ようやく観た映画は凄い作品だった
昨年大きな話題を集めた「教皇選挙」をようやく観た。これもやっぱりアマプラことアマゾンプライムで。
「教皇選挙」は公開されて既に1年半以上経過し、アマプラで会員なら無料で観られるようになってからももう相当経っている。
折しも実際に教皇選挙のコンクラーベが現実世界でも行われるという偶然とも重なって、非常に話題となったばかりか、とにかく映画の出来栄えが傑出していると非常に高い評価も得て、何かと注目を浴びていた。
高い評価を得ていた映画だっただけに早く観たいとずっと思いながら、他にも観るべき映画が山積していて、最近ようやく観ることができた次第。

で、これが素晴らしい作品だった。実に見応えのある映画で満喫した。もっと早く観るべきだった深く反省したところである。
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映画の基本情報:「教皇選挙」
アメリカ・イギリス映画 120分(2時間)
公開 アメリカ 2024年10月25日 イギリス 2024年11月29日
日本 2025年3月20日
原作:ロバート・ハリス『教皇選挙』(2016年、邦訳は未出版)
監督:エドワード・ベルガー
脚本:ピーター・ストローハン
撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ
編集:ニック・エマーソン
出演:レイフ・ファインズ、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、セルジオ・カステリット、ルシアン・ムサマティ、カルロス・ディエス、イザベラ・ロッセリーニ他
【受賞】
第82回ゴールデングローブ賞 脚本賞:ピーター・ストローハン
第97回アカデミー賞 脚本賞:ピーター・ストローハン
作品賞を含む8部門にノミネート
キネマ旬報ベストテン(外国映画):2025年度 第99回 第3位
読者選出ベストテン 第2位
※評論家からも一般観客からも非常に高く評価されている。
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公開時に奇しくも実際に教皇選挙が
この映画を巡っては、本当に不思議なことがあった。映画の上映期間中(日本を含む)の2025年4月21日に教皇フランシスコが亡くなったことを受けて、実際にバチカンの地において、教皇選挙、コンクラーベが行われたのである。
コンクラーベの結果、2025年5月8日の4回目の投票でアメリカ出身のロバート・フランシス・プレヴォストが選ばれ、レオ14世として即位した。
こんなことが実際にあり得るんだと衝撃を覚えたことを鮮明に覚えている。これを受けて、全世界で異例の大ヒットとなった。
映画の出来栄えが大したことなければ、直ぐに観客も離れただろうが、幸いこの映画が傑出したものだっただけに、口コミもあって映画館に人が押し寄せた。
偶然にしてはあまりにも出来過ぎなのだが、これはごく最近実際に起きた話しである。
どんなストーリーなのか
話しは極めて単純極まりない。教皇が亡くなって、その後任を選出する教皇選挙、いわゆるコンクラーベが行われることになり、その選挙を取り仕切ることになる主席枢機卿を中心に選挙の一部始終を描くだけの話し。
これでお終い。これ以上でもこれ以下でもない。
コンクラーベという教皇を選出する選挙の仕組みへの興味もあって、選挙の一部始終を描くだけでも映画になるのが凄い。
その選挙を巡って、様々な課題と難題が持ち上がるのと、次期教皇と目される有力候補者の枢機卿が、果たして次期教皇に相応しい人材なのかという、言ってみれば身辺調査的なエピソードが次々と出てきて、ここに至って映画はサスペンス色を帯びてくる。
だが、この映画は決してサスペンス映画やミステリーではない。あくまでもコンクラーベという独特の選挙を通じて次期教皇を選出するだけのストーリーであることは断言しておきたい。
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その選挙ドラマが実におもしろい
ところが、このコンクラーベという選挙そのものが実に興味深く、おもしろいのである。バチカンのシスティーナ礼拝堂という限られた空間での、限られた時間内の出来事を描くだけなのに、これがすこぶるおもしろく、興味が尽きない。
実際に観始めると、これが本当におもしろく、時間が経つことを忘れて、夢中になって観入ってしまった。
近年稀にみる完成度の高さ
本当に素晴らしい映画だった。近年稀にみる完成度の高さと感動の深さ。正しく第一級の傑出した映画として大絶賛を送りたい。
最近これだけ夢中になって、映画を観る感動に身を委ねることができたことはない。去年、同じ年に公開された映画の中で、世評の高かった映画はほとんど観ているが、ハッキリ言ってしまうと、どうしてこの映画がここまで高く評価されるんだ、と納得できない作品ばかりだった。
最近の映画に不満だらけで溜飲が下がる
同年のキネマ旬報ベストテンで、この「教皇選挙」よりも評価が高く、アカデミー賞の主要部門を独占した「ワン・バトル・アフター・アナザー」は、気色悪いだけのヘンテコ映画の最たるものだったし、もっとガッカリさせられたのは、2番手につけた「ANORA アノーラ」だ。ほとんどポルノで、僕には全く響かなかった。
今のアメリカ映画の質の劣化が酷過ぎると呆れている。
シネフィルの僕は、どんな映画も大歓迎で、どんな映画でも観る価値はあるという主義。できるだけ作品そのものを貶さないようにしているが、映画に「良し悪し」があるのは当然で、問題はその「悪し」に属する作品をやたらと高く評価する映画評論家や映画祭の選考委員たちにある。
特に近年のアカデミー賞の劣化ぶりと、カンヌの結果にも不満を覚えることが多くなってきた。
「ワン・バトル・アフター・アナザー」も「ANORA アノーラ」ももちろん見どころはあるし、いいところもある。それは間違いないが、アカデミー賞を独占したり、キネマ旬報ベストテンでベストワンとかツーに輝く作品ではない。
もっと映画を観る目を養ってほしいと願わずにいられない。
話しを戻す。そんな中にあって、「教皇選挙」は本物、素晴らしい映画だった。
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監督のエドワード・ベルガーのこと
監督を務めたエドワード・ベルガーは1970年生まれのドイツの映画監督である。フォルクスワーゲンを生み出したヴォルクスブルクの出身で、2026年現在、56歳になる。
ベルガーはレマルク原作の「西部戦線異状なし」の再映画化で注目された期待の映画監督である。
「西部戦線異状なし」と言えば、ルイス・マイルストン監督が1930年に撮った名作中の名作として非常に名高い映画で、映画史上最も有名な古典の1本である。
その3度目の映画化(2022年公開)に挑戦したのがエドワード・ベルガーだった。もちろん劇場でも公開されたが、Netflix(ネットフリックス)で独占配信され、今でもNetflixを通じて広く鑑賞されている。
マイルストン監督の出来栄えが映画史上の名作としてあまりにも有名なため、そのリメイクには戸惑いもあったはずだが、これが実に感動的な素晴らしい作品となった。
僕はNetflixで観て、驚きと感動を禁じ得なかった。今回の「教皇選挙」があれを作った監督だと知って大いに納得、凄い映画を作る人はやっぱり凄い。何を撮らせても凄い映画にしてしまう。
いずれ頭角を現すだろうと踏んでいたが、まさかあれからわずか2年、これだけの凄い映画を作ってくれるとは驚きだ。
2022年版「西部戦線異状なし」と「教皇選挙」の2本を観てもらえば、ベルガーという監督の確かな演出力と映像美、正攻法の映画作りの類まれな手腕を痛感してもらえるだろう。
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映像の美しさとカメラワークが圧巻
「教皇選挙」で先ず感じるのは、その映像の美しさである。ワンシーンワンシーンが全て絵になる映像美の極致。どんなシーンであっても決してないがしろにしない拘りと、細部まで徹底的に拘り抜く職人芸の高さが傑出している。



カメラワークも圧巻だ。バチカンのシスティーナ礼拝堂という極めて限られた空間の中にあって、趣向の限りを尽くして緊迫感を盛り上げ、観るものを釘付けにしてしまう手腕は並大抵のものではない。
この映画は次期ローマ教皇を枢機卿たちの選挙によって選ぶだけを描いたものだけに、ともすれば退屈なものになってしまう可能性が高い。
そんな危惧を吹き飛ばし、最後の最後までハラハラドキドキの超一級のドラマに仕立て上げたベルガーの手腕を称えたい。
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俳優陣の演技も申し分ない
演じる俳優たちの演技も見事の一言に尽きる。名優たちの演技合戦も素晴らしい。

特に主役を演じたレイフ・ファインズの存在感が凄い。


イギリスの名優レイフ・ファインズは、これまでも数々の名作映画に出演し、現代最高の男優の一人だ。
スピルバーグの「シンドラーのリスト」で冷酷無比な狂気のナチス幹部、収容所の所長アーモン・ゲート役で強烈な印象を残した。
「イングリッシュ・ペイシェント」、そして何と言っても「ハリーポッター」シリーズにおけるハリー・ポッターの最大の敵ヴォルデモートを演じ続けたことでも良く知られた存在だ。
今回の「教皇選挙」で更にその名声を永遠に刻み込んだ感がある。
他にも往年の名優というか怪優と呼ぶべきジョン・リスゴーが久々に元気な姿を見せてくれたもの嬉しい。
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カトリックの深刻な問題、社会分断の影響も
次期教皇を選ぶ選挙を描くだけと言いながら、その密室での選挙を通じて、現在のカトリック教会が抱える様々な問題が浮き彫りになってくることが最大のポイントである。
カトリックの在り方を巡って、約150人の枢機卿たちにも様々な路線や考え方があり、それがそのまま選挙結果に影響を及ぼしてくる。差別問題も浮き彫りにされる。

神に仕える聖職者も生身の人間
神に仕えるトップの聖職者たちも生身の人間で、欲に満ちている姿を赤裸々に描いていく。
これは今のアメリカ社会の分断を見るような、決定的な考え方の違いが背景にある。カトリックという非常に排他的な狭隘の世界にあっても、路線の違いは明確で、様々な選挙工作、ハッキリ言えば裏工作とかけひきにやっきとなる。
少数意見を取り入れて寛容な世界を築くのか、それとも強いリーダーシップで強力な政策を打ち出すのか。人種と民族の問題、そしてJGBTQなど性的少数者の取り扱いなども、テーマとなってくる。
映画ではそれらの分断問題にかなり切り込んでいるものの、一番肝心なカトリックを震撼させた例のゲイ問題、少年への性的虐待問題には真っ向から向き合っていない点が気になった。
その点だけがこの映画の弱点のように思われる。惜しい。
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一人でも多くの方に観てほしい
これは本当に素晴らしい映画。圧倒的な映像美に彩られた深い人間ドラマに感動させられること必定だ。映画を観る至上の喜びを心から満喫できる稀有な映画体験になることは間違いない。
どうか一人でも多くの方に観ていただきたい。
最近のアマプラには不満
アマゾンプライムの会員であれば、無料で観放題となる。本当にアマプラには感謝したいが、実は最近、不満がある。
映画の放映中に最近、CMが入ってくる。以前はそんなことはなかった。
2時間の映画だと最低でも2回、下手をすると3回はCMが突然入ってくる。えッ!?と驚いて慌てて対応方法を探ると、CMなしを登録できることが判明。
ところが、その登録をしようとすると、何とお金がかかる。つまりアマゾンプライムでは現在、CMなしで映画を観ようとすると有料なのだ。それでは会員であれば無料で見放題という本来の姿を逸脱している。
映画を観るのに、途中でCMによる中断があるなら、地上波の民放で映画を観るのと何ら変わらない。映画ファンは、映画の途中でCMが入ってくることは耐え難い。
いつからこんな仕組みになったのか分からないが、これではアマプラを絶賛することはできなくなる。
再考を切に願う。
☟ 興味を持たれた方は、どうかこちらからご購入をお願いします。
5,280円(税込)。送料無料。ブルーレイ。
「教皇選挙」はアマプラでも観ることができますが、CM問題もあり、こちらのブルーレイは貴重なメイキングやベルガー監督によるオーディオコメンタリーもあって、実に魅力的です。