愛してやまない「アドルフに告ぐ」の紹介は、本当に熱々たけちゃんならぬ沸騰たけちゃんになってしまったようだ。

ところが、あれだけ書かせてもらったにも拘わらず、僕の中ではまだ何も書いていない感があるのはどうしてだろうか?

あれだけ熱く書いても満足できないこの思いは

それはもちろん、前回のブログでは、「アドルフに告ぐ」の概要をまとめただけで、最も核心に迫る内容部分については、まだ何も書いていないからだ。あの作品についてはもっともっと、具体的な細かい内容について一つひとつ掘り下げて展開しないと、何も言ったことにならないことになる。

実は、不満も多少ある

実は、あれだけ口を極めて大絶賛したにもかかわらず、僕はあの作品に一つだけどうしても引っかかるというか、抵抗を感じている部分がある。それをどうしても表明しておかないと、僕の中で「アドルフに告ぐ」は完結しない。何か居心地が悪いのだ。

そのためにはネタバレ全開にしないと話しは進まず、お話しにならない。というわけで、もう既にこの作品を読み終わっている方々を対象に、ネタバレ全開モードで、近日中にトコトン掘り下げたいと思っているので、どうかお付き合い願いたい。

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「オリジナル版」とは一体何なんだ!?

そのネタバレ全開モードで内容をトコトン掘り下げるのはこの次とさせていただき、今回の「アドルフに告ぐ」第2弾では、知る人ぞ知る「オリジナル版」について紹介させてもらう。

僕は前回のブログで、僕が購入した我が家にある「アドルフに告ぐ」の全てのバージョンを写真付きで紹介させてもらった。
全5種類。話題となったハードカバー4冊と手塚治虫漫画全集の5冊。そして分厚い上下2巻のコンビニコミックスと2種類の文庫本。

これが全て。そのうち現在、購入できるのは文庫の2種類だけだと書かせてもらった。

それは間違いないのだが、実は現在、他にも購入できるとんでもない「アドルフに告ぐ」が存在するのである。

それが「オリジナル版」だ。

前回紹介した5種類の「アドルフに告ぐ」は中身は全て一緒

この「オリジナル版」は、僕が紹介した5種類とは別の「アドルフに告ぐ」である。

というよりも、こう言った方が分かり易いだろう。僕が前回写真付きで紹介した5種類は、装丁やサイズ、分冊の冊数などは異なるが、内容は全て全く一緒。完全に同じ内容の作品が、本としての大きさや紙質、装丁が異なっているのである。

それとは別のバージョンの「オリジナル版」というものが、今年(2020年)3月に初めて世に出た。刊行されてまだ8カ月しか経っていない。これは実に画期的なものだった。

一体どういうことなのか?

僕が紹介した5種類は、全て前回のブログで詳しく紹介させてもらったとおり、週刊文春での113回に及ぶ連載が終了した後に、手塚治虫自身が新たにまとめ直し、それを文藝春秋社が単行本としてハードカバーで刊行したものなのだ。

そのハードカバー版が文庫化され、更に講談社の手塚治虫漫画全集となり、それから更にコンビニコミックスにもなり、別の文庫にもなった。

そういう流れである。週刊誌に連載された全113回の連載が、連載終了後に手塚治虫自身の手によって一本の作品として新たに編集されて刊行されたわけである。全体は章立てになっていて、全38章から成り立っている。

オリジナル版は、もちろんそうではない。もうお分かりのように、これは正しくオリジナル、週刊文春によって2年半、113回に渡って連載された、その週刊誌に掲載された正にそのままのオリジナルの集大成なのだ。復刻版と呼ぶべきか。

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手塚は単行本化の際、しばしば大幅に加筆修正を加えた。このアドルフでも

こういうことだ。手塚治虫は、編集魔と呼ばれていて、漫画雑誌での連載終了後、単行本化される際に、これは良く見る新書版のコミックスとして刊行される場合も同じなのだが、その際に大幅に手を加えることが少なくなかった。

僕のリアルタイムの体験でも、あの名作「火の鳥」の「望郷編」と「乱世編」は単行本化される際に大幅に手を加えられたことを良く憶えている。「えっ!?こんなの、連載時には載っていなかったよな」とひどく驚かされたものだ。

実は、「アドルフに告ぐ」でも、単行本化されるに当たって、かなり手を加えられたことが知られている。

前回のブログで、例のハードカバー全4巻の刊行された日を具体的に明記させてもらったが、それを見ると最終巻の第4巻の刊行だけが、妙に間隔が空いていることが分かる。これは原因がハッキリしていて、手塚治虫が単行本化するにあたって、特にあのエンディング、最後の部分を大幅に加筆修正したからなのだ。

というわけで、オリジナル版と現在出回っている版とでは、内容も一部異なっているということになる。

そもそも全113回に分かれていたものが、新たに全38章にまとめられたわけで、それだけでも大きな変更が加えられたわけだ。

「オリジナル版」は、その手塚治虫が週刊文春に連載していた当時のものが、そのまま忠実かつ完全に再現されたものだ。

手塚治虫ファン、アドルフに告ぐファンとしては、これはどうしても読んでみたい。いや、読まないわけにいかない。2年半に及んだ当時の熱狂を、そのまま追体験してみたい。そう思うのは当然だ。

ということで、ようやく今年になって「アドルフに告ぐ」の「オリジナル版」が世に出たわけだが、これがもう信じられないような実に豪華な本として誕生したのである。

ビックリするしかない超豪華な本先ずは現物を写真で見てもらおう。

これだ。

BOXを正面から写すとこうだ。
広辞苑と並べるとその大きさ、厚みが実感できるだろう。
こんな感じで中身は3分冊。それに内容充実の別冊解説書が付いている。
周囲を圧倒する中々の存在感

 

これを見たらビックリしないわけにはいかないだろう。この大きさ。この厚み。そして分からないだろうが、めちゃくちゃ重い

そして、更に驚きなのはその値段。何と22,000円(税込)もする。さすがの僕も尻込みさせられた。いくらなんでも2万円以上はないだろう?!と。

でも、実際に購入し、手に取って読んだ今は、全く異なる感想となった。中身が本当に素晴らしくて、2万円は当然。決して高すぎるものではないと心からそう思っている。

もう2セットくらい欲しいが、さすがにそうはいかないか(笑)。

何がすごいって、先ずはそのオリジナル版という唯一無二の内容である。この内容の素晴らしさについては、後で触れる。

ここでは、先ず、装丁など本の作りについて紹介していこう。

ご覧のとおり本体は3分冊となっている。講談社の新手塚治虫文庫全集と同じ3巻構成。

 

3分冊のそれぞれの表紙絵はこうだ。

 

肝心のサイズだが、大判(B5)だ。従来のどのバージョンよりも大きい。見開きB4は目を奪われる程の大迫力で圧倒される。これは元々の週刊誌のサイズであり、連載当時は、皆このサイズで読んでいたわけだ。その意味でも完全復刻。その上、これ以上考えられない最高級の紙が用いられていて、少し厚めの真っ白い紙がこよなく美しい。手塚治虫の絵がびっくりするほど、良く映える。どのページも光り輝いているかのようで、手塚治虫が描いた全てのシーンが目に焼き付いてくる。これだけでもう満足。

 

これで大きさを実感してほしい。ちなみに真ん中のオリジナル版の2巻の表紙絵は正に3人のアドルフの揃い踏み。こういうシチュエーションは漫画の中には出てこない貴重なものだ。

 

また漫画本体の3分冊とは別に別冊が付いていて、「アドルフに告ぐ」の各種の詳細なデータ、解説がまとめられている。特に加筆修正の多かった最後の部分は、オリジナル版とその後の単行本化との両方を読み比べられるようにした念の入れようだ。こういうところに編集者の手塚治虫と「アドルフに告ぐ」への限りない愛とリスペクトが感じられ、こちらもたまらなく嬉しくなる。

BOXのケース。3分冊のそれぞれ。そして別冊解説書。全てを正面から撮影するとこうなる。

オリジナル版で読むことの意義と楽しみ

毎週連載された10ページ単位で読んでいくと、当時のあの興奮と感動がリアルタイムで蘇ってくるはずだ。僕は当時、京都で下宿をしていた貧乏学生で、週刊少年チャンピオンに掲載されていた「ブラック・ジャック」は毎回欠かさずむさぼるように読んでいたが、同時に連載されていたこの「アドルフに告ぐ」はたまたまどこかで1~2回、読んだことがあるだけだった。当時の学生には一般週刊誌を読む文化は全くなかった。それでもその1~2回のことは鮮明に覚えている。手塚治虫がこんなドキュメンタリーのような現代ものを書いているんだ、しかもヒトラーとナチスについて、と驚嘆させられたことが忘れられない。毎週追いかけることはしなかったのだが・・・。

毎回10ページだけの連載は

前回も書かせてもらったが、この週刊文春に連載されたアドルフに告ぐは、1回あたりわずかに10ページだけの連載だった。それが通算113回、2年半に及んだ。「ブラック・ジャック」に代表されるように、通常は1回あたり20ページが普通。これが何と半分の10ページ。この10ページの中で、毎週毎週、読者を夢中にさせ、興奮させ、次回を待ちわびるようにもっていかなければならない。これは至難の技だ。だが、それが達成できたからこそ、2年半、113回の長きに渡って連載は続くこととなった。この連載が当時かなり話題となっていたことは僕の耳にも入っていた。手塚治虫は毎回、自身の持っている全てのノウハウを惜しげもなくここに注ぎ込んだ。

1ページ毎、全てのページに感動と衝撃があるという僕の実感は、そうした手塚治虫の「10ページ入魂」の賜物だったのだ。

「オリジナル版」で読むということは、その手塚治虫の10ページ入魂をリアルタイムで追体験することに他ならない。これは手塚治虫ファン、アドルに告ぐファンならば、不可欠な体験だ。

僕はあいにく連載当時、読んでいなかった。僕は自分に欠けていた貴重な体験を、これを読むことで取り戻したいと思っている。これはかけがえのない体験となるはずだ。

これが「前号まで」の一例。こんな解説が読めるのもオリジナル版なればこそ。

 

おもしろいのは、所々に「前号まで」と称したストーリー紹介などもあること。これは是非読んでおきたい。毎回登場の「アドルフに告ぐ」のロゴマークも嬉しい。

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手塚治虫のオリジナル版が続々と刊行中

実は、現在、手塚治虫作品のオリジナル版が続々と刊行され続けている。大全集だの色々な名称がついているが、全てオリジナル版のことだ。「火の鳥」「ブラック・ジャック」など代表作はほぼ出揃った感がある。「ブラック・ジャック」の全15巻に及ぶオリジナル版(大全集)は実に素晴らしい内容で、ファンならずとも垂涎の代物だ。いずれも雑誌に掲載されたとおりの完全復刻が特徴で、単行本化された際に内容等の加筆修正等があった場合にはその違い等が全て分かることはもとより、その両者を併記掲載されていることがほとんどだ。

また、サイズはこの「アドルフに告ぐ」と同様に大判のB5であることがほとんど。オリジナル版はこの掲載雑誌と同じサイズのB5サイズだというところが最大の売りともなっている。映画と一緒で、いい漫画はできるだけ大きなサイズで読みたい。

「重さ」を実感させる重厚さ。
帯をじっくりと読んでみてほしい。

一家に一冊。家宝として次世代に遺したい。

そんなブームとも呼んでもいい次々と刊行される一連の手塚治虫のオリジナル版。その魅力の粋を極めたのがこの「アドルフに告ぐ」の「オリジナル版」というわけだ。

確かに22,000円は簡単に手が出せる金額ではない。でもこれにはそれだけの価値があることは間違いない。内容の素晴らしさは手塚治虫マニアの僕が保証する。

一家に一冊。家宝として次世代に遺したい。それに値する日本漫画の最高峰。手塚治虫の最高傑作の見事なまでの超豪華本。この際、思い切ってご購入され、読んでいただいたらどうだろうか。

 

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アドルフに告ぐ オリジナル版 [ 手塚治虫 ]

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