目 次
ブルーレイオーディオ1枚でマーラーの全交響曲を聴い込む
前回、ブルーレイオーディオという新しいフォーマットがいかに凄いディスクなのかを縷々書かせてもらった。ケンプによるベートーヴェンのピアノソナタ全32曲がたった1枚のブルーレイオーディオに収まってしまうという記事だった。
その記事の中でも触れたが、今、僕の手元にある全てのブルーレイオーディオの中で、最長の収録時間を誇るのが、マーラーの交響曲全集なのである。ラファエル・クーベリック指揮のバイエルン放送交響楽団の昔から非常に評価の高い演奏だ。
マーラーの交響曲の全集には有名な「大地の歌」を含めるのが一般的だが、このクーベリックの全集には含まれていない。元々クーベリックが「大地の歌」の録音をしていないのである。残念だが仕方がない。
したがって、このブルーレイオーディオには「大地の歌」を除く全交響曲10曲が収められている。未完で終わってしまった第10番も入っている。マーラーが全生涯を通じて作り続けてきた全交響曲。CDは10枚。時間にして約11時間10分である。
後ほど詳述するが、マーラーは交響曲の他には数曲の歌曲集しか作曲していないので、この1枚のブルーレイオーディオにマーラーの全作品のほとんどが収録されているといっても過言ではない。
ケンプによるベートーヴェンのピアノソナタ全32曲は10時間だったので、マーラーの交響曲全集の方が1時間ほど長く、今のところ、僕の手元にあるブルーレイオーディオの中では最長のディスクである。
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この抜群の操作性と便利さには感動するしかない
ケンプのベートーヴェンのピアノソナタ全集の紹介記事でも書かせてもらったが、こんなに便利で使い勝手の良いものはない。その抜群の操作性には驚嘆だ。この1枚のブルーレイオーディオをブルーレイプレーヤー(我が家の場合はテレビの内蔵だが)で再生すると、テレビ画面に全体のインデックスが表示され、それぞれの交響曲は各楽章毎に細かくインデックスが付いているので、リモコン一つで、対象の10曲の交響曲のありとあらゆる楽章を、自由自在に選択することができる。
冒頭の第1番「巨人」から順を追って聴くのも良し。「巨人」を聴いていて、一挙に未完で終わった死ぬ間際の作品、交響曲第10番に飛ぶことも、リモコンの1クリックだけだ。
マーラーのほぼ全作品と言ってもいい交響曲の全てが、この小さなブルーレイ1枚にスッポリと収まり、ディスクの出し入れは一切なしで、リモコン一つで好きなように聴くことのできる便利さは快感以外の何物でもない。本当にこれは究極の未来の姿ではないだろうか。
というわけで、僕は最近このブルーレイオーディオでマーラーの交響曲ばかりを聴いている。曲ごとにCDを入れ替えなければならないとなると、ある曲を聴き始めて、あまり魅力を感じないときなどには、すぐにお気に入りのバッハやラモー、テレマンに手が伸びてしまう。マーラーの交響曲を聴いていて気分が合わなくなると、同時代の愛してやまないドビュッシーに手が伸びてしまう。
ブルーレイオーディオのおかげで、マーラーの世界に気軽に没頭
ところが、ブルーレイオーディオでディスクの入れ替え一切なしで、全てのマーラーの交響曲を聴けるということになると、たまたま今聴いている曲には魅力を感じなくても、リモコン操作して、他の曲をいとも簡単に切り替えることができる。そこで気に入る曲と遭遇することも十分にあり得るわけだ。
全10曲のマーラーの全交響曲は、このブルーレイオーディオでは42のインデックスに分かれている。これは全ての交響曲の楽章の区分に他ならない。それぞれの交響曲の楽章毎にインデックスされているので、本当にマーラーの全ての交響曲のあらゆる楽章に、リモコン一つで自由自在なのである。これは本当に嬉しい限り。
ということで、最近は、今まであまり熱心に聴いて来なかったマーラーにどっぷりと浸かって没頭し、マーラーとの新たな出会いに心をときめかしている真っ最中なのである。
これは本当にありがたい。こうして僕は今回、我が音楽人生の中で初めて、マーラーをしっかりと聴き込むことができるようになった。
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元々マーラーにはあまり興味はなかった
今日、大変な人気を誇るマーラーだが、僕は今まであまり興味がなかった。
クラシック音楽の熱烈な愛好者の僕は、最近ではまともに数えたこともないが、CDを3万枚も4万枚も持っているという常軌を逸したコレクター。
手元には古今東西のありとあらゆる作曲家のCDが揃っていると言っても過言ではない状態なのだが、その中でも興味の中心はバッハ、テレマンに代表されるバロック音楽と、同じ時代のフランスのシャルパンティエやラモーなどのフランス古典音楽。要は古楽器を用いる18世紀以前の音楽が最大の興味の対象となっている。
ベートーヴェンもモーツァルトもシューベルトももちろん大好きだが、近現代ではドビュッシーを熱愛しており、ほぼ同時代人のマーラーにはドビュッシーに熱を上げれば上げる程、遠ざかってしまうという関係にあった。
一方で、ジャンルでいうと、僕は古典派以降の作品では何と言ってもピアノ曲が好きなのである。ピアノの独奏作品と次には室内楽、そして歌、芸術歌曲である。また合唱指揮者として古今東西のありとあらゆる合唱曲のCDが揃っていると豪語できる。
いずれにしても独奏か、ほんの数人で演奏する規模の小さな作品が好きで、交響曲などは若い頃は夢中になって聴いたものだが、最近ではとんと聴く機会が減ってしまった。
大規模でガンガン鳴り響く音楽には、興味が向かなくなっている。
マーラーは正に、そんな僕が最も敬遠しているジャンルの作品ばかり作ったのだから、興味を惹かれるわけがない。要するに大規模な交響曲は僕の興味の対象ではないのだった。
そうは言っても相当なCDを集め、聴いてきた
ならば、マーラーの交響曲はほとんど聴いたことがなくて、CDもそんなに持っていないのかというと、決してそうではない。
冒頭から矛盾したことを書くことになって恐縮だが、マーラーにはあまり興味がなく、熱心なリスナーではなかったが、そうは言ってもそれなりに聴いてもきた。
実は、マーラーのCDも手元に相当ある。マーラーの全作品が収められた作品全集(CD16枚組)を筆頭に、交響曲全集が何と6種類も。それに加えてマーラーを最も得意とし、今日のマーラーブームのきっかけを作ったと言ってもいいバーンスタインの全交響曲の演奏会の様子を収めたDVDの全集まで揃っている。これは膨大なマーラーのコレクションと呼べそうだ。これには我ながら驚いている(笑)。
それ以外にも単品でかなりのCDがあり、フィッシャー・ディースカウが歌う歌曲を中心に、声楽曲を含めると相当な数になる。
こんなに手元にたくさんのCDが揃っていながら、あまり熱心に聴いてこなかったということの方が、よっぽどおかしい(笑)。
マーラーは今日では最も人気のある大作曲家となっているが、その作品数は非常に少ないと認識してほしい。大規模な交響曲とオーケストラ伴奏の歌曲しか作らなかった作曲家なのである。
創作の中心の交響曲は未完で終わった第10番を含めて全10曲。それに番号の付いていない「大地のうた」を交響曲に含めるのが一般だ。
他に5〜6曲のオーケストラ伴奏を伴う歌曲集があるだけなのである。
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マーラーは作曲数が非常に少ない
マーラーが作曲した全作品を合わせても、CDは16枚程に収まってしまうのである。大作曲家としては、非常に創作数の少ない作曲家といって間違いない。
ちなみに我が愛するドビュッシーの全作品は18枚、ラヴェルは14枚に全ての作品が収まってしまう。昔のバッハやモーツァルトなどに比べると、近現代の大作曲家は、何とも作曲しにくい環境に置かれてしまっていたのであろうか。多くの大作曲家が本当に厳選された少ない曲しか作曲できなくなっている。これは偶然ではなく、作曲家にとって現代は非常に作曲しずらい時代なのかもしれない。
バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマンの後に一体どんな音楽が残されていたというのだろうか。ブラームスだって、そのことについて散々苦しめられた。その苦境と苦悩は良く分かるような気がする。
もう作曲するものが残されていないのだ。受難の時代と言ってもいいいのかもしれない。
そういう意味では、その過去の天才たちと時代を相手に壮絶な格闘を繰り広げていたのがマーラーだったのかもしれない。
ピアノに全く興味がなかったのか?
マーラーの不思議な点は、ピアノ曲を全く作らなかったこと。マーラーの作品は肥大したとしか言いようのない大規模なオーケストラに、更に声楽が加わるというとにかく規模がやたらに大きなもので、時間的にも長くなる一方の大交響曲ばかりを作り、こじんまりとした音楽を愛する僕の好みとはかけ離れるばかりなのである。
どうしてマーラーはピアノ曲を一切作らなかったのか。ピアノの独奏作品はもちろん、ピアノを伴う室内楽作品も作らなければ(若き日の習作としてピアノ四重奏曲とヴァイオリンソナタがあるが)、これだけ歌が好きで、交響曲の中でも歌を多数盛り込み、5つもの歌曲集を作曲しながら、何故かピアノ伴奏の歌曲はないのである。もっともオーケストラ伴奏に替えてピアノを使うヴァージョンは存在するが、念のため。
シューベルトに始まる芸術歌曲、いわゆるドイツリートは、基本的に全てピアノ伴奏が付くのが定番。つまり歌曲というジャンルは一人の独唱者(歌手)とピアノという様式で演奏されるのである。
シューベルトに続いてドイツリートの大山脈を形成したシューマン、ブラームス、ヴォルフ、そしてR.シュトラウスまで、その様式は綿々と続いたばかりか、国が変わってフランスの芸術歌曲、これはドイツリートに対してフランスメロディと呼ばれているのだが、ここでも独唱者とピアノというスタイルは貫かれている。
フォーレでもドビュッシーでもラヴェルでも。プーランクももちろん。
元々マーラーは歌とは切り離せない作曲家で、歌曲集もたくさん作曲し、ドイツリートの偉大な山脈に連なるリート作曲家なのだが、何故かそのリートの伴奏はオーケストラなのである。
本当に不思議な話し。
よっぽどピアノが嫌いだったんだなって、どうしたって思ってしまう。
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クーベリック指揮:バイエルン放送交響楽団の演奏について
今回のブルーレイオーディオに収められているラファエル・クーベリックがバイエルン放送交響楽団を指揮して録音した全集は、かねてより非常に評価の高いものであった。
録音は1967年から71年の5年間に渡って行われた。世に本格的なマーラーのブームが巻き起こる前のもの、というよりもこのクーベリックの全集録音が、マーラーブームの火付け役の一因になったと言った方がいいだろう。
ドイツのオーケストラによる初めてのマーラーの交響曲の全曲録音として知られているものだ。
今回、このブルーレイオーディオで聴いてみると、1967年から71年にかけての録音と、今から50年以上、半世紀以上も前の古い録音であるにも拘らず、音はビックリするほど非常に鮮明で、最新録音と全く遜色はないと言ってみたくなる程だ。
もっとも、僕はオーディオ的に確実なことを言えるような装置で聴いていないことは、先刻ご承知のとおり(笑)。
バイエルン放送交響楽団の弦の柔らかく、優美この上ない響きに惹きつけられる。
管楽器も概して素晴らしく、この演奏には何の不満もない。合唱を含め、声楽陣も全く古びておらず、本当に見事な演奏だ。実に美しいもの。
僕のマーラーとの付き合いと、今回のブルーレイオーディオを使って、マーラーの交響曲を聴き続けた結果の、全体の辛口寸評を引き続き配信したい。
マーラー紹介の第2弾である。是非とも引き続きお読みいただきたい。
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