立花隆の見たことのない本を発見!
これまた御茶ノ水駅前の丸善で見つけた本!
正直驚かされた。河合隼雄と立花隆、更に谷川俊太郎まで加わった3人の著名人による共著だった。
そこに他ならぬ立花隆の名前があることにちょっとショックを受けてしまった。立花隆!?
僕は立花隆の熱狂的な愛読者で、立花隆の書いた本は、全て手元にあると自負している人間である。手元にありながら、まだ読んでいないものが数冊あるのだが、極端なロスを嫌って敢えて、読まずに置いてある(苦笑)。
とにかく立花隆の全ての著作物が、我が家に揃っていると確信していたので、これを見つけたときは、思わず我が目を疑った。
ええツ!?立花隆の本!?ホントにか(笑)。
しかも河合隼雄と谷川俊太郎というビッグネームとの共著!?
うかつにもこの本の存在は知らなかった。
迷わず購入した。
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非常に興味深い本だった
僕は立花隆の名前に惹かれて、即座に購入したわけだが、これは中々興味深い本だった。
人間の精神的な活動の基礎となる「読むこと」と「聴くこと」について、心理学、哲学・ノンフィクション、詩というジャンルは別ながらも、日本を代表する泰斗による座談というかシンポジウムの模様を本にまとめたものだった。
それぞれの立場から「読むこと」「聴くこと」について、自らの体験に基づいて、その神髄を披露し、意見交換を交わす。


これがおもしろくないわけがない。もうワクワクしてしまうレベル。
興味尽きない本だった。
非常に薄っぺらな文庫本ながら、内容的にはずっしりと重い読み応え十分な本。僕にとってかけがえのない貴重な一冊となった。
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「読む力・聴く力」の基本情報
岩波書店から発行されている岩波現代文庫の一冊。
2015年10月16日 第一刷発行。僕の手元にある本は、2024年12月25日発行の第5刷である。ページ数は182ページしかないかなり薄めの文庫本である。
しかもフォントがかなり大きい。これは高齢者には本当にありがたいこと。
したがって、本書は直ぐに読めてしまう。フォントも大きく、ページ数も少ない。それでいて内容充実と申し分のない一冊となっている。
元々は2006年に単行本として出ていたものだったが、約10年後の2015年に岩波現代文庫として再刊された。
著者は、河合隼雄、立花隆、谷川俊太郎の3人である。3人とも既に亡くなってしまっていることはご承知のとおり。


小樽での「講演」と「シンポジウム」
この本は小樽で開催された講演とシンポジウムの模様をまとめたものである。
その詳細は、以下のとおり。
2005年11月20日、小樽市民会館で行われた絵本・児童文学研究センター主催の第十回文化セミナー「読む・聴く」の記録である。
今からほぼ20年間に実際された、3人の泰斗による貴重な講演会とシンポジウム。よくぞ、こんな豪華な顔ぶれによる講演とシンポジウムが実現できたものだと感心してしまう貴重な一期一会の機会となった。
ちなみ一番年上の河合隼雄は、この講演とシンポジウムの約1年半後に亡くなっている(享年79)。その意味でも非常に重要なセミナーとなった。
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全体の構成等
目次を見ると一目瞭然だが、先ず始めに「はじめに」として、3人それぞれがショートメッセージを寄せている。これは小樽での講演とシンポジウムにはなかったもので、本書の刊行のために3人が書き下ろした文章だと思われる。
その後に、講演が2本続く。河合隼雄と立花隆によるものだ。その後に、谷川俊太郎によるアンソロジーというものが続いている。
これは当日の小樽での講演にはなかったもので、3人の共著にするにあたって、詩人の谷川俊太郎が詩を寄せたようだ。つまり小樽のセミナーでは谷川俊太郎の講演はなかったと思われる。
最後に3人によるシンポジウムの記録がたっぷりと収められているが、司会は谷川俊太郎が務めている。
はじめに
「読む 聴く」の大切さ・・・・・・・・・・・・・・・・・・河合隼雄
生涯何冊本を読めるか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・立花隆
言葉のほかにも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・谷川俊太郎
講演
読むこと・聴くこと・生きること・・・・・・・・・河合隼雄
人間の未来と読むこと・聴くこと・・・・・・・・・立花隆
アンソロジー
小アンソロジー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・谷川俊太郎
シンポジウム
読む力・聴く力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・河合隼雄 立花隆 司会 谷川俊太郎
あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・河合隼雄
現代文庫版あとがき・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・立花隆
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河合隼雄・立花隆・谷川俊太郎のプロフィール
3人はジャンルこそ異なれど、それぞれのジャンルにおける日本における最高の泰斗であり、良く知られていると思うが、改めてプロフィールを掲げておく。
例によって、本書の扉に掲載されているものをそのまま転載する。

河合隼雄(かわい はやお)
1928年兵庫県生まれ。臨床心理学者。京都大学理学部卒業。日本初のユング派分析家資格取得。京都大学教授、文化庁長官などを歴任。2007年7月逝去。『河合隼雄著作集』(岩波書店)がある。

立花隆(たちばな たかし)
1940年長崎県生まれ。ノンフィクション作家。東京大学文学部卒業。著書多数。1983年菊池寛賞、1998年司馬遼太郎賞、2014年『読書脳 ぼくの深読み300冊の記録』で毎日出版文化賞書評賞受賞。2021年4月逝去。

谷川俊太郎(たにかわ しゅんたろう)
1931年東京生まれ。詩人。代表作『20億光年の孤独』をはじめ、著書多数。2024年11月逝去。

めっぽうおもしろく読み応え十分な一冊
これは本当にめっぽうおもしろい本で、ちょっと集中すれば直ぐに読み切れるのも嬉しい。
河合隼雄と立花隆のそれぞれの講演も非常に興味深いものだが、やっぱり最後の3人によるシンポジウムが圧巻だ。司会を担当している谷川俊太郎も、司会者としての立場を離れてかなり熱心に語っているし、読み応え十分である。
河合隼雄と立花隆がそれぞれこう振り返っている。
『「読む」「聴く」については、当代の達人とも言える、立花隆さんと谷川俊太郎さんに参加していただいたが、本文を読んで下さるとわかるとおり、なかなか読み応えのあるものになった、と自負している』(河合隼雄「あとがき」より)
「いま読み返してみても、これは何ともいえず面白いセミナーだった。もうあんなセミナーができる機会は二度とないだろう」(立花隆「現代文庫版あとがき」冒頭)
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「聴くこと」の意味が全く異なる衝撃
読んで様々な刺激と気づきを得たが、僕が一番興味を覚えたのは、「聴くこと」について、河合隼雄と立花隆の姿勢があまりにも違っていることだった。
真逆を極める両者に衝撃を受ける。立花隆の「聴くこと」は、僕は良く理解しているつもりだが、立花隆は相手に対し、徹底的にとことん聴く。根掘り葉掘り聴く。
驚かされたのは臨床心理士として「聴くこと」のプロフェッショナルである河合隼雄の「聴く」だった。感動必至の素晴らしい話だった。
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河合隼雄の「聴く」に驚嘆と衝撃
河合隼雄は、臨床心理士として「聴くこと」が仕事。本人も講演の中で、「聴く」ことが私の本職と言っている。
ところが、その聴き方にビックリ仰天となる。
『言われていることを必死になって聴いて、それについて必死になって考えてということはしません。(中略)「死にます」と言われても「はー」とぼーっと聴いているのです。(中略)何でも「はー」と言って、ものすごくぼんやり聴いています。それはなぜかというと、そこに注目すると、それだけになってしまうのです。(中略)
ぼーっと聴いているということは、その人のいま考えておられることのもっと違うほうに注目しようということになるのです。ぼーっと聴いているというと、簡単そうに思いますが、ものすごくエネルギーの要る仕事です。
(中略)来た人が「死にたい」と言われたときに、その「死にたい」は本当に死ぬ気なのか、ちょっと言って驚かそうとしておられるのか、いま思いついたのか、そのへんは芸術家の判断に近い、なかなか論理的にはいかないのです』
実に深い言葉が繋がっている。これは熟読に値する本当に貴重な講演だと痛感させられる。
河合のモーツァルトとバッハへの思い
ある学会での質疑応答で、「河合先生のスーパーバイザーは誰ですか」と聞かれ、河合はすぐ「私のスーパーバイザーは二人いる。モーツァルトさんとバッハさんです」と答えたというエピソードに胸が熱くなる。
一部引用しておきたい。
『何にも助言するわけではない。何も言ってくれるわけではないけれど、「う~ん」という気持ちになって、私の背負っていることを、ときほぐしたり、まったく別の角度から見られたり、それに何よりも「よし、やろう」とか「こうやるんだ」、「またやるんだ」という気持ちにしてくれますから、これはすごいものではないかと思います』
『「ともかくこんな音楽が作れるんだから」、「人間というのはこんなことをやってのけるのだから」と思うだけでも、私としてはクライアントの人が、これは何かやるだろうかとか、そういう気持ちになります』
もう感無量。至言の数々。クラシック音楽を聴く極意が平易な言葉で話され、「わあっ」って思ってしまう。
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一つだけ大きな不満がある
実は、この本には一つ不満がある。大きな不満である。
内容に関わる話ではない。
本書は、実際に小樽で開催された公開のセミナーで行われた講演とシンポジウムの記録である。
どうしてその時の講演なり、3人が壇上で揃い踏みし、谷川俊太郎が司会まで務めた当日の様子を収めた写真が一枚もないのか!?
当日、写真を撮っていたことは間違いない。一般参加者が会場から撮影することは厳禁されたと思うが、事務局が当然写真は残していただろう。
その様子を本書に掲載してほしかった。本書を読んだ読者の多くが、それを望むはずである。この3人の泰斗たちが、壇上でどんな服装で登壇し、どんな表情で意見交換をしていたのか、たとえ一枚だけでも載せてほしかった。
本書にはその時の様子を収めた写真が一枚もないのである。本当に残念と言うほかはない。
プライバシー暴露寸前に大笑い
シンポジウムの終盤、絵本の話題になって、谷川さんの「共同生活者」だった著名な絵本作家の作品について語られるが、このエピソードが思わず吹き出してしまうようなおもしろい話。プライバシーの暴露寸前、ギリギリのところで持ちこたえてエンディング。
立花隆が巻末の「現代文庫版あとがき」の中で、プライバシーや当日の裏エピソードをかなりあからさまに書いてしまっているあたりも、包み隠さず書いてしまう立花隆の人柄が滲み出て、嬉しくなる。
この立花隆を我々はもう失ってしまったのだ、それを思うとやりきれないが・・・。
本書は内容充実のいかにも奥の深い話が多いが、ところどころに場を和ませるユーモア満載のエピソードもたくさん出てくる。そのあたりもたまらない魅力を秘めている。
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読むことと聴くことの神髄に触れる感動
「読むこと」と「聴くこと」の背後に、「生きること」があると言い切る河合隼雄の言葉に感動させられる。
これは本当に貴重な本だ。日本を代表する泰斗のぞれぞれの言葉に感銘を受けるも良し、3人によるシンポジウムでは、3人の立場とキャラクターの違いが明確に浮き上がりつつも、貴重な意見交換がなされ、3人による絶妙なアンサンブルに酔い痴れるも良し。
読む人によって、楽しみ方も人それぞれのような気もする。
どうか気軽に手に取って、気軽に読んでみることをお勧めしたい。きっと参考になる。もしかしたら、「読むこと」と「聴くこと」の神髄に触れ、「生きること」の在り方が変わってしまうかもしれない。
試してみるのはどうだろうか。
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