あるきっかけがあって、もう一度一挙にまとめて観てみたくなったのだ。
第1作「ボーン・アイデンティティー」
第2作「ボーン・スプレマシー」
第3作「ボーン・アルティメイタム」
の全3作だ。

ファンなら良くご存じだろうが、このシリーズはこの3作で完結はしたものの、その後、マット・デイモン演じる主人公ジェイソン・ボーンが全く登場しない「ボーン・レガシー」と、第3作に続く「ジェイソン・ボーン」が作られ、広い意味では全5本がシリーズとして数えられてもいい。

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改めてボーン・シリーズを観たのは、007の最新作のせい

もう何度も楽しませてもらったボーン・シリーズをまた一気にまとめて観たくなったのにはあるきっかけがあった。それは先日、久々に足を運んだギンレイホールで観た「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」のせいだった。このダニエル・クレイグ主演の007シリーズの第5作目、クレイグ主演としては最後と公言されている007は、ありえない衝撃的な展開で、「まさか、マジで!?」という内容だったのだ。

そのラストに僕は大変な衝撃を受けながらも、中盤の中弛みが残念でならなかった。序盤と終盤はいいのに、肝心の中盤が中弛みでモヤモヤ感が吹っ切れず、やたらと長い(163分=2時間43分)のに欲求不満が残ってたまらなかったのだ。

当然、過去のダニエル・クレイグ主演の007シリーズをもう一度観返した。特に僕の大のお気に入りの映画監督であるサム・メンデスが監督した2本を先ずはもう一度観直してみた。第3作目の「007 スカイフォール」(サム・メンデス監督作品としては第1作目)には大いに満喫させられたのが、それでもまだ満足し切れない。

中弛みのない冒頭からエンディングまでノンストップアクションが続くような傑作サスペンスアクションものを無性に観たくなってしまっのだ。

過去に観たサスペンスアクション映画を色々と思い起こして、それはやっぱりマット・デイモン主演のあの「ジェイソン・ボーン」シリーズ全3本じゃないかな、そう確信を得ながらも、本当にどうだろうか?期待を裏切ることはないだろうか?と心配でならない。

「無条件で映画に没頭して、心から満足したい」という僕の欲求を満たしてくれるかどうか、試してみたくなったのだ。

3本を一気に観る。で、その結果は?

素晴らしかった!大いに満足した。満喫し尽くした。3本のいずれも素晴らしいと思ったが、僕が最も気に入ったのは最終章の第3作「ボーン・アルティメイタム」だった。この第3作目に圧倒されてしまった。これは本当にいい映画だ。

無条件に素晴らしい、最高のサスペンスアクション映画だと確信させられた次第。

ちなみに、タイトルの「アルティメイタム」とは「最後通告(通牒)」の意味である。

紹介した映画のブルーレイのジャケット写真
「ボーン・アルティメイタム」のジャケット写真。マット・デイモンもカッコよくかなり気に入っている。
紹介した映画の裏ジャケット写真。
これが裏ジャケット写真。かなり詳しく解説が書かれている。映画をまだ観ていない人は読まない方がいい。

 

というわけで、今回は誰でも良く知っているマット・デイモン主演のあの「ジェイソン・ボーン」シリーズ、特に第3作目の「ボーン・アルティメイタム」の魅力に迫りたい。

映画の基本情報:「ボーン・アルティメイタム」

アメリカ映画 115分  

2007年11月10日  日本公開

監督:ポール・グリーングラス

脚本:トニー・ギルロイ、スコット・Z・バーンズ、ジョージ・ノルフィ

出演:マット・デイモン、ジュリア・スタイルズ、ジョアン・アレン、デヴィッド・ストラザーン、スコット・グレン、アルバート・フィニー   

2008年第80回アカデミー賞 編集賞、録音賞、音響効果賞受賞 
2007年第81回キネマ旬報ベストテン:外国映画ベストテン第12位 読者選出ベストテン第8位

第1作目と第2作目の紹介

第1作「ボーン・アイデンティティー」

アメリカ映画。119分。2003年1月25日 日本公開。

監督:ダグ・リーマン 脚本:トニー・ギルロイ、ウィリアム・ブレイク・ヘロン 出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー、クライヴ・オーウェン 他

2003年第77年キネマ旬報ベストテン第120位

「ボーン・アイデンティティー」のジャケット写真。
これが「ボーン・アイデンティティー」のジャケット写真。

第2作「ボーン・スプレマシー」

アメリカ映画。108分。2005年2月11日 日本公開。

監督:ポール・グリーングラス 脚本:トニー・ギルロイ、ブライアン・減る下ランド 出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、ジョアン・アレン、クリス・クーパー 他

2005年第79回キネマ旬報ベストテン第78位

「ボーン・スプレマシー」のジャケット写真
これが「ボーン・スプレマシー」のジャケット写真。

色々な意味で衝撃を与えたアクション映画

この3本の「ジェイソン・ボーン」シリーズは、公開当時、色々な意味で映画界と映画ファンに衝撃を与えたアクション映画であった。あの映画のどこが衝撃的だったのか?

いくつも要因があった。

先ずは、主人公を演じるマット・デイモンのことだろう。

紹介した3本のボーン・シリーズのジャケット写真を並べて撮影した写真
ボーン・シリーズ全3作品のジャケット写真を並べるとこのとおり。

マット・デイモンがアクションスターに変身した衝撃

マット・デイモンはボーン・シリーズに出る前から既に人気スターであったが、こんなサスペンスアクション映画の主人公を演じるようなキャラクターではなかったというのが大きい。

マット・デイモンはもっと知的な繊細な役柄を得意としていた俳優だったのだ。

代表作は何と言ってもデイモン自身がアカデミー脚本賞を受賞した「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」の主人公。アルバイト清掃員でありながら数学の天才で、ヒョンなことからその能力を見出されながらも、踏み出せない心にトラウマを負う精細な青年を好演した。この作品で、一躍クローズアップ。しかも脚本も書いて、いきなりアカデミー脚本賞を取ってみせたのだからすごい。

その後も話題作、大作に引っ張りだこで、特に注目されたのは2作目の映画出演作のあのスピルバーグの「プライベート・ライアン」。地獄のような戦場から救い出されるライアン役だった。皆から命を守られるか細い兵士役。

そんなこんなで、優しくて繊細で壊れやすいイメージを売りにしていたのだ。実際に身体も小柄だし、とてもアクションスターが務まるようなマッチョなキャラクターではなかった。

そんな彼が大変身して、無敵の殺人マシーンとなって、世の映画ファンの度肝を抜いた。

しかもこのマット・デイモン演じるジェイソン・ボーンは、銃の腕前も凄いのだが、007のように銃に頼るのではなく、あくまでも肉弾戦。格闘が中心なのである。

か細い身体であるにも拘らず、突然アッと驚かされるスピーディーなアクションを見せるのだ。そのスピード感とキレの良さが抜群で、静から動への切り替えがすごい。平然としていながらも、突然信じられないような身のこなしで、相手を倒す姿が強烈だ。

と言って、超人的な桁違いの強さを見せるわけでもなく、キレキレのスタリッシュのアクションを全開させながらも、相手も異様に強く、その都度、かなり苦戦しつつも倒してしまうあたりが、いかにも現実的でリアルなのだ。その現実味のある生身のアクションに唸ってしまう。

それをマッチョとは縁遠い暴力とか過激なアクションとは無縁と思われた繊細なマット・デイモンが演じるギャップが、先ずは魅力であった。衝撃を与えた最大の要因と言っていい。

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記憶喪失と闘う自分探しの旅

ジェイソン・ボーンの全3作を通じて、マット・デイモンは記憶喪失に陥っていることが、一番大切なポイントであることは誰でもご存知だろう。

彼は完全な記憶喪失で、自分は何者なのか全く分からない。それでいて、何故か命を狙われ続け、逃げ回らなければならない。その悲哀と非情が観る者の心を熱くする。常に命を狙われ続け、逃げ惑いながら、真相を突き止めようと必死であがく。その謎に満ちた自分探しの旅が観ている者の心を釘付けにして、主人公に感情移入してしまうのである。

この設定が実に良かった。彼は暗殺者としてターゲットを仕留めに行くのではなく、彼が組織から抹殺されることから必死で逃げる一方で、自分を殺そうとしている組織の正体と自分の存在の真相を探っていくという錯綜した作りが、他のサスペンスアクションやスパイアクションにはない、物語に深淵さを与えたと信じて疑わない。

ドキュメンタリータッチのアクション映画

もう一つの衝撃は、映像そのものにある。これはまるでドキュメンタリーのような作りなのである。

特に監督がグリーングラスに変わってからの第2作の「ボーン・スプレマシー」と第3作の「ボーン・アルティメイタム」では、激しいアクションシーンが手持ちカメラで撮影されて、目まぐるしく動き回る。

第2作目の「スプレマシー」ではあまりにもやり過ぎて、これは観ていて頭が痛くなる。映像が落ち着かず、観ていて訳が分からなくなってしまう。

過ぎたるは猶及ばざるが如しの例で、これでは逆効果だが、「アルティメイタム」ではちょうどいいバランスに収まっている。確実に洗練されて来ているのだ。

しかも細かいシーンの丹念な積み重ねで、ドキュメンタリーというよりも、目の前で直接、目撃していているような錯覚を覚える程。この臨場感が最高

CIAという国家権力をトコトン悪者に

ネタバレになるので、あまり詳しくは書けないが、ジェイソン・ボーンを抹殺しようとするのは、CIAという国家機関そのもので、それが情け容赦なくジェイソン・ボーンを追い詰めていく

とは言っても、ジェイソン・ボーンはとんでもない殺人マシーンというか最強の殺人兵器。彼は自分を殺しにくるCIAの殺し屋とスタッフたちを自らの命を守るため、常に相手を殺し続けなければならないという設定だ。

ここまで国家権力を悪く描いていいのかというレベルで、従来のサスペンスアクションを大きく踏み出している。 

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追いつ追われつの息詰まるシーンの連続

このシリーズには追いつ追われつのシーンが続出するのだが、特に第3作の「アルティメイタム」には見事なシーンがいくつも出てくる。その都度、興奮させられてしまう。

その追いつ追われつのシーンも、非常に入り組んで錯綜しているのが、ボーン・シリーズの特徴だ。

手に汗握り、呼吸するのもはばかれるほどの程のハラハラドキドキの連続となる。

この「アルティメイタム」では、究極の追いつ追われつが二つ出てきて、最初の、ロンドンヒースロー空港内での、ボーンに関する情報を掴んだ新聞記者にボーンが接近しようと図るも、CIA側はその記者の殺害を図ろうとするシーンの延々と続く緊迫感と臨場感は本当にすごい。

更にもっとすごいのが出てくる。ジェイソンを助けてくれたかつてのCIAの女性が凄腕の殺し屋に狙われ、気づいて逃げる女性を殺し屋が執拗に追いかける場面が出色の出来だ。

ボーンはそれを目撃し、何とか彼女を救うべく彼女のところに駆けつけようとするのだが、そのボーン自身も大勢のCIAと地元警察に追われているという状況なのだ。

自分自身も必死に逃げているにも拘らず、自分を助けてくれた女性を救わなければならないという究極のサバイバルが展開する。

これが実に見事。本当に見応え十分だ。

舞台はモロッコのタンジールで、ボーンはギッシリと立ち並んだ民家の屋根伝いに逃亡を続ける一方、殺し屋に狙われている女性の元に一刻も早く駆け、救出しようとするのだが。

こういうものはみんな、かつてあのアルフレッド・ヒッチコックが最初に始めて、それを当時としては考えられない卓越したカメラワークで頂点にまで持って行ったわけだが、この「アルティメイタム」を観ると、その技術的なレベルの高さは隔世の感がある。

実に良くできている。この胃が痛くなるような緊迫感と切迫感は半端じゃない。

CGを使わないリアルなカーチェイスの連続

ボーン・シリーズの呼び物の一つは激しいカーチェイスにある。

サスペンスアクション映画にカーチェイスは付き物で、どんな映画でもこれに力を入れていない作品はない。だから、最近の映画では本当に素晴らしいカーチェイスは目白押しで、どんな映画を観ても、今更驚かないというのが実感である。

だが、そうは言ってもこのボーン・シリーズのカーチェイスはやっぱり凄い。

このシリーズで特徴的な点は、その車が最新鋭の超高級車ということではなく、そこら辺にある軽自動車で逃げるような恐ろしく現実的なリアリティに満ちたものなのである。

車ではなくバイクで逃げたり、追跡したりするシーンが続出するのだが、時には50CCの原付で派手な追跡劇を演じることもあり、特別なシチュエーションを設定せず、とにかく現実感とリアリティをどこまでも追求する。

今流のCGをほとんど用いず、トコトン実写に拘っている点も、リアリティの向上に絶大な貢献を果たしている。

観ている者はそれだけに余計のめり込んで意気投合し、ハラハラドキドキを実際のものとして受け止めることになる。これは実に新しい感覚だ。

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2時間ノンストップアクションの小気味良さ

この映画は2時間ノンストップのアクション映画である。映画が始まるなり、いきなりボーンは窮地に追い込まれ、必死に逃げながら、その一方で自分を殺そうとする組織の正体を探ると共に、記憶を失った自分の正体も明らかにしようと格闘する。

それが2時間に渡って、冒頭からエンディングまで正にノンストップ。息つく暇もないというのが実感だ。これは本当に凄い。

アドレナリン全開となる!!

繰り広げられる頭脳戦がまた観もの

濃密なアクションシーンが、次から次へと続き、全く途切れることがないことに驚嘆させられるのだが、単なるアクションの素晴らしさだけではなく、追いかけるCIA側と逃げながらも真相に探ろうとするボーンとの間に繰り広げられる頭脳戦も最高の見どころの一つとなる。

これが何度観ても飽きのこない要因だと思う。

自分探しの旅の終わりは

ネタバレになるので詳しく書けないが、この自分探しの旅の終わり、謎が全て解けた後にボーンが取った行動は、かなり感動的で潔い

こんな娯楽色全開のサスペンスアクションにあって、単なるアクション映画では終わらない深遠なドラマが展開するのが嬉しい。やっぱりここが素晴らしい。いいなあと思ってしまう。

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第3作が最高という稀有なシリーズに驚嘆

最終作、第3作目の「アルティメイタム」の充実度は本当に半端ない。第1作目から続くストーリーはこの3作目で全ての謎が解けるばかりか、ありとあらゆる伏線が見事に一本の線で結ばれることになる。これは快感としか言いようがない。

ストーリーが最後の3作目で大団円を迎え一連の謎が全て解明される満足感はもちろんなのだが、「アルティメイタム」の素晴らしさはそれだけではなく、個々の映像シーン、一つひとつのシークエンスが高みを極めていて、本当に満足できる出来栄えになっている点にある。

全てのアクションシーンの完成度、そしてアクションの最中に繰り広げられる人間ドラマの質の高さも特筆もので、これは大傑作と呼ぶにふさわしい。

こんなシリーズものではどうしても最初に作られた第1作目が最高の傑作ということが定石となっている中にあって、実際に当シリーズ第1作目の「ボーン・アイデンティティー」の素晴らしさは多くの大絶賛に彩られているのだが、その素晴らしさをも凌駕する圧倒的な完成度を最終章の第3作が誇っているというのは異例中の異例である。

監督のグリーングラスの才能が花開いた傑出した作品と評価されていい。

ちなみにこの評価は必ずしも僕だけの評価ではなく、前掲のキネマ旬報ベストテンにおいても、第3作の「アルティメイタム」は、ベストテンの第12位、読者選出ベストテンでは第8位につけるという快挙を達成している。

こんなサスペンスアクション映画がキネマ旬報ベストテンの上位に組み込むことは、本当に稀なことなのだ。

念のために評判の良い第1作の「アイデンティティ」は120位にとどまっている。

第3作目が最高傑作という普通では考えられないことを実現し得た驚嘆と共に、こんなに粒ぞろいのサスペンスアクション映画がシリーズとして作られたことを大いに喜びたい。

既にご覧になっている方は、もう一度最終章にして最高傑作の「アルティメイタム」を観てほしい。まだ一度もボーン・シリーズを観たことがないという方は、もちろん第1作目の「アイデンティティ」からご覧いただくことを推奨する。

第1作目の「ボーン・アイデンティティー」から夢中になってしまうことは間違いないが、その後もそのレベルが下がることがないばかりか、最後の第3作目に一番の充実作が待ち受けていることの幸福感は、言葉に尽くし難い。

映画を観る喜びをトコトン満喫してほしい。それを味わうことのできる稀有のシリーズがここにある。

 

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☟ 第1作目の「ボーン・アイデンティティー」はこちらです。
まだこのシリーズを未見の方は、やっぱりこの第1作目から順番に観てもらう必要があります。この第1作目が一番の最高傑作と言う人も非常に多く、もちろん大傑作だと思っています。

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☟ 第2作目の「ボーン・スプレマシー」はこちらです。これも傑作です。だんだんと悲劇性が強まり、暗くはなってくるのですが。未見の方は、どうか順番どおりに観てください。


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