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久々に見応えのある重厚な映画を観た
久々に見応えのある重厚な映画を観た。大友啓志監督・脚本による「宝島」である。
これはまだ去年(2025年)の秋に公開されたばかりの新作映画で、沖縄の苦渋に満ちた戦後の歩みを真っ正面から描いた上映時間3時間を優に超える重厚にして骨太の作品である。

アマゾンプライムで見放題配信に
僕は劇場では観ることができなかったが、何とこの新しい大作映画が最近、アマゾンプライムで無料で配信されることになって、早速そのアマプラで観たという次第。
以前にも何度も書かせてもらったが、アマゾンプライムは今すごいことになっていて、新作映画、しかも内容的にも評価の高い作品が次々と、公開からそう時間を置かずして無料配信されるようになっている。
話題作や名作、傑作をドンドン積極的に取り入れて、プライム会員にさえなれば無料で、見放題というのは本当に信じ難いことだ。

この配信サービスで、映画の鑑賞方法が根本的に変わってしまうほどのインパクトを持っている。
大いなる期待と深い感謝の思い、一方で映画の敷居を余りにも低くしてしまう嫌悪感といった矛盾した感情を抱かせ、映画は映画館で観るに限るという信念を持つシネフィルの僕としては複雑な気持ちにさせられる。
もうブルーレイを購入する必要もなくなってしまいそうだ。
なんだかんだ言ってもこんな新しい傑作、話題作の数々を無料で見放題というのはやっぱりありがたい。難しいことは考えずにテレビの前で楽しめばいいのだろう。
かなり不満や批判もあるが・・・
3時間を超える沖縄の戦後史と真っ正面から向き合った問題作。志の高さには文句のつけようがない。この苦渋に満ちた理不尽な沖縄の問題に正面から立ち向かった勇気と情熱には、無条件に称賛を惜しまない。
但し、色々と問題を抱えた映画であることもまた事実である。
巷でも賛否両論に分かれていて、どちらかと言うと、否定的な感想の方が多いように思える。
僕は、かなり問題を感じつつも、基本的には素晴らしい作品であり、称賛に価すると感じた。だが、この映画への批判の多くには僕も同調できる部分も多いので、本当にもったいない、できることならもう一度、一部の問題点を撮り直して、改めて修正版を作ってほしいと願うほどだ。
素晴らしい作品と思いながらも、いくつか重大な点で致命的な欠陥があり、その部分で足を引っ張られてしまう。本当にもったいないことだと思う。
不満を補って余りある骨太の傑作
作品の大きなストーリー展開に致命的な部分があって、心の底から感動することができない。細かい部分でもケチを付けたくなる部分がたくさんある。
そんな欠陥だらけの作品でありながらも、僕はこの映画を否定したり、批判することはどうしてもできない。ちょっと扱いに困る作品なのである。
僕としては不満を補って余りある骨太の大傑作だと思っている。
映画の基本情報:「宝島」
日本映画 191分(3時間11分)
公開 2025年9月19日
監督:大友啓史
脚本:高田亮 大友啓史 大浦光太
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫) 第160回直木賞受賞
出演:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、塚本晋也、中村蒼、 瀧内公美、栄莉弥、ピエール瀧、デリック・ドーバー他
音楽:佐藤直紀
撮影:相馬大輔
編集:早野亮
【受賞】
キネマ旬報ベストテン:2025年度 第99回 第5位
読者選出ベストテン 第4位
※評論家からも一般観客からも非常に高く評価された。
映画の概要とストーリー
第160回(2018年下半期)直木賞を受賞した真藤順丈の「宝島」の映画化である。
まだアメリカの統治下にあった戦後の沖縄を舞台に、理不尽な時代に抗った若者たちの青春群像とその顚末を描く骨太のドラマ。
時は1952年。まだアメリカの統治下だった沖縄で、米軍基地を連日のように襲撃して様々な物資を強奪し、それを困窮する住民たちに分け与える「戦果アギヤー」と呼ばれる若者たちのグループがあった。多くの若者たちが加わっていたが、カリスマ性を備え仲間から英雄と慕われていたオン(永山瑛太)がリーダーで、親友のグスク(妻夫木聡)とオンの弟のレイ(窪田正孝)が中心だった。オンには恋人のヤマコ(広瀬すず)がいた。
ある日の襲撃で「予定外の戦果」を挙げてしまったことで、米軍の激しい攻撃が加えられ、オンは米軍に連れ去られてしまう。
時が経過し、グスクは刑事、刑務所に入っていたレイはやくざとなったが、オンの消息を探ろうとする目的は共通だった。ヤマコは教師になるが、時代は動き始め、沖縄の本土復帰運動など住民の政治活動が活発になる中、史上有名な「コザ暴動」が勃発する。
その暴動のさなかでオンの姿を目撃したグスクは必死に追いかけるが、事態は思わぬ方向に発展してしまう。果たして3人の運命はいかに?オンとの再会は叶うのか?そして沖縄はどうなってしまうのか?
戦後の沖縄で必死に抗う若者たちの運命
非常に骨太の見応えのあるドラマ。その重厚さは近年の日本映画にはない堂々たるもので、大変な力作だと評価したい。
沖縄戦の悲劇と、戦後も理不尽な米軍の統治下にあって、時代に抗う若者たちの心情は良く伝わってくる。4人の若者たちにも共感できる。
瑛太も妻夫木も、窪田もそれぞれ力演で悪くない。広瀬すずも大いに健闘していると言っていいだろう。刑事とやくざという対照的な道を歩むグスクとレイだが、オンを探し出すという究極の目的は少しもぶれずにいる点が不思議というか興味深い。そこまでオンという男が魅力的だったということなのだろう。
十分に描かれているようで、少し弱い感じは否めない。現状への不満が大き過ぎるが故のリーダー願望、英雄の出現願望というべきか。沖縄の現状にそれだけ耐え難い思いを抱かざるを得なかった証左であろうか。
この映画は、消息不明となった英雄を探し出すというミステリーがメインストーリーなのだが、僕はオンを探し出すミステリーよりも、舞台となっているアメリカ統治下の沖縄の状況と、時代背景に圧倒されてしまった。
主人公は沖縄そのもの
ヤマコが深く関わる沖縄の本土復帰運動など、ドキュメンタリー色が強く、決して政治的な主張が強い映画ではないのだが、素直に胸に迫ってくる描写が多く、感動を禁じ得なかった。
この悲劇と苦渋の歴史を知らずして沖縄のことを語ってはならない、と僕自身も新たな認識を迫られた。
この映画は若者たちの青春群像を描きながらも、それらはサイドストーリーに過ぎないのかもしれない。4人の若者たちの生きざまというよりも、舞台となっている沖縄そのものが主人公なのではないか。
極端に言うと、オンの捜索はどうでもよくなってしまって、沖縄そのものの行く末に激しく心を奪われてしまう。
「コザ暴動」の描写は相当なもの
終盤のクライマックスと言うべき「コザ暴動」は中々の迫力で、生々しい描写にはかなり圧倒される。あの暴動に至るまでの沖縄の住民たちの鬱積した思い、負の連鎖が結構ストレートに伝わってくる。
この映画はキネマ旬報ベストテンではかなりの上位に食い込みながらも、賛否両論に分かれている。ほぼ同時期に公開された「国宝」と同じ「宝」がタイトルに付き、上映時間はどちらも3時間ということで、この「宝島」と「国宝」は何かと比較された。
残念ながら「国宝」の大絶賛の前で、「宝島」には批判の声が大きかったようだ。
だが、僕は擁護派である。
オンの捜索という4人の若者たちの生き様はあくまでも沖縄という主役を描くために利用された表向きのストーリーであって、真の主役はあくまでも沖縄の運命だと捉えれば、これは第一級の傑作だと思えてくる。
「コザ暴動」とそれに続くとんでもない展開に、素直に耳を傾けてほしい。人によって取り方はそれぞれかもしれないが、この「最後の対決」は、沖縄の住民の真実の声の反映のように思えてくる。
この部分をどう捉えるか、ここがこの映画の評価の分けれ道になると思われる。
僕は手塚治虫の例の「MW(ムウ)」を彷彿され、大いに考えさせられた。
映像の美しさは特筆もの
この映画の映像の美しさは特筆ものだ。戦後の風俗、時代の雰囲気と空気。それらを忠実に映像化できているように思えた。かなり満足できる映像だった。
相当な予算をつぎ込んで丁寧に作ってあることが良く分かる。2,000人のエキストラを動員したという「コザ暴動」の迫力も相当なものだ。
欠点が多い映画であることも事実
僕のようにこの映画に素直に感銘できた者でも、不満点はいくつもある。
一つは妻夫木たちが話す沖縄の方言と独特のイントネーションが聞きづらくて、何をしゃべっているのか聞き取れないという極めて技術的な問題だ。
アマゾンプライムでは字幕(日本語の字幕)が出るので、それを見ながら観るのがお勧めだ。僕も分かるようで細部が理解できなくて困っていたところ、字幕付きで観たら非常に分かりやすく、物語の中にすんなり入り込めた。
劇場の上映では字幕はなかったという。それがかなり不満を呼んだようで、アマゾンプライムには感謝したい。
この問題も、実はこの映画がリアリズムを追求するために、妻夫木たち出演者に敢えて沖縄の方言とイントネーション、特に語尾の発音を使わせるという素晴らしい取り組みをしながら、観客には聞きづらくなってしまったという非常にもったいない話しであった。
他にも、あまりにも無理のあるストーリー展開、ストーリーの極端な省略描写などがあって、観客が置き去りにされてしまう場面がいくつもある。原作がそうなっているのか、そのあたりをもっと丁寧に描いてくれれば、この作品は真の傑作に成りえたに違いないと、非常にもったいなく、残念でならない。
不満はあれども日本人必見の大作
様々な不満に事欠かない映画だが、戦後の苦渋の沖縄とそこで暮らした住民たちを、あくまでも沖縄の住民目線で描いた映画として、かけがえのないものだと思う。
我々本土の人間は、あまりにも沖縄を知らな過ぎると改めて痛感させられた。3時間11分の映画はあまりにも長過ぎるという批判もあるが、沖縄の戦後の苦渋、理不尽さを描こうとしたら、どうしてもこれだけの長さは必要だったと思われる。
一人でも多くの日本人、特に沖縄には観光以外では行ったことがないという人には絶対に観てもらいたい渾身作である。
幸いアマゾンプライムに加入さえしていれば、家のテレビで無料で、繰り返し観ることができる。このチャンスを逃さないようにしてほしいものだ。