読み応え十分の凄い本と出合った
御茶ノ水駅前の丸善の店頭で、たまたま見つけた本だった。ベストセラーのようで平積みされていたのだが、手に取ってパラパラとページをめくると、非常に興味深い話しが次々と出てくる。
これは読まなきゃと迷わず購入した。
カバーに書かれていた、「成毛眞さん絶賛!」「この本は読まなきゃダメだ」というキャッチコピーもストレートに突き刺さった。
トランプとプーチン、そして習近平という現在最も厄介な大国の指導者の人となりと、どのような基本理念と政治思想に基づいて剛腕を振るっているのか、その核心を掘り下げた力作だった。

情報満載の素晴らしい本
テーマの興味深さは言わずもがな、非常に分かりやすく、読みやすい本で、帯に書かれたキャッチコピーのとおりに、これはどうしても直ぐに読まなきゃだめだと動物的な勘も働き、早速読み始めた。
すると、これが期待していた以上にめっぽうおもしろい。夢中になって読み耽ってしまった。
分かりやすくて読みやすいだけではなく、奥も深い。貴重な情報が満載だった。トランプとプーチン、習近平という本当に困った指導者たちの真相に迫る本は、ありそうでそうはない。
一旦読み始めると、途中でやめられなくなるくらい、読む人を引き付けてやまない本だった。
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川北省吾「新書 世界現代史」の基本情報
講談社現代新書 2798 2025年12月20日第一刷発行 2026年5月25日第9刷発行
半年間で9刷ということは、相当な勢いで売れているのだろう。
新書としてはかなり厚めの方で、巻末の参考文献・注釈一覧を含めて325ページある。


先ず、はじめに、次にプロローグがあって、本文は9つのチャプターに分かれている。エピローグの後にあとがきがあって、参考文献・注釈一覧となる。
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全体の構成(目次)
改めて、本書の全体の構成は以下のとおりである。
はじめに
プロローグ「警察官」の退却
第1章 覇者の驕り—「無敵」から「Gゼロ」へ
第2章 「格差」の超大国—アメリカを蝕む病
第3章 リバンチズム—「大ロシア」再興の野望
第4章 百年国恥—中華民族の偉大な復興
第5章 「南」の逆襲—BRICSの論理と心理
第6章 白人の焦燥—「人種置換」の世界観
第7章 SNSと情報工作—民主主義の新たな脅威
第8章 「警察官」の犯罪—時代遅れの戦後処理
第9章 逆流する歴史—よみがえる伝統主義
エピローグ「19世紀」へ向かう世界
あとがき
参考文献・注釈一覧
これを読むだけで、おおよその展開は伝わってくるような目次である。とにかく分かりやすく、論理的に作られている。

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著者の川北省吾氏について
共同通信出身の国際ジャーナリスト。
例によって、本書の扉に掲載されているプロフィールをそのまま転載させてもらう。
1963年、神戸市生まれ。国際ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。共同通信社に入社。ブリュッセル特派員、ジュネーブ臨時特派員、イラク移動特派員、ニューヨーク特派員(国連担当)、ワシントン特派員などを経て編集委員兼論説委員。共同通信加盟25紙が掲載し、3年に及んだ大型国際インタビュー連載「レコンキスタの時代」に続き、2025年4月から「レコンキスタ2・0~トランプのアメリカ」を手掛ける。
本書の狙いと執筆目的
「はじめに」の冒頭から、極めて明確に、問題提起されている。
「プーチンはなぜ、ウクライナに侵攻したのか。何が習近平を駆り立てているのか。トランプが返り咲いたのどうしてか—。本書はこうした問いに向き合った1人の日本人ジャーナリストと取材と思索の記録である」
このちょうど4ページに渡る「はじめに」に、ほぼ本書全体のエッセンスが、非常に簡潔に集約されている。ここに答えが描かれていると言っても過言ではない。
こんな展開となる。
『異なる国に暮らしていても、相互に作用し合い、メトロノームのように同調し、一つの時代潮流(トレンドライン)を形成する—。
そんな視座から、現代と世界を理解しようと試みた。プーチンと習近平、トランプをバラバラに見るのではなく、共通のトレンドラインにおけるロシア的、中国的、そしてアメリカ的な表現と捉えるように心掛けた。
3者を突き動かしているのは「失地回復(レコンキスタ)」への強烈な意志だ。だからプーチンはウクライナを再征服しようとし、習は「中華民族の偉大な復興」を唱え、トランプは「MAGA(米国を再び偉大に)」を連呼する』
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失地回復(レコンキスタ)」という切り口
レコンキスタは、世界史でお馴染みの、中世のヨーロッパで、8世紀以降イスラム教徒に占領されていたイベリア半島の奪還を目指すキリスト教徒の湿地回復運動のことだ。約800年もかかり、この成功を契機にスペインとポルトガルが世界の覇者となっていったことは良く知られている。
本書は、「失地回復(レコンキスタ)」という切り口を通じてプーチンや習、トランプの思想と行動を読み解き、彼らのようなストロングマン(強権指導者・独裁者)を排出するに至った時代と世界を考察したという。
「同時に、ストロングマンを輩出するに至った冷戦後の世界、とりわけグローバル化が生んだ経済格差や文化摩擦、それらがもたらした左右のポピュリズムや、権威主義が勢いを増す時代潮流(トレンドライン)に目を凝らした」
筆者の頭に一貫してあったのは、同盟国アメリカと祖国・日本の行く末だという。戦後の80年間、私たちが享受してきた平和や民主主義の行方に思いを巡らせ続け、グローバルな同期現象はわれわれの足元にも及んでいるとみるべきだろうと警鐘を鳴らす。
21世紀のトレンドラインの源流をたどり、私たちの「現在地」を知ることで、より良い未来を創り出すために何をなすべきか考える、と訴えている。
学者や知識人ら専門家に徹底取材を敢行
そんな目的を達成するために、著者は、ベテランから新進気鋭までのジャーナリストと専門家に徹底した取材とインタビューを敢行し、それらをうまくまとめ、考察し、読者に問題提起する。
本書の中の掲載されている顔写真は、プーチンや習近平、トランプのお馴染みの顔ではなく、インタビューを試みたジャーナリストや専門家たちのものばかりだ。中には知っている人物も若干いたが、ほとんど知らない人物ばかりだった。自分の無知さを否応にも思い知らされた。
「あとがき」によれば、
有名無名、老若男女を問わず、歴史の風雪に耐える眼力を持った水先案内人を求め、取材を申し込んだ。
国際論壇で活躍する知識人はもとより、政治家、外交家、言論人、活動家らインタビュー相手は、本書に登場しなかった人も含め多岐にわたる。リベラリストから極右、親米から反米まで、政治的立場や価値観もさまざまだったという。
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専門家の見解を適切に分析し、紹介
本書は、プーチンや習近平、トランプらストロングマンを生み出したトレンドライン(時代潮流)を理解するために、様々な専門家に徹底した取材を敢行し、そのインタビューをまとめ上げ、分析し、紹介したものである。
川北省吾というジャーナリストの個人の見解ではなく、あくまでも専門家へのインタビュー結果を通じて、著者が分析、思索した上で、読者に資料の提示をする。
そのインタビューの対象者は政治的立場も思想上も特定の側だけではなく、幅広に行われており、偏向していない点が素晴らしい。
中にはリベラルな価値観を持つ宣教師の息子が、やがて右翼のイデオローグに変貌する人物も登場。サミュエル・ジャレット・テイラー。白人の権利擁護を唱えるアメリカの代表的論客だ。
様々な異なる政治信念や立場の違いのどちらも公平に取り上げている点がポイントだ。バランスの取れた優秀なジャーナリストの仕事っぷりである。
あの立花隆に通じる本の書き方
僕は本書を読んでいて、僕が深くリスペクトしてやまないあの立花隆に非常に近いものを感じた。本書の基本的なスタンツは立花隆の著作と良く似ている。
あるテーマについて、その分野の第一人者に詳細なインタビューを行って、徹底的に掘り下げる。取材するに当たっては、取材相手の書いた本や論文は事前に念入りに読み込んだ上で、インタビューに臨む。
立花隆はその姿勢をどんなジャンルの著作でも貫いた。
本書は、立花隆の仕事の進め方に非常に近いものを感じ取る。
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客観的事実とインタビュー内容の黄金比率
感心させられるのは、川北さんの説得力のある分かりやすい文章は言うまでもなく、歴史的な客観的事実の紹介、解説とインタビューの内容を実に上手く一体化させていることだ。
事実と取材内容がうまくマッチしているのである。ほとんど黄金比率というべきか。
取材内容に応じて、後付けで事実が説明されるのではなく、あくまでも客観的事実の紹介が先にある。事実の背景をインタビューを通じて解き明かす、あまり知られていない視点から真相を白日の下に晒すというか。
一つの歴史的事実、現在の政治状況を踏まえながら、様々な立場の人が自分の立場から思いを述べることで、立体化させることに成功したと感じる。
読みやすく分かりやすい文章が魅力
とにかく川北さんの文章は読みやすく、分かりやすい。それでいて、次にどんなテーマが現れ、どんな取材内容が紹介されるのか、待ち遠しくてたまらない気にさせてくれる。
こうして読者は第一級のエンターテインメント小説を読むときのように、途中でやめられなくなってしまう。徹夜で読み続けたくなってしまうのである。
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こんな時代潮流の要因を徹底的に問い詰める
本書は徹頭徹尾、今日の「力こそ正義」という19世紀的な古い価値観がなぜ蘇ってしまったのか、その問いを徹底的に追及していく。
プーチン、習近平、トランプの3人のストロングマンを中心としながらも、南アフリカやブラジルなどを中心にBRICSの活動と政治信条などにも詳しく触れながら、あの冷戦の終結後、一度はまとまったかと思われた世界がどうして、再び崩壊し、力こそ正義を訴える独裁者たちに翻弄され続けているのか!?



様々な知識人、専門家にインタビューしながら考察していくのだが、その真相究明そのものがたまらなくスリリングで、興奮が抑えられなくなる。
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素晴らしい内容に大絶賛したい!
本当に素晴らしい本だった。帯にも書いているが、読み始めるとやめられなくなってしまう。推理小説などのエンターテインメントではなく、国際政治の最前線を俯瞰し、分析する本であるにも拘わらず、読者をここまで夢中にさせてしまうことは、ちょっとありえない。それだけでも大変なこと。
これは筆者の文章力の賜物であることはもちろん、この混迷を極める国際情勢そのものがあまりにも深刻極まりない事態に陥っているということの証にほかならない。
著者が願った、
21世紀のトレンドラインの源流をたどり、私たちの「現在地」を知ることで、より良い未来を創り出すために何をなすべきか考える、ことができたであろうか。
著者はエピローグの最後をこう結ぶ。
『われわれは今、力が信義をなぎ倒す荒れ野にいる。「強者は好きなように力を振るい、弱者は耐えるしかない世界」—。アメリカはわれわれと共にいるだろうか?
厄介な時代の必読書
中々厄介な時代である。本書をじっくりと読んで、トレンドライン(時代潮流)を正確に把握し、自らの頭で対処方法を考えなければならない。
水先案内人はどうしても必要だ。先ずは本書をじっくりと読むことから始めるべきだろう。答えのヒントはいくらでもありそうだ。
これこそ、現代人の必読書。
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新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか (講談社現代新書) [ 川北 省吾 ]
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