もう4カ月も前に、U-NEXTの31日間無料トライアルについては書かせてもらった。その中で、U-NEXTの31日間無料トライアルと、そもそもの動画配信サービスとしてのU-NEXTの素晴らしさを大いに喧伝させてもらったところである。

信じられないことに再度無料の案内〜リトライアル

僕は申し訳ないけれど、本当に「31日間無料トライアル」に正にトライアルしただけで、正式にU-NEXTに加入したわけでもなく、つまりU-NEXTには唯の1円も支払っていなかったのだが、何の手違いによるものなのか?
信じられないことに、
昨年の12月に再度31日間無料という案内が届いたのである。正にリトライアルと歌ってある。

一体全体、どうしてこんなことをしてくれるのか、本当に真相は全く不明。

でも、何故か本当にまた1円もかからずに31日間完全に見放題の恩恵を受けることになった。何と言って感謝していいのか皆目、見当もつかない。

というわけで、ちょうど年末年始を挟んで、僕は再びU-NEXTで31日間、全く無料で映画を散々楽しませてもらったので、その報告をさせていただく。

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状況を正確に期しておきたい

31日間無料というキャンペーンなのだが、僕は登録した後、5日間程は全く観る機会がなかったことと、何となく締切日が不安だったので、思い切って期限の2日前に解約させてもらった。

したがって31日間とは言っても、実質的には24〜25日間しかなかったというのが実態。

その間、ひたすら映画を観まくった。ちょうど年末年始でもあったので、多くの方は、熱々たけちゃんは休みで時間はいくらでもあったんだろうなと思われるかもしれないが、良く考えてみてほしい。年末年始の休みはむしろ映画なんて観ていられないのである。家族揃って紅白歌合戦やらボクシング中継なら色々と企画があって、チャンネルがままならない。そして元旦は朝から飲み始めるわけで、一人でじっくりと映画に没頭するなんて夢のまた夢。

しかも、今年はカレンダーが悪くて、休みが例年になく非常に短かったので、本当に映画を観ている時間が中々取れずに苦労した。

この間、ギンレイホールには全く通っていない。この段階ではまだ2回目の緊急事態宣言は出ていなかったが、第3波はものすごい勢いで感染拡大中で、病院職員の僕はさすがにこの大流行の中、本当に残念ながら、ギンレイホールには行くことは全くできなかった。

それだけに、映画を観たい欲求は半端なく、連日U-NEXTにかじりついてしまったという経緯はあった。

そんな中でも、何と35本の映画を観ることができた。

35本!今回も全ての映画にコメントを寄せる

前回同様に、製作年代の古い順に並べていく。実は、同年に制作された映画が何本も出てくるのだが、その場合には便宜上、製作された地域ごとにアメリカ・ヨーロッパ・アジアの順に並べていくことにした。

1950年代~1980年まで(9本)

① 崖 監督:フェデリコ・フェリーニ (108分) 1957年

   フェデリコ・フェリーニは映画ファンなら知らない人のいないイタリアが生んだ世界最高の映画監督の一人。大巨匠である。イタリアには素晴らしい映画監督が数えられない程いるのだが、フェリーニはルキノ・ヴィスコンティと並ぶ2大巨頭である。僕はどちらも甲乙つけがたいくらい好きで好きでたまらない監督だ。

 さて、この「崖」であるが、フェリーニ作品としてはあまり知られていない目立たない作品だが、あの有名な名作「道」の翌年に作られた作品で、この崖の後には、「カビリアの夜」「甘い生活」と続くのだから、若きフェリーニが続々と名作を世に問うていた時期の作品。悪いはずがない。善良な村人たちを騙して詐欺行為を繰り返す中年男の悲しき人生が丁寧に描かれていく。確かに悪い奴には違いないのだが、どうしても憎めず感情移入させられてしまう。このあたりはフェリーニの魔術で、観ていて胸が詰まってくる。弱い人間に寄り添いながらも厳しい現実を突きつけるあたり、正にフェリーニの語り口の巧さと魔術に酔い痴れることになる。傑作の名に恥じない。もっと知られていいフェリーニの隠れた逸品。

② 穴 監督:ジャック・ベッケル (124分) 1960年

 これは観応え十分の傑作中の傑作。映画ファンを自任するならこれは絶対に観ておきたい古典的名作。フランスの刑務所に収監中の囚人たちが脱走するためにひたすら穴を掘って、掘って、掘りまくる映画。最初から最後の最後まで手に汗握る展開で、衝撃と感動が待ち受ける2時間だ。そして特筆すべきは、今から60年以上も前に作られたモノクロ(白黒)映画なのだが、信じられないほど画質が美しい。こんなきれいな白黒映画は観たことがないと言いたくなるほどの高画質に驚嘆させられた。僕はこの作品のDVDを持っているのだが、それを観返したら、酷い画質で、即刻処分した。現在の古い映画のリマスターというか画質改善のレベルは驚くべき水準に達していて、こそれだけで画面に釘付けになってしまう。

フランスの名匠ベッケルの遺作となったこの「穴」。一人でも多くの映画ファンに観てもらいたい。

③ 何がジェーンに起こったか 監督:ロバート・アルドリッチ (134分) 1962年

 これがまたすごい映画なのである。ロバート・アルドリッチは迫力に満ちた力強い演出と緻密な描写も得意とする僕が大好きな映画監督の一人だ。初期の痛快な西部劇「ベラクルス」から、「攻撃」「特攻大作戦」などいかにも男臭い映画で有名だが、僕は後年の「合衆国最後の日」を熱愛している。あまり知られていない隠れた名作と呼ぶべき作品だが、これを観れば誰でもアルドリッチがどれだけの力量を持った類まれな映画監督だということが良く分かるだろう。そんなアルドリッチが最も脂が乗っている時期に作られたスリラーがこれだ。男同士の対立と対決を描く作風が多いアルドリッチが、珍しく姉妹の憎悪を一切の妥協なくトコトン描いた映画。単なるスリラーではなく、サイコスリラーと呼ぶべきもので、実に怖い。子役時代から競い合ってきたライバル同士の女優姉妹の物語。善良な姉は妹が原因で半身不随の身となり、かつて名子役として名を馳せ、その後落ちぶれてしまった妹が世話をしているのだが、ことごとく辛く当たる。この二人に一体何があったのか。そしてこの愛憎劇の行き着く果ては。怖い。

④ 幸福~しあわせ~ 監督:アニエス・ヴァルダ (80分) 1965年

 アニエス・ヴァルダはフランスの有名な女性映画監督。今では女性の映画監督は数え切れないほどいるが、この時代にあっては数少ない有名な女流監督だった。この作品はベルリン国際映画祭で銀熊賞と審査員特別賞を獲得した名作として非常に有名なもので、1966年のキネマ旬報ベストテンの第3位に輝いている。僕は気になりつつも今まで観る機会がなかったのだが、今回このU-NEXTで観ることができることが分かり、感激したものだ。だが、この映画との相性は最悪であることが判明。僕としては実に後味の悪い、不愉快な映画で許しがたい内容だった。80分と短いだけあって極めて単純な話しである。2人の子供にも恵まれたいかにも幸福な夫婦。ところが夫が別の女性と恋に落ちる。それだけの話し。夫はどちらも愛していると悪びれることもなく、そのことを妻に告白するのだが・・・。修羅場にはならないが、その展開はかなり衝撃的だ。

 僕はどうしてもこの展開を受け入れることができず、嫌な思いだけが残った。ヴァルダは問題提起をするために、意識的に敢えてこんな展開を描いたのだろうが、僕には耐え難い。女性監督が作った世界中で話題になった問題作。現代の多くの女性に観ていただいて、感想を聞いてみたい。音楽はモーツァルトの隠れた名曲「13管楽器のためのセレナード」が繰り返し流れ、これまた何とも微妙なのである。

⑤ ロシュホールの恋人たち 監督:ジャック・ドゥミ (123分) 1967年

 これは名作だ。言わずと知れた「シェルブールの雨傘」の姉妹映画。監督ジャック・ドゥミ。音楽ミシェル・ルグラン。主演カトリーヌ・ドヌーヴの黄金トリオによる傑作ミュージカルだ。特筆すべきは映画の中の音楽の才能に恵まれた美人姉妹をドヌーヴの実の姉であるフランソワーズ・ドルレアックと一緒に実の姉妹が演じていること。この二人の美人姉妹の恋の顛末を描く屈託のない実に楽しいミュージカルだ。「シェルブールの雨傘」も名作だが、僕はむしろこっちの方が好きかもしれない。

 俳優陣は実に見事なもので、この数年後に世界中を興奮させることになるあの「ウエストサイド物語」のジョージ・チャキリスと、応年の大ミュージカルスターのジーン・ケリーがそれぞれ重要な役回りで出てきて衝撃を受ける。こんなに幸せな気分になれる映画も滅多にない。何回でも観たくなるミュージカルの逸品だ。

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⑥ 泳ぐひと 監督:フランク・ペリー (95分) 1968年 2回鑑賞

 これはアメリカンニューシネマの傑作として映画史上、非常に有名な作品なのだが、実は実際にはあまり観られていない作品。アメリカンニューシネマは「イージーライダー」「俺たちに明日はない」「真夜中のカーボーイ」「明日に向かって撃て」などに代表される60年代のアメリカのアンチヒーローを描いた作品群で、僕はそれらを愛して止まないのだが、こんなシネフィルの僕でも「泳ぐひと」は観る機会がなかった。今回初めて観ることができて、正直何と言ったらいいのか。この実に意味不明の不可解な内容に衝撃を受け、ある意味で背筋が凍りつくほどの恐ろしさを味わった。正に映画史に残る衝撃の問題作と呼ぶべきものだ。

 主演はあのバート・ランカスター。話は単純極まりない。主人公が自宅に帰るに当たって、その帰途にある友人たちの家にあるプールを借りて、そのプールを泳いで家まで帰ろうという訳の分からない映画。昔からこのストーリーは良く知っていて、中々観ることのできなかった僕は、そんな訳の分からない不可解な話しがどうして映画になりうるのか。しかも幻のアメリカンニューシネマ屈指の名作と言われることが本当に理解できなかったのだ。実際に観てみて、なるほどこれは、と心底唸らざるを得なかった。

 これは本当に大変な問題作で、とにかく最後の最後までしっかりと映画の着地点を見届けなければならない。何だこれは?少しおかしくなってきたぞ、雰囲気が変わってきたぞと思いながらも、とにかく最後まで見届けること。彼が自宅に到着する姿をしっかりと見届けてほしい。そしてそれを観れば深い衝撃と共に、魂を揺り動かされることになる。よくぞ、こんな変な映画を作ったものだ。映画ファン必見。

⑦ 映画に愛をこめて アメリカの夜 監督:フランソワ・トリュフォー (115分) 1973

 これも映画史上の傑作として有名な作品。トリュフォーのことは映画ファンなら誰でも良くご存知だろう。ジャン・リュック・ゴダール、ルイ・マルと並ぶフランスのヌーヴェル・ヴァーグの中核的監督。名作に事欠かないが、かなりのイケメンで俳優としても一世を風靡した。あのスピルバーグの「未知との遭遇」で主人公の科学者をやったことで誰でも知ることになったあの人だ。

 この作品はトリュフォーの最も有名な名作の一本で、脚本・監督はもちろん主役として出演し、非常にいい味を出している。今では珍しくなくなった映画作りの舞台裏を追いかけたストーリーで、映画ファンなら夢中にならずにはいられない名作だ。「アメリカの夜」というタイトルに惑わされないでほしい。アメリカでの映画作りで苦労する話しのように誤解しがちでだが、そうではなくあくまでもフランスでの映画作りの苦労続きのエピソードだ。トリュフォー自身が様々なトラブルに振り回され続ける監督そのものを演じるが、これが実に素晴らしい。美しさの絶頂にあったジャクリーン・ビセットが嬉しい。これまた映画ファンなら絶対に観ておかないとならない名作中の名作。

⑧ オール・ザット・ジャズ 監督:ボブ・フォッシー (123分) 1979年 2回鑑賞

 1980年のカンヌ国際映画祭で最高賞である「パルムドール」を獲得した傑作ミュージカルだ。監督のボブ・フォッシーはミュージカルの振付師として有名な存在だったが、病気となり余命が長くないと宣告される中で作り上げた執念の自伝的作品。正に天才的な振付師が自身の病気と闘いながら悪戦苦闘してミュージカルの振り付けと演出に執念を燃やす感動的な作品。

 主役のロイ・シャイダーがもう壮絶の一言。これは一級のミュージカル映画として楽しめるばかりか、芸術家の壮絶な生き様を見せられるばかりか、物やステージなど目標物を作り上げていくことの尊さと感動を味わうことのできる素晴らしい作品だ。映画のテンポも良くて、僕はすっかり気に入って、2回立て続けに観てしまった。

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⑨ レイジング・ブル 監督:マーティン・スコセッシ (129分) 1980年 

 何だ、竹重はシネフィルを自称しながら、「レイジング・ブル」を観ていなかったのかとお叱りを受けてしまいそう。この映画のことはもちろんよく知っていて、映画シーンも断片的には何度も観ていて、すっかり観た気でいたのだが、冷静に振り返るとしっかりと通しで観たことがないことが判明。慌てて観直したという次第。あらためて素晴らしい映画である。白黒映画だが映像の美しさも特筆もので、これは本当に名作の名に恥じない。日本でも人気作品ではあるが、本家アメリカでのこの映画に対するリスペクトはすさまじく、アメリカ映画史上のベストテンでは市民ケーンなど並んで常にトップに位置付けられている作品だ。
言うまでもなくあの「タクシードライバー」で世界をに衝撃を与えたマーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロ主演によるコンビ作品。この二人のコンビ作品は黒澤明と三船敏郎と同様にたくさんの作品が撮られていて、いずれも名作・傑作ばかりなのだが、その中の最高峰の一本がこれだ。

 実在のボクシングチャンピオンを主人公にその成功と挫折をリアリズムに徹してトコトン描き尽くす。デ・ニーロが体重を30キロもコントロールしたという有名なエピソードはこの作品の時だ。鋼のような強靭な肉体と引退後のブクブクとだらしなくなく太った役とを、本人が実際に体重コントロールして体型を変えたという信じられない役者根性。逆にどうしてもそのことが話題の中心になってしまうのだが、この映画ではこのどうしようもない暴力的でわがままな男の生き様が壮絶なまでに描かれており、感動させられる。音楽がマスカーニの「カバレリア・ルシティカーナ」の前奏曲。僕も大好きな曲で、これを聞いいただけで胸が詰まってしまう。

(第2部に続く)

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