さいとう・たかをに没頭する日々

ゴルゴ13はやっぱり凄い、おもしろい。今、ゴルゴ13の過去の作品を必死に読み返している。 ゴルゴ13が金で依頼されて、ターゲットを殺害する典型的なエピソードにはやっぱり抵抗を感じてしまうが、前回熱く紹介した『「ゴルゴ13」の魅力は(さいとう・たかを第1弾)』の中で書かせてもらったとおり、「ゴルゴ13のルーツ物」のようにゴルゴ13その人がほとんど出てこないものや、「2万5千年の荒野」のように人を殺さないゴルゴ13の話しなどは、本当に素晴らしいと唸ってしまうのだ。 スポンサーリンク

数日前に購入したコンビニコミックスに凄いものが・・・。

ゴルゴ13は色々な形態で出版されており、コンビニでも実に様々な形で置かれている。僕は基本的にコンビニコミックスは大好きで、特にあの厚みが5センチもあるような分厚いものが大のお気に入り。 熱愛している手塚治虫作品なども、かなりコンビニコミックスで出ていて、見つけるとどうしても購入してしまう。僕が手塚治虫の全作品の中でも特別に気に入っている「アドルフに告ぐ」も上下2巻の分厚いものを全部で11セット、つまり22冊も買い込んでしまったことがある。福岡での話しだ。といってもこれは人にプレゼントするのが目的で、「アドルフに告ぐ」は、これまでどれだけの人にプレゼントしてきたか分からない。 話しを戻そう。コンビニコミックスとして購入したゴルゴ13のことだ。「ダークサイトミステリー・オブ・昭和」と銘打たれたこのわずか664円の分厚いコンビニコミックスに載っていたあるエピソードに感動してしまったのだ。
これがそのコンビニコミックス。3編掲載されている。 スポンサーリンク

ノモンハン事件とは

これはあの「ノモンハン事件」を舞台にした『ノモンハンの隠蔽』というタイトルの読み応えのある作品。 僕は今回初めて読んだのだが、ゴルゴ13全体の中でも屈指の名作ではないかと確信させられた次第。かなり感動的な第一級の歴史ミステリーと言っていい。

この事件の真相はあまり知られていない

史実としてのノモンハン事件を少し知ってもらう必要がある。これは歴史上も有名な事件なので多くの読者の皆さんはある程度ご存知だと思うが、実は、その真相はあまり知られておらず、日中戦争中の大軍事衝突でありながら、意図的に小さな事件として片づけられ、その真相は封印されてきたという背景があるので注意しておきたい。 時は1939年。昭和14年のことだ。盧溝橋事件を発端として勃発した日中戦争は3年目に入り、膠着状態に陥っており、更にこの2年後の1941年には真珠湾攻撃が起きて太平洋戦争に突入するというどうしようもない戦争の時代である。

どんな事件だったのか

1936年5月から9月にかけて半年近くに渡って繰り広げられたソ連との国境紛争である。日本が満州事変を皮切りに中国に侵略して建国された傀儡国家の満州国とモンゴル人民共和国との国境線を巡って発生した紛争であり、満州国を支配していた大日本帝国とモンゴルを自分の衛星国としていたソ連(ソビエト社会主義連邦)とのかなり激しい軍事衝突で、日露戦争以来の日本とソ連とのほぼ本格的な戦争に近い様相となった。

それぞれの被害の実態は

日本は死者数が8千人近く、死傷者の総計は2万人近くに及ぶ。ノモンハン事件は日本軍が大敗を喫し、壊滅的な打撃を受けたと言われているが、ソ連側の死者は約1万人、死傷者の総計は2万6千人と日本よりも多く、モンゴルも約1千人の死傷者が出ている。双方合わせると5万人近い死傷者が出ており、かなりの規模の軍事衝突であったことが分かる。

日本陸軍の非道と無能ぶりが暴露された

この軍事衝突(戦争)は本当に悲惨を極めたようだ。日本陸軍の対応は愚劣にして無責任の極み。戦略上あまりにも無謀、独善であり、全てが場当たり的であったとされる。 それだけではなく更に問題は、日本軍はこの紛争の大敗北から教訓を学び取るなどの反省を全くしておらず、誰も責任を取らないばかりか、この大敗北を国民に伝えることすらせず、隠蔽した。それは正にこの後に起こる太平洋戦争の悪夢の先取りと言うしかない。 全ての誤りはここにあった。そもそもこの紛争を真摯に反省していれば、ソ連の数倍の軍事力を誇ったアメリカとの全面戦争に突入することもなかっただろうと言われているのだが・・・。 スポンサーリンク

「ノモンハンの隠蔽」は

ゴルゴ13の「ノモンハンの隠蔽」は、まさにこのノモンハン事件の激しい戦闘に巻き込まれた旧日本軍の悲惨な運命と生き様、奇跡的に一命をとりとめた生き残りがどうしても事件の真相を明らかにしたいという怨念が込められた特別に感動的な一編となった。 2005年に書かれた作品だ。535作目のエピソード。
オープニング

どんな展開なのか

ジリ貧になりつつあった精密機械メーカーの2代目の社長である主人公は、大手企業との連携が晴れて決まり、そのためには先代の創業(父親)の財産5億円を引き継がなければならない。 その創業者の先代社長は少尉を務めた旧日本軍の軍人で、ノモンハン事件とその後の南洋戦線を生き残り、今は余命いくばくもない状態で病床にある。 その父が息子に5億円の全財産を譲る遺産相続の条件として、あるミッションを命じたのであった。

その困難極まるミッションは

フィリピンの山奥にいる戦友を探し出し、その戦友が知っているであろう“ある遺品”の場所を聞き出して、その遺品を持ち帰ることだという。そして自分が体験したノモンハン事件の概略を伝え、60年も前のフィリピンの戦友から遺品のある場所を聞き出し、ノモンハンに赴いて遺品を回収しろ、というとんでもないものであった。 こうして不承不承ながら父親のかつての部下と一緒に、二人の気の遠くなるような旅が始まる。様々な困難と危険を克服し、フィリピンの山奥にようやく戦友を発見した二人は、そこでノモンハン事件の想像を絶する悲惨な戦いと、その中で繰り広げられた軍隊内部での信じがたい不正と野蛮、その後の南洋戦線での悲劇を知らされることになる。 一方で、この二人をズッと追跡し、折を見て殺害しようとする不気味な殺し屋たちの存在があった。彼らの狙いと黒幕は誰なのか? 戦友から遺品を埋めた場所を何とか聞き出せた二人はいよいよノモンハンに向かうのだが、そこで遂に命を狙われ、絶体絶命のピンチに陥ってしまう・・・。

込み上げる涙が止まらない

最後にノモンハンの地で回収された遺品の中身が明らかにされた時には、もう全身の鳥肌が立って、込み上げる涙を抑えることができない。 原発事故を扱った「2万5千年の荒野」でも書いたが、ゴルゴ13を読んで涙が込み上げるなんてことは滅多にないことなのだ。 泣けた、泣けた。感動に打ち震えた。 あの愚かな戦争と軍の指導者への怒りと絶望。その中に身を委ねるしかなかった兵士たちの思いと無念さに胸が詰まる。 ここでのゴルゴの活躍には抵抗はない。 モンゴルの広大な草原が広がるノモンハンで繰り広げられる激しいバトルは喝采もの。 最後の最後に主人公(ゴルゴではなく、2代目社長)が取った行動は、賛否両論があるところだろう。僕は個人的には残念でならないが、是非とも読んだ者同士で意見交換をしてみたいものだ。 スポンサーリンク

これは大変な傑作だ

本当に素晴らしい作品。さいとう・たかをの力量にあらためて驚嘆させられると同時に、一人でも多くの方にこの漫画(劇画)を読んでいただき、劇画「ゴルゴ13」のものすごさとあの悲惨な戦争の実態、それを土台にして作られたとんでもないドラマを味わってほしい。 わずか126ページにこれだけのテーマとドラマを詰め込んだ力量に舌を巻くしかない。 このコンビニコミックスは、今では簡単に入手できないかもしれない。コンビニで見かけたら、迷わずゲットしたい。 確実に読みたいと思われた方は、リイドコミックスの162巻を求めてほしい。これはどこでも入手可能だ。

半藤一利の「ノモンハンの夏」を読み始める

僕は、あらためてノモンハン事件に深く興味を持たざるを得なかった。まだ未読であった半藤一利の屈指の傑作と言われている「ノモンハンの夏」を、早速じっくりと読み始めたところである。
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